Idol meets cars   作:卯月ゆう

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ep21

 #1 Producer meets car 〜武内プロデューサーの場合〜

 

 

 気温もだいぶ下がり、朝は布団から出るのが億劫になってきました。

 今日はお休みを頂いているので、少し遠出をしようと思います。富士スピードウェイで行われる旧車のイベントです。

 9時半に駐車場が開くそうなので、それに合わせて出ようと思うと…… そうですね、7時には家を出れば間に合うでしょう。

 ゆっくりと身支度を整え、朝食も取ると50分にはガレージに。今日は512で出かけましょう。大きなドアに広いサイドシル。深いバケットシートですが、革ではないので冷たくはありません。ですが、革巻きのハンドルとアルミのシフトノブはかなり冷たくなっていますね。

 キーを撚るとあっさりと動き出すエンジン。朝ですし、暖気はあまりせずに早めに出発しましょう。

 

 あまりエンジンに負荷をかけないよう、いつもより少し早めのシフトアップを心がけ、温度計の針も安定するのを待てば、本領発揮です。

 その前にガソリンスタンドによって行きましょう。

 数十リッター補給し、満タンにしてから向かいましょう。

 

 高速道路のクルージングはこの車の一番得意とするところだと思っています。

 広く、低いボディに空力パーツを足していますから、安定性は言わずもがな。トップギアに入れていても少し踏み足せば追い越しに必要十二分なパワーが出てきます。燃費を稼げるのも大きいですね。

 100リッター近い容量のタンクですから、初めて満タンにしたときは驚いてしまいました。

 

 高速を降りて少し曲がりくねった道に入ると、徐々に旧車やスポーツカーなど、イベント目当てであろう車たちが増えてきます。

 ナローポルシェにスカイライン。フェラーリなら512BBやモンディアルも見えますね。その中に旧規格の軽自動車やオート三輪の姿も見えますから、いろんなジャンルの車たちで今日は一日楽しめそうです。

 もちろん、現行車種も出展ではないでしょうが、多数見えます。多いのはポルシェやGT-Rでしょうか? ロードスターも新旧問わず、道中見かけましたね。

 なんとも賑やかなトレインができるのがイベント前後の密かな楽しみです。

 

 富士スピードウェイのゲートをくぐり、案内に従って中を進むと、駐車場へ。偶然にも後ろに並ぶのは白いテスタロッサのようですね。

 誘導灯を振るスタッフの指す先は…… 狭いですね。

 

 

「すみません、後ろの方と3台分のスペースを使わせていただけませんか」

「ははっ、ですよねぇ。後ろの車はお連れ様ですか?」

「いえ、違います」

「お伝えしておきますね!」

 

 スタッフが後ろのテスタロッサに近づくのを見ると、ハザードを炊いてスペースに収めるように止めていきます。ですが、いくら寄せてもはみ出してしまうのがこの車です。

 テスタロッサの方も上手く寄せていますが、2メートルも幅のある車ですから、結局1.2台分ほどは幅を食ってしまうのです。

 

 

「おはようございます、お互い大変ですね」

「ええ、小回りも効かないし、ハンドルも重いし、クラッチも重いし、ねぇ」

 

 その後もテスタロッサのオーナーさんとお話をしながら入場ゲートを潜るとお楽しみの時間です。

 今日のイベントは90年以前の車が主役ですが、年式やジャンルごとに大まかな区分けがされていて、やはりというべきか、スポーツカー、スーパーカーのエリアに向かう人が多いようですね。かくいう私もその一人ですが。

 

 国産、輸入車問わず、美しい状態を保たれた車や、今でも現役で走り続けている車。様々な姿形の車たちが所狭しと並ぶのはやはり壮観です。

 入口でもらったパンフレットで今日のスケジュールを確認すると、そろそろトークショー、朝の部が始まるようです。朝一番ということもあり、キャンギャルのステージのようですね。

 

 遠くから若い女性の声が届くのを聞くに、どうやらトークショーが始まったようですが、私の興味は目の前のスカイラインに注がれています。

 R32型スカイライン GT-Rはあまりにも有名過ぎて説明するまでもないでしょう。

 この車は89年式の初期モデル。定番のガンメタリックのボディにブラックの純正ホイール。オリジナルのコンディションがここまで保たれているのは奇跡とも言っていいでしょう。

 日産が始めたヘリテージプログラムの参考として出品されているようですが、子供の頃に憧れた車がこうして綺麗に残っていると、なんとも感慨深いものです。

 いつかは乗ろう、と思う車は数多くありましたが、もちろん、GT-Rもその中の一台だったのは言うまでもありません。

 ジロジロと見て回るのも程々に、次に向かいましょう。

 

