クリスカが微妙にちょろインキャラになってるかもしれませんがユウヤも一応主人公なんだから恋愛原子核持ちって事でもいいよね!?(何
ユーノが自分達以外の島への潜入者を排除したのと同じ頃―――――
南国の海を一変させた嵐はグアドループ基地をも襲撃していた。
空を暗く染め建物に叩き付けられる強烈な雨風に対する被害を最小限に防ぐ為、全ての演習や屋外での任務は中止となりほぼ全ての人員が屋内から勝手に出ないよう厳命され閉じ込められている。
唯一の例外は基地を守る警備兵であり、最悪のタイミングで巡回を命じられた彼らは揃って自らの不運と全身を嬲る気まぐれな悪天候に対し悪態を吐いていた。
故に、警備兵以外にこんな状況で好き好んで雨風を凌げる場所から抜け出るような輩など存在しない――――筈だった。
「急げ、また巡回の兵が戻ってくるまでに目標を確保するんだ!」
一寸先をも覆い隠そうとする暴風雨吹き荒れる屋外を進む数名の男達。
雨脚が強烈過ぎて殆ど役に立っていないレインコートの下には完全武装の戦闘服を身に纏っている。装備は全て国連軍のそれであり、またその中身……装備を身に着けている男達も所属自体はれっきとした国連軍の所属であった。
ただ忠誠を誓っている相手が違うだけだ。
「島の連中も別働隊が確保に動いてる。両方とも確保出来なければ意味がないんだ、失敗しようものならクリストファー少佐に何をされるか分かったもんじゃないぞ」
足音も自分達の痕跡もこの豪雨が全て洗い流し、覆い隠してくれる。
その点でいえばこの天気はありがたかった。雨のせいで警備兵に視認される可能性も大分低くなってはいるが、それはこちらも同じ条件だ。なるべく迅速に任務を完了しなければならない。
「警戒しろ。そろそろソ連軍の警備区域に入るぞ」
リーダー格の男が警告しながらも先頭に立って足を進めていた、その時である。
バキリ、と生木が折れたような音が雨粒と強風の大合唱の中でもしっかりと男の耳に届いた。誰かが不用意に踏み折ったのか、忌々しげに男は後ろに付いて来ている仲間の元へと振り返る。
ヘルメットの上にフードを被った仲間の後頭部が見えた。ふと違和感を覚え、一拍置いてその理由を悟る。
――――首から下は正面を向いていた。仲間の頭部だけが180度真後ろを剥いていたのだ。生木が折れたような音は仲間の頸椎が強制的に捻り折られた音。頭だけ前後逆を剥いた仲間の死体が、糸の切れたマリオネットの様に力無く水溜りの中へと崩れ落ちる。
「何――――」
続けて他の仲間達の頸椎も悉く粉砕されていった。奇妙なのは曲がりなりにも心身を鍛えられてきた屈強な軍人である彼らの命を刈り取っていく存在の正体がまるっきり不明な事である。
「な、な、な……!?」
正体不明の死神に対する本能的な恐怖心から男は腕の中のブルパップ式アサルトライフルを持ち上げた。縦坑にはサイレンサーがねじ込んであるが、流れ弾が人の居る建物に飛び込めば騒ぎは避けられない。
男の頭からそんなリスクなどとうに吹き飛んでいた。恐怖に駆られるまま引き金を指をかけた。
不意に男の頭が見えない何かに抱え込まれた。まるで鋼鉄の万力そのものに締め付けられているような感触。
それが男の最期の記憶だった。頭蓋骨ごと男の頭が直角に倒れると雷に打たれたかのように1回だけ大きくビクン!と身体を跳ねさせ、すぐさま男の肉体は全ての生命活動を終えた。
数秒後、全ての不審者の排除を終えたと確認したゼロスはデバイスモードのリベリオンに透明化用の幻術魔法を解除させた。
髑髏を形取ったトレードマークの鉄仮面の下で小さく囁く。
「……Good night」
敵対者には永久の眠りを。それが彼ら異界からの
TE-14:ダークブルー(4)
ユーノが洞窟に戻ってきた。
出て行く時には手ぶらだったのだが、戻ってきた彼は肩からクーラーボックスを、そして手には釣竿を持っていた。何でも元々釣りをしに海を出て行ったという話なのでユウヤも唯依も特に違和感は覚えなかった。
