Fate/veil a life   作:如月龍

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第四章ももうすぐ終わりです。
ついにまた新たな鯖が参戦ですよ。
Fate/Grand Orderで彼と出会ったときは、本当に衝撃でした。
レア度もさながら、その性能の高さには今でもお世話になっております…。

彼はわたしの持たないすべてをもっていた。
もしも出会う順番が違えば、人生も違ったのかもしれない。
わたしはどちらの金ぴかを、選べばいいのだろう…?


第四章~暗闇の正体~(3)

「今日はありがとう、一緒に来てくれて」

 

その帰宅途中、間桐と話しながら歩く。

来た時と同じように、今までのことが無かったかのように。

本当に長く話し込んでしまったものだ。

同じ暗闇に包まれた街であっても、やはり昼と夜には差があると感じたのは、夜に出歩くようになってから気付いたことだ。

夜に比べて昼は少し赤めの闇、というだけなのだが、今はその違いだけで区別が出来てありがたいくらいだった。

 

「こちらこそ…いろいろ聞けてよかったよ」

 

「そんな、主に話してくれたのは間桐くんじゃない」

 

間桐は何か言いたげだったがそれを察することはできなかった。

言いたくないことを言う必要はないし、詮索することもない。

ただ会話をしながら歩いた。

わたしは何もなかったように振る舞うしかないのかもしれない。

こんな時にどうやって人と接したら良いかなど誰も教えてくれなかった。

 

「いや。お礼を言うのはやっぱり俺だ…こんなことになってしまって、」

 

「こんなこと…?」

 

「うん。聖杯戦争とか魔術とか、こんな話を友人に打ち明けるのは初めてなんだ。だから…」

 

間桐が言い淀む。

ああそうか。

わたしは世間知らずでとても察しが悪い。

だからどんな言葉を掛けて良いか分からない。

でも。でも自分なりに伝えたいことを伝える手段を考えることが出来る。

今までだってそうやって試行錯誤してきた。

 

「初めてなのはわたしもだよ。友達だって初めてだし、こんな風に休日に、一緒にどこかを歩くのも。嬉しかったんだよ、秘密も悩みも打ち明けられたことが」

 

「九蘭さん、」

 

上手く言えないけれど。

わたしを助けてくれたのは彼だ。

そして今なおわたしに手を差し伸べてくれるのは、彼だ。

 

「大丈夫だよ。和泉さんのことも、叔父さんのことも…うん、きっとなんとかしなきゃ。間桐くんがいると心強いなぁ」

 

それは嘘ではない。

わたし一人だったらきっとギルガメッシュに頼りきりで家に引きこもっていたかもしれない。

同じ立場の人間がいるだけでこんなに頼もしいとは思いもしなかった。

ただわたしに、一歩踏み出す勇気をくれた。

卑屈にならないでいられた。

 

「あれ、まだクレープ屋さんやってるんだ…」

 

「えっ、あ、ほんとだ。九蘭さん、クレープ食べる?」

 

「食べたい!」

 

「じゃあ買ってくるから待ってて!俺のおすすめで良いかな?」

 

それに頷くと、制止する間もなく彼は飛び出して行ってしまった。

客もいないのですぐに戻って来るだろう。

そんな彼の背中を見て、なんだかおかしくなった。

魔術師とは何なのか、知らない訳じゃなかった。

でも、実際に見たのは初めてだった。

もちろん、記憶のある限りでだが。

もっと殺伐とした、血も流れていないような冷酷な人間だと思っていたのに、彼はそのイメージを見事に覆した。

しかも、たった数日で。

同じく、間桐という家柄のイメージも。

 

「お待たせ!おごりだから食べてよ」

 

「いいの…?」

 

「いいの!それくらいさせて」

 

間桐にとっては女性に対して優しくするのは当然なのだろう。

しかしこの時まだわたしには、その意味が分からなかった。

優しくされた経験も、特別に一個人として扱われた経験も、まだまだ希薄だった。

経験が足りない。圧倒的に人生経験が少ない。

それにすらわたしは気付かず、皆と同じだと思って過ごしていたのだから。

 

「前にね…和泉さんとも一緒に食べたの。あの時は合宿の買い物の帰りで、他にも何人かいてね」

 

美綴さんとか。

そう言うと彼は少し驚いたような顔をした。

美綴と言えば、美人で気が強く、男子にも気後れしない態度が特徴的だった。

入学したばかりだと言うのにもうクラスの中心にいて、話題性に事欠かない。

弓道部にも所属していると聞く。

 

「なんか上手くやってるみたいでよかった…俺が言うのもなんだけどさ、初めはあまり友だちと話してる風じゃなかったから」

 

