ポケモン色の本棚   作:@早蕨@

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したっぱロケット団員の備忘録~赤帽子の少年~⑧

 ある晴れた青空の下、街のバトル場に息子のコキヒと繰り出し、私達は向かい合った。

「パパ! ちゃんと教えてよ! いいね!」

 刑期を終えた私は、その後真っ当に仕事を続けた。カイとだけは繋がっていたので、皆の近況はそこそこに聞いていたが、最近ではそんな事ももうなくなってしまった。

 カイだって今は立派に働いているし、私も、妻と子を持つ事が出来た。あの頃とはもう何もかも変わって、昔話をする事もない。

 敢えてするなら、”赤帽子の少年”が史上最速、最年少チャンピオンとなり、伝説のトレーナーとして祭り上げられているニュースには、ギョっとした。。もっともっと怖い奴なんだぞこいつは、と声高らかに言いたいものだ。

 瀬田さんとは、一度も会っていない。連絡も取っていない。どこにいるのかも分からない。

 ただ、後の事は心配するなと言っていた通り、ロケット団としてではなく、まったく関係ない街の非合法組織の一員として私達は捕まった。

 あの当時、カントー最大マフィアのロケット団員として捕まった者は、私達に比べれば重い罰を受けていたから、ロケット団と関係がないというだけで、私達はまだ早く外に出て来る事が出来た。

 最後まで面倒見の良い人だ。

 そして、常識的には悪い事でも、最後まで頑なに部下を守ろうとする姿勢は、変わらなかった。

 私はまだ彼を尊敬している。彼のように慕われる人間になりたいと思う。

 彼が私達にしてくれた事だけは、混じりっ気のない愛情であると信じているのだから。

「おーいコキヒ! リザードの他にはいないんだな? 倒したいのは一体だけでいいんだよな?」

 私の左右に、ラッタとクロバットが控えている。

 たまに小さなバトル大会にも繰り出して暴れさせてはいるのだが、こうやって手解きをするのは初めてだ。分かってるな、と目配せすると、二匹とも言われなくともとばかりに頷いた。

 リザードには苦い思い出がある。こいつらにコキヒのサポートを任せていもいいのだが、やっぱりそれでは教育上よくない。

「えっと、リザードとねえ! ヘルガー!」

 またそれは、随分な巡り合わせ。リザートにヘルガーか。なるほど、尚更こいつらに行かせてやりたくなるような展開だ。

「アキヒコ君が言っていたけど、リザードよりヘルガーの方が強いんだって! 耳に裂けた跡みたいに傷の残ったヘルガーなんだよ! 僕も見せて貰った!」

 どきりとした。そんな事があるのか? コキヒの言うその特徴には、見覚えがあった。

 裂傷が刻まれたヘルガーは、ラッタとクロバットの憧れの存在。私から見ても、とても素晴らしいポケモンだった。

「なあコキヒ! 今度友達とバトルをする時、私も見に行っていいか?」

「ええ! 嫌だよ! パパ付きなんて恥ずかしい! バトルには一人で行って来る!」

 そう言うな息子よ。

 私だってそのヘルガーを見たいのだ。

 彼の期待には応えられなかったが、それでも一生懸命ここまで生きてきた。

 今の私の姿を見てもらいたい。

 あの頃の気持ちを、私は思い出し始めた。

「いいじゃないか! 私だけじゃなくて、ラッタとクロバットもきっと行きたがる!」

 嫌がる息子をしぶしぶ納得させ、オニスズメとラッタが対面する。

 私だって変われたんだ。コキヒだってオニスズメだって変われる。

 あの人から教えて貰った事を、私は何一つ忘れていなかった。

 今度は私が、伝えていく。

 

 

【了】

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