問題はクリスカである。ユーノの姿が再び洞窟に現れるなり目に見えるぐらい大きく震え、少しでも彼から距離を取ろうと後ずさりするなどといったあからさまな反応を見せる彼女を、ユーノはといえばやはり薄笑いを浮かべ続けるだけで何も言わない。
そんな反応が、クリスカにとってもまた彼女からユーノの本質らしきモノを教えられたユウヤと唯依にとってもいっそ不気味であった。
自然、彼らの間には険悪とまではいかないが少々不穏な気配が漂っている。
そんな中、ボンヤリと小さく爆ぜる焚火越しにユーノを密かに見つめていたユウヤは思考を巡らせる。
「(そういえばユーノ……いや、コイツだけじゃない。ゼロス達が軍に入る以前の過去について、俺は何も知らない)」
本当はユーノが単なるBETAに国を追われただけの難民上がりでない事はユウヤも昔から分かっていた。幾ら軍人とはいえ銃創や爆弾による負傷の名残を肉体に刻み付けた人間など、表向き宇宙からの侵略者としか戦争をしていないこの世界では極めて珍しい存在なのだから。
ゼロスもまたそう。現合衆国大統領の1人息子にして、大規模侵攻を受けた日本の地で生死を彷徨う重傷を負いながらも所属部隊の中でただ1人生還してみせた猛者――――以上。入隊以前の話を彼の口から聞かされた事はない。
リベリオンは更に輪をかけて謎の存在で、どうやってあれだけの知識と技術を蓄えどういった経緯でユーノと共にゼロスに拾われたのかは全く謎である。
彼らの繋がりの深さは単に拾った拾われたという関係からは程遠い。まさに何年にも渡って肩を並べて戦い続けてきた古強者の戦友同士のような、強固な信頼関係がハッキリと透けて見える。きっと彼らはユウヤには与り知らない大きな秘密を共有しているに違いなかった。
白状してしまうと、そんな彼らの信頼関係を度々見せられてきたユウヤは疎外感に襲われる事が度々あった。
「(でも
そう、日本人の血を引いているからといって一々その事を引き合いに出したりもしないし、蔑みもしない。
しょっちゅう振り回されはするがそこに悪感情など決して含まれてはおらず、馬鹿をやったり無理無茶無謀を繰り広げつつ目標に向かって突き進むだけの……迫害の対象である
少なくとも今はそれだけで十分だった。興味が無いと言えば嘘になるが、ゼロス達の過去を必要以上に探ろうとも思ってはいなかった。
誰だって痛くはない腹を探られたくはないだろうし――――勘ではあるが、秘密は持っていても騙してはいないだろうとユウヤは半ば確信していた。
「(……つっても、
2人の美女もまた焚火を挟んで頻りにユーノへと視線を投じていた。果たして当のユーノはそれに気づいているのか、変わらぬ薄笑いを浮かべた表情からは全く読み取れない。
こういう人間関係の調整はヴィンセントが適任だろうに、とこのような状況に投げ込まれた自分の不運を声に出さずユウヤは嘆いた。
唐突にそれなりに大きめの音量の腹の音が洞窟内に響いた。
「そういえば腹が減ってきたな。この島に上陸して一体どれだけ経ったんだ…?」
「フン、軟弱な」
2度目の腹の音。今度はきゅう、と可愛らしい音色で、一同の視線が発生源である銀髪の少女へと注がれた。
特にたった今なじったばかりのユウヤから生温かい視線を送られてしまったクリスカは、白磁の様な肌を僅かに手に染めて彼から視線を逸らす。
「…無理すんな」
「クッ、そのような目で見るんじゃない!」
「だったら釣ってきた魚が残ってるけど食べないかい?サバイバルキットの保存食は一応節約しておいた方が良いし、放っておいても痛むだけだからね」
ユーノの提案でクーラーボックス内の鮮魚を調理する事に。といっても実際にはサバイバルキットに同封されていた護身用ナイフを使って腸を抜き鱗を取り除き、薪を細く削った串に刺して焚火で炙るだけのシンプルな焼き魚だ。
「ほら、食べろよ」
「………」
またもプイ、と顔を背ける。ユウヤが差し出した焼き魚をクリスカは受け取ろうとしない。
