Fate/kaleid liner エドモン☆ダンテス   作:雛宮メリー

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16話 狂月の夜の終わり

バキンッ!という音と共に美遊の身体から弾かれるようにしてカードが飛び出す。

魔力が尽きたのだ。

魔力切れを起こした結果、《約束された勝利の剣(エクスカリバー)》は元のカレイドサファイアへと戻り、そのまま床を転がっていく。

 

『変身が解けた…?美遊様!?』

「戻ってサファイア!すぐに魔力供給を…!」

 

そこで言葉は途切れる。

宝具の一撃で開けたビルの大穴から巨大な腕が現れ、サファイアを地面に押し付けたからだ。

腕の主ーーヘラクレスはそのままビルの外から中へとずるりと浸入するとサファイアを握りしめ、美遊へ迫る。

一方、屋上では俺がかつてない危機を迎えていた。

 

「嘘……だろ……?」

 

変身を意志の力で無理やり維持しながら前方を睨む。

そこには傷だらけながら未だにカード化しないカリギュラの姿があった。

 

「ざっけんなよ、マジで。

しこたま、光線撃ち込んだのに、まだ、終わら、ないのかよ…!」

 

おかしい…!明らかにこれは異常だ。

今までの黒化英霊とカリギュラは何かが異なる…!

 

「魔力…切れ……!」

 

アレで仕留め損ねたとなると本格的にもうなす術がない。

ゆっくりとこちらに近づくカリギュラを見て、

 

「ここ、までか……」

 

諦めるように目を閉じる。

もう俺に手札は残っていない。

ヘラクレスを打倒するべくイリヤスフィールと美遊が放つ万華鏡(Kaleid scope)の余波を狙うにしてももう間に合わない。

ここで、終わり……。

 

「エドさんッッ!!!」

 

閉じた瞳を見開く。

壊れた屋上の入り口。そこにメル子が立っていた。

 

「メル子…?馬鹿、早く、ここから逃げろ……!」

「嫌ですっ!エドさんを置いてはいけません!!だって…!」

 

その紅い瞳は俺を射抜く。

 

「エドさんは、私の大切なーーだから!」

 

その瞬間、メル子の後ろから巨大な剣を携えた看護婦が現れる。

剣はこちらに向かってくるカリギュラに振るわれる。

これはーー

 

「《我は毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)》……!?」

 

それはナイチンゲールの宝具。

作り出される絶対安全圏。

戦闘で傷付いた俺の身体と消費された魔力が瞬く間に回復していく。

 

「エドさん、貴方は一人で戦ってる訳じゃないんです。

私もいます。非力で、足手纏いで、怖がりで、戦闘後の回収役くらいしか出来ないかもしれないけど…それでもッ!」

 

そこで宝具の効果が切れる。

大気に溶けるように剣も、看護婦も消え去った。

この宝具は魔力の消費が激しいらしくメル子はその場で膝をついた。

 

「それでも…私は貴方を一人にしたくないんです…!

私の中の誰かも、そう叫んでいるんです……!」

 

メル子の声が弱々しくなっていく。

 

「……お前は、()を何だと思ってるんだ」

 

一人じゃない?一人にしたくない?

もう分かってるんだよ、そんなことは。

俺はどこぞの孤独なヒーローなんかじゃない。一人で出来ることに限界があることだって分かっている。

 

「頼る時はちゃんと頼るさ」

 

カリギュラが動き出す。

俺は両の手に黒い炎を纏うと迎撃した。

階下の戦いも間も無く終わりそうだ。

イリヤスフィールと美遊が並列限定展開(パラレル・インクルード)で9本の《約束された勝利の剣(エクスカリバー)》を構えていた。

 

「《監獄塔の復讐鬼(モンテ・クリスト・ミトロジー)》!!!」

 

咄嗟に思いついた真名偽装登録による宝具発動。

もちろんランクは多少落ちる。だが、今は充分。

今までの《巌窟王(モンテ・クリスト・ミトロジー)》では出せない出力が、出せそうな気がした。

 

「満たされぬ、暴食の化身よ。

お前の飢餓はここで終わりだ!」

 

今放てる最大出力の青黒い魔力放出がカリギュラを跳ね飛ばす。

吹き飛ばされた先でそのままカリギュラは階下より伸びた太陽の如き黄金の光に巻き込まれ、消し飛んだ。

そして、もう一つの夜は終わった。




監獄塔の復讐鬼(モンテ・クリスト・ミトロジー)
ランクD
獄中にいた頃のエドモン・ダンテスの憤怒を攻撃的解釈によって昇華させた真名偽装宝具。
本来の性能はほぼ失われているが唯一、魔力放出(光線)だけは強化されている。
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