The Outlaw Alternative   作:ゼミル

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TE編2:篁唯衣の遭遇

フェニックス構想とXFJ計画。

 

どちらも大雑把にひっくるめてしまえば、既存の戦術機の改修・グレードアップを実現する為の研究だ。

 

フェニックス構想は第2世代機のベストセラーであるF-15<イーグル>をボーニング社の主導で、XFJ計画の方は日本帝国軍が運用するTYPE-94<不知火>を日米合同で強化していくプラン――――

 

 

 

 

というのがユウヤがユーコン基地を訪れて初めてのブリーフィングで聞かされた大まかな内容である。出発前にリベリオンから教えられた内容と何ら変わり映えしないというのがユウヤの正直な感想。

 

こう言ってしまうと確実にこれから共に働くアルゴス小隊の面々からの顰蹙を大いに買うのは間違いないだろうが、フェニックス構想の方はユウヤは然程興味を抱く気にはならない。

 

何故なら既に既存のF-15を改修・強化するという考えがここユーコン以外でも実行され、現実に達成された姿をユウヤは目の当たりにしているのだから。

 

 

「そっちが作った『アサルト』と『ブラスト』以外にも他がイーグルの改修型なんて作ったりしてたんだな」

 

「ボーイングの方はG弾などのBETA由来の技術応用に傾いたせいで予算を削られた戦術機開発部門を立て直す為の苦肉の策で提案したそうですよ。我々にとっては単なる商売敵の最後の足掻きでしかありませんけどね」

 

 

ブリーフィングルームの最後尾の列で隣のリベリオンとヒソヒソ話を交わす。

 

F-15・ACTV以外にもF-15の強化改修機は開発され、既に実戦配備が開始されているのをユウヤは知っている。というか、開発者が誰かも良く知っている。

 

 

 

 

新興企業のバニングス・インダストリーズが開発したF-15EX<アサルト・イーグル>並びにF/A-15<ブラスト・イーグル>。

 

リベリオン・テスタロッサこそが、バニングス・インダストリーズから鳴り物入りでアメリカ陸軍へと出向してくるやいなや、見事F-15の強化改修機を完成させてみせた張本人なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TE-2:篁唯衣の遭遇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美女の絹の如く滑らかな肌を水滴が滴り落ちていく。

 

もしその様子を見ている物がいたならば男はその完璧に整ったスタイルに口笛の1つでも吹き、同性であればその美しさに溜息を漏らしただろう。

 

そしてその芸術品の様に整った肢体の持ち主・・・・・・篁唯衣・帝国斯衛軍中尉は自身がそんな美しさの持ち主である自覚など殆ど持たぬまま手早く全身から水滴をバスタオルで拭いとった。

 

 

「ふう・・・」

 

 

長旅直後のシャワーで積もった垢と疲労感をさっぱりと洗い落とせた事に満足した唯衣は、丈の短いバスタオルを巻いただけというあられもない姿のままベッド傍へと歩み寄る。

 

小さな棚の上に置かれていたのは読みかけの資料――――XFJ計画に関わる主な衛士に関する情報だ。

 

丁度開かれていたページにはユウヤの写真。それを改めて穴が空きそうなほど見つめた唯衣は、やがて溜息を吐きだす。

 

 

「この男が―――・・・・・・」

 

 

今後のXFJ計画、そしてひいては日本帝国の戦況の今後の行く末を決めるかもしれない存在だと考えると、唯衣の背中にズシリと今から重荷が圧し掛かってくる。

 

しかもユウヤだけではない。いや、むしろユウヤと共に米軍から派遣されてきた『彼ら』の存在こそが、真に運命を握っていると言い換えても良いかもしれない。

 

唯衣の意識は数時間前の出来事・・・・・・・ユウヤとアルゴス小隊の間で行われた対人演習へと遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

演習の一部始終を記録・見物する為の指揮車両に『彼ら』がやってきたのは唯衣よりも後だった。

 

彼らはアルゴス小隊の先任中尉であるイブラヒム・ドゥール中尉と共に、さっきまでブリーフィングルームに出向いていたからだ。

 

 

「シルバーフィールド中佐、紹介しましょう。彼女が『XFJ計画』における日本側の開発主任であるユイ・タカムラ中尉です」

 

「帝国斯衛軍所属、篁唯衣中尉であります!」

 

「合衆国陸軍所属、ゼロス・シルバーフィールド中佐だ。よろしく頼む」

 

 

定規と分度器で測ったかのような完璧な角度の敬礼をしてみせた唯衣にゼロスも一応きっちりとした答礼を返す。

 