「腹減ってんだろうが。維持張ってないで食べとけよ」
「……低俗な資本主義者からの施しなど受けん」
「いやそれとこれとは関係ないだろうが!?」
「ふん…!」
ユウヤの怒声に更に意気地になったのか、決してクリスカは視線を合わせようとしなかった。交歓会でのタリサとイーニァの口論を髣髴とさせるやり取りだ。
そんな光景を見せつけられた唯依は頭痛を堪えるように額を押さえながら、仲裁に入る。正確にはユウヤ側に立ってこう告げただけだ。
「これは命令だビャーチェノワ少尉。食べられる内に食べておくのも軍人として重要な事だ」
「タカムラ中尉の言う通りだ。えーっと、確かこういう時は……そう、『腹が減っては戦は出来ない』だったよな?」
「はらがへっては?どういう意味だ?何かの諺の様だが」
「しっかりと食べておかないと、いざという時動きたくても動けないって意味さ。出来たら食べておいた方が良いと僕も思ってるよ。毒が入ってる訳でもないしね」
「……命令というのならば仕方ない
上官2人からの追撃に渋々といった体で受け取ると小さく焼けた身にかぶりついて食べ始めた。小動物を連想させる食べ方で意外と可愛らしい。
無駄に心労が嵩んだユウヤは小さく溜息を漏らした。それから何とも言えない視線を感じた気がして顔を動かしてみると、微妙に口元を緩めた唯依の顔が炎の向こう側に在った。
「どうしたってんだ一体」
「き、気にしないでくれ」
日本嫌いなユウヤがどういう訳か日本の諺を知っていて使ってくれた(尤も海外でも似たような格言が存在しているのだが)、些細な事かもしれないがそれが無性に嬉しかった――――等と素直に白状できるほど唯依は天真爛漫ではないのが悲しい所である。
「大分風が止んできましたね」
「うん、この分だと陽が上る頃にはまたボートで出発しても大丈夫なくらいには海も落ち着いているだろうね。今日中にはみんなの元に自力で戻れそうだ」
「海……か……」
「おい、大丈夫か?また顔色悪くなってきてるぞ。昨日もぶっ倒れたんだからあんまり無理すんなよ」
洞窟の広さと配置上近くに居るせいかクリスカの異変にユウヤは目ざとく気付く。そして唯依もまた。
そういえば、と唯依は昨日の出来事を思い出す。クリスカだけでなくイーニァも激しい動揺を見せるようになったのはボート競走で沖合に出る事が決定してからだった筈だ。
もしやと思い問いかける。
「ビャーチェノワ少尉は――――海が苦手なのか?」
途端、クリスカが大きく身体を震わせて動揺を見せる。ユウヤと唯依も日頃冷徹然と振る舞うクリスカが初めて見せる恐怖に怯える幼子のような雰囲気に面食らってしまった。
「……ああ………ああそうだ。私が海が怖いんだ。私もイーニァも海を見るのが初めてで……」
「初めてってお前、もしかしてユーコンから外に出た事が無いのか?」
「いや、そういう訳ではない。それに見るだけなら問題は無いんだ。だけどこんなに近くで目にするのは初めてで、沖に出た途端あんなに巨大で深い水の塊に引きずり込まれそうなそんな恐怖に襲われてっ……!」
海のど真ん中で意識を失った理由と怯えの理由を吐露されたユウヤがまず抱いたのは、『意外』という名の驚きの感情だった。
ユウヤにもクリスカの気持ちは理解できた。彼もまた世界屈指の大渓谷の崖っぷちに立った時や、初めて戦術機で高空に舞った際などに似たような錯覚を味わった事がある。
広大な大自然に対する己の小ささと言いようの無い孤独感。ユウヤが、そしてクリスカが感じた感覚を具体的に説明する事は極めて難しい。千遍他人から聞かされても、あの瞬間の感覚だけは直接体感しなければ真に理解する事は出来ないだろうとユウヤは思っている。
ただユウヤが驚いたのは別の理由だ。
あの共産主義流の愛国心の象徴のようなクリスカが―唯依が日本人形ならばクリスカは氷を削って作り上げた女神像だ―まさか自分と同じような感情を覚えるとは!
