始業式当日、ダンテはホテルから出ると背筋を伸ばした。
ダンテが着ている制服は、臙脂色のブレザーであった。一件普通の制服に見えるが、これには防弾性能があり、さらにネクタイにも防刃性能がある。見た目に反してかなり機能的な制服である。
「さて、今日は始業式だ。流石に初日から遅れるわけにもいかないし、さっさと登校しますか。」
そしてダンテは学園島、ひいては東京武偵高校へと向かっていったのだった。
が、
「道に迷った。」
いきなりバスに乗り遅れたダンテは、徒歩で武偵高へ向かう羽目になったのだが、そもそも土地勘が掴めていないダンテに正確なみちがわかるはずもなく、結局迷子状態になってしまった。
「ヤベーな、遅刻はまずいって行ったそばから道に迷うなんてシャレにならないぜ。」
ここで遅刻をするわけにはいかない。しかし道に迷うのではいつまでたっても学園島に辿り着けない。万事休すかと思われたその時、
「仕方ない。どうやらここでは
仕方ないという割にはやけに上機嫌な顔で頷いたダンテは早速その力を使ってみた。
・・・・・
・・・
・
「よっ、ほっ、はっ。」
その場所を踏み越えるたびに、景色が目まぐるしく変わっていく。
ダンテは今、ビルの屋上から屋上へとエンジェルリフトとエンジェルブーストを併用して学園島へ向かっている。場所のわからない目的地へ急ぐなら、最初から目に見えるようにすればいい。あとはそこまでまっすぐ突っ切っていけばいいだけだ。
「いや~、最初からこの手を使えばよかったんだよ。人目に見えないようにすれば、こっちのほうが早く着くわけだからな。」
傍から見れば、まるでフリーランニングをしているかのごとく、ビルの屋上を駆けていくダンテ。
学園島もみるみる距離を縮めてきた。このままいけば、時間までには間に合うだろう。
「よーし、あともう一息だ。」
このまま何も起きなかったら・・・、
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン
「!?」
突然どこかから爆発音が聞こえた。それもかなり大きい。辺りを見回してみると、学園島の方から煙が上がっていた。
「何かあったのか。あらかじめドンパチやってるっつうのは聞かされていたが、ここまでとはな。」
ダンテはこの爆発を生徒がやったものだと判断。なかなか物騒なところだと再認識したところで、今度は好奇心が湧いてきた。
「面白そうだな。少し寄ってみるか。」
そう言ってダンテは問題の場所へと向かっていった。
・・・・・
・・・
・
遠山キンジは今この瞬間をものすごく後悔していた。せめてあんなことさえなければ自信が忌避しているあの状態にならなかったのに。
朝からバスに乗り遅れ、自転車で学園島まで行くことになってしまったと思ったら、今度はそのチャリに爆弾が仕掛けられていて、しかも機関銃装備のセグウェイにおいかけられて、さらにいきなり空から降ってきた女の子に助けられ、その時に起きた爆発によって不可抗力=事故(強姦と勘違いされた)を起こしてしまい、とあることがきっかけで胸を顔に押し付けられてしまった。
最後さえなければ、今こうやって気障なこと言って自分が恥ずかしい思いをすることもなかったのに。
「アンタ何やってるの!?さっさと引っ込みなさい!蜂の巣にされるわよ!」
そう言われても無理なものは無理だ。この状態になっては女である彼女を見捨てることはできない。
そんなやりとりが続いてる今も、7体ものセグウェイはジリジリとキンジたちに迫ってきている。キンジは神経を集中させた。今この場にあるセグウェイを壊すにはベレッタに入っている装弾数7発を全て機関銃のバレルへ通さないといけない。失敗は許されない。針の糸を通すよりも正確に、かつ速く撃つ。
そして、7つの銃弾は放たれた。
銃弾は銃身の中へ吸い込まれるように入っていき、爆散した。
セグウェイは動く様子もない。
「アンタ!さっきはよくもむっむむむむ胸をさわってくれたわね!」
「やあ大丈夫だったかい。中学生なのによく頑張ったね。」
「なっ。」
少女もとい神崎・H・アリアの様子がおかしい。年齢を間違えられて怒ってているのだろうか。だとしたらすぐに訂正しなければなるまい。
「ごめんね。小学生なのによく頑張ったね。素晴らしいじゃないか。」
「あたしは・・・あたしは高2だぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!」
コイツはなんとかしないといけない。ここで暴れられたら怪我では済まされない。そんなことを考えている途中だった。
キンジの目にそれが映った。もう一台のセグウェイが。
「危ない!逃げろ!」
そう言うと、キンジはアリアのもとへかけていった。しかしここからでは間に合わないかもしれない。
(もうだめだ。間に合わない。)
撃たれる覚悟をした。絶望に染まってゆく中で。
しかしそんなことは起きなかった。
目の前で突然セグウェイが爆発したのだ。
「・・・自爆?」
「・・・今・・・・一体何が起きたんだ?」
キンジはすぐさま辺りを見回したが特に変わったことはなかった。ただ爆発する前に銃撃が聞こえた気がしたが、人がいる気配はない。
二人は爆散したセグウェイの前でつっ立ったままだった。
・・・・・
・・・
・
「なかなかいい物をみさせてもらったぜ。ありゃ神業だな。」
ダンテは再び武偵高へと向かっていた。セグウェイを7台同時に倒す技。あの技を思い返すたびに、ダンテは興奮した。
「だがまあ、もう一台待ち伏せていることには流石に気づかなかったみたいだがな。」
実はあの時、もう一台のセグウェイを破壊したのはダンテだった。
ビルの屋上からエボニーアンドアイボリーでリコショットを撃ったのだ。膨大な魔力が詰められた銃弾にセグウェイは耐え切れなかったようだ。
「しかし、これは毎日退屈しなさそうだ。楽しませてもらうぜ。」
ちなみに、ダンテは一応始業式には間に合った。