Idol meets cars   作:卯月ゆう

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2年も間が空きました。



ep37

Idols meet motorcycle

 

 

「なんと、今日のDrive weekはバイク回です!」

「おー! 流石にバイク乗れるアイドルは少ないから久しぶりだな」

 

 346プロ駐車場での収録もすっかり慣れて、周りも「あー、あいつらか」みたいな反応をしてスルーしてくれる今日このごろ。

 それでもあたしの番組に縁遠そうな子がスタンバイしていると人目を引くものです。

 今日のゲストは免許取り立て愛車も買いたて。ヘルメットの後頭部に輝く初心者マークが眩しい……

 

「早速ですがバイク回、今日はゲスト2名ですが、ニューカマーの登場ですよ。免許取ってまだ1ヶ月。納車から3ヶ月の――」

「まてまてまて? 免許取る前からバイク買ったのか?」

「そう言ってましたよ。カッコいい! と思ったから止まらなかったと。一つ決めたら全力疾走みたいなところも彼女の魅力だと思いますよ? 今日のゲストは多田李衣菜ちゃん、そして木村夏樹ちゃんです!」

「おはよーございます!ロック・ザ・ビートの多田李衣菜です! 今日はよろしくおねがいします!」

「ロック・ザ・ビートの木村夏樹です。だりー、朝から飛ばしてるけど大丈夫か?」

「正直、昨日は楽しみと緊張で眠れなかったけど、さっきまで部屋で仮眠取ったから大丈夫だと思う」

 

 バイクといえばロック、ロックと言えばこのアイドル。そう、ロック・ザ・ビートの二人です!

 夏樹ちゃんがバイク乗ってるのは知ってましたけど、李衣菜ちゃんも免許取ったんですねぇ。おそらく夏樹ちゃんの後ろに乗せてもらったりしてハマっちゃったんだと思いますが、そのへんも詳しく聞いて行きましょう。

 まずは、挨拶もそこそこに愛車紹介からですね!

 

「さて、夏樹ちゃんは前にもDriveWeekに出てもらったことはあったけど、その時は車だったよね?」

「富士でオートテストやったときだな。あれば楽しかった。まだ美世にリベンジもできてないし、またやりたいな」

「その時はまた返り討ちにしてあげましょう。それでも、バイクは長いよね? 中免取ったのはいつ? やっぱり16?」

「いや、17の春くらいだったから誕生日直ぐってわけじゃないんだよ。卒検の一本橋でクシャミして転びそうになったのは忘れられないね」

「ふふっ。でも今は大型転がしてるんだもんねぇ。で、李衣菜ちゃんは夏樹ちゃんに憧れて、と……?」

「あははぁ、お見通しかぁ…… でも、何でもなつきちのマネって訳じゃないよ?」

 

 そういう李衣菜ちゃんの出で立ちは案の定と言うべきか、レザージャケットにジーンズと言う「いかにも」な組み合わせ。しかし、スリムなシルエットで揃えて女のコっぽいオシャレ感が出ているのが素敵です。

 後ろに並んでいる李衣菜ちゃんの愛車に合わせた組み合わせと言うのが嫌でもわかりますね。

 

「それが聞いてくれよ。李衣菜が『バイク用品店に連れてって』って言うから一緒に行ったんだけどさ、迷うことなくアイテムを選んでてね。普段のだりーなら『なつきちなつきち』って来るのかと思ってたら拍子抜けしたよ」

「李衣菜のイメージにピッタリだし、バイクにもあってて良いな。下しらべとかしてたのか」

「うん。お父さんに聞いたり、あとはみくちゃんにも選んでもらったりしたよ。やっぱりバチッと揃えるとテンション上がるんだよね!」

「みくがなぁ…… 悪いけどすごい意外だわ」

「普段からお互いに服を選んだりしてるから、そのノリで相談したら揃えてくれたんだ。『李衣菜ちゃんにはこういうシックでスタンダードなのがいいと思うにゃ』って。服だけ見てたら本当にどこにでもありそうで、ロックじゃないなぁ、って思ってたけど、着てみたらバッチリだったよね」

「みくのセレクトだったのか。確かに、シンプルだけどモノは良さそうだな。それもレザーは着込めば味が出るから、そうやって"育てる"のも醍醐味なんだぜ」

「ジャケットを育てる…… それってスゴいロックだよね! くぅーっ!」

 

