アズマ工房の脱線しまくり繁盛記 ~空気読まないゆるゆるライフ~   作:マリシャス

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邪神ぬっころした後のお話です。



マー君は苦労性

 ファーレーン王家のプライベートエリア中庭に、ふわふわふわふわと漂うはタコ型謎生物。神の眷属、オクトガルである。

 

「今日も~」

「元気に~」

「王家で~」

「遺体遺棄~」

 

 どんな時でもマイペースなオクトガル達は邪神討伐後は各王家を顔パスで渡り歩いていた。デフォルメされた少女な顔にタコ足が生えているオクトガルに対して「足はパスされないの?」と下手な冗談を言ってはいけないお約束である。

 彼女(?)達は関係者専用入り口があれば「まずは専用入り口の前に転移し普通にくぐりぬけた後すぐにまた違うところに転移する」という妙な律儀さでもって善意や一般人に本当の意味での迷惑を掛ける事はしないという小癪な一面も持っている謎生物なのである。

 

 そして神や神に準ずる者の結界、はたまた異界化したダンジョンでもなければ出入りを制限出来ない神の眷族であるオクトガルに文句を言う者はアズマ工房関係者以外には一人しかいない。

 

「遺棄するな!」

 

「マー君」

「今日も~」

「無駄に~」

「元気なの~」

 

「やかましい! 全く……今日は何しに来たのだ?」

 

「今日は~」

「レドリックちゃんと~」

「エリーゼちゃんに~」

「会いにきたの~」

「遺体遺棄~」

 

「サラッと最後に不穏当な事を言うな!」

 

 神の眷属でなければ王家の新たな双子に対して不穏当極まる言葉であり打ち首ものの発言である。が、誰も今更オクトガルの言うことに目くじらを立てるようなことはしない。まさに時間と労力の無駄なのは明白だからである。

 

「マー君は~」

「お嫁さん探しが~」

「遺体遺棄~」

 

「ちょっと待て!?」

 

 流石に聞き捨てなら無い。

 

「ちょっとだけ~」

「間違えたの~」

 

「ちょっとで嫁を遺体遺棄するような間違いがあるか!」

 

「気にしすぎは~」

「毛根が~」

「遺体遺棄~」

 

「余計なお世話だ!」

 

 一瞬頭皮に意識が向いてしまったが、父王を思い出し動悸を抑える。まだ若いマークにとって、父王くらいの年齢で髪がある程度有れば良い、と一瞬安堵したのである。

 

「親と子は~」

「同じじゃない~」

「比べちゃ駄目~」

「更なる高みを~」

「目指して~」

「遺体遺棄~」

 

 もう何も言う気が起きなくなったマークは手をシッシッと振ってその場を離れることにした。

 

「ちょっとマー君で~」

「遊び過ぎた~?」

「反省~?」

「でも~」

「些細なことは~」

「遺体遺棄~」

 

 『マーク王子で遊ぶ』は人をおちょくることを意味する隠語となるのだが、隠語が既に不敬罪となりえる字面のためファーレーン王宮関係者の間でのみ通じる言葉であった。

 

「まったく、澪の言っていた事も的を射ている」

 

 『オクトガルにツッコミ』とは『馬の耳に念仏』『馬耳東風』的な諺であり、そのまま無駄な行為を意味する。徐々に各王家や関係者に広まりつつある澪が作った諺である。

 

 諺通りにマークがオクトガルにツッコミを入れている光景は『ああ、あれがオクトガルにツッコミか。確かに無駄だな』とオクトガルを知る人々の間でギャグになりつつあるのをマークだけが知らない。

 

 余談だが『どこもかしこもオクトガル』という諺も有り、これはファーレーン王家のみならずアズマ工房が懇意にしている王家に害意を抱く者が進入し暗殺を企ててもいつの間にやら恥ずかしい縄の縛り方をされて騎士団詰め所までオクトガルに連行されることから生まれた諺である。

 

 勿論暗殺防止の防衛機構はどの王家でも存在するのだが、彼らからすると神の眷属とはいえオクトガルの手を借りるような事態を良しとする訳もなく、当然そんなことがある度に上層部より叱責を受け『オクトガルでさえ出入り不可能を目指す』というある意味で不可能な高みを目指す事態になっていたが誰が損をする話でもないので良い傾向とされている。

 

 ちなみに『オクトガル出禁』という言葉も生まれたがこれは『不可能&過ぎたるは及ばざるが如し』を意味する諺に数十年後には認知されるようになる。

 

 マークの部下は数名控えていたがオクトガルを咎めるのはまさに『オクトガルにツッコミ』となるため誰も試みようとはせず、マークもまた供の部下らに無茶を言う性格ではないためそれを咎めることもない。

 

「まったく、あいつらときたら」

 

 オクトガルが向かったであろう方向から「うぉッ!?」やら「キャッ」やらの叫び声が聞こえるがいつもの事と言えばいつもの事なのでマークは苦笑いを浮かべ一つ溜息をつくも「平和な証拠とも言えるのか。それはそれで困ったものだ」と振り返らずに城下町の視察に出掛けるため歩き出す。

 

 良くも悪くも真面目さが目立つマークにお供の部下らはオクトガルのようにマークを手玉に取るような女性が似合いなのではないかと思うのだが、それこそ叱責を受けかねない内容のため引き続き黙って任務にあたるのであった。

 




オクトガルとマー君はベストカップル賞。
是非、人化してマー君とくっついて欲しい。
サイコロの神様以前にそもそも選択肢に入らないであろうことが悲しい。

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