ゴブリンスレイヤー異聞録~『蜘蛛』の物語~   作:朝陽祭

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続きを書きたくなったので短編集的な感じでのんびり書くことにしました
ちょいちょいリスペクトネタ入ってます
あと、今回からR-15と残酷な描写タグ追加してます。ご了承ください。


ゴブリンスレイヤー異聞録~『蜘蛛』の始まりは女剣士と共に~

 

 

 

「――はい。こちらが身分証になります。何かあった時に、身元を照合するのにも使いますから、なくさないようにしてくださいね?」

 

 

 その言葉と共に、受付嬢から先程冒険記録用紙(アドベンチャーシート)に記載したものと同じ内容が刻まれた、白磁の小板を受け取る。

 

 

 それを首から下げ、冒険者になったということを自覚すると……なんだか、勇気が湧いてくるようだった。

 

 

「依頼はあちらに張り出されているので、等級に見合ったものを選ぶようにしてください。では、これで登録は終わりです。今後の活躍をお祈りしています」

 

「はい!ありがとうございました!」

 

 

 受付嬢に頭を下げつつ礼を言うと、私は示された壁にある巨大なコルクの掲示板へと向かった。

 

 

 

 

 

 ――どうして冒険者になったのか、と言われれば実に単純だ。

 

 延々と果てなく続く、「言葉持つ者」と怪物たちの戦い。吟遊詩人が語り継いでいくその物語は、実に様々なものがあった。

 

 

 

 

 竜にさらわれた姫を助ける為に世界を旅し、遂には竜の王と激闘を繰り広げた者。

 

 《幻想》の女神に選ばれた証である四つの水晶(クリスタル)に導かれた、戦士たち。

 

 

 

 

 時代を、場所を越えたその英雄譚に、心動かぬ者などそうはいない。

 

 そして、私はたまたま、この胸の内に宿る情熱を形にできるくらいには、剣の腕を持っていたというだけの話だ。

 

 子を産み母となるという行為を尊いとは思っている。しかし、けれど。小さな村の名も無き農民で終わるくらいならば、危険に踏み込んででも名を馳せたいという想いがあった。

 

 だから私は村を出て、こうしてギルドの門をたたき冒険者となったのだ。

 

 

 さて、掲示板の元にたどり着くとそこは先達である冒険者で賑わっており、掲示板に貼られた依頼書もまばらになっている。

 

 残った依頼書に素早く目を通しながら、今の自分の等級で問題なくいけそうな依頼(クエスト)がないかを確認していく。

 

 名を馳せたいのは山々だが、まだ私は冒険者の常識(セオリー)をよく知らない。自らの力を過信していきなり邪竜討伐(ドラゴンクエスト)に挑み死んでしまったでは、本末転倒だ。

 

 

 ――森の奥に現れた巨大猪(ワイルド・ボア)討伐。対象は翠玉以上。どう考えても今は無謀すぎるので却下(パス)

 

 ――この街より一週間ほど歩いた先にある迷宮(ダンジョン)の調査。対象は青玉以上で頭目(リーダー)が該当する一党(パーティー)であるならば黒曜以下も参加可能。私にそういった技能(スキル)がないので難しいが、依頼を受けた冒険者に頼み込んだら参加させてもらえるだろうか?保留(チェック)

 

 子鬼(ゴブリン)巨大鼠(ジャイアント・ラット)退治は数が多いものの、依頼者が農村だったり報酬額が少ない。いかんせん地味ではあるが経験を積むにはよさそうだ。

 

 色々吟味した上で、近場の農村で発生している子鬼(ゴブリン)退治の依頼書を取ろうとし――その右手が、別の右手と触れ合った。

 

 思わずもう片方の手の主へ視線を向けると、そこには長い黒髪を真っ直ぐ(ストレート)にした少女が居た。見た目からすると年齢は今年で十六となった私と同じか、少し下ぐらいだろうか。首からは私と同じように白磁の小板をぶら下げており、どうやら同じ新人のようだ。

