構想自体はあるのですが……
それでは、どうぞ
翌日。
二人は帝都を観光がてらぶらぶらと情報収集をしてもらい、私は馴染みの情報屋へと向かった。
「いらっしゃい」
「おはようございます、バラックさん」
バラックさんはこの貸本屋の店主で、私と年もそんなに変わらないのに、情報屋として優秀な人だ。
緑の髪をフードで隠し、少し前傾姿勢になれば、正に情報屋のソレだ。
いつもマスクをしているため、素顔を見たことはないが、悪い人には見えない。
「それで、今日はなんの用だい? その様子じゃ、本を借りに来た訳じゃないんだろ?」
「はい……ナイトレイド関する全て、噂でもなんでも構いません。教えてください」
バラックことラバックは、一瞬だけ驚きを見せると、言葉を紡ぐ。
目の前の医術師シウノが、軍に属していていることは知っているが、ナイトレイドという単語を彼女の口から聞いたのは初めてだったからだ。
「ナイトレイド、ね。いくら上からの命令だからって、君一人で相手にするのは、無理だと思うな。君は『帝都最高の医術師』だ。俺個人としても、君には死んでほしくないね」
ちょーかわいいし、まじタイプだし。と心の中で付け足しておく。
もちろんシウノはそんなこと知る由もない。
「っ、さすがバラックさんですね。昨日の今日なのにもう情報を掴んでいるなんて。でも私一人じゃないんで安心してください。あと二人も私と同じ帝具使いですから」
なーるほど。
やはり上からの命令か。皇帝……いや、大臣からの。
しかもシウノの他に二人も帝具使いがいるなんてな。
「しかし、そんなに俺にしゃべってもいいのか? もしここにナイトレイドに関わる者が情報を求めてきたらどうする?」
「私、バラックさんを信じてますから」
彼女はにっこり微笑んで言う。
情報屋に信じるも何もないが、この笑顔を見れて俺は、生きててよかったと心から思った。
仕事上たまに女の子と闘わなければならない時もあるが、どうして俺はいつもこんな、こんなかわいい子ばっかり相手になるんだ……。
その後何度か質問をした後、ナイトレイドに関する情報は噂程度にしか知らないと言い、その流れでナイトレイドに関する調査を依頼された。
まぁ、ナイトレイドに関する情報なんてのは、所属する人間なのだからいつでも持っている。
頃合いを見て、嘘を言わず情報も漏らしすぎないように情報を渡そう。
それは、それとして。
「なんであんなかわいい子ばっかり敵になんだよぉおお!!!」
そのラバックの心の底からの絶叫は、人がいなくなった店内に響いた。
情報屋のバラックさんに依頼をし、その後も聞き込みをしていると、いつのまにかお昼の時間になっていた。
情報収集の合間に、ここがおいしいよと教えてもらって、今私は食事処に来ている。
おすすめを頼み、運ばれてきた料理を一口パクリ。
うん、美味しい。毎食いけるレベルだ。店内が満員なのも頷ける。
心の中で感想を述べていると、同い年くらいの茶髪の青年が話しかけている。
「あの、すいません、ここ相席いいですか?」
「あ、はい、どうぞ」
特に断る理由もないので、OKする。見たところナンパの類でもないしね。
「ありがとう。おーい、マイン。席あったぞ」
「ちょっとタツミ、席見つけるのにどれだけかかってるのよ!」
ちょっと怒り気味なその声に、タツミと呼ばれた青年は私に、「すみません」と苦笑を浮かべる。
か、彼女持ちでしたか……。
今まで同年代のライバルがいなかったためか、何故か負けたような気持ちになる……。
その後ご飯を食べながら、ここで相席するのも何かの縁だと思い、互いに自己紹介をした。
なんとタツミはマインの下僕らしい。
「違うわ!」
「……タツミ、思考を読めるの?」
「絶対今俺のことをマインの下僕とか思っただろ。そんな眼をしてた!」
「事実じゃない。何を声荒げてるのよ」
そして二人とも中々おもしろい人たちだった。
エスデスさんやリヴァさんといる時とはまた違った楽しさ。それは治療をする楽しさとも違った。
「二人はどこで知り合ったの? とても仲よさそうだけど」
「「仲良くない!」」
二人はそう言って互いを見て、ふんっとそっぽを向く。
息も合ってるし、ほんとお似合いのカップルだよね。
そういえば、タツミって……聞いたことあるような。
確か、イエヤスとサヨが言っていた気がする。
「ねぇタツミ、イエヤスとサヨって名前の人、知ってる?」
私の言葉に、タツミは勢いよく立ち上がった。
「……どうして、イエヤスとサヨを知っている?」
タツミがイエヤスとサヨを発見した時には、すでにサヨには息がなく、イエヤスも腕の中で息絶えた。身分証などは持っていなかったため、イエヤスやサヨの名前を知っているのは、あの家の関係者ということになる。
