されど竜狩りは奴隷と踊る   作:全自動眼鏡持ち運び機

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サブタイトルって難しいですよね。何一つ思いつきません。


第3話

「で、お前はいつまでそうしてるわけ?」

「黙れ。いくらバッテリーといえど、アルビナとの触れ合いを邪魔するのであれば殺すぞ」

「……はぁ」

 

 自室で一人、目の前のバカを見て大きくため息を吐く。

 だが、それに張本人は反応すらしない。と言うよりおそらく椅子との触れ合いに夢中すぎて気づいてすらいない。

 ──ほんとにこれサーヴァントなのかなぁ……。

 

 その呟きに答えるものはいなかった。

 

 ♦︎

 

 あれから数日。

 俺たちは特に何かを起こすわけでもなく、屋敷の中でノンビリとしていた。

 これは椅子との触れ合いを楽しみたいとか刻印蟲ですら言わない様なことをしたいが為に引きこもっていたわけではなく、体力を温存しておく為だ。

 

 そもそも、うちの陣営は戦闘回数がどうしても限られている。

 ギギナの咒弾(後で教えてもらったあの弾の事)の個数もそうだが、それ以上に俺の体がそう何回も耐えられる体ではないのだ。

 

 ギギナに治療してもらう前よりは確かにマシになった。

 戦闘回数で言えば、治療前に比べて二回は増えるだろう。だが、それは絶対敵に見つからない様に魔力を供給できれば、と言う注意書きがつく。

 

 忌々しい蟲どもは今こそ大人しいが、戦闘行為の時には今まで通りの耐えがたい激痛を俺にプレゼントするだろう。

 それだけならまだ何とかなる。だが、それと同時に敵が襲撃してくればもう詰みだ。令呪を使う暇などおそらく無い。

 

 だから、出来るだけ戦闘行為そのものを避ける事で体力と咒弾を温存しよう。そう言う作戦だった。

 

 ──もっとも、それを聞いた瞬間目を泳がしたあいつが守るとも思えないが。

 

 やはり令呪を使って言う事を聞かせた方が……。

 

「ねぇ、おじさん。どうしたの」

「ん?いや、何でもないよ。さあ、次は何をしようか」

 

 いけないいけない。感情がつい出過ぎていた。

 こうやって桜ちゃんと遊ぶ時間。それがどうしようもなく心が安らぐ。まるで今までの辛いことが洗い流されるかの様だった。

 

「じゃあ、この絵本を読みたいな」

「あぁ、むかし、むかし──」

 

 桜ちゃんは俺の下手くそな朗読でも、一生懸命聞き逃さない様真剣に聞いていた。その姿はどこからどう見ても年相応の子供だ。

 

「ねぇ、続き……」

「あ、ごめんごめん」

 

 桜ちゃんを見ていたら朗読が止まっていた。いけないいけない。

 

「──そして、鬼は無事に退治されました。めでたしめでたし……どうだった?」

「面白かった」

「そうか、それは良かった」

 

 桜ちゃんは感情こそ見せないが、面白かったと言ってくれた。

 良かった。まだ面白いって思う心はちゃんと残ってた。

 

「相変わらず、幼児を口説くので必死だなカリヤ」

「いきなり何言ってんだ!?」

 

 いきなり不躾なことを言いながら桜ちゃんの部屋に来たのは、ギギナだった。見るからに不機嫌そうな顔をしている。

 ギギナは指を立てて招く様にカリヤへジェスチャーをした。

 

「こい──半屍人が呼んでいる」

 

 ♦︎

 

「──それで、何の用だクソジジイ」

「呵々、随分な言い草よのぉ」

「は、白々しいにも程があるぞ」

 

 相変わらず漂う腐臭に死臭。蟲蔵特有のこの匂いには慣れる気がしない。

 ちなみに鼻が敏感らしいギギナは、この匂いを嗅ぐのが嫌らしく、比較的匂いを感じなくていい霊体化をしている。

 

「いやいや、随分と健康的になった孫を拝みたくなってな。どうじゃ、聖杯戦争は上手く言っとるかの?」

「開口一番に嫌味か」

「いやいや、そんな事はない。この身は老いぼれ。お主の様に活発に動く事はできぬゆえ、お主の報告でしか状況をすることができぬのじゃ」

 

 クソが。そう言いたい気持ちをグッと堪える。俺が苛立っている様子を見て愉しんでいるとは言え、これ以上の暴言を言おうものならそれを盾に何をしでかすかわかったもんじゃない。

 

「特に何もしてない。お爺ちゃんが入れてくれた便利な蟲のせいで戦闘回数が限られてるからな、当面は様子見だ」

「そうかそうか──それはアサシンが脱落したことを知っても言っとるのかの?」

「……なに?」

 

 思わず聞き返す。

 アサシンが脱落しただと?こんなに早いタイミングでか?

