されど竜狩りは奴隷と踊る 作:全自動眼鏡持ち運び機
突如空中より駆け下りてきた大男により、今まで散らしていた火花は収まり、緊迫に包まれた戦場。その金縛りを解いたのは、大男だった。
「我が名はイスカンダル。此度の戦争においてはライダーのクラスを得て現界した」
(いきなり真名をバラした!?)
思わぬ登場に、思わぬ宣言。これには誰もが驚き凍りつく。
そんな中、セイバーは今までの経験により他のものよりも早く立ち直り、思考を回していた。
(いや……あれが本当の真名だとは限らない。実はライダーに見せかけたキャスターの線もあり得る)
実際の話、真名を聞いたところでそれが本当なのかどうかは誰にもわからない。宝具自体、相応の魔力さえ込めてあれば偽装は十分にできる。つまり、今のこの状況で彼の宣言を真面目にとっている者はいなかった。
……この声を聞くまでは。
「な、何を考えておりますかこの馬鹿ああああああ!!」
その叫び声は彼のチャリオットから響いてきた。
透き通るような中性的な声を高らかに叫びながら、ライダーのマントを握りしめて何度もなんども胸板に叩きつけていた。
「何をいきなり真名バラしてんの!?バカなの、絶対バカだよなお前ぇぇ!」
「フン!」
「くべら!?」
だがその抵抗も悲しいかな、ライダーのデコピンにより終了する。
その時、全員の心の声が一致した。
(嘘だろ……)
だが彼はそれに気づいても、動じるような臆病者ではなかった。
「ふん……話を戻そうか、セイバーにランサーよ。先の戦い、誠に見事であった」
「……何が言いたい。事と次第によっては容赦はしないぞ」
セイバーは横持ちにしていた剣を、ライダーに構える。
それを見たランサーも、ライダーに向けて槍を構える。
一触即発の雰囲気。しかし彼は動じずに優しげな声で語りかける。
「我が軍門に降れ。さすれば、我とともに世界中の悦と快楽を分け合うことができるであろう!」
♦︎
カチ、カチと時計の音が鳴り響く。
そんな中、赤いスーツを着た男──遠坂時臣は時代遅れな電話機を片手に思考を回していた。
「──以上です。導師よ、これはうまくいけばセイバーが落ちるのはほぼ確実かと」
「うむ。私も同意見だ」
時臣は長い会話に疲れたのか、椅子に座る。
「だが綺礼。君からして、この現状。どう思う」
「どう思う……ですか」
「ああ。負傷したセイバー、疲労をしたランサー、そして急遽乱入してきたライダー。この三つ巴の状況を見てどう思う」
電話越しに時臣は問いかける。答えは間をおかずに帰ってきた。
「考えるまでもなく、セイバーはまず脱落するでしょう。そしてランサーはあれしか宝具が無いのであればライダーに勝つことはほぼ不可能。──ライダーが圧勝するに間違いないかと」
電話の相手──言峰綺礼は断言する。
利き腕の親指の健を切られたセイバーはどう足掻いても負ける。これは確定事項だ。令呪を使わない限り脱出は不可能に等しい。
そしてセイバーとの戦闘で疲弊をしたランサーは、たとえ二人から叩かれたとしても負けることはないだろう。両腕に持つ槍で捌けば巨大なチャリオットに乗るライダーに勝つのは極めて困難だろうが、それでも堅実に闘っていれば負けることは無い。
──最後にライダー。
彼は両者が消耗し、真名や宝具をある程度出したタイミングで乱入してきた唯一無傷の存在。彼の持つチャリオットを走らせれば、うまくいけば全滅。そうでなくてもセイバーにはとどめをさせる。
マスターを狙おうにも高速移動するチャリオットの中にいたのであれば、暗器使いのプロであるアサシンであっても無理なこと。
実質、彼はこの三つ巴の状況での覇者だった。
「そこでだ、私としてはここでライダーの戦力を見たいと思っている。かの有名なイスカンダルともなれば、もしかしたらもう一つ宝具を隠し持っているかもしれない。しかし、この二人ではどう見てもそれを引き出すには不十分だ」
「と言いますと?」
「近辺に雁夜がいることは君も知ってるね?」
「はい」
先ほどアサシンから報告が上がってきていた。なんでも蟲を様々な場所へと設置しているとのことだ。
「──彼をあそこまで誘導する」
♦︎
とても夜とは思えない喧騒を奏でていた港とは裏腹に、雁夜たちの歩く道はとても静かなものだった。
それは当然のことで何キロも離れた位置にある港の音など、魔術師による必死の隠蔽もあり聞こえるはずがない。
「それで、私を連れて来るようなことか?」
「当然だ。て言うかサーヴァントはマスターについて回るものだろ」
「だから言っているであろう。私は貴様を主人と思わないと」
「……はぁ」
人のいない道を、二人は練り歩く。
今の時刻は深夜。当然と言えば当然だが人っ子一人いないから見渡しはかなりいい。
雁夜は、先ほど仕掛けた蟲がしっかり配置されているかを確認しに来ていた。
本来人通りのある時間帯に確認する方が安全でいいのだろうが、暗示や洗脳といった一般人に見つかった時の備えを持っていない雁夜は発見された場合、発見者を殺さないといけない。
それをしたくなかった彼は、こうして危険のある深夜の冬木を歩いていた。
「……よし、ここのポイントにもちゃんといるな」
「三流だと聞いていたが、この程度はできるのだな」
