Idol meets cars   作:卯月ゆう

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熱が冷めないうちに、とは思いながらも、イベントを文字に起こすのって難しくて1700文字で挫折。


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 車好きが年始にやること。

 愛車を洗車して、徹底的に磨き抜いて、コーティングして、おせち食って、駅伝の大会車は何かを確認したらネットで東京オートサロンのチケットを買う。

 簡単だ。

 だが、今年はちょっと違う。オートサロンだけと言わず、この手のショーで車とともに華を添えるキャンギャル。その一人が俺の隣にいるのだ。

 

 

「どうして私がこんな……!」

「そう拗ねるなよ。露出が多いわけじゃないんだし。美世なんてエロっエロの超短いスカートとへそ見えるようなトップスだぞ? それに比べればなんぼかマシだろ」

「そうだけど、あんないやらしい視線に耐え続けるなんて苦行よ!」

 

 年明け、1月の半ばに幕張メッセで行われるチューニングカーの祭典、東京オートサロン。多種多様なチューニングカーと、多種多様な衣装のキャンギャル。それに群がるカメコ。

 東京モーターショーの人が生み出す喧騒とは違い、各ブースでターンテーブルを回し、車に積まれたスピーカーで会場が震える。そんな所だ。

 ウチのプロダクションからは美世を始めとした数人がキャンギャルとして派遣されている。特に、業界で名のしれた美世は有名アフターパーツメーカーに名指しで指名され、キャンギャルに加えてトークショーもやる事になって大忙しだ。まだ本人には伝えてないが、すごい額のギャラになっている。

 

 

「まさか私が撮られる側なんて……」

「今までライブだのなんだので見られるのには慣れてるだろ?」

「それとこれとは違うのよ!」

 

 留美は輸入車をメインターゲットに据えたホイールメーカーのブースに立つことになっている。

 メーカーのキャラクターもあって、落ち着いた真っ黒いドレスを着る事になっているが、そういう問題ではないらしい。

 俺は良いと思うんだけどなぁ? まぁ、俺の女があのギラついたいやらしい目に晒されると思うと、多少は思うところもあるが、これも仕事だ。

 ちなみに俺は346プロのブースで『美世のDrive Week』のDVDを売ることになっている。俺のポルシェはそこでの展示物と言うわけだ。まぁ、車2台分ほどの小さな壁際のブースだから、人も少ないだろうし、車は完全に囲って触らせない。今日のために経費でフィルム貼ったりもしている。傷は付けたくないしな。

 

 

「時間が空いたら見に行くからよ。頑張れ」

「もう!」

 

 車の搬入を済ませ、留美の行くブースや、346のアイドルがいるブースに挨拶して周り、最後に346プロのブースを軽く支度すると事前準備はほぼ終了。今日から1週間は近くのホテルから通うハメになる。まぁ、スーツじゃないから荷物は少ない。留美のを含めてもポルシェに積めたからな。

 準備さえ終えてしまえばあとは会場内をフラフラしてからホテルに戻ってぐっすりだ。

 翌朝は金曜日の特別公開日。プレスデーというわけではないため、一般の客もそこそこ来るが、土日程じゃない。売り物をメインにしているブースでは客引きもそこそこに、と言った感じだ。

 

 

「日比谷さん、おはようございます」

「おはようございます! ブースの方はいいんですか?」

「ええ、スタッフも居るし、お客さんも多くないからね」

 

 ブースに顔を出してくれた湖山さんと少し喋ってからまたパイプ椅子に座ってぼさっとする仕事が始まる。

 時折お客さんが来たり、メディアの方と名刺交換したり、暇はしなかったが、忙しいわけでもなかった。休憩時間に留美がランボルギーニの隣でクールな笑みを浮かべる(本人はただ緊張してるだけだ、アレは)のを写真に収め、次に向かったのはのあ……さんが居る高級車向けのエアロを売るメーカーのブース。そこで他のキャンギャルと派手なフェラーリを挟んでポーズを取っていた。これも写真に収めて、時間的に最後に向かったのは亜紀がいるブース。国内、海外問わずSUVを扱うメーカーで、大柄な車に囲まれても埋もれてないあたりは流石と言うべきだろうか?

 今日回れなかったところは明日明後日で回れば良いし、と思ってブースに戻ると、またニコニコしながらDVDを渡す作業に戻った。

 

 ちなみに、この時撮った写真を携帯の壁紙にしていたら、留美が恥ずかしそうな、嬉しいような可愛い反応をしやがったのは俺と見ていた数人だけの秘密だ。

 


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