 ありえない。仮にも伝説に名高いハサン・ザッバーハだぞ。こんな序盤に脱落するなんてそうそう考えられない。

 だがもし、本当にそうだとするのなら原因は何だ?

 アサシンがヘマをした?あり得るが可能性としては低い。

 即見つかった?あり得ない。奴らは一流の暗殺者。自分の痕跡を残すなんてヘマをするとは思えない。

 ──マスターがヘマをした……?あり得る。原因はどうあれ、マスターが何かやらかしたせいで、アサシンが芋ずる式にバレて殺されたのかもしれない。それが一番可能性が高い。

 

「何かマスターがヘマをしたのか?」

「さあな、何せわしとて風の噂を聞いただけ。詳しい経緯は知らぬ。だが、そのマスターは教会に無事保護されたそうじゃぞ」

「随分と運が良かったんだな」

 

 本来、サーヴァントを失ったマスターは再び令呪を獲得されることを防止するために殺される。

 その攻撃を交わして教会に逃げ込んだと言うのだろうか?

 ……少し引っかかる。でもそれを考えるのは今じゃない。

 

「それで、話はそれだけか?」

「まあそう焦るな雁夜よ。最後に一つ、この老いぼれめが忠告してやろう」

「……なんだ」

「──聖杯戦争は既に始まっておる。そのこと、ゆめ忘れるなよ」

「……言われなくても」

 

 ♦︎

 

「それで、こんな夜更けに一体どうした?人には出るなと言っておきながら自分は女漁りか?」

「そ、そんな事しない!」

 

 ギギナのひどい言い様を無視しながら、俺たちは夜の冬木を歩いていた。時刻は既に深夜帯。教会側が情報を流して外出を抑制させていることもあって、外には人っ子一人いやしない。

 

「アサシンが居なくなった今、これは色々と仕掛けを作るチャンスなんだ」

 

 そう、今は間諜のプロたるアサシンが脱落している。

 その影響で、他の陣営も行動を活発化させるにちがいない。それは隠密を中心に動く気であった俺たちには好都合だし、それ以上に重要なこともあった。

 

「目の前に来た者を倒せばいいだけではないか?」

「お前の咒弾の制限がなかったらそうしてるよ」

「使わないで戦闘することもできるぞ」

「で、その度に消耗される俺の体を治すことを考えて言ってるのか?それ」

「貴様が耐えればいいだけのことではないか」

「それも回数に限りがあるだろ……」

 

 確かに俺が耐えればある程度は何とかなるかもしれない。だが、それは所詮根性論。どう足掻いても回数に限りがある。

 こいつはそれ分かって言ってるんだから本当にタチが悪い。

 

 ──と言うより、こいつは俺のことを外付けのバッテリーか何かと思っている気がする……。

 

 まぁそんな事を考えていても仕方がない。

 ギギナとその後も駄弁りながら、人気のない夜道をひたすらに歩くと目的の場所に辿り着いた。

 

「ただの公園ではないか。まさかと思うが、砂遊びでもしに来たのか?」

 

 そう、間桐の屋敷から少し歩いた所にある公園だった。

 周囲にそれなりの家はあるが、今は真夜中。見られたところで自分の勘違いだと思ってくれるに違いない。

 

「それこそまさかだ。そんな事をするにはお前ぐらいなもんだよ」

 

 俺は砂場に手をかざす。

 その際に、体内から激痛が生まれるが無視する。

 

「さあ出て来い」

 

 俺の呼び声とともに、何処からともなく蟲が産まれ出てきた。

 相変わらず気持ちの悪い光景だが、頼りになることには変わりないので潰したくなる衝動を我慢する。

 

