君の名を。-After Story of Your Name- 作:メカブ
さて、亀の歩みですが、やっと続きできました。
途中で全消しとかやっちゃいつつ、なんとか書き上げました。
ところどころ改行や自分でも変だなーと思う部分もありますけど、とりあえずどうぞ!
その日、立花瀧は盛大なため息と共に、本来いるべき時間を大幅に過ぎて自席に着いた。
なんのことはない。先程まで、遅刻についてこってりと上司に絞られていたのだ。
「どうした瀧ぃー。珍しいじゃないかお前が遅刻なんて。心配したんだぞ?」
「…そんな顔して言っても説得力がありませんよ、先輩。」
ニヤニヤと、隣に座る男・・・木村 遼がからかってくる。
自分の教育担当でもあるその男を瀧はジロリと睨んだ。
「ありゃ、顔に出てた?いやあスマンスマン。」
口ではそう言いながらも全く悪びれないその男を、瀧は嫌いではない。
なんというか、人を不快にさせないラインを見極めるのがうまいのだ。
その上、その軽口は人の為に叩く。今だって、きつい説教で沈んでいた瀧の心を、
あっという間にニュートラルに戻した。
「で?なんで遅刻したんだ?ただ寝過ごしたって訳じゃないんだろう?」
「あ、いや…それは…」
その一言で、瀧の頭の中に今朝の出来事が思い出される。
その言葉は、どちらからともなく、殆ど同時に紡がれた。
「「君の名前は。」」
「「…」」
「「あ、あの!」」
「「あ、ど、どうぞ!」」
「「…」」
沈黙。気まずさ。そんな一瞬。
「…ぷっ、ふふ、ふふふふふ」
「あは、あっはははは!」
不意に訪れた間に、どちらからともなく笑いだしてしまう。
「あはは…はぁ、じゃ、じゃあ、俺から…んんっ!
えっと、俺の名前は、立花 瀧って言います。」
「瀧、くん…あの、私は、宮水 三葉です。」
「三…葉。三葉。」
お互いの名前。初めて聞いたはずのその名前が、自らの内に自然に馴染む。
ずっと探していた何か。忘れてはいけなかった、だけど忘れてしまった何かをやっと見つけた。
名前を呼ぶだけで、2人の間になんとも言いようのない幸福感を感じる。
「あの、いきなりこんな事言うと、変に思われるかもしれないけど…
俺、君をずっと探してた気がするんだ。今日、君と会うために、ずっと…ずっと!」
伝えたい思いが溢れて言葉になる。いきなり変なことを言う奴だと思われただろうか。
だけど、そんな瀧の不安は杞憂だというように。
「私も…あなたを探してたんやと思う…きっと、絶対。」
「あ…。」
「「…」」
そうして二人はお互いの瞳から目が離せなくなった。
どれくらいそうしていただろうか。ふと、自分の状況に思い至り、
「…あっ、ああああああっ!?しまった、会社!!」
「あっ、私もっ!」
手元の時計を見ると、無情にも時刻は9:03。大抵の企業はとっくに始業している時間であった。
スマホを確認すると、びっしりと会社と同僚からの着信履歴。
青褪めた顔で二人はそれぞれの会社へと電話をかける。
上司のお怒りの声に、謝りながら電話を切って。
お互いの目が合い、思わず苦笑してしまう。
急いで駅に、となったところで、
「あっ!立花くん、もしよかったらなんやけど…連絡先を教えてくれやん?」
そう言われて、俺はお互いの名前しか知らない事に気付いた。
もちろん、とばかりにお互いのスマホを軽くぶつけ合い、連絡先の交換を済ませ、
「三葉さん…っと、それじゃあ、後で必ず連絡しますから!」
そういって別れようとする俺を、
「あ、まって!」
彼女の声が引き止めた。
「あ、その…ごめん、急に大声出しちゃって…」
そういう彼女はなぜかすごく儚げで。
「なんだか、急に不安になって…別れたら、二度と会えないんじゃないか、
こうやって出会えたことも、全部消えちゃって、忘れちゃうんじゃないかってそう思ったら…」
まるで、今にも消えそうで。
「…なんてね!ごめんね、そんなわけないのに。なんでそんなこと思っちゃったんやろう…」
思わず。俺は彼女をギュッと抱きしめた。
「…っ!」
息をのむ声はどちらのものか。自分で自分の行為に驚愕する。
ただ、初めて抱きしめたはずの彼女の感触は、何故だろう、寧ろ懐かしく感じる。
忘れたくない人、忘れちゃいけない人。だから、
「…忘れないよ。絶対に、忘れない。たとえ忘れたって、何度でも思い出して君に出会う。
だって俺は、三葉に出会うために生まれてきたから!」
心が吐き出すままに、言葉を紡ぐ。
…言うだけ言って恥ずかしくなった俺は、逃げるように駅へと走り出し。
そしてその場には、真っ赤になった三葉だけが残されたのだった。
「…い、おーい、たーきー?生きてるかー?」
「はっ!?」
しまった、思わず自分の世界に入り込んでしまった。
「なーんか今日の瀧君は変だねぇ?心ここにあらずというか…ははーん?」
嫌な予感がする。こういうときの先輩の嗅覚は本当に鋭い。
エスパーなんじゃないかと疑っているくらいだ。
「ほうほうほう…なるほどなるほどー」
「…なんですか。」
先輩はいつも以上にニヤニヤしながら、一人で勝手に頷いている。
よくわからない人だなぁと訝しんでいると、
「ズバリ、女だな?」
「ブッフォ!?」
核心ど真ん中の答えが返ってきた。
「ゴホゴホ・・・かはっ!ちょっ、ちょちょちょ先輩!いきなりなんですか!」
「その反応…どうやら正解のようだなぁ!さーあ周りに黙ってて欲しかったらキリキリ吐けいっ!」
「い、いや、勘違いですよ!そんなんじゃありませんって!」
「ほーう、まだシラを切るつもりか?瀧くんが女と会うために遅刻しましたーって課長にいうぞ?言っちゃうぞ?」
「くっ、なんて低レベルながらも嫌な攻撃を…!」
小学生かこの人は!くっ、どうすればこの窮地を…あ。
「さあ、観念したら洗いざらい全て話s」
「き・む・ら・く・ん?」
「ハ、ハイッ!?」
瞬間、絶対零度の声がその場を支配する。ギギギギと、油の切れたゼンマイ人形のように
振り向いたその先には、ーーにこやかな顔の課長。
「いやあ楽しそうだねえ木村君。後輩との交流大いに結構。とてもいい事だと思うよぉ?…勤務時間中じゃなければねぇ?」
しかしその目が全く笑っていない事は、誰の目にも明らかだった。
「あ、そのー、課長、これはですねっ」
「木村君、続きはあっちの会議室で聞こうか。なぁに、ちょーっとお話しするだけだよぉ…」
「イヤーッ!ヘルプミー!!」
冴えない見た目とは裏腹に、一度掴まれたら逃げ出せない程の力を持つ課長に引きずられて、木村先輩は扉の向こうに消えていった。
「…さて、仕事を進めなくちゃな。」
周りの同僚と共に、何事も無かったかのように仕事に戻りつつ、三葉さんの事、今朝の出来事を果たしてどう説明すれば良いのかと、俺は頭を悩ませるのだった。
「ギャーッ!!!」
ーー合掌。
こんな先輩や職場、あったら良いな…あ、一応瀧君の業種は建築系って事だけ決まってます。イラストや他の二次創作の方もインテリアやデザイナーって意見が多いですね!自分もデザイナーかな、とは思っています。就活中の描写もそんな感じでしたしね!