モンスターハンター~狩人レナードの軌跡~≪改稿前≫ 作:ATA999
なぜ今更MH2なのか、と言われるとこの小説は小説家になろうで掲載している小説のちょっとした息抜きとして、昔書いた小説の手直しを掲載しているからです。あんまり小説投稿するのから離れていると際限なく離れて行ってしまうので、その対策でもあったりします……。
ともあれ、少しでもお楽しみくだされば幸いです。
……遂に、ここに来た。今はまだ小さく、村と呼ぶのもおこがましい程の規模でしか無い。
だが、人々の顔は活気に満ち溢れており、誰も彼もが開拓者魂のようなものを持ち合わせているように感じられる。
村の入り口にあたる西の桟橋に、一人の若者が船より降り立つ。若者は、真新しいランポスシリーズと大剣であるアイアンソード改を身に纏い、旅の影響で少し長くなった明るめの茶髪を後ろになでつけながらも村を見渡す。その表情は希望に満ち溢れており、これから先どんな困難が待ち構えていようが、ねじ伏せてみせるという気概をも感じられる……。
とまあ、調子のいいことをナレーション風に言ってみたわけだが、つまるところ俺のことなのだが。なかなか今の自分の事を客観的に述べるとなると気恥ずかしいものがある。脚色気味に述べたので尚更だ、主に気概のところ。
苦笑いを一つ浮かべ、気を取り直してここから見える景色を堪能する。
辺りからは、商品の新鮮さを半ば叫ぶように歩く人に訴えている声や、人が住む家や橋などの設備を組み立てている大工の人達の振るう金槌のトンカン言う音が響き渡り、今まで落ち着いた村での生活しかしていなかった俺にとっては前世でのお祭を髣髴とさせるような賑わいを見せている。そして、俺はこの村がいずれその名に恥じぬ大きさになる事を知っている。
そう。
この村の名は、「ジャンボ村」。
一度は死に、再度生まれてきた俺にとって最後の思い出。かつてとの繋がり、とでも言うのだろうか。俺にとっては最もハマったのが、このジャンボ村が舞台の『モンスターハンター2』なのだ。
もうこの世界で18年も暮らして、あちらには全く未練もないとは思っていたものの……。どうにも、思ったよりこういった感傷は尾を引くらしい。まぁ他にも生活に不便を感じた時にはちょいちょい懐かしんでいたというのは言わぬが華。
俺の生まれた村に、このジャンボ村がしばらくの間長期的な滞在をしてくれるハンターを募集しているという話が届いた時には、その報せを持ってきてくれた祖父に飛びつくように受けてしまった。
元々あまり人生設計をよくたてていなかった俺は、自分の生まれたトコだしこの村のハンターにでもなるか~と適当に考えていたし、一応は背中を預けられる相棒と言えるような幼馴染もいたのだ。だが同時に、ある出来事があって以来何となく居辛くなった村から離れる丁度良い機会だとも感じた。
村には、短期間ながら俺に色々と教えてくれたベテランのハンターもいる。それに後継者としては、さっき言った俺とは幼馴染の同期もいる。そのため、あちらの村には何も心配事を残さずこちらに来る事が出来たのだ。
「あのーすみません。村長さんはどちらにおいででしょうか?」
「ん? 見慣れん顔だな。……ああ、新しくここに来たハンターか、村長ならさっきそこの坂を下りていったぜ」
俺は近くにいた大工仕事をしている人に声をかけた。
おおぅ、角ばった顔に限界ぎりぎりまで細まっている目と言い、その目尻には今までの人生の苦労が刻まれているかの如く皺と言い。……正しくこれぞ職人と言える風貌といった具合だ。イカすね、これは。
「や、どうもありがとうございます。俺の名前はレナードって言います。色々とご迷惑をおかけしてしまうかもしれませんが、これからよろしくお願いします」
言って、頭をぺこりと下げる。やはり最初の挨拶は大事だ、初対面で悪印象を与えないためには必須と言ってもいいだろう。
「これぐらい礼儀正しいハンターは珍しいな」
「はぁ、そうですか?」
「まぁ、ふざけた態度をとられるよりはマシだが。若い頃の謙虚さは必要なモンだ」
昔取った杵柄とでも言うべきか。どうしてもこういう些細なところでちょっとした周りとの差異が出てしまう。少しずつこの世界の常識とは噛み合わせてきていたのだが、元いた村では結局最後までちょっと変わった奴というレッテルが貼られたままであった。