「…そうかもね。どうしたらいいか分からなかっただけなの…話したいとすら思ったことも無かったけど…話せてよかった。今はそう思ってる」

 

色々あったけれど、和泉のことを含めたとしても、わたしは彼女たちと共にいられたことを感謝している。

それだけは確かだった。

 

「本当に、ここから一人で大丈夫?」

 

「大丈夫だよ。すぐだから。間桐くんも早く帰った方がいいんじゃない?」

 

家まで送ってくれるというその好意を断って、間桐と別れた。

家は逆方向のはずだ。むしろ街外れの旧市街の入り口辺りまで来てくれた。

そのことにお礼を言えば、照れたようにまた何かあったら連絡してよ、と言われた。

今日連絡してきたのは彼の方なのに、と思う。

心配性の彼のことだ。きっとまたすぐに連絡を寄越すだろう。

 

「またね」

 

再会を誓う挨拶を残す。

さようなら、ではなくまたね、と言えるようになったのも、彼が最初だった。

暫く黙っていたが、ふいに声が聞きたくなってしまった。

相変わらず背後にある気配に声をかけた。

 

「ギル…どうだった?」

 

「…どう、とはまた不躾よのう」

 

そりゃあ、どう、なんて聞き方はあまり良くないとは思う。

だが他に聞き方が思い付かないのだから許してほしい。

こればかりは所謂ボキャブラリーの問題である。

 

「うーんと、なんていうか」

 

「どうということはない。やることは変わらん。まずはあのライダーとアサシン」

 

そうだ。彼の中でやることは変わらない。

優先順位も変わっていない。

そのために存在していてこれまで一緒にいてくれたようなものだ。

今日はヒントを探しに行った。

攻略の方法を探りに行った。

彼にしてもわたしにしても本来の目的はこれだったはずだ。

 

「まあ良い。結果としてなかなかの収穫を得た。あの小僧やはりマスターであったろう?しかもアサシンの情報まで持っていた」

 

彼としてはアサシンのことを当分任せる気だろう。

わたしもそれで構わなかった。

ただ、危険があればすぐにでも加勢に行きたい。

そんなものギルガメッシュが許すはずもないが。

彼とて、間桐が何とかできるほど生易しい相手でないことくらい分かっているはずだ。

 

「ともあれ今日はもう休むがよい。これ以上考えたところでどうにもならん」

 

ギルガメッシュの言うとおりだ。

素人で頭の足らないわたしが考えたところで、何かいい策が浮かぶはずもないのだ。

であればさっさと休んで明日に備えるに限る。

冷たい物言いだが、彼はわたしのためを思って言ってくれている。

 

「ん…?」

 

不意に目がくらんで立ち止まる。

眩暈、とは違うがチカチカしたものが一瞬視界に映りこんだ気がした。

 

「どうした?」

 

すぐさま異変に気付いたギルガメッシュが構えを取る。

姿は見せないがすぐに応戦できるような態勢だ。

だが、何も起こらない。

勘違いだったのか、やはり眩暈だったのかもしれない。

 

「燈…こやつは上玉だ」

 

「…!?」

 

そう思った矢先、ギルガメッシュの言葉を合図に足音が近付いてくる。

奇襲や闇討ちの類ではない。

しかも今までとは全く気配の異なる、まるで獣のような者。

そして、あのチカチカした光。

その正体は電流だった。

 

「おーおー、こんな暗い中歩いてちゃ、狙ってくれって言ってるようなもんだぜ?」

 

その男は、大きかった。

身長も体格も、まるで恵まれた天性の肉体…そこら辺の人間ではまず見たことが無い。

そして黄金。

ギルガメッシュを知っていて尚、その男には黄金が似合う。

そんな風に感じさせてしまう力が男にはあった。

一つ、様子がおかしいと言えば、それは身にまとった雷光だった。

 

「あなたは、」

 

「サーヴァント、バーサーカー。お前さんに用があって来たんだ…恨みはねえけどすまねえな、大将の頼みとあっちゃあやらなきゃなんねえ」

 

バーサーカー。

その単語にゾクリとする。サーヴァント中最悪のクラス。

最悪で時に災厄となるそのクラスは扱いが難しいとされる。

なぜなら大半が意思疎通を図れないからだ。

今までの記録を思い返しても、こんなに流暢に話すバーサーカーはいなかったはずだ。

本当に彼は狂戦士なのか。疑いたくなる。

 

「ま、待って…あの、わたしは」

 

