Fate/veil a life   作:如月龍

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第四章の幕開けです。
秘密が明らかになって、謎が増えていきます。

どうしてこうも行違ってしまうのか。
それでも分かりあうことはできるはず。

※お気に入りたくさんありがとうございます!



第四章~暗闇の正体~(1)

 

 

 

とにかくじっとしていられなくて、街へと足を運んだ。

今までは危ないからと危険からわたしを遠ざけていたギルガメッシュは、今回は何も言わずに了承してくれた。

お互い覚悟は出来ている。

初めて築いた信頼関係だった。

 

「ただ暗いだけで…お店はいつも通りなんだね…」

 

この街はどうしてしまったのだろうか。

端から見ても異常なのは確かだが、何より異常なのはその市民性と言うべきか。

彼らは普通の生活を続けているのだ。学校がゴールデンウィークだったこともあり暫く休みになり、案の定研修合宿も延期とされてしまった。

それが普通だと思う。

だが市民たちは、慣れ切ってしまっているのか、いつも通りに働いて生活していた。

 

「ここは昔から幾度も聖杯戦争の舞台となってきた。少しの非日常など大したことではないのだ」

 

聖杯戦争は魔術師たちの手で引き起こされ、その幕引きも彼らが行う。

一般市民が巻き込まれるケースもあれば、そうでないケースもある。

それを日常と化してしまっているのだ。

聖杯戦争なんてものを知らずとも、彼らは平気でいられる。

 

「隅田さん…なんか知ってるかな」

 

「…おい、何か鳴っておるぞ」

 

ギルガメッシュの指摘に慌ててポケットを探る。

と、受け取っただけで使っていなかった携帯端末が光っていた。

着信相手は、間桐。

随分前に連絡先を交換していたのを忘れていた。

通話ボタンを押し耳に押し当てると、聞こえてきたのはいつもの少し焦った感じの間桐だった。

 

「もしもし、いま大丈夫だった?もし暇なら、少し用があるんだけど、」

 

「あ、うん、焦らなくて大丈夫だよ」

 

時間と手間を取らせることを申し訳なく思っているのか、矢継ぎ早に質問を飛ばす。

どこまでも奥ゆかしい男だった。

要件をまとめると、少し気になることがあるので会いたい、ということだった。

わたしとしても間桐の方が何かと詳しいのでそれには賛成だ。隅田さんに会いに行こうと思っていたがそれはまた次回でもいい。

ちょうど街へ降りてきていたことを伝えると、十五分ほどで着くと間桐は言い、電話を切った。

 

「あの男と会うのか」

 

「うん。彼はわたしに危害を加えてこない。だから、少しでも情報が欲しいと思って。」

 

「…逞しくなったものだな」

 

「…?」

 

聞き返そうとしたが、彼はそっぽを向いてしまった。

それから間桐は予定時刻より数分早く訪れた。

 

「お待たせ!一人でこんなとこ、何ともなかった?」

 

「全然何も起きてないよ、いつも通り」

 

「なら良かった…それよりどこかへ行こうとしてたのかい?」

 

息を整えながらわたしの心配をしてくる間桐は、いつも通りの彼だった。

制服でなく私腹を着て現れた彼を見て、休日に会うのは初めてだったことに気付く。

間桐との関係は所詮そんなもの。

休日にわざわざ出会うような仲ではなかった。

それが今、皮肉にも聖杯戦争を通して新しい関係が築かれようとしている。

わたしにとって成長するチャンスかもしれないが、手放しに喜べないのも事実だった。

 

「水石堂。店主にすごく良くしてもらってるから…相談があって」

 

言葉を濁したが、別に間桐がいても問題ない気がする。

必要とあれば隅田さんが誤魔化すだろうし。

研究所でも隅田さんにも、間桐には気を付けろと言われたが、何よりまだあの約束を果たしていない。

 

「水石堂に…?」

 

間桐が微妙な表情をしたのを、わたしは気付けなかった。

 

「良かったら、一緒に行かない?実は友人を紹介する約束をしてて」

 

「…そういうことならぜひ」

 