 それから数台の車をじっくりと眺めると、そろそろパレードランの時間のようです。私も事前に申し込みを済ませてあるので、駐車場に戻りましょう。

 パレードラン参加車がまとめられた駐車場にはオーナーのみなさんが戻り始め、それぞれに挨拶をしたりと和気あいあいとした雰囲気です。

 端の車から順にエンジンをかけて出ていくのを見ているだけでも飽きません。数台隣の車が出ていったのを見るとエンジンスタート。V12の咆哮が響きます。

 エンジンスタートだけで注目を浴び、ゆっくりと車をすすめると車内からカメラを向けあう姿も見えます。

 自分の車が見られるのも悪くありませんね。

 

 パドックに連なって入っていくと、ここで国別にわけられて隊列を組み直します。

 とは言え、参加者の方もある程度はわかっているので、途中でなんとなくメーカーごとになるよう譲り合って進んできたのでスムーズです。

 私はもちろんイタリア車の列、前から2番目です。前にはアルファロメオ SZ、後ろには駐車場で隣に止めていたテスタロッサが続いています。

 イタリア車は全体的にアルファロメオとフィアットが多め、フェラーリは数台程度なようです。テスタロッサ系が2台とディーノだけでしょうか。

 4列ほどに整列した総勢75台が先導車に続いてコースに入っていきます。

 どうやら日本車集団の先導はR35 GT-Rが、それに続くイギリス車にはアストンマーティン DB11、私達の前には最新の812 スーパーファストがつくようですね。パドックからピットレーンに入り、出口に向けてスピードを上げ…… 結構踏みますね。

 1コーナーを小さく回るといきなり距離が離れだしました。一気に150km/hほどまで加速すると、緩やかにブレーキを踏んでコーナーを回り、大きな右コーナーでは100km/hオーバーを保っています。そして、強めにブレーキを踏んで小さく左。そしてまたアクセル。シケインはだいぶ手前から減速して、余裕を持ってターン。その後の上りセクターも同様です。あくまでもパレードランですから、このくらいのペースが普通でしょう。

 ストレートに入る直前のマーシャルポストには150km/h制限の看板が掲げられ、自制を促してました。ですが、前から聞こえる音からすると、やはり低いギアで引っ張っているようですね。ここは私も流儀に倣うとしましょう。排気バルブを開け、1速のままアクセルを強く踏み込むと、一瞬でメーターは60km/hほどに、そして2速に入れるとさっきと変わらない加速力で110km/hへ。この時点でタコメーターの針はほぼ真横を向いて、外ではかなりうるさいはずです。さらにもう一段、ギアを上げ、5000回転強で150km/hクルーズが可能になります。

 計算上は、トップギアでレッドゾーンまで回せば330km/hほど出るギア比にはなっていますが、5速トランスミッションだと、どうしても一段一段の領域が広がってしまいますね。その分パワーでカバーする走り方をする車ではありますが。

 そのまま気持ち良いペースで3周すると、ぞろぞろとパドックに戻り、あとは夕方までここに車を置いておく事になります。

 他の参加者の方は思い思いにダッシュボードにタオルやSNSのIDを書いたカードを置いたりしていますが、私は前後のナンバーを隠すだけです。

 フェラーリのロゴをあしらった黄色いプラスチックのプレートを両面テープでナンバーに貼り付けると、車を施錠して出店を回るとしましょう。

 

 イベントに出ているキッチンカーの料理といえば、少し前まではジャンクなファストフードのようなもののイメージでしたが、最近はご当地グルメや本格的な料理を出す店も増えているようです。

 私が食べた盛岡じゃじゃ麺も、以前盛岡で食べたものと遜色ない味でしたし、これはグルメフェスなどが盛り上がるのも頷けますね。

 さっぱりとした麺を食べ終えると、お茶を飲みながら今後の予定を組み立てましょう。

 

 2時間後には新旧スポーツカー試乗会、これは朝の段階で整理券を手に入れています。

 アイドルトークショー、ですか。ゲストは明かされていませんが、行ってみましょう。あと30分ありますが、お土産などを見ていれば潰せると思います。

 今日の最後にお楽しみ抽選会があるので、公式ショップでグッズも買わないといけませんね。公式ショップで買い物をしてからトークショー、試乗会の流れで行きましょう。

 

 さて、マグカップとトートバッグを買い、車に置いてきたところでちょうどトークショーが始まるようですね。

 そこそこの人入りと言ったところでしょうか? 直前に来た私がちょうど真ん中あたりに座れています。

 最前列の方々が346プロのタオルや、ピンク色のサイリウムを持っているのですが、もしかして、彼女の番組でしょうか……?

