無限の成層によるDies irae   作:アマゾンズ

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「ああ、彼女の支えは我が息子だった時もある」

「彼女は激情家なのでね、苦労するよ」

「では、今一度見てみようか」

「彼女、レオンハルトの想いを」





演説・水銀の蛇


劇間の演目(番外編)
番外劇 獅子の心 本当の恋心


私、櫻井螢は満ちていた。前の学校ではそれなりに友人も居たし、悪くはなかった。

 

ISというものが世間では広がっていたけど、私にはどうでもよかった。兄さんは大学にいるし、お姉ちゃんもドイツに居る。

 

「はぁ・・・」

 

それでも、世界的に有能だと認知されているISの適性検査はこんな小さな学校でも行われている。

 

女性にしか動かせないのは知ってるけど、この学校の生徒は適合率が最高でCランクが多い。

 

「はい、この機械に触れてくださいね」

 

データを取っている職員さんに促されて私は目の前の機械に近づいていく。

 

IS学園への転校は最低でも適性がCランク以上じゃないとダメだって聞いたことがある。

 

おまけにかなりの有名校でもあるし、優秀な人もたくさん輩出してるって。

 

この時、私は思いもしなかった。突然の再会やたくさんの人達に出会えるなんて。

 

目の前にある機械、ISに触れて起動させる。それと同時に職員が驚く声が聞こえた。

 

「て、適性がA+!?あ、貴女!お名前は!」

 

「え?さ、櫻井螢です」

 

「櫻井さん!貴女!IS学園へ行ってください!!手続きはしておきますから!」

 

「え?ちょっと!?」

 

こちらの返答を聞かずに職員の人は走っていってしまった。

 

その一週間後に政府の人が来て、転入届けを持ってきたのにはびっくりした。

 

兄さんや実家に話をしたら、蛍が自分で決めなさいって言われちゃったし、元々実家から離れて一人暮らしだったから寮もあるって聞いたから転入を承諾した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転入が決まってから二日後。今、私はIS学園の制服を着て学園に向かっている。

 

荷物はあまり多くはなかったし、移動手段で電車も使えたから平気だ。

 

 

「悪くない、かな」

 

 

制服は着やすいし、住んでた場所からも近い場所にあったし文句はなかった。

 

「でも、こんな時期に被せなくてもよかったと思うけど」

 

 

私が転入した時期、それは世界で初の男性操縦者が見つかったという事が発表された時期だった。

 

人数は二人で、私と同い年という事もあって興味はあった。

 

「さてと、到着したら先ずは受付に行かなきゃ」

 

この学園、ものすごく広いんだけど大丈夫かな?案内図を見ておこう。

 

私は知らなかった、最も大好きな家族がこの学園に来てることを。

 

「櫻井螢、間違いないな?私はお前のクラスの担任を受け持っている織斑千冬だ」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

織斑先生は顔の左側に火傷の傷跡があるのを私は見逃さなかった。

 

ここで質問しても、はぐらかされるだけだろうと黙っておくことにしていた。

 

あの火傷は一般的な火傷じゃないと直感していた、顔に火傷なんて戦争とかに行かない限りありえないからだ。

 

「後、二人の転校生も来る。一緒に教室に向かう事になる」

 

「はい」

 

しばらくして、二人の転校生らしき生徒が職員室に入ってきた。一人は銀髪と眼帯をした女の子、おそらく軍属なのだろう。

 

もう一人は男性物の制服を着ていた。でも、私は違和感を覚えた、どう考えても高い声、骨格や体つきの細さなどから男装した女の子でしょ。

 

揃うと織斑先生が先導して私達は教室へと向かった。

 

「私が先に教室へ入る。呼ばれたら入って来い」

 

「分かりました」

 

「はっ!」

 

「はい」

 

それぞれが返事を返し、廊下で待機する。教室内ではクラスメートになる同級生が騒いでいるのだろう。

 

教室に入るよう促され、私は教室へと入った。副担任の先生と担任の先生、クラスメート達が一斉にこちらへ注目する。

 

自己紹介をするよう促され、自分の名前を口にし己を教える。教えたと同時に聴き慣れた声が私の耳に響く、それは会いたかった人で。

 

「螢?螢なの!?」

 

「え?ベアトリス、お姉ちゃん?」

 

兄さんと同じくらい大切で大好きな人、ベアトリスお姉ちゃんがこの学園に生徒として入学していたのに心底驚いた。

 

 

マレウスに関しては面識があったし、生徒として馴染んでいるのにも、また驚いた。

 

その他にお姉ちゃんの紹介で知った、フォル=ネウス・シュミット君。サタナ=キア・ゲルリッツ君。

 