次にゼロスの取った行動に唯衣はその意味をすぐに理解できず反応が遅れた。

 

あまりに自然過ぎて差し出された手が握手を求めていると悟るまで数秒の間。我に返って泡を食いつつ彼女はその手を握る。

 

 

「個人的には長い付き合いを続けていきたいと思ってるから、よろしく頼むぜ」

 

「は、はあ」

 

「んでこっちがリベリオン・テスタロッサとユーノ・スクライア。俺の長年の相棒と戦友で階級はそれぞれ大尉と中尉な。特務、がつくけど」

 

「よろしくお願いしますね、篁中尉」

 

「よろしくね、篁中尉」

 

「は、はい!いえ、あの、こちらこそ!」

 

 

何というのだろう。堅くないというか、軍人らしくないというか、とにかく気負ってたのにいきなり出鼻を挫かれた気分に篁は陥る。

 

これもアメリカの国民性であるフレンドリーさって奴なんだろうか、とちょっと混乱。

 

しかし直後、唯衣は更なる混乱と驚愕に襲われる羽目になる。

 

 

「あ、ところでそのコーヒー、貰ってもいいか?」

 

「へ?は、ははい今お入れします!」

 

「いや、別に自分で淹れるからいいって。他にコーヒー飲む奴居るかー?」

 

 

と至って当然の様にそう聞かれても言い出す人間は1人も居ない。

 

当たり前だ。この部屋でただ1人の佐官に対して、気軽にコーヒーの注文を頼める軍人が居る訳・・・・・・

 

 

「あ、それじゃあ僕も貰うよ」

 

((((((って居た―――――――!!?!!!?))))))

 

「ユーノだけか?砂糖とミルクはどうする?」

 

「角砂糖3つ。ミルクは抜きでお願い」

 

 

これまた普通に『大尉』が注文を出して『中佐』がさっさと自ら彼に手渡すその光景に堪らず眩暈ががが。

 

様子からして彼らは立場を超えたずっと長い立場なのだからそれでいいのだろう、と唯衣は半ば無理矢理納得する事にした。自分だって巌谷の叔父様と似たようなものなんだし。

 

 

「・・・そろそろ始まるようですな」

 

 

空々しく呟かれたイブラヒムの言葉に、唯衣は慌てて液晶ウィンドウに向き直る。

 

 

 

 

 

 

 

 

イタリア、スウェーデン、ネパール―――――BETAによって国土の奪還を目指す国々から選ばれた者ばかりなだけに、対人演習中のアルゴス小隊の面々の機動はどれも目を見張るものがあった。

 

一方、件の米軍から派遣されてきた衛士、ユウヤ・ブリッジスの動きはというと悪くはない。むしろ実戦経験の無い身でありながら他の3名と拮抗した腕前と言って良い。

 

なのに別のウィンドウに表示されている当の本人の表情は苦虫を噛み潰したような様子で・・・・・・これは動揺、だろうか?

 

意識せずマイクに拾われた独り言が指揮車両内にも響く。

 

 

『クソ、OSが古いのに戻っただけなのにこれだけトロく感じるのかよ・・・!』

 

「何だって?」

 

 

ユウヤの発言に心当たりがある唯衣はゼロス達の方に目を向けた。リラックスした様子だが、そこからは今の部下の言葉に対する感想を何も読み取らせてくれない。

 

画面の中で事態が動きだしたのでまた視線をウィンドウへ。ヴァレリオの操るF-15E<ストライク・イーグル>が同じくユウヤのF-15Eと接敵。

 

ユウヤの仕掛けたスモークから見事な操作で離脱するのと入れ替わりに、タリサの操るF-15・ACTV(元はドゥール中尉の機体でユウヤに宛がわれる筈だったが搭乗経験の差からユウヤ本人が入れ替えを希望した)、が頭上からユウヤに襲いかかる。

 

ユウヤの反撃によりタリサは突撃砲を失うが、ビルを足場にして飛び跳ねるという機動で機体そのものへの被弾を免れてみせる。

 

そして始まるドッグファイト。ビルの谷間を部隊にユウヤが逃げ、タリサが追いかけるという格好。

 

 

『待ちやがれー!』

 

『こんな時にっ!』

 

 

逐一届く操作ログからはユウヤが弾切れになった背部兵装担架の突撃砲を切り離そうとした事を示しているが、代わりに動作不良によるエラーが表示されていた。

 

しかしユウヤには大した動揺や焦りは見られない。むしろ何かを待ち侘びるかのように、

 

