無限の成層によるDies irae   作:アマゾンズ

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「人というのは己だけの快楽を求める」

「物欲、愛欲、あらゆる欲が手に入れば良いと」

「だが、それが壊れた時、どうなるか」

「今回はそれを垣間見れるよ」

「さぁ、幕を上げよう」


演説・水銀の蛇


第十二劇 報い

散歩から戻ると相棒がシャルルと共にいた。おまけにルサルカさんにベアトリスさんまで部屋にいる。

 

「一体何があったんだよ?相棒」

 

「ああ、実は」

 

話によれば相棒が部屋に連れてきてシャルルにシャワーを案内し、その数十分後にルサルカさんとベアトリスさんが来て、ルサルカさんがシャルルを脅かそうとシャワールームに入り、シャルルが襲われかけ性別がバレてしまったという事らしい。

 

「まさか女の子だったなんてね~。細いと思ってたけど」

 

「ううう・・・」

 

「マレウス、お仕置きです」

 

ベアトリスの容赦のない拳骨が振り下ろされ、ルサルカは頭を押さえた。

 

「いったーい!ベアトリス加減しなさいよー」

 

「襲おうとした罰です!」

 

「と、まぁ。あの二人は別件にするとして何で男装なんかして相棒に近づいた?」

 

「そうだな・・・問題はそこからだ」

 

ルサルカに説教しているベアトリスを放ってフォルとサタナ、それにシャルルは話を始めた。

 

「それは・・・あの人に命令されたからなんだ。デュノア社の社長直々にね」

 

「命令だぁ?デュノア社ってのはお前さんの実家だろ?」

 

「フォル・・僕は愛人の子なんだ」

 

「な・・?」

 

愛人の子、それは片親が正式なことではないことを意味している。それを聞いたサタナが少しだけ狼狽えた。

 

 

「検査でIS適性が高いと分かって、本邸に呼ばれた後、いきなり本妻の人に叩かれた。泥棒猫の娘って言われて」

 

俯いたシャルルは話すたびに言葉が弱くなっている。それほどの環境にいたのだろう。

 

「IS開発には資金もかかるし国の支援がないと出来ない。リヴァイヴは第二世代でフランスのIS開発は最後発なんだ」

 

「なるほどな・・・シャルル、お前さんを男装させたのは容姿もあるが広告塔としての役割と俺達の機体のデータ奪取って訳か」

 

「鋭いね。フォルの言うとおりだよ」

 

「酷いもんだな。利益の為に利用し続けるなんて」

 

シャルルの置かれた状況を聞いた二人は嫌悪感を露わにしたがすぐに持ち直した。自分達は聖槍十三騎士団の所属であり、正義などとは程遠い場所に居るためだ。

 

「それにね、デュノア社はもう女尊男卑の女性しかいないんだ。事実上の倒産になってる。持ち直そうにも経営力のある人はいないからね」

 

シャルルの言葉にフォルが笑みを浮かべた。それは楽しんでいるのではなく食事が出来ると言わんばかりの笑顔だ。

 

「一つ聞いておきたいんだが、潰して問題ないのか?」

 

「え?」

 

「え?じゃねーよ。お前の実家である会社を潰しても問題ねぇのかって聞いてんだよ?」

 

「あ、相棒?」

 

「大丈夫だよ。僕は大丈夫だけど・・・」

 

フォルの言葉に恐怖しながらシャルルは口を開き、意見を述べた。最後の希望に縋り付かんとするかのように。

 

「お母さんを助けて・・あの女の人にお母さんが囚われてるんだ!!」

 

「で?どうするよ?相棒。ディナー(・・・・)の場所は出来たが正義の味方ごっこでもやるか?」

 

「!そういう事か!ああ、やろうぜ?正義の味方ごっこをな」

 

フォルの言葉の意味を理解したサタナも笑みを浮かべた。食事が出来るという事に嬉しさを隠せないのだ。

 

「ふ、二人共怖いよ?」

 

「安心しな。お袋さんは助けてやるよ」

 

「派手にやらないようにしなきゃな。我が主から怒られる」

 

