もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら?   作:雪希絵

20 / 71
どうも皆様

最近、新宿アルトリアと新宿ジャンヌにベタ惚れし、カードスリーブを衝動買いした雪希絵です

しかも二種類買いましたからね

さて、今回ちょっと短めです

それでもよろしければ、どうぞごゆっくり


ボス攻略戦へ

静寂。

 

先程のマシュとアスナの戦いとは違い、『WINNER Arturia!』の表記が現れても、誰一人声さえ上げられない。

 

アルトリアとキリトの二人の戦い。

 

常識外れの剣術を持つ者と常識外れの反射神経を持つ者の戦い。

 

周囲の大半が目で追うことすら叶わなかった。

 

そこへ、追い討ちのごとく見せつけられた、次元の違う一撃。

 

移動する瞬間すら見えない、超高速の踏み込み。

 

あのキリトですら反応できない、超高速の一太刀。

 

そして、人間一人を吹き飛ばすその威力。

 

それら全てに、誰もが唖然としていた。

 

「…………負けたか」

 

しばらくして、キリトがゆっくりと立ち上がり、剣を納める。

 

「─────終わっちゃった……のか」

 

キリトは全てを出し切った。

 

全力でアルトリアの剣戟を防ぎ、迎え撃った。

 

かつてない好敵手との戦い。

 

今自分に持てる総力で、戦い続けた一戦。

 

そんな高揚感も、勝負が終わってからはすでに過去のものとなってしまった。

 

「残念だな。もう少し、戦ってみたかった」

「同感です。わずか一年程でこの強さ、大したものです」

「そういうアルトリアは何者なんだ?あの動き、明らかに素人技じゃないぞ?」

 

お互い少し近づき、自分たちにしか聞こえない声でそう言う。

 

「それが分かるということは、キリトも武道の心得があるようですね」

「……一応、昔剣道を」

「なるほど。ならばその反射神経も納得できる」

「それはどうも。で、本当に何者なんだ?」

「…………」

 

改めて尋ねるキリトに、アルトリアは沈黙を返す。

 

数秒後、やや躊躇いがちに口を開き、

 

「申し訳ない。私にそれを語る資格はない。マスターがいつか話すまで、どうか待っていて欲しい」

 

顔を背けながら、そう言った。

 

「……わかった」

 

表情から何か事情があることを察し、キリトは頷く。

 

「それで、アルトリア。ものは相談なんだが」

「なんでしょう」

「……この空気どうしよ」

「……どうしましょう」

 

より声を潜めながら、二人は相談する。

 

というのも、二人が話している間も、周囲はあまりの驚きに静寂。

 

唯一、立香だけは、ケロッとした顔をしているが。

 

「と、とりあえず、握手でもするか?」

「それがいいでしょう」

 

キリトがおずおずと手を出し、アルトリアはそれをなんの躊躇もなく握る。

 

一瞬驚くキリトだが、すぐに控えめにアルトリアの手を握った。

 

それを見て、ようやく我に帰ったのか。

 

「「「「おおおおおぉぉぉぉ!!」」」」

 

かなり遅れて歓声が上がった。

 

なかなか鳴り止まない歓声の中、アスナが急いで真ん中に進み出る。

 

「これで、二人の強さがわかって頂けたかと思います。参加を認めて貰えますね?」

 

最後を強調し、呼びかけた。

 

だいたいの人が頷くが、何人かは首を傾げている。

 

「何か言いたいことがあれば、どうぞ」

「じゃあ、いいですか」

 

アスナが促すと、一人の男性プレイヤーが手を上げる。

 

「あと一人いるんですけど、彼女はどうなんですか?」

 

そう言い、立香の方を指さす。

 

「……まあ、そうくるか」

 

一人呟き、立ち上がる立香。

 

ボス戦参加者からしたら、立香は実力未知数の存在だ。

 

アルトリアとマシュの参加には納得出来ても、流れで立香もというわけにはいかないようだ。

 

焦るアルトリアとマシュ。

 

二人は立香と契約しているサーヴァントだ。

 

マスターがそばにいるからこそ、全力を発揮できる。

 

そのマスターである立香が来ないとなると、戦闘能力ダウンは免れない。

 