 

 

 #2 Producer meets event 〜武内プロデューサーの場合〜

 

 

「みなさんこんにちはー! ヒストリックカーミーティングにお越しいただき、誠にありがとうございます。本日はこうして美世のDrive weekスペシャルトークショーとしてお時間を頂きまして、私、原田美世と」

「346プロダクション、プロデューサーの日比谷悠の2人でこれから30分間、事前にご応募頂いたお手紙を交えながらお話したいと思いまーす! よろしくおねがいしまーす!」

 

 開演時間になると、脇からよく知った2人が登って来ました。原田さんも日比谷さんも、慣れたもののようで、笑顔を振りまきながら挨拶をしていました。

 原田さんは普段とは違い(と言っては失礼ですが)、女性らしい、ニットとデニムパンツをメインにした服で、普段の快活な印象も交えつつ、柔らかで理知的なイメージですね。なんというか、ジャーナリストっぽい、と言いましょうか、なんとなく見覚えがあるような雰囲気もあります。

 

 

「さてさて、それでは早速始めましょう。皆さんご一緒に!」

「美世のDrive Week!」

『Start your engine!』

 

 聞き慣れたオープニングのBGMが流れると、スタッフが日比谷さんの脇にそっと箱を置きました。あとはもうフリートークの時間なのでしょう。

 スマートフォンで写真を撮ると、彼に送信し、あとは観客に徹する事にしました。

 

 

「早速お便りを読んでいきたいと思います。プロデューサーさん、緊張してます?」

「まぁ、な。普段は録画番組だから、やり直しが効くだろ?」

「あ〜、プロデューサーさんはこういうの初めてですもんね」

「そりゃ、本業はプロデューサーだから、普段は舞台袖とか、観客席なわけだよ。あっ……」

「どうかしました?」

 

 日比谷さんの視線の先には私。彼と目があった気がしましたが、どうやら気のせいではなかったようですね。

 軽く会釈をすると、彼も私に気づいたであろう原田さんも「お疲れ様です」と、いつもの業務テンションで頭を下げるものですから、観客の目も私に向いてしまいます。

「とうぞ、続けて」私のボディランゲージが通じたのか、2人とも「プロダクションの先輩がいまして」とか、「別プロジェクトのプロデューサーさんが」と、まぁ、満点とは言い難いですが、無難に切り抜けました。

 

 

「気を取り直して、まずは箱からじゃなくて、ツカミらしいお便りを読もう。ハンドルネーム 緑の悪魔さん、ありがとうございます」

「ありがとうございます!」

 

『お二人の番組、いつも楽しく拝見しています。

 今回はクラシックカーのイベントに参加されるということで、質問です。

 お二人の初めての車はなんでしたか? よろしければお答えください。

 これからも、番組楽しみにしています。』

 

「初めての車だってよ。遠回しに『日比谷Pはこのイベントに出られるような車に乗ってたんじゃないですか』って言われてるみたいだな」

「私の初めての車ですか。初めてにもいろいろあるじゃないですか、教習車のアクセラ、とか」

「え、お前アクセラなの? 俺コンフォートだったぞ」

 

 早速ジェネレーションギャップネタですか。私もコンフォートでしたが、確かに最近はアクセラの教習車をよく見かけますね。

 

 

「シフトの感触がグニャグニャだったり、車によってクラッチの繋がるトコが違ったりして難しかったなぁ。でも、通いで2ヶ月くらいで取りましたよアタシ」

「俺もそんくらいかかったかな。大学入ってからだったし、バイトとかしてたしな」

「へぇ、意外です。誕生日の前から通って、誕生日と同時に卒検受けてそうなイメージですけど」

「うーん、中免も持ってたし、学科ないから焦ってなかったってのがあるかなぁ。だからのんびり通ってたよ。車買う金を貯めたかったしな」

 

 

 時計を見た日比谷さんが少し焦りを見せ、教習トークもそこそこに次のお便りを読むようですね。

 流石にこればかりは場慣れが必要なようです。マジアワの収録などに同行しても、本田さんはキッチリと時間を割って収めますが、島村さんは結構伸び気味になってしまうなどありますし。

 

 