 

 目立つ武器を持っていないので斥候(スカウト)だろうかと辺りをつけていると、少女が訝しげな視線を向けているのに気がついた。しまった、ついいつもの癖で観察をしていた。

 

 

「ご、ごめんなさい!同じ新人さんみたいだから気になっちゃって……」

 

「……まぁ、いいけど。それで、あなたはその依頼(クエスト)どうするの?受けないなら私が受けるけど」

 

「うーん、そうだなぁ……」

 

 

 考えるような素振りを見せてはいるが、私に譲る気は毛頭ない。いくら数があるとはいえ、せっかく初めての依頼(クエスト)なのだ。どうせなら自分で納得したものを受けたい。

 

 と、ここまで考えた所でなぜ私は単独(ソロ)前提で物事を考えているのだろうと疑問が浮かぶ。あちらも動きを見せないということは私と同様の考えだったのだろう。同じ視点で物事を考えられるのならば、気が合いそうではないか。

 

 報酬も少ないではあるがそれはあくまで他の依頼と比べたからであって、二人で分けても心許ない訳でもない。それに、いくらある程度腕に覚えがあるとはいえ単独(ソロ)ではやれることも限られてくる。いずれ一党(パーティー)を組むのであれば早い方がよいだろう。

 

 意を決した私は、笑顔を浮かべると少女に向かって、とある提案をした。

 

 

 

 

「……せっかくだし、よかったら私と一党(パーティー)を組んでくれないかな?一緒にこの依頼(クエスト)挑戦(チャレンジ)しよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――それが、後に『蜘蛛(スパイダー)』と呼ばれるようになる少女との出会いだった。

 

 

 

 

 

 

ゴブリンスレイヤー異聞録~『蜘蛛』の始まりは女剣士と共に~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――はぁっ!」

 

「Guia!?」

 

 

 子鬼(ゴブリン)の胴をずんばらり。村長から餞別にと頂いた、装飾の施された両手剣(ロングソード)を振るい、飛びかかってきた次の子鬼(ゴブリン)を袈裟懸けに切り伏せる。

 

 時折陽炎のように煌くその刃は、一体、また一体と子鬼(ゴブリン)を切り裂いていく。

 

 

「Guaaaa――Gyaou!?」

 

 

 十五、六体ほどの子鬼(ゴブリン)を切り伏せた辺りだろうか。さすがに疲れも出てきていた私に対し、木の陰に紛れて隙を伺っていたのか背後から子鬼(ゴブリン)が襲い掛かってくる。だが、その子鬼(ゴブリン)は上から飛んできた『白い』矢に頭部を撃ち抜かれ地面へと縫い付けられる。

 

 ――想像以上の大当たり(クリティカル)だ。

 

 そんなことを考えつつ、合図を送る。すると、私の背中に白い糸が貼り付けられ木々の上へと引っ張り上げられる。たどり着いた先では、斥候(スカウト)の少女が木々に張り巡らせた糸によってできた『蜘蛛の巣』が、子鬼(ゴブリン)共の動きを頭上から見下ろす形となっていた。

 

 

「首尾はどう?」

 

「……少なくとも、ここいらを根城にしていた子鬼(ゴブリン)はあらかた潰したみたいだね。農村への被害も終わると思う。けれど、もしどこかに『巣穴』があってそこからこいつらが流れてきたのなら私たちだけじゃ無理かな」

 

「そっか……それなら、撤退しよう。依頼内容は果たしたことだし」

 

「ん」

 

 

 そして、私たちは依頼者である農村へと報告を終えると、ギルドへと向かった。

 

 戻った時に、私の冒険者登録を受け持ってくれた案内嬢が目を丸くし、更にほっとしていたかのような顔をしていたのが、すごく印象的だった。

 