 

『狙ってるんだろ、そうだ、そのまま追ってこい・・・・・・』

 

 

前方にコンサートホールが迫る。スピードを御し切れず手前で曲がらなければ建物に激突、しかし減速すれば撃墜が待つチキンレース。

 

ここぞとばかりにACTVが備える4発の大出力エンジンが本領を発揮し、F-15Eのいわゆる後方危険円錐域を取ると短刀をその手に装備。曲がる為に減速しようとすれば即座に襲いかかる気満々なのが見え見えである。

 

もはや建物は目前。ここだ、と直感したタリサは一旦上昇してから急降下。前方のF-15Eへと一気に飛びかかった。

 

 

『もらったああぁぁぁぁぁ――――――!!!』

 

 

 

 

――――だが予想は覆される。

 

F-15Eは殆ど減速しなかった。

 

 

 

 

 

『うおおおおおおおおっ!!』

 

 

跳躍ユニットは斜め下を向くと一瞬だけ爆発的に推力を発生させ、機体を斜め上へと急激に押し上げる。タイミングを合わせられ、ACTVの短刀は地面だけを傷つけ根元から折れる。

 

傍から見ていた唯衣は、ユウヤが引けに引けず減速の代わりに自爆を選んだのかと驚愕したが、それも違う。

 

F-15Eの主脚が持ち上がり、コンサートホールの壁面を蹴った。衝撃を主脚で受け止め跳躍ユニットを細かく噴かす事で打ち消す。

 

操縦桿を握る手の動きはまだ止まらない。壁面を更に数度蹴り上がりながら、主脚を思い切り振り上げさせた。

 

次の瞬間、操作された脚部の遠心力によってぐるん!とF-15Eの上下が反転。180度逆転した所で、向きを変えないまま再度跳躍ユニットに火が入る。

 

逆上がりと三角飛びを組み合わせた様なアクロバットにより、宙返りしながらタリサの頭上を飛び越えるという形で文字通り彼女の上を行く。ACTVの頭上を越える際、片手に保持していた突撃銃から模擬弾をばら撒くというおまけつきで。

 

ちなみに120mmの方に装填されていたのはキャニスター弾。発射後即炸裂する様設定してあったので、ACTVの頭上に狙い通りまんべんなく中身を降り注いでみせた。

 

 

「何ぃぃぃぃぃっ!?」

 

 

タリサの絶叫と共に、機体のてっぺんから肩部装甲の上半分が見事なまでに黄色に染まる。

 

 

『――――アルゴス2、頭部・両肩部大破認定。状況終了』

 

 

イブラヒムの終了通告は、タリサにとってはあまりに無情であった。

 

抗議の雄叫びを上げるタリサを余所に、1人ごちたユウヤのその内容は、

 

 

『・・・こちとらもっとおっかないのに散々追っかけまわされてきたんだ。自慢にはならないがな』

 

 

それを聞いて小さく笑いを漏らしたのはリベリオンとユーノ。

 

何笑ってやがる、と言いながらも自覚したようにそっぽを向くゼロスの反応がまた、何処か軍人離れした気安い雰囲気だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああいったのもまたこの国(アメリカ)独特の人間関係を示しているという事なのか・・・?」

 

 

ブツブツと口に漏らしながら、アルゴス小隊の経歴書の下に隠れていた別のレポートを手に取る。表紙には部外秘のハンコ。

 

今目を通していたのは各軍に問い合わせる事で簡単に手に入れる事が出来た『表』の書類だが、こちらは帝国情報省、つまり自国の諜報機関がまとめた調査資料である。

 

調査対象はゼロス・シルバーフィールド、並びにリベリオン・テスタロッサとユーノ・スクライア。

 

 

 

 

――――中身の方はといえば、半分ぐらいは『表』の方と大差無い。

 

父親は元日本帝国の駐在武官で現アメリカ合衆国大統領。母親は不明。

 

彼は優秀な成績で訓練校を卒業後、本人の希望で極東への派遣部隊に参加・・・・・・直後、98年夏のBETA日本上陸の際、撤退命令を無視して部隊の仲間と共に出撃。

 

近隣の帝国軍部隊と共闘ししばらく戦線を支えたものの、結果は彼を残して全滅。彼もまた重傷を負い、何らかの理由から昏睡状態のまま本国へ送り返されたとされている。

 

次に目覚めたのは99年明星作戦が発動した時期。今の彼の副官である2人、リベリオンとユーノの名前が確認されるようになったのもこの時期からだ。正確には、『それ以前からの2人の痕跡は確認できない』。

