Fate/veil a life   作:如月龍

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第五章の始まりです。
起承転結の承の真ん中あたりです。
やばい、本題までが長い。
W金ぴかのターンです。


第五章~前触れを知る者~(1)

 

 

暗闇の中に、一筋の稲光が射した。

わたしはそれを、綺麗だと思った。

空っぽの頭ではそれが稲光だと言うことさえ分からなかった。

ただ純粋に、綺麗だと思ったことは今でもはっきりと覚えている。

大きな音がした。

驚いて身をすくめるが、その光をまだ見ていたかった。

音への恐怖も忘れて、ひたすらその稲光に出会える瞬間を待ち続けた。

 

「…!!」

 

急に息苦しくなってわたしは飛び起きた。

どうやら夢を見ていたらしい。

 

「気が付いたか。なかなか彼奴も大胆なのか馬鹿なのか…」

 

少し離れたところに大きな魔力反応が一つ。

それは昨晩散々充てられたアレに良く似ている。

時間を確認すると、もう朝だった。

あんな魔力反応をまき散らしながら歩き回るのはよくない。

彼に限ってそうそうやられることはないだろうが、かと言って野放しにする気にもなれなかった。

 

「…おい。まさか行くのか」

 

「うん…気になっちゃって。もちろん罠かもしれないけど…そんなことするようにも見えなかったし」

 

なぜ彼はそんな行為に走っているのか、これは放置する気になれない。

わたしの他にのこのこ見物にやってくるサーヴァントなどいなさそうだが、そんなわたしに釣られる輩なら充分可能性がある。

だとしても、だ。

 

「…何かあったらすぐ反撃に出られるよう警戒は怠るなよ」

 

着替え終えたと同時にありがとう、と呟くとわたしは早足で街の方向へ足を運んだ。

不思議と昨日のような胸騒ぎはしない。

ざわつく感覚もない。

だからという訳ではないが、何だか予想するような危険なことは怒らないような気がした。

 

「絆されるなよ…これは戦争、だまし討ちなどよくある些事だ」

 

歩くうちにクレープ屋のある公園までやってきた。

ところが肝心の気配がない。…撒かれたのだろうか。

気のせいではなかったはずだ、すぐ近くに隠れているのかもしれない。

近くにはまばらに人もいて不審な行動をする訳にいかず、さりげなく辺りを見渡しながら歩き回る。

数十分そうしていたが、見つからない。

間違いなく此処にいたはずなのだ。

 

「どうゆうこと…?」

 

「…(やはり何も考えていないか、あるいは)」

 

ギルガメッシュはなにも言わなかった。

彼なりに何か考えがあるようなので、一時休憩を取ることにする。

朝ごはんも食べてきていないので自動販売機でコーヒーだけ買ってベンチに腰掛ける。

前に此処へ座った時は、青い空と夕焼けを見た。

それが今は、赤みの帯びた闇。

きっとこの町で暮らす人々にとっては些末な問題なのだろう。

何も変わらない。まるで青い空が見えているかのように普段通りの行動をしている。

 

「…っ?」

 

「来おったか…」

 

不意にまたあの巨大な魔力の塊が接近してくるのが分かった。

飲みきったコーヒーをゴミ箱へ捨て、まずはベンチの背後を振り返った。

真っ暗で何も見えない。

だが確かに、背後から蠢く何かを感じた気がしたのだ。

殺意のない、純粋な魔力のような何かの反応を。

 

「…バーサーカー?」

 

ややあって口を開く。

きっとそうだ。彼がいる。

この闇のすぐ向こうに、昨日の彼がいるはずだ。

呼びかけに反応はない。

次に闇から帰ってきた反応は、草むらをくすぐるざわざわした音だった。

 

「…ええぇ!?び、びっくりした!」

 

思わず身を引いてしまったが、それはなんとただの猫。

頭に?マークを浮かべ、その猫と数秒間対峙する。

いや、そんなはずがないだろう。

まさかこんな猫一匹に朝から振り回されるなどそんなはずは―――――

 

「おおっと…って、燈じゃんよ」

 

「ば…」

 

バーサーカー、と言いかけて慌てて口をふさぐ。

さいわい周囲に人はいないが、こんな巨体が突然現れたら一般人は吃驚してしまうだろう。

もちろんわたしも驚いているのだが。

 

「ちょっと…あなた、なんで朝からこんなとこに、」

 

「んー?そりゃあ、ここには迷った子猫ちゃんたちがいっぱいいてよぉ。放っとく訳にいかねぇだろ」

 

彼の言うことはもっともなのだが、そうではない。

彼が普通の人間だったらよかった。

だが違う。彼は場合によっては人類に害を成す側なのだ。

少なくとも今は。

 

「マスターは?こんなことしてていいの?」

 

「おおそうだった。今から嬢ちゃん、アンタに会いに行くつもりだったんだよ。けど家知らねえしな…大将も知らねえみてえだったし…」

 

「わたしに…?」

 

「昨日アンタ逃がして帰ったら大将に叱られちまってよお…でも俺ぁ決めたんだ。アンタのことは襲わねえってな」

 

大将とは彼のマスターのことだろう。

やはりそのマスターもわたしを狙ってきていたようだ。

そりゃあ自身のサーヴァントが役目を放って帰ってきたら怒るだろう。

しかも碌に戦ってもいない。

逃げられてしまった訳でもなく自分から逃がしたのだから。

 

「それはこちらにとって有難いんだけど…マスターはここにいないの?わたしを殺せって言ったの?」

 