わずかにタツミの体から漏れ出る殺気。
それに、マインもシウノも気づかないはずがなかった。
「タツミ、落ち着きなさい。……あなたの友達のイエヤスとサヨが殺されたのは、もう二年も前よ」
マインのその言葉で、殺気が収まる。
咄嗟に嘘を吐いたのは、もしシウノが帝国軍とつながっていて、あの一件のことを知っていたならば、自分たちが家を襲った犯人ですと認めているような行動だったからだ。
顔色、表情、声音。そのどれもが、さすが殺し屋というべきか、シウノにタツミの行動を不審に思わせなかった。
タツミも、遅まきながら理解したのか、話を合わせた。
「その、ごめん。同じ名前だったから、つい……」
「私の方こそごめんね。嫌なこと思い出させちゃって。私、こう見えて医術師をしているんだけど、最近瀕死の状態の二人を助けたの。その二人が旅の途中でタツミって人とはぐれたって言ってたから、もしかしたらって思ったの」
食器類を片付けながら話すシウノには、その時の二人の表情は見えていなかった。
タツミもイエヤスもサヨも東方の地域の名前だ。
同じ名前の人など二、三人いるだろうと、シウノは結論付け、ちょうど昼ご飯を食べ終わったので、この場を去ることにした。
「じゃあ私はそろそろ失礼するね。あんまり二人の邪魔をしちゃ悪いし」
バイバイ、とマインとタツミに手を振って外に出た。
最後の一言が余計だったのか、外まで二人の元気な声が届いた。
その数時間後。
場所はナイトレイドアジト。
帰り着いたマインは、ボスに昼間のことを報告し、緊急招集をかけた。
「なんだい? ボス。緊急招集って」
「凶悪な悪党でも、現れたのですか?」
「そいつぁ、心置きなく殺れるな」
「にしても、緊急招集って、あまりないよな」
「そうだな。……はっ、もしかして最高級の肉が」
「「「「それはない」」」」
メンバーそれぞれが疑問の声を挙げるが、勝手に自己完結しようとしたアカメに全員がつっこむ。
ボスはそんなメンバーのやり取りを笑って、言葉を発した。
「招集をかけたのは、報告すべき情報を、今日街に出たマインとタツミが持って帰ってきたからだ。マイン、タツミ。よろしく頼む」
マインとタツミは、今日の昼、シウノと会っている時のことの話をした。
話を聞き終えたメンバーの顔は、暗いものだった。
その中で二人、そうでない者もいる。
一人はタツミ。
言わずもがな、仲間が生きていた、という事実を喜んでいるから。
もう一人は、ラバックだ。
おいおいおいおい、あいつ、俺が情報寄越すまでもなくナイトレイドに会ってんじゃねぇかよ!
しかも今の話を聞く限り、死者蘇生をした?
いや、そんなことはいくら帝具であっても不可能なはずだ。
始皇帝がその例だと、つい先日話したばかりじゃないか。
そんなラバックの動揺を見抜いたのは、ボスことナジェンダ。
「ラバ、シウノという医術師に心当たりがあるな?」
「……心当たりっていうか、まぁ、俺の貸本屋の客ですよ。医術師シウノ、17歳。帝都医術院で働いている、帝都最高の医術師。帝具『速治瞬療メディツール』の所持者。それに今は……」
「……ん? ラバ、続きは?」
不自然なところで言葉を斬ったラバに、レオーネが続きを促す。
ここで、「今大臣の命でナイトレイドを追っている」と伝えれば、後々暗殺のターゲットになるかもしれない。
彼女は、革命成功後の復興に、必要だ。
そう思ったラバは、そのことについて触れないことにした。
「いや、なんでもない。最近はあんまり医術院には顔を出していないようだ」
「しかし、死者蘇生、となるとなぁ。なぁタツミ、お前には少し辛い質問かもしれないが、そのイエヤスとサヨは、死んだんだな?」
「……あぁ、兄貴。俺が発見した時にはもう、サヨの息はなかった。イエヤスも、腕の中で死んだ」
そう、イエヤスとサヨは、呼吸が止まった。
この時代、医学の知識がなければ、呼吸が止まると、それは死だ。
しかし、シウノの中の死は、違った。
呼吸が止まり、脳が死んだら、死。
タツミ達は、知識がない故の誤解だった。
それから数十分、話は続き、解散ということになった。
ラバがシウノの調査を受け持ち、詳細がわかるまでシウノには手を出さない、という結論に至った。
ネタ回を投稿すると言ったな。あれは嘘だ。
すみません、まだネタ回まとまっておりません。
上の一文で何のネタかわかる人、いるでしょうか……?
お久しぶりです。
今更ですが、あけましておめでとうございます。
受験する年になれば時間が過ぎるのあっという間ですね。
ついこの間まで夏だったのに……