Fate/TriangleOrder 〜三位一体のサーヴァント〜 作:白花 頼羅
これともう1話でやっと序章が終わりです。
第一部のストーリーを見直しながら書くことになるのでのんびり待っててもらえると嬉しいです。
side:仁
「あはは!何これ、すっごい
「あなた、本当はバーサーカーだったりしない…?」
オレたちの目の前にいるのは真っ黒になったセイバーさんことアーサー王…アルトリア・ペンドラゴン。
あと、
「しょちょーさん。オレ、正真正銘アヴェンジャークラスだからね?バーサーカーで召喚された瞬間、間違いなくマスター諸共皆殺しする程度にはヤバイ英霊だからね?」
「…なんで呼べちゃったんですかね。」
「マスターがお人好しだからヒスイが引っ張られて、ついでにオレもついてきたって感じだと思うよ?
…ていうか、こんな無駄話してる場合じゃいない、っ!」
ガキンっ!
黒鍵の投影は間に合わないから、物理防御に全リソースを回す。
…。英霊じゃなかったら魔力不足でスプラッタな死に様を晒すところだった。
…いや、オレの場合、体の半分が蟲だからマスターのSAN値が直葬される程度にグロいか。
…ヒスイはもうしばらくかかりそうだし。
「…ほう?面白い英霊が2体、いや3体も居るな。」
「なっ?!お前、喋れたのかよ!」
「…何を言っても、何をしても見られているからな。
案山子に徹しさせてもらったまで。」
…ふむふむ。
クーさんはセイバーさんにシカトされてた、と。
後ろではしょちょーさんが聖杯に気づいてきゃんきゃんわめいてるし。
「マシュちゃんに問題です。…目の前にいるセイバーの真名は何でしょう?」
「…ええ。キャスターさんの言うとおり見ればわかります。随分イメージしていたものと違いますが、あの黒く染まった
アーサー王が使っていたエクスカリバー。
つまり、彼女は…」
「そう。あのアーサー王だよ。」
「「ヒスイ(くん)!」」
「…揃ったか。」
よかったぁ。オレとマシュちゃんじゃ火力が足りないからね。
「ちょーどいいタイミングだよヒスイ!」
「…うん。」
あれ?元気ないな。
ケガ…といっても袖が吹っ飛んでるだけだし。
…とか考えてたらとてつもない魔力の収束を感じた。
「マシュっ!」
「卑王鉄槌…」
「宝具、展開しますっ…!」
気合い一閃…というにはちょっぴり語弊があるけど、
マシュちゃんが魔力障壁を張る様はまさにそんな感じ。
ーーー仮想宝具。
ヒスイとオレがあの盾の正体を黙っていたら、しょちょーさんとマシュちゃんが話し合って決めていた仮の宝具名。
「極光は反転する。
俺ら英霊でもまともにくらったら一瞬で座に戻される威力。
ていうか、
「なんか“前”見た時より火力さらに上がってない?!
…いや、そうか!聖杯から魔力供給を受けてるのか!」
「く、うぅっ…!」
「マシュっ!」
「え、ちょっとマスター?!」
膝をつき、息も絶え絶えなマシュちゃんに向かってマスターが走り出す。
その両手には白い花のモチーフの
性質は俺の投影する黒鍵に限りなく近い。
「嘘でしょう?!あの一瞬で投影魔術を使えるようになったというの?!」
しょちょーさんが魔力障壁を展開しながら、マスターの異常な成長速度に驚いている。
…いや、あの表情からすると意識して投影魔術を行使したわけじゃなさそう。
あれは、あの剣は偶然の産物だ。
ただ、マシュちゃんを助けたいという切実な“想い”が形を成した。
マスターはレイピアもどきで自分に飛んでくる岩の破片や魔力の奔流をさばきながら走りぬけていく。
「がんばれマシュ!私がついてるから!」
マスターがマシュちゃんの所にたどり着き、彼女の手に自分の右手を重ねる。
マスターの令呪が一画減り、マシュちゃんの魔力量が一時的に跳ね上がる。
「はい…!まけ……ません…っ…!」
崩れかけていた光の盾が少しづつ直っていき、オレたちを焼き尽くさんとする真っ黒な魔力を押し戻していく。
「おい坊主共!ぼーっとしてないで攻撃に入れ!」
「は、はい!仁!今回は君に夢幻召喚をかけるよ!」
ちょっと空気になってたクーさんが僕らに呼びかける。
オレに夢幻召喚できて、今の状況を乗り切れる英霊は一騎だけ。
「オッケー。でも、自衛はちゃんとしてよね?」
オレは持っていた黒鍵を前方斜め上にぶん投げて走り出した。
「抑止の輪より、虚ろなる奇跡をここにっ!