 

両名とも欧州からの難民を経てリベリオンは民間で技術者兼テストパイロット、ユーノは他多数の難民同様軍隊に所属し衛士としての才能を開花させ、そこをゼロスに一本釣りされた――――と調査書には載っている。

 

成程、難民出身なのであれば表に出る以前の足跡が確認出来ない点も納得はいく。イギリスを除いたBETAによる欧州占領の混乱は2人のような存在を多数生みだしたのだから。日本国内でも同様の事例は少なくない。

 

 

 

 

しかし、と唯衣は思い返す。

 

 

 

 

あの3人の雰囲気は階級や立場の壁など存在しない、明らかに友人・・・・・・否、それ以上の結びつきが3人にあるようにしか唯衣には見えなかった。

 

それこそ高々1~2年程度では足りない。長年共に歩んできたかのような―――――

 

 

「・・・そこまで推測するのは私の役目ではないな」

 

 

アルゴス小隊の面子同様、あのユウヤを除く米軍からの3人も実戦経験を有している。軍隊入りが遅いリベリオンとユーノもルーキーからは程遠く・・・・・・なにより戦った場所が普通とは違う。

 

2000年後半になって、ゼロスは2人と共にイギリスはドーバー基地へ。当時リベリオンが所属する企業で開発されたF-15の改良型2種の実戦テストを行う為だ。

 

数度のH12・リヨンハイヴから侵攻してくるBETAの『間引き』を経て彼らが直面したのは――――突然の大規模侵攻。

 

不意を突かれ、次々と部隊が脱落しされど敵の数が減らない地獄の中、彼らはたった3機で驚異的な戦果を上げ、大量のBETAを陽動し、撃破された他の戦術機の兵装さえ利用しながら傷ついた他部隊の最後の1機が撤退するまで戦い抜いたという。

 

その戦いぶりは遠く離れた日本にまで伝わった程だ。アメリカも自国が生んだそれも現大統領の息子だけあって大々的に宣伝だってしていたし、助けられた部隊の中に英国のとある王家にも名を連ねる高名な出の衛士も含まれていたとかで、その辺りもまた一部では話題だった覚えが唯衣にはある。

 

・・・・・・乗っていた戦術機が弾切れ燃料切れで小型種に取りつかれて壊されてからも今度は強化外骨格も用いず『生身で』更に撃破数を増やし続けた、という話は流石に眉唾ものだったが。

 

でも助けられた分助けようと再出撃した名家のお嬢様達が目撃者だのしっかりログにも映像に記録されてただの何だのかんだの云々。

 

 

「とりあえずは相当な武人でもあるという事なのだろうな」

 

 

そういう事にしとこう、うん。

 

ともかくその戦いにおいてそれぞれが生き残った者達から異名を与えられるまでの活躍をしてみせたのは紛れもない事実だ。

 

ゼロスはパーソナルカラーの黒とまさしく鬼の如き戦いぶりから『鉄の鬼神』。

 

ユーノはどんな状況からでも正確に射抜く技量から『魔弾の射手』。

 

リベリオンは重火力仕様の改良機を操り悉く無慈悲にBETAを爆砕していった事を指して『劫火の魔女』。

 

帰国後今度は合衆国軍でも有数の戦術機開発の場で有数とされるネバダ州グルームレイク基地にしばらく滞在。そこで一本釣りされたのが、

 

 

「ユウヤ・ブリッジス・・・」

 

 

あの模擬戦を見る限りでは、彼もまたアルゴス小隊に負けるとも劣らぬ技量であるというのは理解出来た。こちらに来る前の対BETA/対戦術機演習、双方ともトップの成績を修めていると経歴書にもある。

 

それでもやはり不安が残る。本当に彼は使い物になるのかと。戦術機の運用の仕方のてんで違う異国の、それもよりにもよってアメリカの衛士に満足に足る結果を出せるのかと。

 

―――――自分は彼を本当に御してみせれるのか。不安と緊張が脳裏を過ぎる。

 

 

「違う、そうじゃない。私が御してみせなければならないのだ!」

 

 

それに、唯衣の任務は単にXFJ計画での日本側からの調整役のみに止まらない。

 

XFJ計画のそもそもの発端・・・・・・帝国軍次期戦術機選定において不知火の改良型の開発が大筋として進められていた最中、突如待ったをかけて割り込んできたのがリベリオンが開発主任として籍を置くバニングス・インダストリーズである。

 

 

 

 