にっこりと笑った間桐には何も裏などないように見えた。

話をしながらも歩を進めると、水石堂と看板の出ている古書堂まではすぐに辿り着いた。

此処でもいつも通りに開店していて客こそいないものの変わったところはない。

むしろ客足がないのは好都合だった。

 

「こんにちは…!」

 

事前予約もなしに会いに来るのはいつものこと。

何しろ彼はいないことの方が珍しいし、研究所へ行くときは事前から外に休業日の張り紙を告知している。

わたしは毎日此処を通る訳ではないが、買い物がてら度々目にすることはあった。

 

「やあいらっしゃい、燈ちゃん…と?」

 

「今日は用があって来たんだけど、その前に友人を紹介するね。間桐くんです」

 

「間桐です。初めまして」

 

その名前に、隅田は一切顔色を変えなかった。

どうしてだろう?絶対何かしらのリアクションがあると思ったのに、肩透かしをくらった。

そんなに身構えなくてもよかったのかも。

と思った矢先、隅田の視線が霊体化しているギルガメッシュに移った。

 

「…お友達かい!やあ、嬉しいよ。君がお友達を連れてきてくれるなんて」

 

約一か月前に彼に言われた「僕たち以外に頼れる友人をたくさん作るんだよ」という言葉を思い出す。

たくさんとまでは行かないが、一人でもこうして隅田に紹介できたことを誇らしく思っていた。

例えそれが間桐の人間だったとしても、仕組まれた出会いであったとしても。

 

「先週はクラスの女の子と一緒に買い物も行ったよ。間桐くん、こちらが隅田さん」

 

外の世界のことは、この人に全て教わったと言っても過言ではない。

隅田もにこやかに間桐に笑いかけてくれた。

本当は少しの不安もあったのだ。

研究所の人間が口を揃えて注意しろと言う。

わたしでさえ初めは警戒していたのだから、彼だってそうであっても可笑しくない。

でも彼はやはり大人だった。そして、わたしの味方でいてくれた。

 

「いつも燈ちゃんが世話になってるね。この子は知らないことの方が多いだろうに、いろいろ面倒を見てくれてありがとうね」

 

「いえ、その、最初は心配で声掛けたんですけど…彼女はとても聡明で、いい子だと思います」

 

間桐が真っ直ぐに隅田を見てそんなこと言うものだから、思わず恥ずかしくなってしまった。

友人と言う立場からそのような評価を受けるのは初めてだ。

いつも研究所では素質だの能力だので評価されてしまう。

 

だから隅田も本当に驚いた顔をしていた。

 

「…いい友達をもったね。お茶入れてくるから、待ってて」

 

それだけ言うと隅田は奥へ行ってしまった。

着物姿の背中が此処からでも良く見える。

実際いくつなのだろうか、見た目は三十代くらいで若そうなのに。

醸し出される雰囲気は、何でも知っている落ち着きのある、まるで仙人そのものだ。

 

「隅田さん、良い人だね。育ての親って感じかな?」

 

「そう…そうだね、日常生活から、勉強まで見てくれて」

 

隅田はすぐに戻ってきた。

お茶と一緒に書物を小脇に抱えている。

その様子を見て、わたしは思わず隅田を見上げた。

すると目が合って笑い、その予感が気のせいでないことを暗に示した。

その書物は見覚えがある。

何を隠そう、それは研究所でわたしが何度も目にした、させられたもの。

複製本か本物かわたしには区別する術もないが、それであることは確かだ。

 

「間桐くん。急なことだけど君に確認しなきゃいけないことがあるんだ」

 

「急かすこともないだろう、雑種よ」

 

「…!?」

 

驚いた。

本棚に寄りかかるようにして立っていたのはギルガメッシュだった。

いつか見たあの派手な私服を纏って。

 

「おやおや…これは」

 

「…エアさんじゃないですか」

 

エア、という呼び名に隅田が察してくれて、わたしと目が合う。

さすがだ。説明しなくてもわたしのことくらい分かってくれる。

ところで、なぜ急に彼は姿を現したのだろう。

 

「もう知り合いだったんですね。貴方が介入するなんて、余程のことがあったんです?」

 

ギルガメッシュはギロりと間桐に睨みを効かせた。

びくっとして間桐は動けなくなる。

何か逆鱗に触れるようなことはしていないはずだ。

わたしはただ見守ることしかできなかった。

 

「貴様、此処がどういう場所か分かって足を踏み入れたな?」

 

わたしが知る限り、水石堂はただの古書堂。

魔術に関する本もたくさんあるだろうが、それがどうということがあるのだろうか?