「まあ、うちの起源に一番相性がいいからな。この程度ならさすがにできる……はず」
雁夜が仕掛けた蟲の数は合計で10匹。今まで確認した数は8匹。残りは2匹だけ。
その二匹の場所はそれなりに近い場所だから、確認作業ももう終わる。そう思い、雁夜は少し息を吐いた。
「それで、あとの蟲はどこだ?」
「後のやつは埠頭の方に一匹とそこから近い下水道の入り口に一つだ。もう終わるよ」
「そうか」
ギギナは路地裏にいるのが嫌なのかさっさと歩き出す。
「ところでギギナ。お前って強いのか?」
「……エリダナでは最強の剣士と言われていた。少なくとも後れを取ることはないだろう」
ギギナは自分の強さに絶対の自信を持つのか、断言した。
しかしカメラマンとして世界を渡り歩いて様々な人を見てきた雁夜には、それが自信に満ちたものというよりは自分に言い聞かせるようなものに見える。
「どんな相手であれば生きているのであれば斬れる」
「……ふーん」
だがそれを指摘することはなかった。雁夜からしてみれば戦闘する前に実力を知っておきたかったが、聖杯戦争はまだ序盤。そんなときからサーヴァントとの関係を悪化させるようなことはしたくなかった。
「じゃあ奇襲が来てもお前がいれば安全だな」
「ああそうだな。とりあえず伏せろ」
「――へ!?」
突然、ギギナは背中に携えてある屠竜刀ネレトーを解き放つのと同時に彼の隣を歩いていた雁夜を足払いで転ばす。
突然戦闘態勢に入る彼に苦言を言おうと、雁夜は立ち上がろうとすると同時に、目の前で火花が広がる。
――その火花の先、屠竜刀に弾かれたものは投擲剣だった。
その短剣は漆黒のように暗く、鋭さを象徴するような武骨さを持っている。
それは、ダークと呼ばれた投擲剣だった。
「け、剣!?」
「落ち着け、相手の姿が視認できない。私から離れるな」
ギギナは雁夜をその場から動かないように言いながら、360度のなかで妖しいといえるような場所を探す。
だが、今は暗闇の中。恒常咒式で夜目がある程度効くとはいえ、すべてが見渡せるわけでもない。
しかし、クラスがわからないわけではない。
「おい、カリヤ。アサシンは死んだのではないのか」
「お、俺だって死んだと思ってたよ……でも、これ見る限りじゃ生きてたんだろ」
「そのようだな!」
再び、投擲剣が放たれる。次は三本。先ほどよりも二本増えている。
しかも驚くべきことにすべて別の場所から同時に放たれていた。
はっきり言って、この程度の攻撃しかしないのであればギギナだけであれば敵にならないだろう。しかし現状は雁夜というお荷物を抱えている状況。撤退するしかなかった。
ギギナはそれを一瞬で判断し、雁夜を担ぎ上げながらすぐに走り出す。その速度はとても早く、自動車のような速度だ。そして、いきなりその速度を風よけなしで体感する羽目になった雁夜は、当然と言えば当然だが軽くパニックになっていた。
「ひぃ!?」
「逃げるぞ。こんな状況だと勝ち目はない」
「ど、どこに行くんだよ!」
「当てなどない。振り切れなければ死ぬだけだ」
「……誰が?」
「言う必要はあるか?」
「無い!」
そんな高速で移動をしているが、相手が離れることは一向にない。
これでは魔力切れでこちらが不利になる。そう結論を出したギギナはネレトーから咒弾を一個排出する。
すると、ネレトーの切っ先には組成式が現れた。こんな超科学、平時であれば目を見開いて見たであろう雁夜だが、今は死にたく無いと言う思いでいっぱいになっていてそれどころでは無い。
だから、今のこの状況を──黒翼が生えたギギナを見たのは後ろから追って来ていたアサシンだけだった。
ギギナは黒翼の下からの強烈なジェット噴射で一気に加速をする。その速さはサーヴァントの敏捷ランクで言えばAはあるのが見て取れる。
「ひぃ!?お、お前これ速すぎるだろ!?」
「喋るな。舌を噛むぞ」
「ぎゃあああああ!!」
目をまともに開けられないほどの急加速。それにはさすがのアサシンといえど追いつく事など叶わなかった。
電柱の上に立っていた黒い影は追跡することを一瞬で諦めて、自分のマスターに無事プラン通りに行ったと伝える。
「──こちらアサシン。所定の場所への誘導は達成しました」
これから先は大して需要がないであろうされ竜の設定の垂れ流しです。
咒式(じゅしき)
めっちゃすごい進んだ科学。され竜の世界に存在するファンタジーなモンスターを解剖してなんやかんやした結果誕生した技術。生体生成系とか化学錬成系とか系統化されてる。ギギナは生体生成系しか基本使わない。恒常咒式とかいう体の中で常時発動する咒式も存在する。
位階が1〜7まである。高い方が凄い。
咒弾(じゅだん)
咒式を発動させるのに必要な弾薬。いろいろな会社から販売されてるおかげで、自分に合う咒弾を探すのですらわりと苦労する。
咒弾にはそれぞれ対応する位階があり、7階位が使えるやつはめちゃ高いし全然流通していない。
あと使い捨てなので財布に優しくない。
詳しいことを知りたい人は原作を読もう!
本は嵩張るから嫌いと言う人も電子書籍があるから安心して!
そもそも小説が嫌いって人も漫画版もまだ話数は少ないけどあるよ!
あと秋からアニメやるから良かったら見てね!