Fate/GrandOrder 円環支配国家アメストリス 作:零崎妖識
「……誰を出すのかね、マスター?」
「……考え中」
赤倶は考えていた。ロイ・マスタングとの決闘に、誰が一番ふさわしいのか、と。彼の二つ名『焔の錬金術師』がそのままの意味なら、彼は炎を扱うと言うこと。だが、水を扱う者がこちらにはいない。
別に、サーヴァントのみんなを信用・信頼していない訳ではない。万が一を考えて、負ける可能性を考慮して考える。
「……やっぱメドゥーサかなぁ……」
錬金術師のサーヴァントには既に会っている。ヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス。第四特異点であるロンドンで、「P」と名乗り敵対したキャスター。彼のことを考えるなら、錬金術師と名乗ったマスタングはキャスターと言うことになる。
「メドゥーサ、勝てる?」
「マスターが望むのなら」
メドゥーサには負ける気がないようだ。だから、赤倶はメドゥーサに安心して思いを託すことができる。
「大佐の戦い方はわからない。でも、俺たちの戦い方を、大佐は知らない。唯一わかるのは、大佐が錬金術師で、炎を扱うと言うこと。
油断はしないでくれ。俺たちはこっちの錬金術を知らない。どんなものを使うのか、どんな風に発動するのかを知らない。可能性を、どんどん潰していけ」
「わかりました。この身に代えても、貴方に勝利を」
「いや、そこまではしなくていいから」
郊外の、開けた土地の真ん中。そこに、マスタングは立っていた。
「ーーやあ、誰が戦うのか、決まったかい?」
「ええ。メドゥーサ、頼んだよ」
釘のような剣を持つ女性ーーメドゥーサがマスタングの前に立つ。
「赤倶、酷くないかい?こんな麗しい女性に戦わせるなんて」
「私は怪物、マスターに従うサーヴァント。女であることは、今は二の次です」
マスタングの非難にメドゥーサが答える。
メドゥーサの目は、マスタングを観察していた。軍服で、両手をポケットに入れている。腰に拳銃は見えるが、それ以外に武装はない。
(主武装は、あのポケットの中でしょうね)
「ルールを確認しよう。一対一の戦闘で、何でもあり。負けを認めるか戦闘続行不可能で決着だ。いいね?」
「もちろん。始めましょうか。誰か、合図をお願いします」
エミヤが拳銃(運動会などのスタートに使うやつ)を投影する。そして、腕を真上に伸ばしーー
パァン!
先に動いたのはメドゥーサだった。
釘剣を振るい、マスタングに突進する。
「甘い」
それに対して、マスタングの動作は一瞬だった。ポケットから右手を出し、フィンガースナップをする。それだけで、メドゥーサの目の前で小規模の爆発が起きた。
「ぐっ……なるほど、それが貴方の錬金術の触媒ですか」
マスタングの右手には手袋が付けられている。手の甲の方には、炎とサラマンダーの描かれた魔法陣、否、錬成陣が刻まれていた。
「この手袋は発火布と言ってね。擦ると火花が出る。私の錬金術はそれを利用してるのさ」
「そうですか。では、こうしましょう」
一度下がったメドゥーサは、さらに加速してマスタングに突っ込み、手袋を短剣で引き裂いた。
「さて、これで錬金術は使用できないはずです。投降しますか?」
「ふふ……ははは!」
「……何が可笑しいので?」
「兵法の一つを教えてあげよう。『兵は詭道なり』!」
マスタングは、左手をポケットから出す。
「実は左手も発火布なのだよ」
爆発。前にもこれに引っかかった奴がいるのか、マスタングは勝ちを確信していたーーが、
「ーー優しく蹴散らしてあげましょう。『
煙の中から純白の天馬と、それにまたがるメドゥーサが出てくる。不意を突かれたマスタングは動けず、そのまま天馬に蹴っ飛ばされていた。
「ふぅ……見た目よりは楽しめましたね」
多少傷はあるが、メドゥーサは無事なようだ。だが、マスタングが衝撃で気絶してしまっている。
「……リリィ、お願い」
「わかりました。『
マスタングの傷が治っていく。ついでに右手袋も。これで、マスタングには認められたはずだ。