 後になって別の受付嬢に聞いてみれば、子鬼(ゴブリン)退治に新人の冒険者が赴き、死んでしまうということはよくあることなのだとか。

 

 ましてや、剣士(ソードマン)斥候(スカウト)の白磁級二人、しかも女性だけの一党(パーティー)で生還するとは思ってもいなかったらしい。

 

 酒の席で涙ながらに語ってくれたらしいが(この話を漏らした事は秘密にしてくれとも言われた)、そう考えてみると私は非常に運がよかったのだろうと思う。

 

 

 

 一党(パーティー)を組むと決めた直後、私と彼女はお互いにどんな技能(スキル)を持っているのか、子鬼(ゴブリン)退治に必要な情報を集めた。

 

 その中で彼女が教えてくれた超六感(センス)蜘蛛之糸(ウェブ)という技能(スキル)は、私からしてみれば非常に『便利』なものだった。

 

 熟練の冒険者が経験と予測から『勘』が鋭くなるという話は聞いたことがある。彼女はそれを、神からの啓示という絶対的な尺度を持って危険度を判断できる。判断材料の根拠とするには、十分すぎるほどだ。

 

 蜘蛛之糸(ウェブ)もそうだ。伸縮性を保ちながら鋼鉄並の強度を備えた糸をほぼ無尽蔵に作り出せるなど、まさに吟遊詩人が紡ぐ物語の登場人物のようではないか。

 

 彼女自身ははじめ蜘蛛之糸(ウェブ)を捕縛や陣地を形成するくらいにしか使えないと言っていたが、試しに木の枝に巻きつけさせて矢にした所、怪物を射抜くのに遜色ない程の代物が出来上がった。

 

 その時、作った本人である彼女が目を白黒とさせていたのが、たまらなくおかしかった。蜘蛛に(なぞら)えるのはわからなくもないが、どうにもそこで思考が止まっていたらしい。勿体無いことだ。

 

 

 それからだろう。私と彼女が行動を共にするようになったのは。私と彼女は順調に等級を黒曜、鋼鉄、翠玉と上げていった。

 

 その間に、斥候(スカウト)の少女に蜘蛛(スパイダー)という二つ名がつけられた。まぁ、名付け親は私で彼女は顔を赤らめながら抗議していたのだが、次第に否定することを諦めていた。

 

 同時に、二人だけだった一党(パーティー)も人が増えていった。

 

 少し顔が怖く、口下手で誤解されやすい大柄の戦士。

 

 聡明な頭脳役(ブレイン)でもあり、なぜか斥候(スカウト)とよく痴話喧嘩(本人たちは揃って否定していたのがまたおかしかった)を繰り広げる神官。

 

 陽気で一党(パーティー)の盛り上げ役を担っていた、女弓手(アーチャー)

 

 

 女子三人で飲んでいる時には、蜘蛛(スパイダー)と「いつかみんなで白金等級まで上り詰めよう」と、夢物語を謳ったりもした。

 

 

 

 そう――それも、このまま行けば、夢じゃなくなるはずだったのだ。

 

 私たちは順調に冒険者として成長(レベルアップ)していくのだと、あの日まではそう思っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――私の故郷が、魔神王(デーモンロード)配下の、闇人(ダークエルフ)に滅ぼされたという報を聞いた、あの日までは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「――さぁ、いよいよ本編(メインシナリオ)のスタートだ。」

 

 

 《真実》はそういってケラケラと笑います。なにせ、《真実》にとってはここまで育てた女剣士(キャラクター)がようやく日の目を見る機会だからです。

 

 故郷の全滅。明らかに現在の彼女たちでは倒せない魔神王配下の闇人(ダークエルフ)。そして、彼女に隠された秘密(シナリオギミック)

 

 さぁ、どんな結果になるのだろう?《真実》はとてもワクワクしています。

 

 

「……大丈夫かなぁ?」

 

