もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら?   作:雪希絵

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20日も空いてる……

短めなのにちょっと時間がかかってしまいました

お前は早さだけが取得だろコノヤロウって話ですよね、はい


理不尽なこの世界で

「……いかにも、頭のネジの外れた科学者が考えそうなことだね。一体誰がそんなことを……」

「製作者は茅場晶彦。VRマシン『ナーヴギア』自体も制作した天才だ」

「……これだから、やたら才能のある馬鹿は……!」

 

そう言い、歯を噛み締める。

 

これがVR世界じゃなければ、まず間違いなく血が出ている。

 

「先輩……」

「……大丈夫。落ち着いてはいるから」

 

と言いつつ、立香は思考と感情を切り離すのに必死だった。

 

(落ち着け……落ち着け私……。一番大変なのはキリトとアスナ達。私達は自分自身の立場を利用して、どうにかみんなを助けないと……)

 

立香は、それを目的として定め、やるべき事は怒ることではないと考えることにした。

 

「……リツカちゃんは優しいね。私は、最初は自分のことに必死で、そんなこと考えなかったよ」

「ありがと。でも、誰だってそう思うはずだよ。現にアルトリアも無言で超怒ってるし……」

 

立香の隣では、アルトリアがパフェのスプーンを噛み砕くつもりかと思う強さで噛んでいた。

 

「おいおい、スプーンは破壊不能オブジェクトだぜ?」

「関係ありません。私のアゴ力をもってすれば……」

「握力みたいに言わないでよ。というか、いくら力を入れても無理だよ?」

 

立香の的確なツッコミに、思わず全員が吹き出す。

 

少しだけ和やかになったところで、立香は先を促す。

 

「死ぬって言っても、一体どうやって?」

「ナーヴギアには高出力のマイクロウェーブを放射する機能がある」

「まさかのレンジでチン……」

「同じこと言ったやつがいたな」

 

その後、『電源を切る、コンセントから抜くとどうなるか』、『装置を直接外すとどうなるか』、『仮想現実の原理』等々、マシュとアルトリアどころかアスナでも困惑するようなテーマで話し合い、納得したように二人は息をついた。

 

「キリトはすごいね。こういう機械関係に随分詳しいし」

「そういうリツカもそこそこだよな」

「まあ、ゲーム好きだったから」

 

むしろ、一般人でゲームをやったことをない人の方が少ない。

 

それをきっかけに、ゲームについて調べる者もいるだろう。

 

立香はその一人だったのだ。

 

「なら、この世界にもすぐに適応できそうだな。SAOは少しシステムが独特だからな」

「独特?」

「戦闘系MMOだが、この世界には魔法が存在しない。代わりに『ソードスキル』というものが主な戦法だ」

「なにそれ、凄そう」

「言葉で説明するのは難しいなぁ……」

「キリトくん、直接見てもらった方が早いんじゃない?」

 

頭を掻いて悩むキリトに、アスナが提案する。

 

「なるほど、それだ。早速行こう。三人とも、時間はあるか?」

「もちろん」

「「もちろんです」」

 

三人同時に答え、立ち上がった。

 

──── 数分後 ────

 

アインクラッド五十層迷宮。

 

五人はそこで、ソードスキルの練習を始めた。

 

「はあぁぁぁぁ!!」

 

アスナが気合いとともに、レイピアを振るう。

 

閃光がよぎり、突進のごとくモンスターに突っ込む。

 

「ギイィィィ!」

 

奇妙な悲鳴を上げるが、頭の上のHPバーは、まだ残っている。

 

「おぉっ!」

 

そこに、間髪入れずにキリトが突っ込む。

 

ジェットエンジンのような轟音と、赤色のエフェクトを撒き散らし、剣が深々と突き刺さる。

 

「ギャアァァァァァァ!?」

 

耳障りな断末魔と破砕音を響かせ、モンスターは砕け散った。

 

「……まあ、こんなところか。お疲れ、アスナ」

「お疲れ様、キリトくん」

 

キリトは左右に剣を切り払い、背中の鞘に収めた。

 

「……かっこいい」

 

立香は目をキラキラと輝かせる。

 

ソードスキルもそうだが、キリトの切り払ってから鞘に収める動作が、相当お気に召したようだ。

 

「やりたい!私もやりたい!」

「おお、やる気だな。じゃあ、武器を構えてくれ」

「イエス、サー!」

「マシュちゃんとアルトリアちゃんもね」

「はい」

「了解です」

 

