アズマ工房の脱線しまくり繁盛記 ~空気読まないゆるゆるライフ~   作:マリシャス

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本話は「邪神ぬっ殺した後」です。



ケモ耳カチューシャの存在意義は?

「むぅ」

 

 ウルスの工房。食堂のテーブルの上には黒の猫耳カチューシャと秋田犬のような茶色の犬耳カチューシャ、ピンクうさ耳を前に澪は悩んでいた。

 

「師匠は猫耳派か犬耳派か、はたまたうさ耳派か、それが問題」

 

「なんでやねん」

 

 ツッコミを入れる宏。席に座って色合わせをする正四面体パズルをガチャガチャいじっているところに目の前でおもむろに3つのカチューシャを置いて悩みだしたのだから宏のツッコミももっともである。

 

「澪ちゃん、どれか判明したら後で教えてね」

 

「らじゃ」

 

 通りかかった春菜は苦笑いを浮かべたまま通りすがりに宏的には不穏当な台詞を言う。

 

「そんなん知ってどないすんねん」

 

「好きな方を着けてみる、かな?」

 

 春菜としては好いた男が好きならば獣耳の一つや二つ問題ない。勿論人前では罰ゲームでもなければ勘弁だしそもそも宏がそれで喜ぶとも思えないので当然冗談だが。

 

「勘弁してや。僕の趣味思われたらかなわんわ」

 

 カチャカチャと四面体パズルをイジり続ける宏。宏がいじっている時点で禄でもないものな可能性が春菜の頭を過ぎるがいつものことなのでスルーした。

 

「澪ちゃん、ほどほどにね。じゃ、行ってくるから」

 

 お金には困っていないにも関わらず最早ライフワークとなってしまっているのでは、と言いたくなる頻度で春菜は屋台を開いているがこの日もバリバリ稼ぐ気のようだ。

 

「だが断る。行てら」

「なんでやねん。気ぃつけてな」

「は~い」

 

 苦笑いで返事して出かけていく春菜をその場で見送る二人。

 

「師匠、ぶっちゃけどっち好き?」

 

「続けるんかい。どっちも大した違いあらへんやん」

 

 宏からするとそれまでの人生で二次元ではその手のキャラでお気に入りが居なかった訳ではないので全否定はしないものの黒猫耳も秋田犬耳もピンクのうさ耳もどれに優劣があるなど考えた事がない。そもそもの話として、

 

「仮にどれが好きにしてもノーラおる時点でよう答えんわ」

 

 という事である。うさ耳好きと答えればノーラに対してどうこう思わずとも宏としては心中穏やかである筈がなく、犬や猫耳派だと答えても平和な展開になるとは思えない。

 アズマ工房の面子が宏を女性恐怖症を絡めてからかうような事はまず無いが当人にしてみればシーフが目の前で設置していて尚且つ見えてる地雷に触る意味がない。

 

「ナチュラルボーン猫耳派?」

 

「やめぇや」

 

「もしかしてエルフ耳派?」

 

「なんやの今日は。妙に絡むやん」

 

 澪のあんまりな追求によって不審者を見る目を向ける宏。恋する少女になんという仕打ちと澪は思うが普段の行いが行いな上に自分でもわざわざこんな小道具を用意している時点で文句は言えない。

 ちなみに猫耳も犬耳もうさ耳もレベル一五〇を越えた熟練の冒険者でもなければ倒すことの出来ないモンスター素材でエンチャントも無駄に充実しているという一品である。

 

「師匠、デートが、デートがしたいです」

 

 テーブルにうずくまるようなポーズを取る澪に宏がどん引きしない訳もなく椅子から飛んで瞬時に一メートルほど澪から離れる。

 

「ば、バスケでええか? シュート対決で」

 

「それ、終わるの?」

 

 何とかネタに返したのに感覚値が人間離れしている、どころか片方は人間辞めている宏と、どうやったところでボールのまともに届く距離なら外しようがない澪がフリースロー対決など不毛以外の何物でもない。

 

「不毛やな」

 

「同意」

 

 素直に頷く。澪としても別に宏と遊べるならそれでも良いのだがすぐに間が持たなくなるのは目に見えていた。

 

「んで、急にどないしたん?」

 

「クラスメイトが青春真っ盛りだからちょっと当てられた」

 

「しかしそんなん言われたかて、デートなんて恐ろしゅうて出来る訳ないやん」

 

 だよね、と期待していた訳でもなくただ単に折角宏が暇そう、というには四面体パズルが気になるが周囲に珍しく他に絡んできそうなメンバーが居なかったのでジャレつきたくなっただけである。