二人は笑みを隠すとルサルカとベアトリスの近くへ向かった。

 

「お二人さん、俺達これからフランスに行ってくるわ」

 

「は!?いきなり何を言ってるんですか?」

 

「また急な話ね~」

 

「シャルルからの頼みを聞いてあげようかなって」

 

突然、海外へ行くというフォルの宣言にベアトリスはあっけにとられた顔をしており、ルサルカはジト目だった。

 

「あまり食べ過ぎちゃダメですからね?」

 

「分かってますよ」

 

「行ってきます」

 

そう言って二人は一時ヴェヴェルスブルグ城へ帰還し、そこからフランスへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの子から連絡は無いの!?もう何日経っていると思っているの!」

 

「は、はぁ・・・再三連絡はしているのですが一向に」

 

「連絡を続けなさい!」

 

現社長であるシャルルの養母はヒステリックに声を上げながら社員に命令している。

 

ヒステリックになっているのは自分の経営が上手くいかないせいもあるがシャルルの連絡が途絶えたことだろう。

 

「あの泥棒猫の娘め!今度会ったら全てを奪ってやるわ!!」

 

そう言いながら社長室に戻り、椅子に座ると同時に内線電話が鳴った。

 

「一体何!?」

 

「社長・・!侵入者です!ぎゃああああ!!」

 

断末魔を残して連絡した社員は反応しなくなっていた。

 

「ちょっと!どういうことよ!答えなさい!!」

 

Pater noster, qui es in caelis(天にまします我らの父よ)

 

sanctificetur Nomen Tuum(願わくば御名の尊まれんことを)

 

 

Requiem aeternam dona eis(彼らに永遠の安息を与え)

 

Domie et lux perpetua luceat eis(絶えざる光もて照らし給え )

 

 

それは鎮魂歌(レクイエム)と主の祈りを組み合わせたものらしく、男の声で歌われている。しかしそれは電話越しではなく頭に直接響いてきている。

 

exaudi orationen meam(我が祈りを聞き給え)

 

その歌の一節一節が響くたびに社員の(いのち)が吸われていく、まるで食物が逃げるなと言わんばかりに。

 

ad te omnis caro veniet(生きとし生けるものすべては主に帰せん )

 

onvertere anima mea in requiem tuam(我が魂よ 再び安らぐがよい)

 

quia Dominus benefect tibi(主は報いてくださるがゆえに)

 

足音が近づいてくる。しかしそれは死を映す鏡と血に飢えた竜剣が近づいて来る音であった。

 

社長室の扉が開かれ、二人の男が入ってくる。その手には半死半生の護衛が僅かに呻いており、そのまま手を離され地に倒れる。

 

「な、何者よ!貴方達は!!ここをどこだと思ってるの!!」

 

「あん?ここは倒産間際のデュノア社だろう?それ以外に何があるってんだ?」

 

「監禁してる女性はどこだ?」

 

男性二人の正体はフォルとサタナであり、形成状態のままで女社長、つまりシャルルの養母と対峙している。

 

「知らないわ!護衛!何してるの!早く来なさい!!」

 

号令をかけた瞬間に最後の20人の護衛が女社長を守り始めた。

 

「泣き叫べ劣等!」

 

「今宵、ここに神はいない!」

 

「「ハハハハハハ!!」」

 

殺人欲求を開放した二人は狂ったように笑い始めていた。まだこれだけの食料がいたことに嬉しさを隠せない。

 

「男ごときが!!早く奴らを始末しなさい!!」

 

「はっ!」

 

女社長の号令により、ISを纏った護衛達は一斉に二人へ襲いかかってきた。

 

「飢えて飢えて仕方なかったんだよ、さっさとこいや!クッハハハハ!!」

 

「ようやく、ようやく血を吸わせられる。よこしな!ハハハハハハ!!」

 

だが、二人はお互いに10人ずつの命を消した。それによって社長室は血という赤によって彩られ女社長は呆然としていた。

 

「さぁ・・・監禁した人はどこにいるんだ?」

 

「言えば楽にしてやるぜ?」

 

