Fate/TriangleOrder 〜三位一体のサーヴァント〜 作:白花 頼羅
この先はか な り 亀更新になります。気長にお待ちください。
side:ヒスイ
「ん…。よく寝た。」
「あ、ヒスイくん!怪我はもう大丈夫?」
「ええ。ご心配をおかけしました。」
『ホッ(o´д`o)=3』
「ヒスイさん!私、宝具を使えるようになりましたよ!」
「決着がつく瞬間に戻って見たけど、けっこうすごかったよ。たぶん、“アレ”も防げるレベル。」
「“アレ”に?…マシュさん。ちょっとその宝具解析させてもらっても?」
「(やっと名前で呼んでもらえた!)はい。どうぞ。」
僕はマシュさんの盾に触れ、
「
必要な一節を唱える。
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?
…解析結果は思ったより単純だった。
というか、なんて物で盾を作ってしまったんだ。
“アレ”もといセイバーさんの宝具、“
しかも、彼女に力を託して消えてしまった英霊の特定もできてしまった。
……。
どこまで伝えようか。
…とりあえず、
「キミがいればセイバー戦は何も問題ないってことがわかったよ。」
「…え、それはどういう…。」
英霊のことだけは話さないほうがいいかもしれない。
…。彼(ではないかもしれないけど)が彼女に名乗らなかった。
それにはきっと理由がある。
…どうしても必要にまたその時なったら考えよう。
とりあえずいうだけ言い終わったら、洞窟の入口を守るように一人の青年が立っていた。
魔術回路を酷使し続けた結果浅黒く変色してしまった肌。
珍しくオールバックにしていない色の抜けた髪。
手に持った白と黒の夫婦剣。
…。予想通りだ。
「…エミヤ師匠。」
「ふむ?私は弟子を取った覚えはないぞ?」
「別の“貴方”に師事していたのでつい師匠と呼んでしまいました。」
彼のこだわりだった赤い礼装は見る影もない。
何より…黒いヒビが入った目元が痛々しい。
「よぉ。アーチャー。相変わらずセイバーの信奉者してるのか。」
「…。信奉者などになった覚えはないのだがね。
それでも、つまらん来客を追い返すぐらいの仕事はさせてもらうさ。」
そう言ってエミヤ師匠…いや、影アーチャーは剣を構える。
…。そうだ。今の彼は敵だ。
人類史を…世界を壊すモノに手を貸す抑止力の敵。
思考が、心が冷え切る。
「…
灼熱の炎と、絶対零度の氷の力を纏う花の意匠の華奢な双剣。
「そんな見た目だけの粗末な剣で私と打ち合おうとしているのかね?…笑わせる。」
「…ええ。これは剣の形こそ取っていますが、使い方は別ですよ。」
ここで僕は仁にアイコンタクトをとる。
…ここを突破するように。
「マスター、走って。マシュちゃんとしょちょーさんも。」
「えっ?」
「ちょっと待ってよ仁くん!ヒスイくんはどうするの?!」
「だいじょーぶ!ヒスイは強いよ。ボロボロのサーヴァントの撃破ぐらい楽勝なんだから。
…というか、あのアーチャーとやりあえるの、このメンツだとヒスイしかいないんだよ。」
「…弟子だからこそ、師匠の戦い方をよく見ているってことか。」
「…まぁ、そんなとこ。
とにかく、ここにいたら巻き込まれるから強行突破だよ!」
仁が先頭に立って僕以外のカルデア陣営が影アーチャーの横を通り過ぎていく。
その間僕は影アーチャーが後を追えないようにガンドで牽制する。
マスターが心配そうな顔をして僕の方を振り返る。
「大丈夫です。すぐ追いつきますよ。」
「…絶対だよ!絶対生き残って追いついてきてね!」
今度こそマスターは奥へ走っていった。
…。
「話は済んだかね?」
「ええ。…これで、思う存分“仕事”ができます。」
さっきから“アラヤ”の力がうるさい。
“早く目の前の歪みを排除しろ”と叫び続ける。
「…気付いてるんでしょう?“同朋”エミヤ。
僕が抑止力の守護者であることに。
…そして、貴方が掟に反する者に与していることにも。」
「…ならば、どうする?」
にたり、と不気味な笑みを浮かべる影アーチャー。
「…殲滅一択です!」