こちらとしては、自分よりも年上で、更にこれから色々とお世話になる人なのだから普通にきっちりと挨拶をしただけなのだが、ハンターってのは基本そういう殊勝な態度は取らない荒くれ馬鹿が多いのもまた事実。他者に対する敬意も持ってる場合は多いし、軽い挨拶とかなら基本的には行うが、馬鹿丁寧にお辞儀なぞするわけも無いのだ。
まぁともかく丁寧に接して悪印象を与える事も無い。やはり挨拶はコミュニケーションの第一歩だと確信しながらも、ダイクさん(本人から俺は只の大工だ、呼ぶならそう呼べ……、と言われた。無駄にかっこいい)の元を後にした。……いぶし銀とはああいう人の事を言うのだろうか、俺もいつかあんなセリフを言ってみたいな。また人のいないトコで練習しておこう、何かの役に立つかもしれない。
◇
その後、村中を走り回っているらしい村長を捕まえることがなかなか出来ず、結局村に住んでいる人にあいさつ回りをするかのようになってしまいへとへとになっていた俺は、酒場のカウンターの奥から駆けてきた女の子に声をかけられた。
「あ、いたいた。レナードさんですよね、初めまして!私はギルド受付嬢のパティって言います。あっちで村長がお待ちですよ!」
(えぇ~、なにそれ……)
顔が引き攣る事を止める事は出来なかった。
何故なら、なかなかに愛嬌があって可愛らしいギルド受付嬢、パティに連れられてやってきたのは最初に俺が降り立った付近にある酒場であったからだ。こんな事ならここで休憩しながら何か飲み物でも飲んで待ってたら良かった……とは思うものの、村全体に挨拶周りが出来たし結果オーライと言う奴である。そう思い直すことにした。レッツ、ポジティブシンキング。とにかく今は、にこやかに人懐っこそうな笑みを浮かべながらこちらに握手を求めてくる村長との会話に集中しなければならない。
「やあ、よく来てくれた!ようこそ、オイラの《ジャンボ村》へ!」
ああ、この言葉を生で聞ける日が来るなんて……と心中で感動しながらも、俺は目の前の人物の観察を続ける。
村長は、純粋な人間では無い。彼は竜人族と言われる種族なのだ。
竜人族とは、寿命が数百年以上と長く、身体的な特徴として耳が長く、全体的に若い頃は容姿端麗な者が多いという。東洋のテイストが混ざったエルフのようなものと考えればいいだろう。
但し相違点も存在しており、年をとってくると体の縮み具合が半端では無く人間の老人よりも小さくなってしまう。
人と共存をしている竜人族はそのほとんどが老人であり、目の前の村長のような若い竜人族はほとんどいない。隠れ里のような所で隠れ住んでいるようで、村長は数少ない例外というわけだ。
付け加えると竜人族は非常に優れた知能を持っており、この世界は一部を除けば絶対王政が敷かれていたりと中世の世界観にも関わらず、現実的な物事の考えをしている。かつ、一方で自然との一体化も重んじているらしい。
まぁとにもかくにも、村の発展には彼らの知識は無くてはならないものとなっているのだ。
その為、村の村長のような重要な役職に彼ら竜人族が就いている事は決して珍しい事では無い。
「? オイラの顔に何かついてるかい?」
「あーいや、すみません。ちょっと若い竜人族の人を見るのが初めてで……」
「オイラ達はなかなか里の外には出ないからなぁ、もっと皆世界に目を向ければいいのに!」
身振り手振りを交えて興奮気味に話をする村長。想像通り、良く言えば行動力のある、悪く言えばかなり落ち着きの無い性格の持ち主のようだ。今もパティに話を元に戻すよう窘められている。
「いや、悪かったね一人で盛り上がっちゃって! さて、これからの事なんだがキミさえ良ければ村のみんなにも挨拶してあげてもらえないか? 何しろこれから一緒に村を盛り上げていく仲間なんだから、みんな喜んでくれるはずさ!」
「や、それならもう済ませてきました。……本当に歓迎してくれましたね、ええ痛いほどに」
村の南側で食材を売っていた、見た目が完全な肝っ玉母さんな感じの人に思っくそ背中をバシバシと叩かれました。あれ絶対に元ハンターに違いないよ、それで愛用してた武器がハンマーで、ガノトトスに怪我を負わされて引退したんだそうに違いない。……違うか。
「おお、なかなか早いなぁ! どうだい、皆気の良い人たちばかりだったろう?」
俺の言葉に含まれている棘を全く意に介さず、村長はこちらに同意を求めてくる。
ああ、なんとなくこの人の性格がわかった気がする、と嘆息をしながらもその意見には何の疑いもなく同意をする。本当に良い人たちばかりだったのだこの村は。