後々で知ったのだけど、フォル君は鏡月グループの御子息だったらしい。本人はその名前を捨てたと言ってるけどね。

 

それからサタナ君は織斑一夏、あの織斑先生の弟だと聞いた。けど、織斑先生と自分の妹から出来損ないのレッテルを貼られていたらしい。

 

二人はドイツの名前が本当の名前だと主張してるみたいだから、私はその名前で呼ぶことにした。

 

 

 

 

授業でISは直ぐに動かせたけど、問題もあった。違和感があって、まるで枷を付けられたように動きにくかった。

 

武装も使ってみたけど銃は仕方ないとしても、接近戦用のブレードも使いにくい。

 

これはマレウスやお姉ちゃんも同じらしく愚痴っていたから。

 

フォル君とサタナ君に聞いてみたら開発者の人曰く、聖遺物の使い手はISが枷になるそうだ。

 

これは我慢するしかないと思って授業の時は我慢して訓練した。アリーナで二人きりになった時、フォル君に頼んでIS装着してる時に形成や創造を使ったらそうなるかレクチャーしてもらった。

 

でも、私は彼に対してなんだか好きになれない感じがした。

 

彼が言葉を発するたびに私に中で彼に負けたくないという気持ちが溢れてくる。

 

イライラして、頭に血が昇ってくる。戦って叩き潰したくてたまらない。

 

「ねえ、フォル君」

 

「ん?おわ!?」

 

いつの間にか私はISを解除し、形成して斬りかかっていた。自分でもわからない、彼を倒したくて仕方ない。振り下ろした一撃は彼に易々と避けられてしまった。

 

「いきなりなにしやがんだ!?櫻井!」

 

「私と戦いなさい!」

 

「はあ!?」

 

「あなたを見てるとイライラしてくるのよ、理由はわからないけど」

 

「ああ、そうかい。俺もお前と戦いたかった。理由はわからねえ!けど、一つだけ言える」

 

「ええ、私も一つだけ言えるわ」

 

彼もISを解除し、形成して両手首に刃を出してきた。聖遺物の使い手だと思ってたけど、かなり強い部類に入るみたいだ。

 

「「あなた(お前)を倒したくて仕方ない!」」

 

振り抜いた一閃は彼の刃に止められる。反動はそのまま伝わってるのだろう時折、呻く声が聞こえてくる。

 

「強いな、櫻井。なんでだろうな?お前と戦ってるとすごく興奮してくる」

 

「フォル君って変態かしら?女と戦って興奮するだなんて」

 

「馬鹿言え!俺はノーマルだ。ただな、お前と戦ってると満たされてくる感じがするんだよ」

 

「奇遇ね、私もそう。不思議よね?私達、知り合って間もないのに」

 

「ああ、そうだな・・・だがよ!」

 

「くっ・・・!」

 

彼が私の形成の刃を止めたまま押し込んでくる。こんなに強いなんて、けれど私も負けられない。

 

「この!」

 

「うお!?」

 

私が慣れない足技を使った事に驚いたのか、フォル君は後ろへ飛んで避けたようだけど確かに手応えを感じた。無駄がありそうでも彼の動きには隙がない。

 

「ゲホッ!効いたぜ?櫻井・・・」

 

「おかしいわね、戦って傷つけ合ってるのに感情が激しく動いてる」

 

「同感だ、血流したってのに興奮が収まらねえ」

 

斬って、斬られて、殴って、殴り返されてお互いがボロボロになるまで戦い続けた。

 

最後の一撃を決めようとしたら、彼に押さえ込まれて押し倒されてしまった。

 

「あ、ぐっ!」

 

「終わりか?櫻井。あっけねえな?」

 

「あなたが、強いのよ。最後の最後で押し切られるなんて、悔しいな」

 

「なら、なんで抵抗しねえんだ?お前なら反撃できるだろ?」

 

「無理よ。力は入らないし、押し退けるほど元気もないから」

 

そう言いながらも櫻井から目を離せない俺がいる。こいつは美人の部類に入るというのもあるが、出会った時から何故かこいつを放っておけなかった。

 

「なんで・・・」

 

「ん?」

 

「なんでいつも、頑張ってきたのに崩れるの・・・命懸けで必死になって走ってきたのに」

 

「・・・・」

 

「答えてよ、何も上手くいかない時にどうすればいいか。教えてよ!」

 

急に泣き出して、こいつは支離滅裂になってやがる。強い女だと思ってたが放っておけない理由がわかった。

 

コイツには芯が無いんだ、支えとなるものが一切無い。それを行動でごまかして走って、最後には硝子のように砕けちまう。

 

「馬鹿か?櫻井。お前が命懸けでやってきたってのは、お前にしかわからねえよ。上手くいかない?そりゃあそうだろうよ」

 

