2年後、俺たちは魔術や体術の練習をするようになる。
体術の練習は柔道みたいな投げ技や相手が武器を所持している時の戦い方が今までその練習風景を見てきた中での中心的に習うことだった。
それらの練習は前世の授業や友達と話し合ったり実戦してみたりしたので簡単に覚えられた。魔術の時間は最初は魔力コントロールから始め、次に魔力弾を作り出す事が最初である。
魔力弾とは単純な魔力のみからなる弾丸の様なもので魔術より弱いが人を簡単に殺傷出来るらしい。
改めてあの時の危うさを理解できたとおもう。
これは幼少時代にやっているし、暇があれば魔力コントロールの練習をしている。もちろん、安全第一で。
これらの理由から俺がこの孤児院では1歩先を行っていることになる。
魔力コントロールには魔力で体の身体機能を一時的に強化するのがあるらしい。
今はそれをどんな時でも使えるようにしている。
だとしても、もっと強くならなければこの先に後悔する決断しかできなくなるかもしれないので今強くなっておいて損どころか得がある。
と言うのも、魔物が現れた時、先生だけでは守りきれない時が来るかもしれない。その時に何も守れなかった自分や一部しか守りきれなかった自分が立っているのではなく、全てを守りきった自分が立っていこと事の方が自分にとっての最高の結末だと決めているので、その為の訓練をしなければならない。
今は魔力コントロールが中心だがその内威力の高い魔術を習う事になると思うので、その魔術を全て習得し、更に強くなる事が今の目標である。その為の努力ならば惜しむつもりは無かった。
ある程度の月日が経った。魔力コントロールや体術では俺が一番だった。
しかし、才能の差というものなのか、リミルが俺に次いで圧倒的に上手いとの事だった。
俺がここまでくるのに何年も掛かったのにリミルは俺の何十分の一の日数で俺が築き上げてきた強さまでやって来たのだ。
正直、羨ましいが、これからももっと強くなるのでいずれ大きく突き放す。
そう息巻いていたが今日、初めての魔術練習で他の子は魔術が使えているのに俺だけが出来なかった。
先生の教え方は丁寧で今までの授業と掛け合せると誰でもできそうだった。
実際俺以外の子が魔術を使用出来ているので教え方に問題は無い。
問題があるのは俺の方だろう。
色々な方法を試してみた無駄だった。ただ、魔術を使おうとする度に手にくず鉄が付いていたので先生に聞いてみるが
「分かりません。ですが、必死に努力すればきっと使えるようになりますよ。」
と言って励ましてくれるが手についていたくず鉄の事までは先生も分からないようだった。
それから幾日も練習した。だが、一回として成功したことが無かった。
ならば惜しいが魔術の練習を中断して体術や魔力弾の練習をする。
体術に関しては我流でしかないがそれなりの相手とは戦えるレベルになっている。
魔力弾に関しては、面白いもので魔力が無くならない限り無限に生成出来るし、練習し続ければどんな方向からでも狙った所に当たると言うので、その練習を中心にしていこうと思っている。
練習を開始してから2ヵ月ほど経つ頃には魔力弾を完璧に近い形まで使いこなせるようになった。
リミルはあっという間に魔術を覚えていっていった。
(相変わらず凄いやつだ。)
素直にそう思ってしまう。更に人柄も良く皆から好かれていた。誰とも話していない俺とは大違いだ。
いや、誰ともではないな、アイラとは向こうから話しかけて来る形で話している。更にアイラからは
「お兄ちゃん」
と呼ばれている。おままごとの名残なのか慕ってくれているのかは、分からないが、そう呼ばれて悪い気はしない。
そして、俺たちが話している最中にリミルが割り込んできて、少し会話をして適当なところで俺はその場を去る。
それがいつもの光景だった。
そして、俺は新しい力が欲しいと思っている。守る為でも殺すためでも、新しい力が欲しかった。
体術だけでなく剣術にも挑戦してみたい。
ふと、そこで思ったのが、俺が魔術を使用しようとした時にできるくず鉄を剣の形にできないか考えた。
考えつくのは魔術を使用しようとしてその時にくず鉄を剣の形に整えるように想像するという事しか思い浮かばなかった。
だが、それしか思い浮かばないのならそれを試すしかない。新たな力を得るには挑戦するしか無いのだから。
次の日、先生の授業が終わってアイラとリミルとの会話を終えて、孤児院の裏に出る。
そこで昨日考えた事を試してみる。
すると、見た目はボロボロだがその形は剣だった。
しかし、見た目がボロボロなのは俺の想像力不足だろう。
少し振ってみるだけで剣からポロポロとくず鉄が落ちていった。その時に考えついたのは、
(想像する事は二つあるようだ。)
と考えた。
一つ目は剣の鮮明なイメージ。
二つ目は鉄が出来るその過程だと思った。
鉄は叩けば叩くほど丈夫になると聞く。ならば生成する時にその二つをイメージしながら生成すれば良いのだと思う。
手を伸ばして目を閉じる。
剣は使い勝手がいい短めの剣。
鉄は何百、何千と叩いた硬質な鉄。
それらを想像し終えて、手を握ってみると剣の柄を握っていた。
更にその形は完璧な黒い剣であった。
硬さも大丈夫だった。
これからそれを使って剣術の練習をした。
新しい力が手に入るのは嬉しかった。一刀だけでなくもう一度剣を作って二刀の練習もした。
前世でのアニメで見たり真似した技術を使っているのでまだ弱そうだがこれからどんどん強くなっていこうと思う。
2ヵ月が経った。剣術もいい所までいったので、槍術にも挑戦している。器用貧乏にならないように気を付けなければ。