 この微妙な間がなければ、何となく洒落で作っておいただけの猫耳犬耳うさ耳カチューシャが日の目を浴びる事はなかっただろう。そもそもフェアクロの世界で獣耳を敢えて着けるなど演劇の世界でも無ければそうそう無い。

 

 二人は話し合った結果、デートではなく釣りに行くことで折り合うこととなった。

 

 

 

「これはなんでしょうか」

 

 そしてファムとライムの元に遊びに来ていたエルはめざとく発見する。

 

「あ、これ澪さんがなんか作ってた奴だよ」

 

「そういえば澪姉ちゃん、ノーラ姉ちゃんの耳触って確かめてたよね」

 

「うん……でも、こういうの作るところが何とも親方の一番弟子って感じ」

 

「はぁ。これは頭に着けるんでしょうか」

 

「あ」

 

「ちょっ」

 

 澪が作っているところを見ていた二人は詳細は教えて貰えなかったがそれが単なる飾りでないことをその漏れ出る魔力から知っていた。

 当然エアリスも魔道具の一種だろうとは思っていたが澪が装備品で命の危険になるようなものを作るわけがないとの信頼が今回ばかりは余計な仕事をして脊髄反射で装着する。

 

「だ、大丈夫?」

 

「ワン?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「わふん?」

 

「にゃー!」

 

「ライム、何やってんの!」

 

 何を思ったかライムはライムで頭に装着し二人でわんわんにゃーにゃー言い始めるカオスと言えばカオス、可愛らしい二人なので微笑ましいと言えば微笑ましい状況にファムは頭を抱える。

 

「ワワンッ!」

 

 エアリスの犬耳をとろうと引っ張ると感覚が繋がっているのか非常に痛がる表情と鳴き声をあげる。

 

 このまま帰したら絶対大問題になる、とファムは頭を抱えるもライムに先手を取られうさ耳を装着させられる。

 

「わ、ライムなにやってるのです!? ほんとうに何してくれてやがるです!?」

 

 うさ耳バージョンはうさぎ独特なキューという鳴き声ではなくノーラの口調というなんとも言えない仕様だと判明した瞬間であった。

 

「いや本当に澪さんは何てもの作ってやがるのです!?」

 

 一方その頃。元凶(みお)はというと。

 

「ん?」

 

「どした?」

 

「いや、今、変な感じが」

 

「物騒なんか?」

 

「たぶん違う」

 

「ならええやん。引いとるで」

 

 愛しの宏と海辺で糸を垂らしていた。

 

 ちなみにファム・ライム・エアリスが装備した獣耳はというと

 

「わんっ! わわわんっ!」

 

「にゃーにゃー、にゃー!」

 

「親方、このままじゃ困るです! 澪さん何とかして欲しいのであります!」

 

 宏と澪が帰ってもまだ解決していなかった。

 

「それ、特殊エンチャントで一週間は外せない。無理矢理外すと危険」

 

「呪いの類やないから面倒そうやなぁ」

 

「効果時間より早く解除は無理。師匠の神域で作ったから、神器一歩手前で呪いじゃなくて一種の祝福になってる」

 

 その後、宏の頑張りの御陰で外すことが出来たのは三日後。

 ライムは「なんかそういう遊びをしたいのだろう」と工房関係者以外の周囲からは微笑ましく見られ、エアリスは特に気にした風でもなく楽しそうにワンワンワンワンと吠えていた。

 勿論公務には出られないので予定延期のスケジュールも一部発生し王家も神殿も一時騒然としたが関係各位の尽力でもって何とか乗り切ることとなる。

 

 

 ライムもエアリスも楽しそうだと眺めつつ

 

「こういう時に乗れない自分が少し恨めしいのです」

 

 ため息をつくファム。

 

「自分の口真似されているノーラとしては非常に複雑な気分なのです」

 

 呆れた様子でため息をついて澪に非難がましい視線を向けるノーラ。

 元凶はそっぽを向いてありもしない煙草をスパスパ吸う真似をして誤魔化すのであった。

 

 

 

 アズマ工房はある意味通常営業であった。

 

 




当方は「フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~」が死ぬほど好きです。書籍買った上にいつでも読みたいからと電子書籍も買うくらい好きです。
「更新待てないなら自分で書けば良いじゃない」との主人公リスペクトな行動かつ「パチモン」です。
原作リスペクトの精神を持って書いたつもりですがご不快に思われた方がいたら申し訳御座いません。
またノリに乗れたら書きたいと思ってます。
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