もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
最近1日2本ほどエナジードリンクを投与している雪希絵です
眠気が悪いんです
私を襲う眠気が悪いのです
それでは、ごゆっくりどうぞ!
「はー………!美味しかったぁ……!」
「今まで頑張って生き残って良かった……!」
全員が満腹になり、各々食後のお茶を啜る。
巨大な鍋の中身は空っぽに、それこそシチューなどあった形跡もなく、全て食べ尽くされた。
ラグーラビットのシチューは、SAOに幽閉されて以降、間違いなく最大の美味だった。
「いやー、本当に美味しかったよ。ありがとね、アスナ、エミヤ」
「ううん、こちらこそありがとう。いい食材を提供してくれて」
「キリト君も、ありがとう」
「お、おっす……」
何故かちょっと緊張した表情で、キリトは頷く。
(照れてるなぁ……)
立香はニヤニヤとしながら、そんなキリトを見つめていた。
そんなことはつゆ知らず、アスナはカップを両手で包みながら呟く。
「不思議ね……。なんだか、この世界で生まれて今までずっと暮らしてきたみたいな、そんな気がする」
「……俺も最近、あっちの世界のことをまるで思い出さない日がある。俺だけじゃないな……この頃は、クリアだ脱出だって血眼になる奴が少なくなった」
「攻略のペース自体落ちてるわ。今前線で戦ってるプレイヤーなんて、五百人いないでしょう……」
そんな二人の会話を、カルデア組は若干他人事のように聞いていた。
マスターとサーヴァントである四人にとって、異世界から出られないことは珍しくない。
とあるマジカルな固有結界など、条件を満たさなければ出られなかったのだ。
他にも、不測の事態で連絡が途絶えたことなんかもあった。
一つの特異点にここまで留まることもなかったが、それでも四人の奥底には『ここは特異点である』という認識があるのだった。
「……でも、帰りたいでしょ?」
ポツリ、とそう言う立香。
「……うん」
アスナは真剣な顔で頷く。
そして、柔らかな微笑みを浮かべて続ける。
「だって、あっちでやり残したこと、いっぱいあるから」
それに対し、キリトも素直に頷いた。
「そうだな。俺たちが頑張らなきゃ、サポートしてくれる職人クラスの連中に申し訳が立たないもんな……」
そう言って、一気にお茶を煽る。
「ん、そうだね。私たちだって頑張るよー。ね?みんな」
「はい、もちろんです。騎士の誇りに誓って」
「私はいつだって、先輩のそばにいます。先輩が戦うというなら、どうぞご指示を」
「人理修復、という事情を抜きにしても、放ってはおけないからな。私も、力は惜しまないさ」
立香の言葉に、三人はそれぞれ答えながら頷く。
アスナもキリトも頷いて答える。
すると、何を思ったのかキリトは真剣な顔つきでアスナを見る。
(おおっ?これは……)
立香がワクワクとしながら、二人の動向を見守る。
「あ、ま、待って、やめて……」
「な、なんだよ……?」
(言え!言ってしまえ!言いなさいキリト!)
内心でとんでもないことを考えながら、立香はキリトを穴が開きそうなほど見つめる。
「今までそういう顔をした男性プレイヤーに、何度か結婚を申し込まれたわ」
「なっ………」
返す言葉がないのか、キリトは口をパクパクとさせる。
(んんんんんっ!もう!なんで言わないのよぉー!)
心の中でバンバンと机を叩く。
ここで言うべきものではないと思うが、どうやらくっつかなさ過ぎて、立香はやきもきしているらしい。
サーヴァント組は察しているのか、立香をなだめている。
「落ち着けマスター」
「だってさぁ……」
「先輩、私には詳しくは分かりませんが……お二人なら、きっと大丈夫ですよ」
「そうだろうけどさぁ……」
「見守ることも守ることです。ここはどうか抑えて……」
「むむむむ………!」
腕を組み、唸る立香。
「……どうかな?みんな」
そこへ、アスナから唐突に声がかけられる。
「ほぇっふ!?」
「え。何今の妙な声」
「な、なんでもないよ!?」
慌てて立香は否定する。
「な、なんの話だっけ!?」
「だから、しばらくパーティーを組もうって……」
「うん!いいよ!全然いいともさ!」
「え、う、うん……」
テンションも勢いもおかしい立香に押され、アスナは疑問を口にすることもできなかった。
かくして、かつて最も永き時を過ごしたパーティーは、再び組まれることとなったのだった。
お読みいただきありがとうございました!
エナジードリンクの効果が切れました!
目が眠気で霞みます!
それでも書き切れて良かったですけれど
それでは、また来週お会いしましょう!