剣や槍の生成も慣れたもので一々、あの想像をせずとも作れるようになったのは、1週間前のことであった。
今日もアイラとリミルとの会話をしているとリミルが
「今日は数人で河原に行くけど、アイラとキリヤもくる?」
と言ってきて、アイラは
「うん、良いよ。」
と言って俺は
「俺は行かない。」
と断った。二人とも「なんで?」という顔をしていた。アイラに至っては、獣耳が垂れ下がってかなり残念そうだったが、リミルが
「分かった。」
と言った。幾度か俺を遊びに誘ってくれたが俺はそれを断ってきた。なので断るのがいつも通りとなっているので少し寂しい気もあるが、俺は強くなりたいし、こいつらとこれ以上親しくなって、失ったら、何も失ってないと強がりをはれなくなりそうだった。
前から思っていたが、矛盾だらけの強さへの渇望だな。と思っていると、
「それじゃ、もう行くね。」
と言ってきたので
「じゃあな。」
とだけ言っておいた。
そして、いつもの場所で剣術の練習をした。
そして、剣術から槍術に切り替えようとする。
尚、生成した剣は消滅するイメージを、与えると消滅する。いつもの様に消滅させようとすると、
「キャー!!」
という悲鳴が聞こえて声がした方を振り返るとその方角はアイラとリミルが行った、河原の方角だった。
気づいた時には魔力で足を強化して駆け出していた。
視認できる距離まで近ずいて誰も死んでない事に安堵するが、魔術を使える筈の上級生やリミルまでもが恐怖で魔術を使えずにいた。
それを確認すると、更に速度を上げた。
敵は魔物のゴブリンだった。背が低く三等身程でボロ布を着ている。
手には剣や斧、弓、盾を持っていた。それが六匹程だった。
手に持っていた剣で近くにいたゴブリンの心臓を貫いた。
引き抜くとゴブリンから出た血で俺の手と服が汚れる。
そんな事も気にせず近くにいたゴブリンを切り裂く。構え直して残る四匹と相対する。後ろから
「キリヤ?」
「お兄ちゃん?」
という声が聞こえたが無視する。
魔力で足を瞬間的に強化して弓を持っていたゴブリンの頭と胴体を分断する。
近くにいたゴブリンを切ろうとするが盾で受け止められる。そのゴブリンを蹴飛ばして他のゴブリンを切り裂くが斧を持っていたゴブリンは殺したが、剣を持っていたゴブリンは剣で受け止められてしまう。
右手を後ろに左手をその下に持ってきて右手と左手をほぼ同時に動かした。右手は突き上げて左手は横一線に切り払う。
右手の一撃で相手の剣をはね上げ、左手の一撃で相手の命を奪う。
先程蹴飛ばしたゴブリンに向かって駆けて行った。魔力で強化した腕で盾を横に弾き、剣を振り下ろして絶命させた。
リミルとアイラと他の子のところまで行って
「大丈夫か。」
と聞いて安否確認をする。
見た感じでは誰も怪我をして無さそうだが一応聞いておいた。返ってきた返答は
「私達は大丈夫だけど、キリヤの方こそ大丈夫なの。」
大丈夫という言葉を聞いて安心する。
「俺も大丈夫だ。」
かすり傷一つ作らなかったので今までの練習が無駄で無かったと実感できる。
そして、守りきったという現実がそこにあってそれで俺も満足だった。そこに先生がやって来て、
「大丈夫ですか!」
と本気で心配したのだろうと思える表情で来た。俺たちを見るや俺に向かって
「大丈夫すぐに治りますからね!」
と回復魔法を使用しようとするので
「大丈夫です。これは全部返り血ですから。」
と言って先生は
「え?」
と言って周りを見回す。辺りには六匹のゴブリンの死骸がある。
そして、自分も辺りを見回し自分を見てみた。返り血じゃなかったら死んでいる程の血が付いていた。すると先生が
「これをあなたがやったんですか?」
と聞いてくるので正直に
「はい。」
と言った。先生は驚いた顔をしたが返り血だと確信すると真剣な表情になり
「いいですか。次からは魔物と会っても戦わずに逃げてください。魔物が現れた時は大声で私を呼んで下さい。そうしたらすぐに駆けつけますから次からは危ない真似はしないでくださいね。」
と言われたので返答に困る、なるべくこの人には嘘を付きたくはなかった。
というのも、多分またこんな状況になったら後先考えずに動いて助けようとするだろう。
なので返答に困っていると、
「ですが、今回あの子達を助けてくれたのは、ありがとうございます。私が到着した時には何人か怪我をしてしまっていたかもしれないですからね。」
と言って
「さぁ、みんな戻りましょうか。」
と言ってみんなと帰ろうとすると、
「キリヤ君はここに残っていて下さい。」
と言われたので
「分かりました。」
と言った。多分このまま戻ると小さい子供達を怖がらせてしまうので、服や手に付いた血を洗い流すのだろう。と思って近くにあった川で手を洗う。
今ままで手に持っていた剣を消滅させる。
先生が戻ってくると、案の定服と体に付いた血を洗うことだった。先生は変えの服も持って来ていたのでその服に着替えていると、
「あの剣は魔術を使おうとした時にできるくず鉄から作ったものですか?」
と聞いてくるので
「そうです。」
と答えた。更に
「魔術は未だ出来ませんが、その代わりに与えられたこの力で俺は強くなって見せます。」
と答えた。すると先生が
「では、騎士団に入ってはどうでしょう。」
と言ってきたが
「騎士団と聞くと規律正しく行動しているイメージで、俺にはあっていないので、冒険者辺りを目指そうと思います。」
と言うと
「確かにそうですね。」
と言ってきた。それから俺と先生も孤児院に戻るのだった。
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