 これは李衣菜ちゃんよりみくちゃんの方がずっとロック魂を理解しているのではないでしょうか……

 それはさておき、そろそろ愛車紹介と行きましょう。今回はバイクを持ってないあたしは借り物ですが、3人は自分の愛車で来てくれています。うーん、ジャンルもまちまち排気量も400から1300まで幅広く……

 

「それでは、オープニングトークもそこそこに皆さんのバイクを見せてもらいましょう。みんなカッコいいの乗ってますからねぇ…… 誰から行きましょうか」

「じゃ、李衣菜から自慢の愛車をアピールしてくれるか?」

「フフン、私が一目惚れしちゃったのはえーっと、カワサキ? のW400! 最初は古臭いかなぁとか思ったけど、よくよく見ると細かいとこまでキラキラで、磨けば光る感じが良いなって」

「ロックロック言ってるから、てっきりアメリカンに行くのかと思ってたがこういう路線も渋いもんな」

「そう! そのシブい感じがロックだよね。フォークロックみたいな感じ。スッと入ってくるんだよね」

「だりー、語るじゃん。確かにネオクラシックとかは今見ても一つの個性としてカッコいいし、それはバイクだけじゃなくて音楽もそうだよな」

「でしょでしょ?」

 

 李衣菜ちゃんの愛車はカワサキW400。すでに絶版になってしまったモデルだけど、現行のW800にも通ずる空冷パラレルツインのネオクラシックですね。

 スリムなデザインは女性ライダーを狙ってたとも言われているけど、中身は兄貴分のW650と同様のベベルギア駆動のパラツインでトップまで吹け上がる特性と軽い車体でトコトコツーリングからワインディングまでステージを選ばずに走れる一台です。

 李衣菜ちゃんのW400は赤黒ツートンのファイナルエディション。そこにレザーのサイドバックとメーターバイザーが追加されています。どっちもシンプルに実用的で統一感があるのが良いですね。

 

「そういう夏樹ちゃんはいつものカタナじゃないみたいですけど……」

「気づいたか? ってのも、1100が調子悪くてさ。実家に寝かせてるから、代わりにな。このKATANAも最高のバイクなんだぜ」

「現行カタナ実車見るのは初めてなんだが、すげぇコンパクトなんだな。昔のとは結構印象変わると思うが、オーナー的にはどうなんだ?」

「それが本質は同じってか、跨がった感覚が通じてるんだよ。もちろん、別物なんだけど、フィーリングは1100の先にあるんだよな」

 

 夏樹ちゃんのマシンは現行のスズキKATANA。GSX1100Sも持ってる筋金入りだけど、あっちはエンジン周りがちょっと調子が悪くなっちゃってお蔵入りに。あたしも少し見てみたけど腰下回りだったから手が出せなかったんだよね。その代わりに現行を買ったって言うのは知らなかったなぁ。

 GSX-S1000/FをベースにGSX系のカタナのオマージュを散りばめつつ現代的にアレンジされたストリートファイターで、ひと目でカタナだとわかるフロント周りに対してバッサリと切り落とされたシートカウルはモダンなデザイン。夏樹ちゃんのこだわりか、今日はシートバックはナシでバックパックを背負うスタイルで積載を確保するんだね。

 

「で、プロデューサーはサラッといきますね。いつもの赤いやつ」

「時々駐輪場見たことあるよ。目立つよね」

「やっぱイタ車はロマンだよな」

「コメント短いなオイ。もっとなんかあるだろ」

「いやー、型落ちですしすごく中途半端というか……」

 

 プロデューサーさんの愛車はドゥカティのパニガーレV4S。2019年モデルなのでフロントカウルにはウイングが生えてなくてスッキリした見た目です。

 しかし、革パン似合いませんねプロデューサー…… きっと熱対策で履いてるんでしょうけど、普段のスーツのイメージが強すぎてラフな格好してるときの違和感がすごいです。

 

「最後は美世だな。借り物って言ってたがメットは自前だよな?」

「ウェアはあたしのですよ。炎陣のみんなと乗ることもありますし」

「けどバイクは買わないよな。前から拓海たちと勧めてはいるんだが、なにか理由でもあるのか?」

「うーん、単純に車があるから満足してるってのが大きいですかねぇ。バイクも好きですけど」

「で、何借りてきたんだ?」

 

 あたしが今日お借りしたのはCB1300SB-SP。オーリンズやブレンボを装備した豪華仕様なCBです。今日はパニアバッグも付けたツーリング仕様でお借りしてきました。

 うーん、普通!