「何だその目は、ユウヤ・ブリッジス。何が可笑しい!?私の無様な姿を嘲笑っているとでもいうのか!!」
いきなり目尻を吊り上げて噛みついてきたので戸惑ったが、顔に手を当ててみてユウヤはようやく自分が僅かに口元を綻ばせていたのを実感した。
はぐらかすのは逆効果臭そうなで正直に白状する。
「嘲笑ってなんかいやしないさ。ただ意外だっただけでな」
「何が意外だというのだ……」
「お前さ、事ある毎に周りで噛みついてばっかりだろ。同じソ連軍の仲間相手でも固っ苦しく肩肘張り続けてるみたいだしな。そうやって皆に壁作ってばかりだったから、むしろそんな感じで弱みを曝け出してるのが意外だったというか」
「…っ!」
顔を更に赤くして今にも掴みかかりそうな剣幕に顔を歪めるのを見てむしろこちらの方かマズったか!?とユウヤは冷や汗を浮かべた。慌てて弁解する。
「べ、別にそれ自体が悪い事とは俺は思っちゃいないぞ!?」
「何だと?こんな私の無様な姿など、偉大なる国家への裏切り以外の何物でもないではないか!」
「だからそうじゃなくて!俺が言いたいのはな、そうやって少しは俺達にも弱みを見せてくれた方が良いって言いたいんだ!」
怒りの矛先を逸らそうと必死なせいか勝手に口が動き出す。
「……幾ら元の所属が違っても、今の俺達は仲間同士なんだ。俺も人の事言える立場じゃないが、これから先肩を並べて戦っていく事になるんだったらそんな必要以上に肩肘張ってばかりじゃ不和の元になりかねないし―実際そうなってるしな―逆に素直に弱みとか曝け出してくれた方がこちらもフォローしやすいし、何よりそっちの方がまだ人間味があってとっつきやすいと俺は思ってる」
ああクソ、何ガラでもないこっぱずかしい事言ってるんだ俺は。段々と恥ずかしくなってきてお声が大きくなるのを抑えきれなかった。
「とにかく俺が言いたいのはだ!」
「……っ」
「今の俺達は仲間なんだ、だからもっと俺達を頼って背中を預けたっていいんだ!今だってこうして俺も、ユーノも、タカムラ中尉だって居る。お前も、イーニァも、お互い2人きりしか仲間が居ないって訳じゃねーんだよ」
「………」
「勝手に孤高気取って孤立するよりは、仏頂面の仮面なんか捨てて仲間とバカやる方がずっと楽だし、今まで見えなかった事も見えるようになると俺は思ってる。その方がイーニァの為にもなるかもしれないしな」
そんな甘言に惑わされるか――――そう言ってやりたかった。
にもかかわらず、クリスカの口は動いてくれなかった。今のユウヤの言葉には脊髄反射的な反論を抑え込むだけの重み篭っていたからだ。当たり前だ、今ユウヤが放った言葉はかつてグルームレイクで同じように孤立し、ゼロス達に出会う事で変われた自分の事でもあるのだから。
――――ユウヤの感情は伝わってくる。彼は本気だ。本気でクリスカとイーニァの事を真摯に思って言ってくれているのだ。
このような感情をイーニァ以外から向けられるのは初めての経験だった。そう自覚した途端、急に胸元を大きな衝撃が走る。
「(な、何なんだこの胸の苦しさと身体の熱さは!?)」
アドレナリンが大量分泌したかのように心臓が大音量で速いビートを刻み、顔から胸から手足まで熱湯が体内を巡ったみたいにカァーッと火照り出した。ユウヤの顔をまっすぐ見つめる事が出来ない。
「ビャーチェノワ少尉、また顔が紅くなっているぞ。やはりまだ体調が優れないのでは……」
「あ、ああ、もしかするとそうかもしれないな、すまない」
「オイオイ、だから無理すんなって言っただろ。ホラ、ちょっと計(はか)らせろ」
ユウヤが身を乗り出してきたと思った次の瞬間、彼の手は銀糸の様な美しい前髪を持ち上げてクリスカの額に乗せられていた。