こちらの心境を察したのか、嬉しそうにウンウンと頷く村長。
「それと、《緑色の屋根の家》をキミが寝泊り出来るようにしておいたんだ。家の中には給仕のアイルーを雇っておいたよ、何でもキミの知り合いだそうだから丁度いいと思ってね」
「知り合いのアイルーって……」
まさかアイツか!?こんなトコまで追いかけてくるとは……。
「それじゃ、こいつが約束の手付金だ。これからよろしく頼んだぜ!」
そう言って、まさかの存在に手を組み唸っていた俺に村長が約束の1500zを手渡してくる。大きくなってきたならともかく、この時点ではなかなかの大金。
村長がハンター誘致にどれだけ本気なのかがわかる。
これからは俺も、この村の一員として発展に力を注いでいこう。
そう胸に誓いつつお礼もそこそこに、俺はいそいそと足早に新しい我が家へと足を向けるのであった。
◇
「思ったよりも、頼りなさそうな人でしたね~」
先ほどの会合の感想をパティはポツリと漏らす。その目線の先は屋根が緑の家へと向けられていた。
パティは大きな街に出てギルドの受付嬢の教育を受けてきている。その時に見ていたハンター達の粗野さの中に秘められていた自信と自負に満ち溢れていた様子とは明らかに違うからだろう。村長はそう判断をした。
「なに、誠実そうで感じは良さそうだったじゃあないか!」
「それはそうでしたけど……」
それでは街はいつまでたっても発展なんか夢のまた夢じゃないのかという思いを込めて村長の顔を見つめてくる。出来れば、もっといかにも熟練の技を持ったベテランという風なハンターに来て欲しかったのだろう。アヒルのように尖らせた唇は上手くいかなくていじけた子供を思わせ、村長はついついハハハ、と苦笑する。
「まだ、オイラたちのジャンボ村は出来たばかりでこれからなんだ。カレ、レナード君と同じようにね。これから、一緒に苦労を共にしながら大きくなっていけばいいじゃあないか」
カレももう、この村の一員なんだからね、と締めくくる。パティは、その言葉を反芻するように口の中で繰り返しながら何度も小さく頷いている。
「そう……そうですよね、これからなんですよね……。く~っ、今はまだ私たちのこの村もまだまだですけど、もっとも~っと大きくなっていくんですもんね! ……ああ!! 村長、私いいこと思いついちゃいました!!」
「うん? 一体何を思いついたんだい?」
突如、何か大事なことに気が付いたかのように大きなリアクションをしながら村長に話しを持ちかけるパティ。それに対し、しっかりと村長は耳を傾ける。いつだって、何気ない会話や想定外のところからいい案が思いついたりするものなのだ。村を束ねる村長としては、村で実際に暮らす仲間の一員からの言葉は決して聞き逃せるものではない。
「この村のシンボルなんですが、家より大きな水車っていうのはどうでしょうか!?」
「……は?」
「あ、でもやっぱり風車の方がいいんですかね? 一番高い所の目立つ場所にあった方がシンボルっぽいし……。村長はどう思います?」
「あぁ~、うん……。まぁ、村のシンボルはおいおい考えていくとしよう。まだ住人もそんなにいないし、やることは山ほどあるからなぁ。ハハハ……」
未だ村は発展途上。と言うか未だ村というのもおこがましいほどのこじんまりした状況だというのに、彼女の頭の中ではこの村はもうドンドルマにも匹敵するほどの大きな規模になっているらしい。
村唯一の酒場の看板娘にしてハンターズギルドの受付嬢であるパティ。天真爛漫で愛くるしい彼女ではあるがその想像力の逞しさは、やはりアクの強いこの村の住人らしいのかもしれないなぁ、などと自分のことを棚の上に押しやって村長はそう心の中でぼやくのであった。
「いやいやあの新米、存外我輩たちが思っているよりも出来るやもしれんぞ!」
突如二人の会話にヌハハハハ! と大きな声をした男が加わってくる。黒いインナーを身に纏い、クロオビシリーズと呼ばれる、頭や腕などの要所要所に赤い色をした防具が装着されている。ハンターの教官として、その実力をギルドに認めてもらえた証である。
村の人から教官と呼ばれているこの男。実はその粗暴そうな印象とは裏腹に、事実これまでにも何十人もの新人ハンターを育て上げてきた経験を持つ優秀な人材なのである。村長は、彼の未だ若輩故に乏しい人脈を、それでもどうにか駆使してなんとかこうして一人の元ハンターを村に引き入れることが出来たのだ。