「じゃあ!」

 

「殺せ、ってのは無しだからな?俺はお前みたいな奴に命令されんのが一番嫌いなんだよ」

 

こうなりゃ滅茶苦茶になるが言いたい事をはっきり言ってやる。

 

「お前の価値観で図られんのはな、すっげームカつくんだよ。芯が無いくせして取り繕ってんじゃねえぞ?下に見られんのは一番ムカつくことだろうが」

 

「・・・っ」

 

自分でも滅茶苦茶だ、でも確信できてる。櫻井だからこそ言えるんだと。

 

「這い上がって見返せばいい、単純かつ王道パターンだ。お前そういう話好きだろ?」

 

 

「同年代の子たちと勉強したり、遊んだり」

 

「バカやって失敗しても楽しいって騒いで、怒られて」

 

「どこのお菓子が美味しいとか、何組の誰を好きになったとか」

 

「そんな話が」

 

「私も好き!」

 

突然、櫻井に抱き着かれて唇を奪われた。いきなり過ぎて訳が分からなくなっている。

 

この時にアリーナに誰も居なかった事に感謝していた。

 

「!?」

 

「好きな人と、こうしたり、からかったりして」

 

「おま、いきなり過ぎねえか?おまけに人のファーストキス・・・」

 

「何を少女漫画の女の子みたいなこと言ってるのよ。それなら私だって」

 

ああ・・・解ってきちまった。俺はコイツに惚れ込んだ、一目惚れしてたのか。

 

「イライラしてたんじゃなかったのね、好意って理解するとすごく恥ずかしいわ」

 

「言ってる事が最初と違うぞ?」

 

「しょうがないじゃない、好きになった人なんていなかったから。おまけに一目惚れなんて・・・」

 

「一目惚れってのは成立しないと思ってたけどな」

 

「ほんとよ、でも。それが成立しちゃった」

 

そう言ってまた櫻井に唇を塞がれる。おいおい、やられっぱなしの流されまくりじゃねーか俺。

 

「ん・・・・む、フォル君」

 

櫻井は唇を離すと目が潤んでいた。妙なスイッチ入ってるだろ絶対。

 

「私はしつこいわよ?絶対に逃がさないし、責任取ってもらえるまで付き纏ってやるから」

 

「・・・・」

 

こいつ、滅茶苦茶言いながら告白してきやがった。つうかなんだこれ?新手の八二トラってやつか。

 

「ああ、そうかい。だったら好きにしろよ、他にも狙ってくる奴もいるぞ?」

 

「その時はその時で、相手してあげたら?」

 

「なんだそりゃ?」

 

「私が一番最初なんだから、それにこの状態だし据え膳貰わないの?」

 

「こんな場所でもらえるかっつーの、それにまだ気分じゃねーし」

 

正直に答えたら櫻井は笑い始めやがった。おまけに抱きつく力を強くして。

 

「アハハハハ!フォル君って所かまわず食べちゃいそうな感じがしたのに」

 

「人をレイプ魔みたいに言うな、この野郎」

 

「ふふ・・あはは・・ごめん、やっぱりフォル君をからかうのは楽しいわ」

 

こいつ、人が何もしないのをいい事に。

 

「ん・・・う」

 

また櫻井に唇を奪われる。今度は深く舌まで絡めてきて、それなら応えてやるか。

 

「んんっ!?はぁ・・ん・・・んう」

 

しばらくして息が続かなくなり、お互いに唇を離した。

 

「はぁ・・はぁ・・意外に上手じゃない。フォルくんってば、やっぱり」

 

「おい、変な勘違いするな。お前が舌を絡めてくるから応えてやっただけだっての」

 

こいつ、見れば見るほど良い女じゃねえか。容姿は黒髪でツリ目で、性格は強気で素直じゃなくて放っておけない。完全に俺好みのストライクゾーンだ。

 

「だったら、今度こんな機会があれば私を抱いてよね?貴方を受け入れるつもりだったんだから」

 

「バーロー、こんなにキスされて興奮しないってのがおかしいだろ?場所がアリーナじゃなく部屋だったら抱いてるっつうの」

 

「ウフフ、最初のセリフ・・・漫画に出てくる子供の探偵のセリフじゃない」

 

「るせえよ、櫻井。少しだけ黙ってろ」

 

「え?あ・・・ん」

 

今度は俺から櫻井の唇を奪った。嫌な顔一つせずに受け入れられガッシリと抱きつかれた。

 

そのまま俺達は少しの間、抱き合った後自分達の部屋へ戻った。




画像を見てたら浮かんだので書きました。

螢可愛いよ螢!

ベアトリスと螢は可愛すぎて流出しそうです。

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