「で、これをどうするのだ?」

「索敵兼監視カメラだよ。いけ」

 

 蟲は俺の声とともに、四方八方に散るように消えて行く。

 この調子であらかじめ設定しておいた場所に行くだろう。

 

 間桐の魔術はおぞましいの一言に限る気持ち悪いものだが、その大元を辿ると水属性の性質である使役を有効利用しようとして生まれたもの。

 おぞましくて気持ちの悪いことさえ除けばかなり有能だ。

 おぞましくて気持ちの悪いさえ除けば。

 

 ギギナもそれを理解したのか、いつもの動物園の猿を見るような目からそこらへんで騒いでる人間を見るような目に変わっていた。

 

「なるほどな。これで私たちに足りない索敵をカバーしようと言うわけか」

「ああ。こいつらには魔力反応を見つけたら伝えるように言ってあるから、サーヴァント同士の戦いがあればすぐに伝わってくる」

「ほう、それはいい事だ」

 

 ギギナは少しではあるが飢えた獣のような目で、まだ見ぬ強敵を思い浮かべるように遠くを見つめていた。

 

 ♦︎

 

「はぁ!」

「くっ!」

 

 ──同時刻、新都ではある戦いが起きていた。

 一人の偉丈夫な男性は、その両手に持った二槍を巧みに操って攻撃を繰り出していた。

 対するは、金髪の少女。彼女は右腕の手首から血を流しながらも、懸命に食い下がっている。

 だが、その戦いは誰がどう見ようと偉丈夫の優勢。

 

 その証拠とでも言うように、だんだんと少女の体にはかすり傷が増えて来ていた。

 

 その少女の事を遠目に見ていた冷めた目をする男性も、この状況に焦っていた。

 

「切嗣。これはもうランサーのマスターを仕留めるべきです。これ以上セイバーが持ちません」

「ああ、分かっている舞弥」

 

 冷めた目の男性──切嗣もインカム越しの女性舞弥と同意見だ。

 このまま戦闘を見守っていれば、確実に金髪の少女──セイバーは偉丈夫──ランサーの手によって殺されてしまうだろう。

 ならば、それを防ぐためにも姿を隠して、コンテナの上に立っているランサーのマスターを射殺するのが今この状況での最適解に違いない。

 

 しかし、切嗣はそれを選べずにいた。

 

「だが、その場合あの鉄骨の上のアサシンはどうする。下手をすれば、僕たち二人とも殺される」

 

 そう、コンテナを運ぶためのクレーン。その上になんと死んだと思われていたアサシンがいたのだ。

 まだバレていない今はまだしも、銃を撃てば確実に居場所を特定されてしまう。

 

 そうなれば絶対に殺される。

 

「私がアサシンに向かい発砲をします。それに乗じて切嗣はランサーのマスターを」

「……出来るのか?」

「可能性は低いですが、それでもやらないよりはマシです」

「……よし」

 

 切嗣は自分を切り捨てるように言う、舞弥の意見を即決で了承する。

 その顔に迷いはない。

 

 切嗣は狙撃銃をランサーのマスター目掛けて照準を調整する。

 

(チャンスは一回)

 

 切嗣は大きく息を吐きながら、リラックスしていく。

 下の様子はもう限界と言っていいほど押されている。正真正銘の最初にして最後の狙撃。

 

(──絶対に決める)

 

 ちょうどその時、舞弥も準備を完了していた。

 

「切嗣」

「ああ。スリーカウントだ」

 

 互いに獲物に向かい構える。

 

「3」

 

 息を吐く。

 

「2」

 

 照準を最後に合わせる。

 

「1」

 

 引き金に指をかける。

 

「ゼ──」

「AAAALaLaLaLaLaie!! 」

 

 ──突如、轟音が響き渡った。

 

 切嗣と舞弥が撃つまさにその瞬間、空から紫電を撒き散らす牛が牽引するチャリオットが降って来た。

 それにはたまらずと言った様子で、ランサーもセイバーも一歩下がり突然現れたチャリオット、そしてそれに乗っている大男に向けて警戒をしている。

 

 だが、その大男は警戒などまるでどうでもいいとでも言うように両手を広げ、高らかに叫んだ。

 

「双方武器を収めよ、王の御前である!」

 

 

 

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