その直後、オレの視界は黒いモヤで隠されて、理性が吹っ飛んだ。
Side:ヒスイ
「Aaaaaaarrrrrthurrrrrrrr!」
仁の声だけど彼のものではない咆哮とともに、先にぶん投げた黒鍵を手にして、セイバーに斬りかかる黒い甲冑…らしき何かを着た“騎士”。
「なっ…貴様、その甲冑は!」
セイバーは一瞬狼狽えたものの、宝具発動を止め、仁の連撃を防ぐ。
…
僕が今回
今回わざわざ仁が暴走するとわかっていてもこの手段を取った理由は、主に2つ。
1つは彼が別世界の第4次聖杯戦争で間桐のマスターに召喚されていて、縁があったから。
もう一つはランスロット卿の宝具、
黒鍵とはそもそも、魔力を流して刃物を展開する武器。
仁はそれを投影魔術で投影している。
ようするに、僕が今作れる剣と対して変わらない、神秘性の低い武器の状態。
対してセイバーのクラススキル、耐魔力のランクはA。
このまま突撃されたらかすり傷一つ負わせられないまま仁が殺されてしまう。
でも、
…と言っても相手の防御の硬さを考えれば一撃で仕留める、とはいかないけど。数撃ちゃ当たるんだよ。
仁がちまちま防御を削りつつ牽制している内に僕とクーさんはトドメを刺すための“一撃”を用意する。
「此処は我が庭。咲き誇るは枯れることなき薔薇の花。」
パキパキ…と音を立てて僕の足元からセイバー目掛けて広がっていくのは青みがかった氷の薔薇が咲き誇る“氷の庭”。
「凍てつく茨は我が刃。我が刃は我が主がために。」
本能か、わずかに残った理性か、仁が飛び退いた直後、氷の茨がセイバーを捕縛し、ジリジリと魔力を吸い取っていく。
…|枯れぬ薔薇の庭園《ガーデン・フォン・コンザヴィエート・ローゼ》は人間に使えば10秒も持たせずに殺してしまう対英霊用の魔力吸収魔術。
…高ランクの耐魔力持ちの英霊にも効くけど、かなり集中しないとコントロールが狂ってしまう。
練習してた時に何度氷漬けになったことか…。
…それはともかく。
「クー師匠っ!」
「ああ!とっておきをくれてやる!」
背後に感じる圧倒的存在感と熱量。
ドルイドたちが儀式に使ったという巨大な人形。
…仁がありったけの宝具化済み黒鍵をセイバーに放り投げてから戻ってくると同時に夢幻召喚の効果が切れたようで、元の姿に戻る。
「焼き尽くせ火よ……ウィッカーマン!」
氷の茨で足元を、黒鍵に両腕を地面に縫い付けられて身動きが取れないまま、クー師匠の宝具の攻撃をくらうセイバー。
しばらくして、
巨大な人形が燃え尽き、炎が消えた後に残っていたのは。
「私の負け……と言ったところか。」
霊基の過剰な損傷により消え始めているセイバー。
「そこの赤髪の
「…理人。衛宮理人だよ。」
「リト…か。気が向いたら呼ばれてやらなくもない。
…心せよ。まだ“戦い”は始まったばかりだ。
聖杯を巡る戦い…グランドオーダーがな。」
『なっ?!なぜ貴女が
あ、僕らが召喚されてからずっと黙っていた人…ん?人間かこの気配?…まあいいや。
所長さんとマスター曰く、ロマニ・アーキマンさんがやっと口を開いた。
その声を聞いたセイバーさんは一瞬目を見開いて、何かを呟いて消えた。
その後に残されたのは、純粋な魔力の塊…。
セイバーさんの言葉からしてこれが今回の事件を引き起こしていた原因である“聖杯”なのだろう。
「マシュさん。とりあえずこれを盾に格納しておいてくれるかな?」
「はい!…格納、完了です。」
マシュさんが報告した次の瞬間。
憎悪…いや、殺気?
「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。48人目のマスター適正者。全く見込みのない子どもだからと、善意で見逃してあげた私の失態だったよ。」
大聖杯の前に人影が見える。
嫌な気配はそこからだ。
彼は一体何者なんだ…?
理人ちゃんがマシュのほうに走っていくシーンは去年末のアニメ版を参考にしています。
というわけで設定↓
枯れぬ薔薇の庭園(ガーデン・フォン・コンザヴィエート・ローゼ)原作ではEXアタック扱いになる魔術。氷の茨で敵をがんじがらめにして動きを封じ、魔力を吸い取り大気中に分散させる。対魔力がAランクのサーヴァントにも有効。人間(一般人・魔術師問わず)に使うとミイラのように干からびて死ぬ。
理人の“白花の細剣”
一葉が投影して渡したわけではなく、理人がいつの間にか持っていた。約束された勝利の剣の光を難なく受け流せる程の高い神秘性を秘めている。
仁とランスロットの相性
バーサーカークラスの方の“彼”とは平行世界の親戚がマスターだった縁で繋がっていて、“狂っている”こともあり相性抜群。ただし、セイバークラスの方とは性格も戦い方も、何より倫理観が合わないのでとてつもなく相性が悪い。無理矢理幻想召喚をかけようものならヒスイと仁が致命的なダメージを受けて座に還り、マスターである理人の魔術回路が物理的に爆発し、彼女と契約している英霊たちも何らかの障害を負うという大惨事になる。