ここまで来るとこの化け物級のサーヴァントを使役しているマスターの方が気になってくる。

わたしの事情を知っている者かもしれない。

バーサーカーは使役するのがとても難しいと聞く。

そりゃあ理性も魔力量もぶっ飛んだ怪物のようなものだ。

マスターの都合も考えずに好きなだけ暴れて好きなだけ魔力を使い潰す。

だがこの彼は、また違った意味で大変そうだ。

 

「そりゃあな、聖杯戦争?っつーのはそういうもんらしいじゃん。大将のことはこれでも気に入ってるんだぜ、なんたって肝が据わってる!」

 

どうやら不仲ではないらしいことが分かる。

このバーサーカー相手にいちいち怒っていられないのかもしれないが、それを許してしまうのもなかなかの器である。

なんだか彼を見ていると、普段どれだけ自分がギルガメッシュを困らせているか分かってしまって情けなくなる。

 

「でもほら…心配してるよきっと。いいの?」

 

「そんなこと言ったらアンタ…昨日夜中にひとりで歩いてたよなぁ。アブねえからやめた方が良いと思うぜ」

 

「そ…あなたに心配されなくても、」

 

「あんたぁ少し自分に正直になったらどうだい? 俺ぁ今のあんたもミステリアスでいいけどよ、そうすりゃもっと人生楽しくなるじゃん?」

 

急に見透かされたようなことを言われ、言葉を詰まらせてしまう。

バーサーカーのくせによく回る口だと思った。

実際のところ否定の言葉が浮かんでこないし、これ以上言い合っても彼には通じない。

なんて便利な思考回路なのか。

 

「ま、バーサーカーで召喚されちまったら馬鹿みてえなことしか言えねえらしーからよ、半分くれえで聞いとくんがちょうどいいじゃねーの」

 

「…!」

 

それはちゃんと分かっているのか。

つい感心してしまった。そんなことをしている場合ではない。

周囲に人の姿はあるにはあるが、いつまた何処で誰が襲ってくるか分からない。

この単純思考がいつ敵側に寝返るか分からない。

まあ、味方になった訳でもないのだが。

 

「ぅお、大将が呼んでる!そろそろ帰るわ。じゃあな、燈」

 

「え…あ、うん」

 

「そうだ!俺のことはバーサーカーじゃなくて、ゴールデンとでも呼んでくれや!そっちのがいい!」

 

ひらひらさせている片手に応えるようについ上げた右手が思わず動きを止めてしまう。

ゴールデン。確か真名は坂田金時だったはずだ。

つまり、日本の英雄。その名前くらいはわたしでさえ知っている。

それが、何故ゴールデンなんて西洋かぶれになってしまったのか。

良く考えてみれば髪型こそおかっぱでそれっぽいなと思っていたが、色は金だしアクセサリーもじゃらじゃらついている。

いわゆるヤのつくお仕事の人間のような出で立ちだった。

 

「そうか、ヤの人たちも一応日本人か…」

 

「そこではないだろう雑種が」

 

妙なところで納得してしまい、見かねたのかギルガメッシュにまで突っ込みをくらう羽目になった。

どうも、彼が絡んでくると調子が狂う。

今までの常識が通用しないと言うか、反応が予想できないというか。

そりゃあバーサーカー相手だと思えば、まだ頑張れる方だという気もしなくはないが。

 

「まあだが…あいつにもいつか、な」

 

「何か言った…?」

 

隣にいるわたしにも聞こえないくらいの小さな声で、ギルガメッシュが何かを呟いた。

だが彼は何でもない、なんてはぐらかしてしまった。

姿が見えなければ表情も分からない。

こればかりは少し英霊が狡く感じる。

 

「あれ…?」

 

ふと違和感に気付く。

なぜ狡いと思ったのだろうか。

会話、言葉、表情、態度。これらはバラバラに見えてしっかりとした繋がりを持っている。

だが今まで、彼との会話で姿が見えないことを不便に思ったことはあっただろうか。

不安になったり寂しくなったりしたことはあった。

だが不便だった。

何が?

真意を探れないことが。

 

「ねえギル」

 

「なんだ」

 

その言葉からも気持ちや表情が一切想像できない。

いつものことだ。いつものことが、今日だけは何故かとても不安に感じられた。

知りたい。彼が今何を考え、どんな顔をしているのか。

知らないと不安で仕方がない。

これがもし、わたしの一方的な感情で、彼は何もかも知っていてわたし一人が踊らされているだけだとしたら。怖い。

 

「なんだ雑種よ。まさか、彼奴と我を比べておるのではないだろうな」

 

「比べ…?」

 

「まさかとは思うが…我が彼奴と同じくらい単純な主義思考をしているとでも思っておるのではないだろろうな…?」

 

その言葉にどきりとする。

そこまでギルガメッシュのことを甘く見てなどいないし、むしろゴールデンと同じ思考をした英雄や人間がいたら会ってみたい気分だ。

だが、すぐに否定など出来なかった。

似たようなものなのだ。

もしかしてわたしは、ゴールデンほど嘘のない素直な人間に会ったことがなかったのかもしれない。

 

「ふん…彼奴が素直すぎる馬鹿者なだけだ。それも、生きているうちに一度でも会うか会わないかというほどの馬鹿者にな」

 

純真無垢、その言葉は彼を表すのにぴったりだった。

見た目は筋骨隆々のいかついマフィアだが、中身は少年、そう、きっと小学生レベルのそれだ。

これはバーサーカーだからだと思うが、素の彼もそうなんだろうな、と思わずにはいられなかった。

 

「…あれ、結局用ってなんだったんだろ?」

 

 

 

 




ゴールデンにもちゃんとマスターがいて、それで女主に懐いちゃってます。
彼はまっすぐで悩み知らなそうないい奴なのに、
実は苦労性だったりするところがいいですね。
女には弱そう(FGO談)
続きます。
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