彼らが不知火改修の件で既に帝国軍と手を組んでいたボーニング社を押しのけるようにして形で売り込んできたのは、F-15の新型改修機2種類。

 

第3世代機にも劣らない機動力と近接戦闘能力を備えたF-15EX<アサルト・イーグル>と、攻撃機クラスの火力と格闘戦も可能な最低限の機動力を両立したF/A-15<ブラスト・イーグル>。

 

その他既存の戦術機でも簡単に運用可能且つ高い効果を期待できる各種新兵器、そして従来の戦術機の機動が過去の物にしてしまう驚異的な性能と操作性を戦術機に与える新型OS<EX-OPS>。

 

 

 

 

どれも米軍では一部で採用されたばかりの新型であり、しかも既に実戦で能力は証明済み――――彼らはそれを、帝国にも売ると言ってきたのだ。他でもない、非公式ながら大統領のお墨付きで。

 

唯衣のもう1つの任務は、それらが採用に足るかどうかの選定をこのユーコン基地で行う事。

 

これは先方からの提案で、各国から厳選された衛士達で新たな試験部隊を作って新装備のテストを行い、各国の機体との相性を確かめてから最終的に他の国々が自国に採用か否かを決めるという計画である。

 

提案そのものは強引かつ一方的に進められた物ではあったが、世界最大戦力の国の最高指導者が背後に居ては無碍にする訳には到底行かず。

 

先方からもしっかり最終的な決定権はちゃんと自分達にあると認めてくれただけまだマシだろう。その辺りはかの国にしては珍しい、と思われたのは日頃の行いのせいか。それを知ってどっかの大統領は思わず苦笑したという。

 

送られてきたそれらの資料映像の効果も大きい。映像を見た途端、大抵の人間が映像に釘付けになる結果となった。唯衣自身もそうだったのだ。

 

そうして幾つかの要因が重なった結果、唯衣は2つの重大な任務を帯びてこのアラスカの地に降り立ったのである。XFJ計画に賭けていたボーニング社からしてみれば二股をかけられたも同然で憤懣極まりないだろうが、日本もまた形振り構っていられないのが現状である。

 

というかボーニング社も裏ではかなり強引に計画を推し進めていたがぶっちゃけバニングス社もどっこいどっこいだったりする。

 

情報省の調査書によると、敵対する企業の一部がスキャンダルに見舞われたり時には経営者が唐突に病死・事故死した結果、バニングス社が得をしたこの数年事例が不思議なほど多い。かの企業も中々後暗い部分がありそうだ。

 

 

 

 

この選考計画に参加する国は帝国以外にはソ連・ネパール・スウェーデン・イタリア・トルコ・イギリス。

 

イギリス側の人員とは後日合流予定で、ゼロス達3人は当初から開発・運用に携わってきた立場としての教導役としてやってきた。XFJ計画における試験演習の合間合間にユウヤも教える側として加わるという。

 

つまりユウヤは唯衣の部下としてテストパイロットを務める傍ら、教導役としてユウヤが唯衣に教えるという複雑な立場になってしまうのだ。より一層人間関係に注意せねばならないだろう。

 

堪らず溜息が出てしまうほどに気が重い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、それらの情報を予め手にしてはいたが、実際に本人達に会ってみると、その――――色々な意味で予想通りだったリ、また違ったりして戸惑ってしまった。

 

佐官でありながら気軽に部下の分までコーヒーを用意してしまう気さくな上官。傷さえ隠せば歌舞伎の女形も立派に努めれそうな柔和な美貌の青年。軍服でも隠しきれないどころかまた別種の淫靡ささえ放ってしまうスタイルと小悪魔的な雰囲気の持ち主の美女。

 

正直人目を引くというか、濃過ぎる。ハルトウィック大佐の執務室に訪れて顔を合わせたユウヤがこちらに対し敵意を向けてきた時はむしろ逆にホッとしてしまったぐらいだ。

 

ここでの日々は間違いなく一筋縄ではいかない、と早々に悟る。早くも遠く離れた故郷の巌谷中佐に連絡を取りたい衝動に駆られてすぐに自戒。

 

いけないいけない、これからだというのに今からこんな気持ちでどうする私。

 

 

 

 

 

 

 

頭を振り、これからまずしなければならない事を脳内で整理し、そして出した結論は。

 

 

「・・・・・・とにかく明日はまず日用品を揃えに行こう」

 

 

もう良い時間帯だし、時差ボケをさっさと解消する為にも今日はもう就寝する事にしたのだった。

 

 

 

 

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