話しかけながらも護衛をしていた人間達が青白い光となって二人に吸い込まれていく。

 

それは二人が(いのち)を喰らっているという事が本能的に分かってしまった。

 

「ば・・化物!!!」

 

「おっと!逃がしやしねぇよ!!」

 

フォルは女社長を取り押さえ、サタナの目の前に差し出した。

 

「どこにいる?答えろ」

 

「ぐっ!男なんかに答える義務は無いわ!」

 

取り押さえられた状態でもプライドがあるのか答える様子は無い。しかしそれは延命ではなく拷問以上の苦痛を受ける事になってしまう。

 

「そうか」

 

サタナは無表情のまま女社長の左手首を切り落とし、目の前に転がした。サタナの技量ならば痛みを感じさせずに切り落とす事は可能だ。

 

「え・・あ・・・!ぎゃああああああ!わ、私の手!私の手がああああ!!」

 

「もう一度だけ聞いてやる、監禁した女性はどこにいる?」

 

「あ・・あああ・・・」

 

「どこにいるんだ?さっさと答えた方が楽になるぜ?」

 

「こ・・この会社の地下にある部屋よ・・!これが鍵」

 

そう言って女社長はカードキーを手渡し、怯えた様子で二人の様子を伺っている。

 

「そうかい。じゃあ、楽になりな」

 

「開放して、え?」

 

女社長が最後に見たのは噴水のように流れ出る己自身の鮮血だった。フォルは身体から手を離すとサタナの隣へと移動した。

 

「喰う気すらおきねえ魂だ。行こうぜ」

 

「ああ・・・そうだな」

 

二人は急いで地下に向かい、カードキー対応の扉を開いた。そこにはやせ細り、生きているのがギリギリの女性が座っていた。

 

「アンタがシャルルのお袋さんか?」

 

「あなた・・たち・・は?」

 

「シャルルの同級生ですよ。とりあえずここから出ましょう」

 

二人は地下を登ると会社の裏口から抜け出し、国内の病院へと運び込んだ。医者の見立てでは栄養失調が激しく、しばらくは入院が必要だが、命の危険は無いという事を伝えられた。

 

デュノア社において聖遺物の飢えを満たした二人はヴェヴェルスブルグ城を経由して日本に戻り、IS学園でシャルルに母親が入院している病院の場所を教えた。

 

それを聞いたシャルルは嬉しさで大泣きし、何度もお礼の言葉を二人に言い続けた。

 

「正義の味方ごっこも悪くはないが」

 

「今の俺達には合わないな?相棒」

 

「ああ、全くだな」

 

今の自分たちは黄金の爪牙。人助けをする立場ではないゆえに複雑な心境だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの劣等種を必ず潰す!いえ、その前に私を地につけたあの男を必ず殺してやるわ!!!」

 

誰もいない夜の学園の屋上にいるのは退院して学園に復帰していた織斑千雨であった。

 

今の彼女にあるのは復讐という感情だけであり、他がどうなろうと関係ないと考え始めている。

 

「お姉ちゃんを傷つけて、私の力も馬鹿にして許さない、絶対に!!」

 

黒い感情をその身に秘めた千雨は夜空に向かって更に復讐を誓った。

 

 

「この力があればあの二人を殺せる!フフ・・・アハハハ!あの得体の知れない男から貰ったこの力で!」

 

その手には1本の小さな剣が握られていた。その剣は主の狂気に反応して禍々しく輝いている。その剣からは、願いを叶える代わりに主の破滅を見せろと言わんばかりにカタカタと刀身が揺れていた。

 

その刃の先に復讐する相手を思い浮かべながら、千雨は笑い続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日後、デュノア社が倒産したというニュースは世界中を駆け巡ったが、IS学園では学年別トーナメントの準備が進んでいた。当日を迎える前にタッグマッチに変更となり、女生徒達が殺到し、サタナはシャルルとペアを、フォルは螢とペアを組む宣言をされた為に女生徒達の企みは潰えた。

 

そしてトーナメント当日となり、アリーナは満員となっている。代表候補生の成長やスカウト、そして男性操縦者という珍しいことがある為に見に来ているのだろう。

 