 

 一方で、《幻想》は若干不安があります。それは、以前作成したあの蜘蛛(スパイダー)

 

 実は《幻想》、蜘蛛(スパイダー)が選択した異能(チートスキル)の詳細を《真実》には伝えていないのです。

 

 その為、《真実》が知る異能(チートスキル)は今まで使っていた二つのみ。女剣士(キャラクター)の方にばかり集中していた《真実》は、そのことをすっかり忘れているようでした。

 

 

 ……まぁ、(サイコロ)で決定した能力なのだし。ありったけの困難を用意しておいて「依頼を受けたことが間違いだった」等とのたまうのです。

 

 ならば、冒険者たちもそうしているように「事前に確認しなかったのが悪い」、そういうことにしておこう。

 

 《幻想》はそう思うと、あえて《真実》に蜘蛛(スパイダー)が持つ最後の異能(チートスキル)を聞かれない限りは教えないことにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 さぁ、彼女たちの冒険が始まります。まずはじめは――《真実》が用意した困難(ダークエルフ)絶対成功(クリティカル)からでした。

 

 

 

 

 

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「あらあら?威勢はよかったけれどその程度?だとしたら、随分と無様ね」

 

 

 ――それは、たったの一撃だった。

 

 油断はなかった。準備もした。私たちの一党(パーティー)の全戦力を持って、一気呵成に挑んだつもりだった。

 

 だが、結果はどうだろう?闇人(ダークエルフ)の操る、影によって生み出された槍衾。それだけで、私たちは壊滅寸前にまで陥った。

 

 頼りになるはずの戦士は、私を庇って事切れた。女弓手(アーチャー)と神官はかろうじて息をしている程度。

 

 なんとか戦えるのは戦士に庇われた私と、とっさに蜘蛛之糸(ウェブ)で盾を作り致命傷を回避できた蜘蛛(スパイダー)だけだった。

 

 だが、このままでは全滅は免れない。私は、そう確信した。恐らくは、蜘蛛(スパイダー)も。

 

 そう考えた私は、私と戦士の首から下げられていた紅玉の小板を引きちぎり、蜘蛛(スパイダー)へと投げ渡した。

 

 

 

「っ!?ちょっと、何を……」

 

「――蜘蛛(スパイダー)、後は任せたよ」

 

 

 

 静止する蜘蛛(スパイダー)を振り切り、私は少々の損傷(ダメージ)を顧みずに、闇人(ダークエルフ)へと切りかかった。

 

 その隙に、女弓手(アーチャー)と神官を蜘蛛之糸(ウェブ)で縛り上げた蜘蛛(スパイダー)が、二人を連れて一目散に駆けていく。

 

 

 

「はっ!随分と美しい友情だこと!だけど残念、あなたを倒してすぐに追いかけてあげるわ!そして、あなたの目の前であの逃げたお仲間を八つ裂きにしてあげる!そうして絶望に染まった顔を眺めながら、殺してあげるわ!」

 

「そんなことさせない!私たちの物語は――ここで終わらせたりなんかしない!」

 

 

 影による攻撃を受けながらも、私は必死に両手剣(ロングソード)を振るう。ここまで一緒に戦ってきた相棒だ、どうせなら最後まで付き合ってもらおう。

 

 影を必死に切り伏せる。痛みで目が霞んでくる。どれくらい時間が経ったのだろう?気がつけば、両手剣(ロングソード)の刀身に罅が入っているようにも見えた。

 

 

「しぶといわねぇ……もう体もその剣もボロボロじゃない?なら、その心を折ってあげる為に――壊してあげるわ!その剣!」

 

 

 そんなことを叫びながら、闇人(ダークエルフ)は何やら呪文を唱え始める。耳も遠くなってきたのか、どんな呪文を唱えているのかはわからない。

 

