架空世界では俺の青春ラブコメは間違えない?   作:0ひじり0

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更新が遅くなりました。
すみません。



Ep.11

体の至る所が痛い。

俺はグルグルと回る視界を頭を振って何とか治す。

 

目の前に広がる光景は地面に尻餅をついたアイツにボス【背教者ニコラス】は大きな斧を振り上げる。

 

おい…やめろ。

 

脳が命令するより早く体が動き、走り出す。

 

一瞬でも早く。早く早く早く早く。

 

一番上まで振り上げられた斧が下ろされる。それは罪人を裁くギロチンの様だ。

 

間に合え。一人も欠けるわけにはいかないんだ。

 

ハチマン「うらあああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

―――3時間前―――

 

ハチマン「クリスマスのイベントクエスト?」

 

アスナ「うん。どうかな?」

 

サチ達を助けて雪ノ下姉妹と合流出来てから半年がたった。

俺達が順調に一人も欠けること無く攻略を続けてきたある日、久し振りにアスナと二人きりでアジトでの留守番中にアスナが少し興奮気味に話しかけてきたのだ。

 

つか、上目遣いやめろ。かわいいだろうが。

 

ハチマン「別にいいぞ。」

 

アスナ「そこをなんとか!お願い…って、へ?」

 

ハチマン「…なんだよ。」

 

アスナ「えっと…いいの?」

 

ハチマン「だからそう言ってるだろ?」

 

俺が了承するとは思ってなかったらしいアスナは戸惑いながらも嬉しそうに微笑む。だからかわいいからやめて。勘違いしちゃうよ?

 

アスナ「ありがとう。ハチマン君♪」

 

ハチマン「お、おう。」

 

アスナ「ふふっ♪それじゃ行こっか。」

 

ハチマン「ん、わかった。」

 

俺達は身支度を整えアジトを後にする。

 

……小さい声で『ハチマン君と二人っきり♪デート♪』とか言わないで難聴系主人公じゃないから聞こえてるからね?

 

――――――――――

 

ハチマン「ここか?」

 

アスナ「うん。ここのはず。」

 

しんしんと雪が降る中、俺達は森の中にある少し開けた場所で立ち止まる。そこは周りに音もなく白銀の世界が広がる。ここがデスゲームの架空世界じゃなければどれ程良かったか。

 

ハチマン「ここに居るボス…背教者ニコラスとか言うのを倒せばクリアなんだな?」

 

アスナ「うん。レベル的にも問題ないはずだよ。倒したら復活アイテムドロップするみたい。」

 

それはいいな。万が一の保険になるしな。

 

ハチマン「だからって油断すんなよ?したらお仕置きすんぞ。」

 

アスナ「え!?…どうしよう。」

 

ハチマン「いやいや…悩むなよ。」

 

アスナ「じょ、冗談だよ!!」

 

ジト目で俺が睨むとアスナは慌てて否定する。顔が赤いのは寒さのせいではないだろう。

 

ハチマン「本当にわかってんのか。」

 

俺がぼやくと俯くアスナ。

 

ハチマン「ほら、行くぞ。」

 

アスナ「…うん。」

 

ズシン!!

 

俺達がその場所から少し進むと直ぐにソイツは現れた。人間の姿をしサンタクロースの様な出で立ちだがその巨体の手に握られた大きな斧は異形と言う他ない。

 

ハチマン「俺がヘイト稼ぐからアスナはその隙をつけ。いいな?」

 

アスナ「わかったわ。」

 

ハチマン「いい返事だ。」

 

言い終わる前に走り出し、ニコラスが攻撃する前にすれ違いざまに一太刀お見舞いする。

 

ニコラス「があぁぁ!」

 

ハチマン「当たらねぇよ!!」

 

ザザン!ザシュ!

 

ニコラスが振り返りながら斧を降り下ろすが、回避してがら空きになった背中に三撃食らわして少し距離を取る。

 

ハチマン「ほら、来いよ。」

 

ニコラス「グルァアァァ!!」

 

ガシャアァ!

 

横殴りに振り払われた斧をしゃがんで回避する。

 

アスナ「はあぁぁ!」

 

ザシュ!

 

完全に俺にヘイトしているニコラスにアスナがソードスキルを決るとニコラスが怯む。

そのまま俺達は順調にニコラスのHPを削っていく。

 

だからだろうか。アスナは前に出すぎてしまっていた。それに気付いたときには既に遅く、ニコラスが斧を凪ぎ払う。

 

アスナ「…え?」

 

アスナはソードスキルを使ったばかりで硬直してしまっている。

 

ハチマン「チッ…バカが。」

 

俺は走り、アスナとニコラスの間に割り込む。俺の紙みたいな防御力でもガードをしてたら一回位はもつはずだ。

 

ドカアァァ!!