どうしたものかと考えていると、助け舟が出た。

 

「彼女が参加する意味ならあります」

 

見晴らしのいい場所に再び立った、アスナだ。

 

全体に聞こえるようにボリュームを上げ、アスナは続ける。

 

「今回の作戦、その全てを考えたのは、そこにいるリツカさんです」

 

全員が目を開き、立香の方を向く。

 

「いえ、それどころか、今までの質問の内容すら、彼女はわかっていました。質問の回答を予め私に教えてくれたのが、その証拠です」

 

そう、今回の作戦立案者は立香だ。

 

アスナから今までの偵察の情報を聞き、今まで幾つもの戦場を巡って来た観点から、作戦を考えだした。

 

各ポジションごとの細かい動きを考えたのも、立香だ。

 

「よって彼女には、私が前線に出ている間の指揮をとってもらいます。これだけの規模の作戦です。一人くらいは全体を見る人がいた方がいいとは思いませんか?」

 

アスナは最後に、そう締めくくった。

 

納得したように頷く者、首を捻る者、周りの人に相談する者。

 

反応は様々だが、総意として反対意見はないようだ。

 

「では、これで会議を終了します。五分後にボス部屋までの行進を開始します。最後の準備を整えてください」

 

そうしてアスナは一礼し、いそいそと立香たちの元へ戻って来た。

 

「はぁ……緊張した……」

「お疲れ」

 

ボス戦前からすでに疲れた顔のアスナ。

 

そんなアスナに、キリトは労いの言葉をかける。

 

「大変だね、アスナも。毎回やってるの?」

「うーん……そうだね、だいたいは。うちの団長があんまりこういう会議とかに興味なくて、『任せる』の一言ばかりだから……」

「それは団長としてどうなんでしょうか」

 

アルトリアが眉を顰める。

 

人一倍責任感の強い彼女からしたら、なんだか引っかかったのだろう。

 

「それはそうだけど、でもすっごく強いんだよ。団長がいるから血盟騎士団に所属してるって人も多いし」

「カリスマ性は充分だからなぁ……」

「聞けば聞くほど想像できない」

 

そんなことを話しているうちに、五分経った。

 

アスナを先頭にパーティごとに固まり、ボス戦参加者たちは街の外へと進み出した。

 

───────────────────────

 

途中戦闘はあったが、アタッカー組が手際よく討伐し滞りなく行進は進んだ。

 

ちなみにアルトリアはアタッカー組、マシュは盾組に所属している。

 

立香は極力逃げに徹し、より広く視界を取り、スイッチやアタッカーの攻撃タイミングを指示することになっている。

 

迷宮区内に入り、モンスターの数が増える。

 

ここからはアルトリアとマシュも参戦し、敵を次々と薙ぎ払っていく。

 

そんなまるで無双ゲームのような光景に、参加者たちは再び唖然としていた。

 

出発から数十分後、ボス部屋の前にたどり着いた。

 

「隊列を組んで!少しでもHPが減っていたら、大事を取ってポーションを飲んでください!」

 

アスナの声が響く。

 

それに従い、盾ポジションの者たちが前に出て、その後にアタッカーポジションの者たちが控える。

 

「私から言えることは一言。全員、必ず生きて帰りましょう!」

「「「「おおおおおおお!!!」」」」

「全員、突撃!」

 

扉を開く係のプレイヤーが扉を開け放つ。

 

直後、中にあった灯台のようなものに次々と火がついていく。

 

その部屋の中央で、爆ぜるポリゴンの欠片。

 

それは確かな形を作り、ものの数秒で固まっていく。

 

上へ、上へ。

 

横にも広がりながら、さらに上へ。

 

見上げなければ全容が分からないほど上に伸び、静止。

 

形が定まり、それは現れた。

 

無数の手を有する、黄金色の仏像。

 

頭の上に、四本のHPバーが現れ、同時にその固有名が明らかになる。

 

『The Thousandhands』。

 

千の腕。

 

「ォオオオオオォォォォ─────!!」

 

威嚇するように叫ぶボス。

 

アインクラッド第五十層ボス戦が、今始まった。




今回ちょっと短かかったので、次回は長くしたいと思います

お読みいただきありがとうございました!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。