「ハンドルネーム アルミ削り出しさん、ありがとうございます」

「どーもー」

「プロデューサーさん、結構投げやりですね」

「いや、俺が引いた次のメールがね。ま、いいから続けて」

「えーっと、

 

『美世ちゃん、日比谷P、こんにちは。初メールです。

 番組に時折映るお二人やスタッフさんの車を見ていると、それぞれ思い思いにカスタムされていて、とても羨ましいです。

 私はスイスポに乗っているのですが、ノーマルなのでどうも無個性です。お二人は車をイジるときにはどのような事を考えますか。また、車選びの基準などあれば教えて下さい。

 

 P.S ヒストリックカーミーティング、見に行きます。お二人に会えると思うといまから楽しみです』

 

「お〜、来てくれてるんですね! アルミ削り出しさーん!」

「そこそこ、一番前でお前のペンラ振ってる人!」

「あー!ええっ、女の子だ! ありがとーございまーす!」

 

 

 一番前の列にペンライトを振ってる方が見えますね。原田さんのファン層としては男性メインを考えていたであろう日比谷さんも驚きを隠せないようです。それも、スイスポ乗りですか。スポーツカーを選ぶ女性がいるのも嬉しいですね。

 

「美世はロドスタイジるときにどうやってパーツ決めたりしてるんだ?」

「うーん、やっぱりまずは見た目ですよね。それから、ちゃんと走れるか。あぁ、これは段切りしなくても縁石乗れるとか、バックで車止めに擦らないとか、そういう」

「たしかに、下手に車高下げると擦るんだよなぁ。トドメに車止めとかで『バキッ』ってさ」

 

 思い当たる節がある方が多いのか、客席から息を呑む音が聞こえた気がしました。私も今の車はフロントリフトがあるとはいえ、ヒヤッとする場面が多いですし、よくわかります。

 

「なので、今の車は派手すぎないエアロと、程々の車高、純正のブレンボと給排気系にROMチューンですね。これだけならあんまりお金もかかりませんし。プロデューサーさんはどうしてますか?」

「ん? 純正オプションてんこ盛り」

「あぁ…… ポルシェとかそういう車ですもんね。車買うときはどうやって選んでるんですか?」

「今の車買うときは、ポルシェ以外で、留美が良いって言ったもの」

「クルマの決定権、取られちゃったんですか」

「何回か前のを見てもらえればわかるとおりだよ……」

 

 日比谷さんのクルマ選び回ですか。確かに、数千万円クラスのクルマがずらりの見栄えのする回でしたが、あのあと本当にクルマ買ってしまったんですよね……

 ちゃんと和久井さんの許可も降りたようですから、最近はそれでばかり通勤されてますね。

 

 

「でもまぁ、変えるとしても軽いホイールに履き替えさせるくらいかな。この場にいる人はわかってると思うけど、良いホイールに変えるだけで乗り心地良くなるし、燃費良くなるし、悪いことないんだよね。コスパは悪いけど」

「でも、ロードスターとか、スイスポとか、16インチ17インチくらいだとあんまり変わんないかなーって感じも無くはないんですけどね」

 

 でもなー、と食い下がる日比谷さん。結局、気持ちの問題とオチがついたところで最後の一通のようですね。

 先程は日比谷さんが、すごい顔をしていましたが……

 

 

「さて、最後の一通な。作家チェック入ったんだよなコレ。ハンドルネーム るーみんは俺のもの」

「あっ……」

 

 一瞬で最前列が静まり返ったのを見ると、皆さん筋金入りのようですね。ですが、ネタがネタだけにプロデューサーとしては嬉しいような悲しいような、複雑な気分です。

 

 

「今すぐこいつをパドック裏に呼び出して話付けたい気分だけど我慢する」

「え、ええ。そうしてください。早く読んで、ね」

 

『美世ちゃん、日比谷プロデューサー、こんにちは。

 初のイベント、おめでとうございます。当日は現地でお二人を見るのがとても楽しみです。

 メールを募集、それも、テーマは特にないので、車とは関係のない事をお伺いします。

 日比谷プロデューサーがるーみんを誘ったデートコースを教えてください。美世ちゃんには、その採点をお願いしたいです。』

 

「ほう」

「プロデューサーさん、声のトーンいつもより低いです怖いですよ!?」

「そんなことないさ。で、俺が留美を誘ったデートコース?」

「そう、みたいですね」

「箱根ターンパイク。帰りに御殿場よって、飯食って帰る」

「まぁ、らしいですねぇ……」

 

