センターハウスで涼むお嬢様方を残し、くん製を楽しむべく再び外へ。
蓋付きの小さな鍋、中には網が1枚敷かれていて網を境に鍋と蓋の間には隙間が空いている。
″桜チップが定番″ですか。
チップの入った小さな透明パックを開け鉛筆の削りかすのようなものを鍋の底面に散らす。
そしてチーズとかまぼこ、残った野菜などを網の上に置いていく。
一通り並べ蓋をしてスタート。
暫くするときつね色のスモークが薫りと共にモクモクしてくる。
三『また何かやってんのー?』
羽織っていたデニムジャケットはハウスに置いてきたのか、半袖スカートの姿だった。
「あぁ、くん製ってやつ。やってみようかなって。」
三浦が隣、空いた椅子に座る。相模はまだ休んでいるのだろうか。
三『あー、それおっさんが前にやってくれたことあったかも♪』
「あまり期待しないでな、初めてやるからうまく薫りがつくかどうか。」
三『いーしそんなの♪楽しいからっ』
三浦と二人でこうして話す機会なんて今まであっただろうか。
「そ、そうか。なら、まぁ気兼ね無く。」
三『あーしさ。』
落ち着いた口調でこちらに向けた言葉。
三『今までここ来ててさ、今日が一番楽しいかも。』
今まで耳にしてきた言葉の中で恐らく一番柔らかく、優しい言葉。
「...そうなのか?」
三『うん、な、なんていうの?一番気が楽っみたいな。』
両腕を上げ伸びをし少し目線を反らしながら話す表情は少し照れ臭そうだった。
「なら、今日は来てよかったな。」
三『あ、あーしが誘ってやったんだし?とーぜんだしっ...ちょーし乗んなっ...』
ジャケットに包まれていないその腕が生意気を発した首元を絞め上げ頭ごと三浦の懐に持っていかれる。
三『...また...行くしっ』
「わかったよ、行こう...っ...くる...しっ...ぃ...」
三浦の長い髪、強引に引き寄せられた距離から甘いの匂いが漂いそれが記憶されていく。今顔は見られたくない...
三『ったく...』
堪らず腕をタップし解放してもらい顔を見られる前に足早に鍋前へと向かう。
三『...顔赤いっつーの、分かりやすっw』
「っ......言うなっ」
このお嬢には敵わない、と悟った。
三『ふふっw』
イタズラに笑う三浦。世にはびこる″小悪魔″なんて言葉がそよ風の様に思える。
南『ごめん~気持ち良くてウチちょっと寝ちゃってたよぉ~』
目を擦りながら登場した相模が三浦の隣に座る。
三『南おはよー♪』
南『優美子ちゃんおーはょ♪』
三浦の胸元によって赤く塗られた自身の顔を相模に見られぬよう振り向かず挨拶に答える。
時折吹く春の風と共に三人の声がセンターハウスに響き渡る。
鍋の蓋を開けいぶされたそれは見事に朱に染まっていた。