だがこの風貌、雰囲気、気配。

どれをとっても普通の人間じゃない。

神域とまではいかないがそれなりの霊核を持っている。

素人のわたしでも分かるほどにそれは滲み出ている。

ギルガメッシュを窺えば、相変わらず霊体化したまま様子を見ているようだ。

だとすれば何とか逃げ出す方法を考えるのが得策だ。

 

「悪いな、恨むなら自分を恨みな。アンタ、サーヴァントはいないのかい?マスターってやつじゃないのになんで狙われてんだ?…まあいいか」

 

自問自答の末結論を出すのが驚くほど早い。

これは迷っている場合ではない。

バーサーカーというだけあって、かなりの単純思考のようだ。

じりじりと近付いてきて、わたしは後ずさりするしか出来ない。

やがてその金髪とサングラス、大きな鉞が街灯に照らされた。

まずい、と本能が告げている。

 

「吹き飛べ…!」

 

「…!!」

 

彼は飛び上がった勢いのままにその大きな鉞を振り下ろす。

なんてすさまじいパワーと破壊力。

その巨体でどうしてそんなにも敏捷性があるのか。

考えている間もなくわたしの体は宙に浮いた。

 

「ぼさっとするでない。指示を出せ馬鹿者」

 

「あ…うん!とりあえず」

 

 

急すぎて相手の戦力すら計り知れない。

ここは上手く撒いて逃げるのが得策だ。

こんな狭い路地で衝突しても被害ばかりが拡大する。

彼の特徴をもっと良く知ってから出直すべきだろう。

だが彼は待ってくれなかった。

何と言っても速いのだ。

その巨体で速さを保つのだから、衝撃はトラックに撥ねられるに匹敵するかもしれない。

当たれば即死レベルだ。

 

「ちょこまか動き回んなよ…正々堂々やり合おうぜ…!」

 

ギルガメッシュに抱えられたままわたしは塀の上に着地した。

このままでは埒が明かない。

せめて相手の死角に入ろうと街灯の背後に隠れたのが仇となった。

見事にそれは切り倒され、周囲が明るく照らされてしまう。

しまった、いま顔を知られてしまう訳にはいかないのに。

 

「…!?」

 

急にバーサーカーの動きが止まった。

ギルガメッシュもつられて動きを止める。

あんなに追い掛け回されていたのにもう追ってこない。

何かの策なのか、それとも機会を窺っているのか。

サングラスの奥の瞳は見えず、何を考えているかさっぱりだった。

 

「な…、なに、どうしたの…?」

 

あまりにも呆然と立ち尽くすので思わずこちらが口を開く。

油断しないよう、恐る恐る後ずさりをしながら。

すると彼はなんと構えをといた。

英霊らしく武器は自由自在に出し入れできるらしい。

場違いにそんなことに感動してしまうほど、その動作に違和感が無かったのだ。

まるでそうするのが道理だ、と言わんばかりの緩慢な動作だった。

 

「なんだアンタ、嬢ちゃんだったのかい。俺ぁな、女子どもに手を出す主義はねえんだ」

 

お互いの顔が街灯に照らされているからよく分かる。

どうやら彼は、照れているらしい。

それが分かると、わたしは何か言いかけたまま口を開けて呆然としてしまった。

きっと隣のギルガメッシュも同じ気持ちでいるだろう。

この目の前のバーサーカーは、何と言っただろうか。

わたしが女だと言うだけで、戦闘を辞めると言ったのだ。

 

「悪ぃな…知らなかったんだ。怖がらせちまったか?そうだよなー…」

 

急に頭を抱えてしゃがみこむ。

なんだかこちらが悪者の気分になってくるのは何故だろうか。

油断してはいけないと分かってはいるが、彼の独特な雰囲気に絆されてしまいそうだ。

全く悪気のない、これが演技ではないということが如実に伝わってくる。

 

「そうだ!この埋め合わせは必ずするからよ、今日のところは許しちゃくれないかい?」

 

「…え、ああ、うん」

 

かと思えばまた顔を上げてとんでもない言葉を放つ。

勢いに押されてとりあえず頷いてしまう。

見逃されるのはこっちのはずだ。

それがこの男、わたしが怖がったり怒ったりしていると思っているらしい。

もちろん充分に怖かったが、聖杯戦争のさなか敵のマスターを襲うのは当然のこと。

だめだ、わたしも混乱してきた。

 

「おい燈…彼奴は何を言っている」

 

やっと言葉を発したギルガメッシュも珍しく混乱しているようだ。

そりゃそうだろう。こんなタイプは初めてだ。

研究所にだってこんな人間はいなかったし、学校にもいない。

英霊とは言えもとは人間(神の場合もあるが)、バーサーカーだからこうなのだろうか?