 本当に何も言うことがないくらいプレーンですね。尖ったところはなく、全体的にハイレベル。ステータスはオールAみたいな。

 

 

「CBとは、無難な選択だがそれがいい。ある意味、どんな方向にも振れる訳だし」

「教習所でお世話になったから、そのノリで市販モデル乗るとヤバいんだよな。友達のスーフォア乗ったときは驚いたぜ」

「うひゃぁ、でっかいなぁ。美世さん、これ乗れるんですか?」

「まぁ、たしかにデッカイし重いんだけど、慣れの部分は大きいかな」

 

 今日の仕様はトータル300kgオーバーも見えてくるヘビー級だけど、シート高はそんなでもないので、慣れてしまえばどうということはありません。とはいえ、163cmには持て余し気味なのは確かですが。

 

 

「ともあれ、早速走り出して行きましょう! 今日は李衣菜ちゃんにもツーリングを無理なく楽しんでもらうため、プロデューサーさんととっておきのツーリングルートを考えてきました」

「走行距離は100kmくらい。高速ワープするから、ゆっくり走っても2時間ってどこだな。目的地は…… 後で発表しよう。さて、今から出たら昼前にはつくから、ピークを外して美味いものにありつくとしよう」

 

 

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「だりー、付いてきてるか?」

「大丈夫。まだちょっと緊張してるけど」

 

 美世さんと日比谷Pの番組に呼んでもらって、なつきちも入れた4人でツーリングに来たわけだけど、まだ免許取って1ヶ月くらいしか経ってないし、近所を何周かしただけなのにいきなり高速道路は怖かった!

 みんなから、周り見て落ち着いて行けば平気、って言われたけどあんなにビュンビュン走ってく中に突っ込んで行くなんて怖くないわけないよね!

 今は首都高を抜けて東名の横浜あたり。首都高より広いけど車は多くてやっぱり緊張する……

 

 

「李衣菜、緊張すると力んだり視野が狭くなるから、少し深呼吸するといい。精神的にも疲れるしな」

「わかってますけどっ、トラック怖ぁ!」

「いやー、初々しくていいね! アタシも初ロンツーを思い出すなぁ」

「それでも、首都高にすぐ乗ったのはファインプレーだったと思いますよ。一人だったら下道で南下してから海沿いをー、とか考えますけど、もっと交通量多いし車も近いですから」

 

 美世さんの言うとおり、都内の交通量はすごくて、歩道から見てるよりずっと車が近くて驚くことばかりだった。

 プロダクションに行くにもいつもの道が全然違って見えたし、やっぱりバイクって楽しい。まだ怖いけど。

 

 

 

「次のインター降りてパイパスに入るからな。降りそこねるなよ」

「はいよ。聞こえたな、だりー?」

「あー、やっと高速降りられる。きんちょーしたぁ」

 

 横浜町田ICで高速を降りてバイパスへ。ただ、これも結局高速みたいな雰囲気。片側2車線あって、みんな飛ばしてて。

 そういう意味では、みんなに囲まれて守られてる感じはとても安心して走れてる気がするかな。

 さらに進んでヨコヨコドーロ(横浜横須賀道路)?ってのに入ったらだいぶ車も減って走りやすくなってきた。

 美世さん曰く、通行料が凄く高いから通る人が少ないとか。

 知ってる地名のインターをいくつか通り過ぎると、後ろのプロデューサーから次のインターで降りるように指示が出た。

 

「逗子で降りて16号に出よう。それから三笠で休憩だ。夏樹、道はわかるか?」

「オーケー、高速だけで横須賀はつまらないもんな」

「なつきちはわかってそうだけど、そろそろどこ行くか教えてくれてもいいんじゃないですか、プロデューサー?」

「ん? だりーは分かんなかったのか? 横須賀まで来て11時前、そんで昼前にうまいもん食えるって言ったら――」

「横須賀で海軍カレー?」

「いや、違うから……」

 

 

 

 美世さんから呆れられつつも、プロデューサーから告げられた目的地は三崎漁港。名前は聞いたことある……気がするけど、ツーリングで漁港行って、美味しいお魚食べられるなんて、何ていうか、凄くツーリングっぽい!