「試しに狩りについての知識を訊ねてみたら、まぁ少しうろ覚えのところもあったが、あの年にしては優秀と言ってもいいほどの知識量だったからな!」
「へぇ、それはそれは……」
ハンターの腕前としては、知識は決して外すことの出来ない要因である。例えば、狩猟対象の習性を知らないと知っているでは狩りの成功率は段違いに変わってくる。腕っぷしだけでは、ハンターは務まらないのだ。
それ故自然と知識に関することはハンター教官の目も厳しくなる。その教官をして、優秀と言わしめるほどのものを一つ持っている。このまま順当にハンターとして成長をしていけば、間違いなく優秀なハンターになってくれるだろう。
レナードがもしこの場にいれば、ゲームの知識を述べただけにも関わらずの好評価に、恐縮しっぱなしの状態になっていただろう。どこの勘違いものの小説なのだ、と。勘違いも何も正当な評価なのだが。
このジャンボ村のような辺境の地では、言い過ぎでも何でも無く行商の邪魔となるモンスターを狩猟するハンターがいるかいないかで天と地ほどの差が出てくる。それが優秀であれば尚良い。優秀なハンターは村で最も高価な宝と言ってもいいほどの煌びやかな価値を放つのだ。
捕らぬ狸の皮算用だとわかってはいても、大きくなった未来のジャンボ村を想像して村長はつい頬が緩んでしまう。酒場の椅子にドッカリと座った教官の横に座り、新たに村へとやってきたハンターの話をツマミに、いい気分で酒を飲んでいくのであった。
◇
「ごっしじんさま~! 会いたかったですミャ~~~ッ!!」
「どわぁ!?」
これから長い付き合いになる我が家へと入った俺を初めに目にしたのは、飛び掛ってくる見慣れたアイルーの嬉し泣き姿であった。
「おいニャー、ちょっと離れろって!」
「いやミャーいやミャー! もう絶対離れないですミャー!!
こいつの名前はネコニャー。アイルーのメスだ。昔、村外れの草むらで行き倒れていたところを助けた結果、非常に懐かれてしまった。それ以来、家族同然の扱いをしてきた奴である。
ちなみに、名前を5秒で適当に決めたのは最大の秘密。コイツには由緒正しいとか何とかそれっぽい理由で説明しておいたものの、鳴き声がミャーなのに名前をニャーにしたのは今でも痛恨のミスと自分を責め続けている。ぶっちゃけ凄く紛らわしいのだ。
その紛らわしさは名前と語尾だけではない。見た目猫なのに犬のような性格をしており、村ではいつも俺の後をついてくる可愛い奴なのだ。犬の従順さと猫の愛くるしさが両方備わり最強に見える。前いた村でも、拾いアイルーとしてではなく家族として、まるで仲のいい妹のように接してきたつもりである。
が、こいつには一つ欠点がある。いや、人によっては長所だと言う人もいるかもしれないが……コイツはドジッ子なのだ。それも、普段は特にミスをせずに優秀なのに肝心なところで物凄い大ポカをしでかす、というどこぞのあかいあくまタイプ。実際、村から離れることになった理由の一つがコイツのしでかした事なので、そのことについては弁解のしようもない。
であるならば、だ。常識的に考えて、そんな疫病神みたいな奴とはとっとと縁を切ればいいと考えるのだろうが……
「はぁ……。少しだけだぞ?」
「ぐしっ……わっかりましたミャー♪」
どうやら、そうするには少々コイツに情が湧きすぎてしまったらしい。
既に家族なのだ。だから俺は、どんなにコイツがバカな事をしたとしても決して見捨てられないだろうし、その逆もまた然りだ。
ただ。そう、ただ一つだけ言わせてもらうならば。
家の天井を見上げて寝転がり、ニャーの奴がゴロゴロと俺の体にじゃれついてくるのを好きにさせながら。コイツが人間の女の子だったらなぁ……とかついつい思ってしまうのは。
これは、誰にも責める事は出来ないだろう。
読み返した時は、よくある腹立つ系の主人公でした。周りがとにかく主人公を絶賛して「ん、別に大したことはしてないんだけどな……参ったなぁ」って言ってるような。と言うか、言ってました。大工さんに対する挨拶の件で。
昔の自分は何を思ってこんな性格にしたんだろうと思うと、本当に時間を置くと客観的に眺める事が出来るんですね。散々駄目だししてやりました、自分に。
後、一話毎の文字数は大体5000~と考えてはいますが、かなりばらつきがある感じになってますのでご了承ください。