 

ハチマン「ぐっ!」

 

アスナ「きゃあ!」

 

俺とアスナは吹き飛び、俺は木にぶつかる。

 

体の至る所が痛い。

俺はグルグルと回る視界を頭を振って何とか治す。

 

目の前に広がる光景は地面に尻餅をついたアスナにニコラスは大きな斧を振り上げる。

 

おい…やめろ。

 

脳が命令するより早く体が動き、走り出す。

 

一瞬でも早く。早く早く早く早く。

 

一番上まで振り上げられた斧が下ろされる。それは罪人を裁くギロチンの様だ。

 

間に合え。一人も欠けるわけにはいかないんだ。

 

ハチマン「うらあああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

俺は足に力を込めて飛ぶ。一気ニコラスとの距離を詰めながら納められた刀を抜き放つ。

 

キイィィン―――

 

ニコラス「グアァァ…」

 

パキィン

 

ニコラスが消滅すると同時に俺の刀も砕け散る。刀は耐えきれなかったらしい。

 

ハチマン「アスナ!…っ!?」

 

アスナ「ハチ…マン…。」

 

武器などどうでもいい。アスナに駆け寄ると目の前の光景に息を飲む。

 

アスナ「あはは…ドジっちゃった…。」

 

ハチマン「喋んな!今回復するから!」

 

アスナの体に刻まれた深い傷。それは誰が見ても助からないと分かるほどの傷だ。

それでも俺はアイテムを取り出して使う。

 

アスナ「ごめんね…。」

 

ハチマン「喋んなってんだろ!!」

 

俺が叫ぶ。謝るなよ…最後見たいじゃねえか!

 

アスナ「ふふっ…ハチマンの涙…初めて見た…。」

 

パキィン。

 

アスナの体はポリゴンとなって弾け飛ぶ。

そこにあったはずの温もりが消える。

 

嘘だろ…そんなわけない。

アスナが死ぬなんて…何とかならないのか?

考えろ!脳を動かせ!止まるんじゃねぇよおぉぉ!!

 

ハチマン「はっ!?」

 

俺は慌てて立ち上がり、ニコラスが倒れた辺りをあのアイテムを探す。

 

ハチマン「どこだ!どこにあんだよ!!」

 

コツンと指先に何かが当たる。俺はそこの雪を掻き分ける。指先を切って血が流れるがそんなことどうでもいい。

掘り出したアイテムを握り締めて直ぐに使用するとアイテムは目映く光り目を閉じる。

 

ハチマン「っ!?」

 

光りは徐々に弱まり、ゆっくりと目を開ける。そこには―

 

アスナ「ハチマン…。」

 

ハチマン「…良かった。アスナ。」

 

目の前にアスナがいた。俺は近付いてアスナを抱き締める。本当に良かった。

 

アスナ「ハチマン…本当にごめんなさい。」

 

ハチマン「いいから…生きててくれたらそれで。」

 

アスナ「…うん。ありがとう。」

 

ハチマン「ああ…。」

 

抱き締める腕に力を込めてアスナがここに居る…生きていることに安堵する。もうあんな事はごめんだ。

 

アスナ「…怒ってる、かな?」

 

ハチマン「ああ。怒ってる。」

 

アスナ「じゃあ、お仕置きするの?」

 

ハチマン「…帰ったらお説教だな。」

 

アスナ「あはは、恐いな。」

 

ハチマン「じゃあ、あんな油断なんて二度とするな。わかったな?」

 

アスナ「うん。」

 

俺達はお互いの温もりを確かめ合うように強く抱き締め、暫くそうしていた。

 

――――――――――

 

ハチマン「正座。」

 

アスナ「…はい。」

 

あれから俺達はアジトに帰り、俺の部屋の床にアスナを正座させている。

それからみっちり三時間程お説教をしてやった。

 

アスナ「ふふっ♪」

 

ハチマン「…なに笑ってんだ?お説教が足りないか?」

 

アスナ「いえ、ふふっ♪ハチマン君の泣き顔を思い出しちゃって…。」

 

ハチマン「なっ!?忘れろ!いや、忘れて下さい。お願いします。」

 

アスナ「やーよ♪」

 

アスナは笑いながらも少し舌を出してべーってしている。

その仕草に怒りが込み上げるが、それ以上にかわいいと思ってしまう。

 

くそっ…かわいいじゃねぇかよ。

 

しかし、反省をしてないと思った俺は追加で一時間お説教をした。

 

アスナは涙目になりながらも少し頬が赤い。

いや、おかしいだろ。




今回は赤鼻のトナカイを書いてみましたがいかがでしたでしょうか。
サチが生き残ったので少し展開が変わっていますが気に入っていただけたら幸いです。

では、ありがとうございました♪

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