三者三様な返事をし、武器を構える。

 

ちなみに、マシュとアルトリアはすでに戦闘モードだ。

 

キリトはそれを確認し、解説を始めた。

 

「ソードスキルを発動するには、その初動になるモーションをする必要がある。それをシステムが感知して、ソードスキルが発動するんだ。あとは、身体が勝手に動いてくれる」

「なるほど。だから一般人でも戦えるわけだ」

「そういうこと」

「キリト。何かコツはありますか?」

 

何度か試し振りをしていたアルトリアが尋ねる。

 

「そうだな……。ソードスキルが発動したら、自分で身体を動かすんじゃなくて、ある程度身を任せることかな。『システムに乗っかる』イメージで」

「なるほど。わかりやすいですね」

「私もわかりました。流れに身を任せればいいんですね」

「よーし、早速やろう!」

 

そう言って子どものように騒ぐ立香に、アルトリアとマシュは肩をすくめて着いていく。

 

「危なくなったら、助けるからねー!最前線だからー!」

 

アスナが後ろから叫ぶが、聞こえていないようだ。

 

キリトとアスナは顔を見合わせ、くすっと笑ってから三人を追いかける。

 

「……なあ、アスナ」

 

道中、キリトが真剣なトーンで言う。

 

「なに?キリトくん」

 

経験上、真面目な話だと分かっているので、前の三人から距離を取る。

 

「あの三人のこと、どう思う?」

「……いい子たちだよ、すごく。ただ」

「ただ?」

「リツカちゃんはともかく、アルトリアちゃんとマシュちゃんは、謎が多いよね……」

 

うーん、と唸りながらそう言う。

 

それは、キリトも考えていることだった。

 

先程聞いた、三人のスキル欄に記された聞き覚えのない多数のスキル。

 

リツカは『令呪』だけだが、これの能力は破格だ。

 

だが、それ以上に、アルトリアやマシュの持つ戦闘補助スキル『魔力放出』やら『カリスマ』やら『誉れ堅き雪花の壁』やらが強すぎる。

 

それこそ、『ユニークスキル』並にゲームバランスをひっくり返しかねない。

 

レベルは、リツカが60、アルトリアが63、マシュが61と割と普通だったが。

 

「まあ、いいんじゃないかな?強力な味方になってくれると思うよ?」

「……そうだな」

 

顔に出ていたのか、アスナが励ますように笑う。

 

キリトも笑い返すが、それでも考えずにはいられなかった。

 

(願わくば、あの三人が、この世界の暗黒面に感化されませんように)

 

短い会話でも、それが有り得ない性格であることは理解していた。

 

だが、それでもキリトは、一抹の不満を覚えずにはいられなかった。




お読みいただきありがとうございました

以下、各種スキルのSAOでの扱い、及びオリジナルスキルの解説です↓

リツカ

令呪 熟練度マスター
最大使用回数は三回。
24時間に一度、使用回数が回復する。
『他プレイヤーのHPを全回復(死亡したプレイヤーには使用不可)』、『真名解放』のどちらかを選択して使用する。

アルトリア

魔力放出 熟練度マスター
移動時、攻撃時に、任意のタイミングで任意の方向に加速補正を付与する。
使用回数制限はなし。
ソードスキル中にも使用可能。

風王結界 熟練度マスター
自身のもつ武器をいかなる者からも視認不可オブジェクトととする。
解除した場合、一定範囲内に強風を発生させる。

カリスマ 熟練度マスター
パーティメンバーの攻撃力を三分間上昇させる。
一日に一回使用可能。

直感 熟練度マスター
一戦闘につき一度、特定の部位に攻撃を当てるとダメージボーナスが発生する。

マシュ

大盾ソードスキル
盾でソードスキルを発動する。
自身の防御力を上昇。
武器防御時に防御力を上昇。
背後にパーティメンバーがいる場合防御力を上昇。
武器防御時の硬直時間を短縮。

誉れ堅き雪花の壁 熟練度マスター
パーティメンバー全体の防御力を三分間上昇、一度だけダメージをカット。

時に煙る白亜の壁 熟練度マスター
付与したプレイヤーのダメージを一度だけ完全カット。

奮い立つ決意の盾 熟練度マスター
自身のターゲット集中率を極大上昇。

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