アメリカ人とのハーフからか、東洋系にしては彫りが深いユウヤの顔立ちがさっきよりも近くにある。伝わってくる彼の体温は長い間水着姿に晒されていたクリスカには酷く温かく思えた。
「~~~~~~~~~!?!!!?」
「うおっ、やっぱり熱あるんじゃねぇか!かなり高いぞ!」
「くっ、やはりあれだけの雨に打たれ続けたのが不味かったか!?」
「違う、違うんだ。そうではなくて……!」
慌てるユウヤ歯噛みする唯依。ユウヤの手の平に額を触られたままのクリスカはこれ以上ないほど情けない悲鳴を漏らしながら何故か固まったまま。
米軍と帝国軍とソ連軍、三者三様の衛士達が大騒ぎする光景をユーノはまるで子供達のじゃれ合いを眺める父親の様な目で、敢えて何も言わず眺め続けた。
――――騒ぎが収まる頃には朝日は昇り、ユーノの言っていた通り海も昨日の昼間と変わらぬレベルの穏やかさを取り戻していた。
「ど、どうして私がこんな目に……」
「どうしたもこうしたも、篁中尉達が遭難してスケジュールが狂った分の穴埋めの為でしょう?」
「それは分かっています!ですがアレはどういう事ですか!?」
唯依が指差す先、そこに広がっているのは遭難の責任を取るという名目で水着撮影に引っ張り出された唯依達を見物に来た野次馬共の人だかりであった。
その中にユウヤを筆頭としたアルゴス小隊やゼロス達実験部隊のみならず、唯依と共に参加してきた帝国軍の人間も多数含まれているのを目ざとく見つけた唯依は、今すぐこの場から逃げ出したい衝動に駆られていた。
但し本来今回の後方任務の責任者であるオルソン大尉の姿は見当たらない。『急病』だと唯依は聞かされている。スケジュールの遅延による心労で倒れたのではないかとも噂されており、それを思い出すたび唯依の精神状態はどん底に落ち込んでしまう。
そんな崖っぷちに追い詰められた心境の唯依を宥めていたリベリオンは彼女の肩に手を置いた。2人とも露出の多いビキニタイプの水着姿であった。特にリベリオンなど布地に比べて膨らみの大きさが吊りあっておらず、大きく横にはみ出した柔らかな膨らみが扇情的であった。
色気たっぷりなリベリオンの肢体に加え、胸のサイズは若干劣るものの平均以上に発達した男好みの豊かなスタイルを持ち合わせていながら必死に隠そうとしている唯依の姿に嗜虐心を刺激されたギャラリーのテンションは鰻上りである。
「まぁまぁそう言わずに。日頃篁中尉の命令通りに働いている部下達の慰問も兼ねていると思えば良いじゃないですか。私やビャーチェノワ少尉達も一緒なんですし」
「それはそうですが……時にビャーチェノワ少尉とシェスチナ少尉の『アレ』は一体……」
唯依とリベリオンから少し離れた場所では愛機とのツーショット写真を撮影中のクリスカとイーニァの姿。
彼女達もまた水着姿なのだが、色気重視の唯依・リベリオン組とはまた違う方向性の水着であった。
余計な装飾が無いピッチリとした紺色のワンピース風デザイン。隆起の規模は違えど中々豊かに持ち上がった胸元に張り付けられたゼッケンには『くりすか』と『いーにぁ』、ひらがなで2人の名前が。
――――何処からどう見ても完全無欠のスクール水着であった。
「何故あの2人はあのような格好なのですか!?」
「私の趣味です!日本から直輸入した本物のビンテージものですよ!」
「大尉ー!!?」
まさかオルソン大尉が倒れたのはこの人にも原因があるんじゃ……そんな想像に慄(おのの)く唯依。ダメだこの上官何とかしないと。
群衆の中に唯一この暴走大尉を止めれそうな銀髪中佐を見つけたので必死の祈りを込めてアイコンタクト。この人何とかして下さいよ上官なんでしょう!?