 それとは別に朦朧とし始めた意識の中で……私はこの闇人(ダークエルフ)討伐依頼を受けた際に、蜘蛛(スパイダー)が妙なことを言っていたのを思い出した。

 

 

『――今までは感じなかったんだけど、今日に限ってその剣が危険だって超六感(センス)が告げているの。だから……気をつけて』

 

 

 その言葉を思い出すのと共に、闇人(ダークエルフ)が雷撃を私めがけて放ち――両手剣(ロングソード)の『鞘』が、砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――しとしと、雨が降ってくるのを肌で感じる。鎧も、体もボロボロだ。

 

 だというのに、なぜだろう?両手剣(ロングソード)から、力が流れ込んでくるのを感じる。

 

 

「……は、はは」

 

 

 笑う。

 

 

「あは、あはははははははは」

 

 

 哂う。

 

 

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 嘲笑う嗤う笑う微笑う哂う嘲笑う嗤う笑う微笑う哂う嘲笑う嗤う笑う微笑う哂う嘲笑う嗤う笑う微笑う哂う嘲笑う嗤う笑う微笑う哂う嘲笑う嗤う笑うワラウ。

 

 

 

 

 ――アァ、ナンテキモチガイインダロウ。

 

 

 

 なるほど、蜘蛛(スパイダー)が危険視したのも頷ける。なぜ、今になって発覚したのかはわからないが……これは、『魔剣』だ。

 

 剣が告げている。『血をよこせ』と。『敵を斬れ』と。あぁ、まさにうってつけの生贄(ごちそう)が目の前に居るではないか。

 

 

「な、なぜ……?なぜ魔神王(デーモンロード)が鍛え上げたと言われる『選定せし竜魔の剣(ドラゴンスレイヤー)』がそんなみすぼらしい装いを――」

 

「五月蝿いよ」

 

 

 

 ずんばらり。闇人(ダークエルフ)の首をはねる。

 

 おや、あっという間に終わってしまった。せっかく本来の姿を取り戻したこの剣の初陣(デビュー)だというのに。よく見れば装飾も変わっているが、まぁどうでもいいだろう。

 

 さて、どうしようか。図らずも故郷と戦士の仇はとった。だが、この剣はまだ血に餓えている。

 

 『やめろ』という声が聞こえてくる。だが、『斬りたい』という衝動が抑えられない。そんなことを考えていると――

 

 

 

 

 

『――《我は、地獄からの使者なり》』

 

 

 

 

 

 

 ――息を切らせながらも、何かの詠唱を唱えている蜘蛛(スパイダー)がその姿を現す。

 

 あぁ……ちょうどいい。彼女が戻ってきてくれたのなら、よい生贄になる(わたしをとめてくれる)だろう。

 

 

『《御身が振るうは、約束されし勝利の剣。今ここに、顕現せよ――神が齎し、超戦機》!』

 

 

 詠唱が終わると共に、蜘蛛(スパイダー)の背後に剣を携えた光り輝く巨人が現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 そして私は――蜘蛛(スパイダー)の元へと、駆け出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ――それは、まだ『私』が未熟だった頃の話だ。

 

 あの時の私では、あぁすることでしか彼女を『止める』ことができなかった。

 

 確かに『私』は異能(チートスキル)を持っている。だが、勇者ではなかった。それだけの話なのだろう。

 

 後悔も、未練も残っている。形見として持っている二つの紅玉の小板を見つめながら、だからこそ『私』は全てを抱えて前に進むと決めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「先生?」

 

「おぉ、すまんな。さて、そろそろ目的の街か……」

 

 

 

 

 突撃槍使い(ランサー)に声をかけられ、ふと我に返る。ふむ、感傷に浸るのはここまでだ。

 

 今はただ、小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)のことを考えよう。彼に会うのが、楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――これは、物語の、数ある内の一つでしかない。

 

 そして、彼女がこれからどんな冒険を歩んでいくのかは――(サイコロ)のみが知っている。

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