 

「さて、相棒はBブロックか。俺はAブロックで対戦相手は・・・ほう?粋なことしてくれるじゃねえか」

 

対戦表には櫻井螢 フォル=ネウス・シュミット 篠ノ之箒 ラウラ・ボーデヴィッヒと表示されている。

 

「フォルくん、今回のペアよろしくね?それと出来る(・・・)んでしょう?貴方も」

 

「ああ、よろしく頼むわ」

 

二人は軽く握手し、笑みを見せてアリーナへと向かっていった。

 

 

ISを纏い、アリーナの中心へと降り立つとそこには既に待機していた箒とラウラが待っていた。

 

「ようやく貴様と戦えるな。私が貴様を叩き伏せてやる!!」

 

「はっ!面白い事を言いやがるな!やってみな?」

 

「私はあの箒って子を押さえればいいのね?」

 

螢は自分の役割を確認するようにフォルへ話しかけると形成し、自分の愛刀である緋々色金(シャルラッハロート)を出現させた。

 

螢も武装具現型であり、バランスが取れているのだ。フォルは螢に向き直り頷いた。

 

「ああ、よろしく頼む。ラウラは俺が相手をする」

 

『ふふ、黒い兎とは珍しいねえ』

 

フォルはその声に青ざめた。最も苦手な人物の欠片の声が聞こえたのだ。

 

「(シュ・・・シュライバー卿?)」

 

『僕の創造、使っていいよ?君の魂の量なら狂っちゃっても(・・・・・・・)大丈夫でしょ?君の作る轍を僕に見せてよ』

 

「(分かりました。使うと決めた時に使います)」

 

『楽しみにしているよ?あ、許可は出したままにしておくからね』

 

そう言い残し、シュライバーの意思の欠片はフォルの内側へと戻っていった。

 

会話が終わると同時に試合が開始され、二人はそれぞれの相手へと向かった。

 

「行くわよ、篠ノ之さん。悪いけど手加減なんて期待しないでね?」

 

「望むところだ!」

 

螢と箒は互いに刃を交え始め、互いに退かない戦いを開始した。

 

「これで!」

 

「ちっ!距離は関係ないって訳か、なら」

 

フォルはラウラのワイヤーブレードを回避しつつ、マシンガンで牽制している。だが、ラウラは牽制の弾幕を軽くいなしていた。

 

「貴様だけは!貴様だけは必ず倒す!!」

 

「っ!?ちっ!!」

 

ワイヤーブレードと格闘によって戦い、AICを織り交ぜた戦術によってフォルは追い込まれていた。

 

「そこだ!」

 

「ぐはっ!?」

 

ワイヤーブレードの一撃がフォルを捉え、そのまま叩きつけられる。フォル本人にダメージはないが鏡花のエネルギーは削られている。

 

「この程度で教官に傷を負わせただと・・・ふざけるな!やはり許せん!」

 

ラウラは更なる追撃を加えようとしたが回避され、マシンガンを放ちつつ間合いをとったフォルに追撃はできなかった。

 

「もう、使うべきか・・・この人の創造は強すぎるから極力抑えたけどよ」

 

フォルが呟くと同時に鏡花の装甲がパージされ、ルーンの描かれた白い肩がけの装甲が現れる。

 

『「泣き叫べ劣等、今宵ここに神はいない!!」』

 

フォルの左目が血のような赤に充血していく。まるで出血寸前のような状態だ。

 

『「Fahr’hin,(さらば ヴァルハラ)Waihalls lenchtende Welt(光輝に満ちた世界)」』

 

『「Zarfall' in Staub(聳え立つその城も)deine stolze Burg(微塵となって砕けるがいい)」』

 

『「 Leb' wohl, prangende Gotterpracht(さらば 栄華を誇る神々の栄光 )」』

 

『「End' in Wonne,(神々の一族も)du ewig Geschlecht(歓びのうちに滅ぶがいい)」』

 

 

『「Briah――(創造)」』

 

『「Niflheimr Fenriswolf(死世界・凶獣変生)」』

 