 ネットでよく見るのは、東北行ったり四国行ったり、フェリーに乗って北海道なんて、遠くに行くのばっかりだけど、こうして片道数時間の距離感が今の私にはちょうどいい。既に高速にも乗ったし、それだけで遠くに来た感を味わってる。

 美世さんやプロデューサーさんが初心者の私に気を使ってくれたルートってのがスマホで地図を見た今ならよくわかる。

 美世さんの言ってた下道で南下、ってのはまっすぐ横浜まで出てずっと海沿いを走ることなんだと思うけど、あの車の量は疲れそうだなぁ。

 1時間くらい走って休憩してる今くらいが程よい疲労感で、高速乗ってすぐに感じてた緊張も気がついたら薄れてきた気もする。

 

 

「李衣菜ちゃん、そろそろ行こうか。ここからは海に近いから、景色もいいと思うよ」

「はいっ!」

 

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 記念艦三笠から海沿いを走って数十分。やってきたは三崎漁港。ちょうど休日昼時とあって駐車場は結構な混み具合。そんなときでもバイクなら多少は止める場所の選択肢が生まれるのが良いところ。

 今回は収録だから前もって場所を取ったが、駐輪場も選べるし、時と場合によっちゃ、店の人に断って敷地の片隅を選ぶこともできる。

 

 

「くぁーっ! なんか手足とか背中がガチガチになっちゃいました〜」

「そればかりは慣れるしかないな。無駄な力が入ってると疲れちまうんだ」

「あっちのおじさんを見てください。もっと悲惨ですよ」

 

 美世の指差す先には、街灯の柱を掴んでストレッチをする俺。いや、だって仕方ないじゃない。SSは前傾辛いし、普段運動しないからガチガチなんだもん。あー、背骨がバキバキ言ってる。

 ともあれ、今日のゴールにたどり着いたら後はうまいもんにありつくだけ。

 漁港食堂でランチして、少しお土産を見て回ってから帰れば夕方には着くだろう。初心者李衣菜には明るいうちに寮まで戻ってもらわないといけないし、慣れないうちから数百kmのロンツーなんてするもんじゃない。1タンク余裕で行って帰ってこれるくらいが日帰りツーには丁度いいのだ。

 

 

「うーん、だりーのフライも美味そうだったな……」

「凄く美味しかった! なつきちのお刺身も豪華だったじゃん」

「確かに美味かった。けど、あのボリューム感には負けたな」

「じゃあ、また来ようよ。今度は炎陣のみんなも一緒に」

「いいねぇ。横須賀は他にもいいトコあるから、あちこち巡ろうか」

「いやー、仲良いですなぁ、プロデューサーさんや」

「全くですなぁ……美世さんや。ファンの皆さんもお腹いっぱいにしたところで、今日のDrive Weekはこの辺で。夏樹、李衣菜、今日は満足してもらえたかな?」

 

 いちゃつく二人をこちらに引き戻しつつ、まだ日が天高く登っている間に番組は締めよう。

 帰りもカメラは回すが、気を抜いてオフの雰囲気で帰ってもらいたい。収録だっていう緊張もできるだけ減らしてほしいのと、李衣菜はその方がいい絵が撮れるからな。

 

 

「だりーと初めてツーリングに来れて嬉しかったよ。何度も来た横須賀、三崎だけど、タイミングやメンツが変われば何度来ても飽きないね。さっきだりーとも話してたけど、炎陣のみんな誘ってまた来たいな」

「まだ免許取って何回しかバイクには乗れてないけど、こうやって高速に乗って、軍艦を見て、海沿いを走って、美味しいものも食べて、お土産も買って、『あー! ツーリング来たー!』って凄い充実してるんだ。さっきご飯食べてる時に、なつきちやプロデューサーから何度も『帰るまでがツーリングだ』って言われたし、まだまだ、気をつけて帰るよ。今日は最高に楽しかった!」

「ふたりとも満足してもらえたみたいで良かった。あたしも楽しめたし、所々で見られた李衣菜ちゃんの初々しい動きになんか初心を思い出したりして。ツーリング自体も久しぶりだったけど、やっぱりバイクも楽しいから、今後も時々バイク回やりましょうか」

「それは今後の検討事項だな。車に乗れるアイドルも少ないのに、バイクとなるとなぁ…… みくはまだ15だし、意外性なら卯月とか? 想像は膨らむが、この辺にしておこう。それでは皆さん」

『また来週〜!』




気がつけば社会人ウン年目、車も新車に買い替えて1年が経ちました。
早くもドイツ車2台乗り継いで……というと聞こえは良いですが、VWの中でUP→ポロと順当にステップアップしてます。オートマ、クルコン、android auto。なんでもついててドアも5枚。人権ですねぇ
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