一気に距離を取り、左手の対束を右手に持ち替え、
「投影、白弦!」
弓を投影。影アーチャーも黒い弓と十八番とも言える“
そして、剣をつがえ、
「――――
「
先に放ったのは、影アーチャー。
だけど、僕は跳んで避ける。
剣を爆発させられる寸前、僕も双剣を放ち、神秘を開放する。
眩い光と熱量と音の暴力。
だけど、これは防御兼目くらましでしかない。
影アーチャーはちょっと爆風を食らったらしく、動きが止まっている。
さてと、僕の本領を発揮しますか。
「抑止の輪より、虚ろなる奇跡をここに。
魔術の基礎中の基礎、置換魔術と師匠から教わった投影魔術を合わせて磨いた結果、できてしまった禁断の魔術。
英霊になってからはより“
金髪から長い薄い青の髪に。
着物風の礼装は赤から青に。
…仁曰く、目は緑から赤に変わっているらしい。
手には“本物”の“
今の僕は、ランサークラスのクー・フーリン。
…の力を借りている状態だ。
夢幻召喚は、自らに英霊の力を宿す魔術。
僕の場合、座にアクセスできた英霊すべての力を借りられる。
その一部が世界を滅ぼすことが可能な宝具持ちだったがために、生前は抑止力に狙われた。
それが今、抑止力の一部として働いている。
…なんという皮肉。
…いや、そんなこと考えている場合じゃない。
爆上がりした敏捷性のおかげで飛んできた大量の剣を避けたり弾いたりすることができた。
素の状態なら確実に重症だった。
「くっ…。厄介な…!」
「その
マスターと約束した以上、時間はあまりかけられない。
だから、“少し”魔力回路に無茶をさせて、宝具を開放する。
「“
心臓を貫くという結果を先に、槍に貫かれるという原因を後に作る因果逆転の呪いこそがこの宝具の能力。
本来担い手ではない僕が安易に使っていいものではない。
「…っ!」
魔力の勢いに耐えられなかった礼装の右袖が吹き飛んでいる。
露わになるのは、ヒビだらけの右腕。
「…ははっ。お前もかなり無茶をしたようだな!
それは今できたものじゃない。生前から“そう”だったのだろう?」
「心臓貫かれてるのに、よく喋れますね。」
師匠は戦闘続行系のスキルを持っていなかったはずだ。
…もしかして、宝具の効果が正常に発揮されていない?
いや、体はじわじわとただの魔力になって形を失っていく。
…一種の意地だろうか?
「…ヒスイ。本当はお前のことを覚えていたよ。
…召喚される前に会っていたからな。お前の世界に召喚された“私”の記録も見たことがある。」
「…それが、どうしたというのです?」
なんで、今になって優しくなるのか。
思わず声が震える。
「…守りたかったものは、守れたか?」
…っ。
蘇るのは、血塗れで笑う仁と、人の形を残さない✕✕の…。
その時魔力回路は暴走して、右腕に刻まれたクラインシュミット家の魔術刻印が変質。常に痛みを伴う、どんな手段でも治らない裂傷になった。
そこまでしてなんとか、あの時の魔術師は✕した。
だけど、僕は…
「…守れませんでした。…だけど。」
仁はもう一度チャンスをくれた。
一葉を救えなかった僕を、世界の裏側に落ちる前に助けくれた。
…もう一度、3人で笑い合えるように頑張ろうって言ってくれた。
…まぁ、アヴェンジャークラス補正で時々怖いこと言うけど。
更には危なっかしい人類最後のマスターに召喚された。
もう、失敗は許されない。
「…今度こそ守りきって見せます。」
「…そうか。」
そう言って
「今度はちゃんと正義の味方として呼ばれたいものだな。」
と言って消えていった。
…。
先に進まなきゃ。
設定
・ヒスイくんは本来“剣”としての性質を十全に発揮できる対束と夢慈を投影できますが、その“部分”を一葉ちゃんの存在を繋ぎとめるために割いているので、剣の形をした魔力爆弾程度しか投影できなくなっています。(他の武器なら問題なく投影可能。ただし、質は2~3ランクダウンする。)
・ヒスイくんの生前の実家、クラインシュミット家はプリヤのエインワーズ家に相当する魔術師の家系です。扱う魔術は当然置換。そのうち詳しい設定を書く…かもしれません。