ギルガメッシュの行動を図りかねる。

厄介ごとを嫌う彼のことだから、どうでもいい意地で姿を現したりしないはずだ。

 

「…はい…やっぱり、此処は」

 

「そう。此処は魔術師の工房だよ」

 

「魔術…工房?」

 

聞きなれない単語だが、それを知らない訳ではなかった。

魔術工房。

名前の通り、魔術師が魔術を研究するための、それなりの細工をされた空間ということ。

部外者が立ち入るにはそれなりの覚悟が必要な場所だった。

 

「いい度胸をしているではないか。今後我は貴様をそういう者として扱う。それでよい、ということだな?」

 

ギルガメッシュの言葉に間桐は黙って首を縦に振った。

 

「うそ…そんな」

 

では彼は、店先に立った時点でこうなることを予見していたというのか。

そしてわたしは外界の存在をやすやす招き入れたことになる。

混乱して頭が働かない。

彼らには彼ら同士にしか分からない空気がある。

わたしもいつか知らなくてはならない空気が。

 

「九蘭さん。これだけは信じてほしい…俺は君の味方になるための覚悟をしにきたんだ」

 

間桐の目はまっすぐだった。

味方になる。

それはつまり、今起こっていることも、わたしが関係していることも、知っていたということである。

一体何をどこまで知っているのかは定かではないが、少し間違えば彼は敵になる。

覚悟と言った。

それは、まだ味方ではないということ。

 

「そのためにまず、どうしても確認したいことがあって」

 

間桐は一度言葉を切った。

ギルガメッシュは腕を組んだまま睨むように見下ろしている。

隅田さんは何も言わずお茶をすすった。

ギルガメッシュに場の流れを任せているようだ。

 

「申してみよ」

 

「…アヴァロンの行方です」

 

ややあって口を開いた彼から出た言葉は、予想外の、彼の知るはずのない聖遺物の名だった。

 

「…え?」

 

どうしてそれを、という言葉を呑みこむ。

驚くと同時に、なんとなく、彼はわたしが其れを持っていることを知っているのではないか?と感じていた。

 

「誰かに持って来いと言われたのかな?」

 

「…永遠に失われたとされていたそれが見つかったって…しかもそれの持ち主が、」

 

ただそれが事実かどうか確かめたかっただけ。

アヴァロンのことを誰から聞いたのかわからないが、彼は間桐の子。

以前に聞いた、聖杯戦争を戦う覚悟でいるという言葉。

どうして今まで気が付かなかったのか。

それが全てではないか。

もうずっと前から彼は、わたしに対して一定の立場を築き続けていたというのに。

 

「それはつまり…あれを狙っているのが間桐家だってことでいいのかい?」

 

彼は頷いた。簡単な話だ。

間桐家がアヴァロンを知っていて、それを狙っている。

長く冬木の聖杯戦争に関わって来たのだから、間桐本人はまだしも、間桐家自体が知らないはずがない。

 

「俺は疑っている訳じゃないんです。でもそれが本当なら教えて欲しくて…。だからその前に、俺の方もお伝えしなくてはならないことがあります」

 

わたしに、そして隅田さんとギルガメッシュに、丁寧な言葉で告げる。

先ほどのしどろもどろした雰囲気は無くなっていて、何か重大なことを告げようとしている。

それが伝わってきて思わず背筋を伸ばした。

これは交換条件だ。

わたしの秘密を聞く前に、自身の情報を開示する。

わたしのことをそれだけ信用している。

 

「僕は今回の聖杯戦争の参加者……ライダーのマスターです」

 

 




ついに間桐が自鯖を公表しました。
前にも記述したように、オリジナルではなくFateのどこかのシリーズに出ている鯖から拝借しております。
だから鯖同士の関わりがあったりなかったり…
詳しい人ならばもう特徴だけで分かっちゃうレベルに分かりやすく書いてますので。

感想も募集しておりますのでよろしくお願いします。
次回に続きます。
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