 

「そっちのあんたも金ぴかでかっこいいなー!あん?それともアンタが相手してくれるのかい?」

 

「き、金ぴ、!?」

 

「だ…っ、だめ、待ってバーサーカー!」

 

思わず笑いそうになるのをこらえて私はバーサーカーを止める。

せっかく辞めてくれたのに、逃げるチャンスをまた失いたくない。

ギルガメッシュには何とか落ち着いてもらおう。

今ここでひと悶着起こすのは、何と言うか非常に面倒くさい。

 

「おおそうだ。自己紹介ってやつ?がまだだったな。俺は坂田金時だ。よろしくな。嬢ちゃんは?」

 

「あ…はい、燈です」

 

呆気にとられて思わず反射で口走る。

もうどこから突っ込めばいいか、というかいちいち驚いていたらキリがない気がした。

いま目の前の彼に対して理解が追い付かない。

至上ここまでわたしを、そしてギルガメッシュを混乱させる存在がいただろうか。

サーヴァントにとって真名を名乗るのは、さっきも散々話したように自殺行為に等しい。

それはバーサーカーだからそれすら分かっていないのかもしれない。

 

「…雑種。貴様、何故名を明かした」

 

「何故って、自己紹介だろ?一度きりの出会いじゃねえんだ。それに不便だろ。バーサーカーなんて名前嫌いなんだよ。クールじゃねえ」

 

何とも彼らしい理由にもギルガメッシュは納得した様子を見せなかった。

怒っている。

彼は英霊として、自身に挑んでくる敵として金時に怒っているのだ。

 

「不敬であろう!愚弄しておるのか?我が、貴様ごとき雑種に勝てぬと、侮っておるか!」

 

馬鹿にされている。

考えてみればそう感じるのも間違いではなかった。

お互いの素性も特技も隠して戦いに挑む。

それだけの死闘を繰り広げる覚悟でわたしに刃を向けたはずだ。

怒るのも無理はない。

相手がバーサーカーだろうと、会話が通じるのならなおさら。

 

「まあ待てよ。あんたの言い分は分かった。すまねえ、馬鹿にしてる訳じゃねんだ。だからよ、あんたとはもう戦わねえって言ってる」

 

「…まさか、」

 

「おう!燈!俺はあんたらが気に入った!今日はもう帰るぜ」

 

何か言おうとしたギルガメッシュを止める。

せっかく逃がしてくれたのに追うことはない。

彼は敵に回すには強大過ぎる壁だった。

戦意喪失してくれたのならこちらの得になるだけ。

 

「また会おうな、燈」

 

よほどこの名前が気に入ったのか、二度も名前を繰り返して背を向けた。

すぐにその姿は見えなくなった。

残されたわたしたちはしばらく呆然とした後、ゆっくりと帰り道を進み始める。

 

「貴様、どこまで彼奴と似ておるのだ」

 

「あいつ、って?」

 

「前のマスターも英霊タラシだった」

 

その意味が分かるわたしではなかったが、言わんとしていることはなんとなく察してしまった。

坂田金時と言うバーサーカーは、きっと特別な英霊だ。

全てのバーサーカーがあんなはずがない。

本人がそうと名乗るのなら信じていいのだろうが、運が良かったのだ。

話の通じるバーサーカーで。

しかし単純に運がいいとも言えない。

彼は間違いなく最有力候補だ。

もし聖杯を奪い合うようなことになれば、その時は敵になるしかないのだろうか。

 

「嫌だな」

 

「ほう。他の奴らの時はそうでもなかったお前が珍しいな」

 

確かに間桐のときも和泉の時も、戦うことは否定しなかった。

それが逃げだと思っていたからだ。

だが違う。彼とは敵対したくない。

ああやって心を開いてくれた彼が、わたしに牙を剥くのを見たくないだけかもしれない。

 

「こちらから探す手間が省けて楽だがな」

 

自ら探しに行く必要に今のところ駆られていない。

感謝すべきなのか迷うところだが、宛がないよりはマシだった。

バーサーカーと名乗る彼との出会いは、後にわたしを大きく変えた。

立派な肉体に恥じない大きな器をもった彼は、恥じない生き方を知っていた。

信念と信条を持って、正しいと思った道を突き進める。

その強さにわたしは憧れていた。

今もこれからも、ずっと欲しかったものは、彼が全部持っていた。

 

 




重要な役割を担ってるんです、これでも。
このバーサーカーとの関わりはこれから深くなります。
そして思ってもみない方向に転がるんです。
予想がつかない。バーサーカーだから笑

これで第四章終わりです。
感想も随時受け付けておりますのでよろしくお願いします。
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