詠唱(うた)を終えたフォルは一瞬にしてラウラへと迫った。それはもう光速以上の速さだ。

 

「何!?」

 

一瞬で距離を詰められたことによりラウラは一瞬の隙を作ってしまった。そこへブレードによってラウラへ斬りかかり、シールドエネルギーを削った。

 

「たかが速くなった程度で!!」

 

「遅すぎんだよ!!」

 

レールガンを放つがフォルはその速度を上回る速さで回避してしまう。しかし、フォル自身も息が荒くなっている。

 

模倣した創造は絶対回避と絶対速度だが、本来の創造に及ばず、速度も一歩遅くなってしまう。それ以上に精神にかかる負担が大きい。

 

フォルは壊れているわけでも、殺人狂でもない為に凶獣になろうとするには精神に負担がかかるのだ。

 

「はぁ・・はぁ・・ちきしょう。負担が」

 

回避を終え、足が震えているフォルの首をラウラは掴もうとし接近した。

 

「ふん、終わりにしてやる」

 

そして彼に触れた。そう、ラウラの相手は凶獣になりつつあるモノ。この創造は誰にも触られたくないというルールの具現である。

 

それをラウラが知る由もない、それゆえに鎖を自ら切ってしまったのだ。彼自身に触れてしまう(・・・・・・・・・)という事こそが完全な凶獣を開放する条件なのだ。

 

「あ・・・・ア・・・アアアあああああああああああああああ!!!!!!」

 

ラウラの手が触れた瞬間にフォルは絶叫に近い声を上げ、ラウラを殴り飛ばしていた。だがその行動に本人の意識はない。それと同時にフォルの充血した左目から血が流れ出し始めた。

 

「ぐ・・・な・・に?」

 

 

 

 

『「Vorüber, ach, vorüber!geh,(ああ わたしは願う どうか遠くへ) wilder knochenmann!(死神よどうか遠くへ行ってほしい)」』

 

『「Ich bin noch jung,(わたしはまだ老いていない)geh, Lieber!(生に溢れているのだから)Und rühre mich nicht an.(どうかお願い 触らないで)」』

 

『「Gib deine Hand,(美しく繊細な者よ) du schön und zart Gebild!(恐れることはない 手を伸ばせ)」』

 

『「Bin Freund(我は汝の友であり) und komme nicht zu strafen.(奪うために来たのではないのだから)」』

 

『「 Sei guten Muts!(ああ 恐れるな怖がるな)Ich bin nicht wild,(誰も汝を傷つけない)」』

 

『「sollst sanft in meinen(我が腕の中で愛しい者よ) Armen schlafen!(永劫安らかに眠るがいい )」』

 

『「Briah――(創造)」』

 

『「Niflheimr Fenriswolf(死世界・凶獣変生)」』

 

 

 

その詠唱(うた)に本人の意志は無い。機械が歌うように淡々と言っているだけに過ぎなかった。詠唱(うた)が終わり、フォルの髪は真っ白になっていく。左目からは流血が止まらず、視線の先にはラウラのみが映っている。

 

「GAAAAAAAAA!!!!Zarfall’in Staub deine stolze Burg(聳え立つその城も微塵となって砕けるがいい)

 

凶獣と化したフォルは真っ直ぐにラウラへと向かっていく。模倣といえども凶獣であるために一切の加減はない。咆哮、身体の全てが武器となっている。

 

「ふん!所詮は、なっ!?速い!?ぐっ!!」

 

ワイヤーブレードを操作し、反撃を試みるがフォルは回避し続けラウラに一撃一撃を加えていく。

 

End’in Wonne, du ewig Geschlecht(神々の一族も歓びのうちに滅ぶがいい)!!!」

 

もはや凶獣となったフォルは目の前の獲物を狩ることしか頭にない。ラウラは常識では測れない獣を目覚めさせてしまったのだ。




「凶獣を映し込んだ模倣者に黒兎はどう戦うか」

「食われる獲物となるか、その刃を突き立てるか」

「既知ではあるが今再び見せてもらおう」

「さぁ、舞台を魅せるがいい」

演説・水銀の蛇
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