……え、こうなったら止められないから諦めろ?そんな悲痛な表情で首を横に振らないで下さい中佐殿。
「篁中尉もそんなに恥ずかしがらず楽しめば良いじゃないですか。その水着も似合ってますよ」
「どう考えても楽しめません!」
「そう言わずに。ほらユウヤも見てますよ」
「っ!!?」
指摘されて勢い良く顔を上げた唯依の視線が、ヴィンセントやヴァレリオ達に押されて最前列まで押しやられてきたユウヤとぶつかり合った。「何か言ってやれよ」と更に2人のVがユウヤを小突いている。
ハァと疲れた溜息を漏らしてから、ユウヤは照れ臭そうに頬を掻きながら口を開いた。
「まぁ、何だ――――そういう格好も似合ってるぜ、篁中尉」
興奮状態の観衆があちらこちらでざわめいているにもかかわらず、ユウヤのその言葉だけは何故かしっかりと一言一句漏らさず唯依の耳へと届いた。
一拍間を置き、ボンッ!と唯依の頭が沸騰した。
初々しいカップル二しか見えない2人とそれを冷やかす仲間達の騒動を、クリスカは目を細めてじっと眺めていた。
そんな彼女の手の中におもむろにイーニァの小さな手が滑り込んでくる。視線を下げると自分を覗き込むくりくりと大きな妹分の瞳と目が合った。
イーニァには余計な心配と苦労を掛けてしまった。その分の謝罪も込めて慈しむような微笑を浮かべながら前髪を救い上げるかのように頭を撫でてやる。
――――己のその動作に無人島の洞窟内でユウヤの手の平に触れられた時の事をつい思い出してしまった。勝手に顔が熱くなり胸の鼓動が早くなってしまう。どうしてか自分を制御する事が出来ずクリスカは酷く戸惑ってしまう。
隣に居るイーニァに内心の動揺を悟られまいとクリスカは面に出さないよう努力したつもりだったが、無駄な努力に過ぎなかった。
「よかった、クリスカもユウヤとなかよくなれたんだね」
「い、イーニァっ」
姉の滅多に見られない表情……恥ずかしさに顔を真っ赤にしながらも、まったく嫌な感情が伝わってくる事無く慌てた様子のクリスカにイーニァはとても楽しそうに微笑んだ。
「クリスカもいっしょにユウヤのところにいこっ?」
「うっ…………」
凍り付く事しばし。
たっぷり数十秒間微動だにしなかったクリスカはやがて酷く恥ずかしそうに、しかししっかりと柳眉な曲線を描く頤を下へと動かした。
「………分かった。イーニァがそう言うのだったら……」
捕捉:前回ユーノが使った銃はクーラーボックスの二重底に隠してあります。
さて今後ですが、少々迷っております。
このままアニメ版張りにさっさとロシアに行くか少しオリジナルの展開を挟むか、どちらが読みたいでしょうか?
オリジナル展開では横浜基地を舞台にオルタ勢を登場させる予定なんですが、ちょっとアレな展開と言いますか、もしかすると原作キャラを蔑ろにしていると思われかねない内容になりそうなんです。
個人的には書いてみたい話なのですが、とりあえず読者の皆様の意見に委ねてみようと考えております。
出来れば感想ついでに質問の方を答えて頂ければ幸いです。
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