 原田さんと同意見です。なんとも日比谷さんらしいですね。メインはターンパイク、和久井さんのご機嫌取りにアウトレットと言ったところでしょう。

 

 

「デートコースとしては50点くらいだと思うんですけど、ドライブとしては定番ルートですよね」

「だろ? まぁ、どうぞ参考にしてください」

「ぶっきらぼうですねー。あれ、プロデューサーさん、指輪してないんですか?」

「仕事中はな。留美も俺も指輪はしないんだ。気づかなかったのか?」

「はい。でも、なんで指輪しないんですか? すごく可愛いのに」

「仕事中は俺はアイドル全員のプロデューサーだし、留美はみんなのアイドルだからな」

 

 私は夏の終わり頃に彼から聞いていましたが、お二人のプロとしての決意の現れ、として受け取っています。

 それでも、お二人ともリングを首から下げたり、ケースに入れてポケットに入れているそうですが。

 

 

「いい話っぽく締めてますけど、今日も留美さんがオフだから二人で来てますよね」

「ああ。だから、今日はトークショー終わったら二人で回ろうかと」

「仕事とオフを混ぜちゃだめですよ!」

「いや、だって勤務時間は俺が届け書いてるんだぞ? 今日の勤務はトークショー終わって片付けおわる15時まで。それ以後は退勤後だから問題ないっしょ」

「うわぁ、職権乱用ですよ」

 

 軽く笑いを取るとそろそろ〆に入るようで、メールボックスが引っ込むと、仕切り直しの言葉をかけて最後の話題に移ってゆきます。

 

 

「そろそろ時間だから、お便りはこの辺に。さっきのメールの、『るーみんは俺のもの』、お前は後でパドック裏な」

「体育館裏、みたいなノリで呼び出さないでくださいよ! でも、今日はいつもの収録と違って、ラジオっぽくて楽しかったですね」

「たまにはこういうのもいいな。こういうイベントやるか」

「おおっ!」

 

 確かに、オーナーズミーティングのような形で、駐車場などをお借りして集まるのも楽しそうですね。

 仮設ステージなどを作ってしまえば、346プロらしく、アイドルのステージもできますし、そうすれば呼べるアイドルの幅も広がるでしょう。

 

 

「さてさて、最後はね、アイドルらしく美世に歌って踊ってもらって終わりにしたいね」

「ええっ!? 歌って、ってのは聞きましたけど踊って、ってなんですか踊ってって!」

「いやね、この番組さ、車番組ではあるけど、仮にもお前アイドルじゃん? 番組内でってか、クルマん中で歌うことはあっても踊ることはないだろ? だからここはひとつ、アイドルとしての本気を歌しか知らんファンに見せてほしいという、心優しいプロデューサーの気遣いってわけよ」

「長いですし、今日ドライビングシューズですよ」

「もちろん、衣装は用意してある」

「えっ……」

「と言いたいとこだが、流石にな。靴はあるからパパっと履き替えて集合!」

 

 

 数分間、日比谷さんが間をつなぐと、ちらりと袖を見て、原田さんの準備を確認し、「本日はありがとうございました!」と最後に言ってから捌けると、346プロのファンなら聞き慣れたイントロが流れてきました。

 ファンの間では「課題曲」とも呼ばれるお願いシンデレラですね。

 

 

「一曲だけですが、楽しんでくださいねー! 行きますよー! お願いシンデレラ!」




184:名無しプロデューサー
この前のイベント、日比谷Pにパドック裏呼び出されたから、冗談半分で行ったらマジでるーみんと二人で居た。タオルとシャツにサイン貰えたし、あのPは神
ただ、去り際に見たら指輪してた。青いリングがるーみんと、(悔しいけど)Pに似合ってました

185:名無しプロデューサー
呼び出されたのはお前か!
しかし、裏山。今度からPを煽ればるーみんのサインが貰えるということか

186:名無しプロデューサー
>185 やりすぎんなよ
けど裏山

187:名無しプロデューサー
やっぱりるーみんは日比谷Pのものか……
けど、度量の広さは日比谷△

188:名無しプロデューサー
会場にいた上司っぽい強面の人、シンデレラプロジェクトのPだったぞ
声かけたらすげぇ渋い声で男の俺も惚れそうになった

189:名無しプロデューサー
どこかのアーチャーみたいなイケボ

190:名無しプロデューサー
パドックに止まってるフェラーリのオーナーらしい。
やっぱり346はエリート集団

191:名無しプロデューサー
けど指輪はない

192:名無しプロデューサー
>191 おい、おい、
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