I2社社員は苦労している。   作:連鎖/爆撃

1 / 1
デュエルモンスターズに魅せられ、ハイスクールを卒業したばかりの右も左もわからない若造がI2社に入社試験を受けたのはもう10年ほど前の話だ。

「デュエルモンスターズの魅力は何だ?」と言う質問に対し、隣の入社試験を受けに来てる奴がクソマジメなことを言ってたので、そいつは同じことを言ってはツマランと思い、女性モンスターのおっぱいについて一通り語ることにした。

【キャッツ・フェアリー】の健康的なメロンについて。
【水の踊り子】の透き通るようなメロンについて。
そして、【ブラマジガール】のはちきれんばかりのメロンについて。

試験官の一人が口を開く。
「君のメロンへの並々ならぬ情熱はわかった。……では、たった一つメロンを選ぶなら、君はどの娘を選ぶかね?」

男は迷わず答える。
「【ハイ・プリーステス】です」

試験官が目を見開いた。

「だが、彼女のそれはちゃんと描かれてない!」


「隠されているがゆえに」
「隠されているが故に探究心をくすぐるエロティックがあるんです」


その場を痛いばかりの沈黙が包んだのは言うまでも無い。

隣の奴はこんなことを考えてたらしいが。
(ジャパニーズ、ワビ・サビと言う奴か……テメェにはカナワネェナ……)

おっぱい星人だった部長(当時はまだ課長だった)は、何をとち狂ったのかその馬鹿を採用することにした。

こうして俺は10年前、I2社に拾われた。

隣のクソマジメなこと言ってた奴は普通に合格した。マイロのことだ。

そんなこんなで、マイロとは入社以来の腐れ縁だったりする。


2016/07/01~ ①

7月1日 

今回の改定はまずまず好評だった。マイロも満足気だ。

「俺のレベル1デッキで掃除機が縦横無尽するな!」

マイロは日本語が怪しいのに、意味が通じるから厄介だ。注意するに注意できない。

っていうか、【サウザンド・アイズ・サクリファイス】を掃除機呼ばわりするの止めろ。

 

7月2日

マイロの【レベル1】と戦ってきた。

何だあのデッキ卑怯すぐる。

場ががら空きだから調子に乗って殴ると、次から次に飛んでくる【ゴストリ】ども。

【ライトニング】で解決じゃね?と思ったら【ヴェーラー】打たれた。ちくしょう。

 

【金華猫】で【サクリファイス】釣り上げられて【ライトニング】吸われた。

 

7月3日

テスト時代から愛用していた【ABC】でマイロの【レベル1】を倒してやった。ざまぁ。

 

 

7月7日

マイロの【青眼】VS俺の【ABC】。

数日見かけないと思ってたら、ショップを巡って【亜白竜】その他もろもろを買い漁ってたらしい。

 

っていうか、I2の社員なんだから、会社の在庫漁れば良くねぇ?

「それは職権濫用だろ。未熟者!」とマイロに一喝された。

 

マッチで負けた後、マイロに【ABC】デッキを取り上げられた。

今日は散々だ。

 

 

7月15日

マイロにリベンジを果たした。【DD】様々だ。

ストラク3つ買って、【テムジン】2枚買っとけばだいたい勝てる良いデッキだ。

というか、俺が勝てるなら大体いいデッキだ。

異論は認めねぇ。

実はストラク3つに関しては会社の在庫くすねてきたんだが、此れ位ならばれんだろ。

 

 

7月17日

マイロにストラクくすねてたことがバレた。

その場で30$(ドル)払わされた。ちぃ。

 

今日から一週間、昼飯が水だけになる。泣きてぇ。

 

 

7月20日

マイロと一緒に、カードのデザイン会議に出席してきた。

正直、俺の使うテーマは次のパックには入っていないのでどうでもいい。

「デッキから【インフェルノイド】をリクルートしてくれば良くねぇ?」って言ってやった。

今さら強化されたって、あいつらは環境に入ってこれないだろうしな。

 

「なるほど……【インフェルノイド】のリクルートね。興味深いわ」

 

Ms.ユキノが俺の案をメモる。

やぁ、ユキノ。案を出したんだから、ご褒美に君の肉まんを触らせてくれないか?

 

部下であるはずの男性社員共に会議室から叩き出された。

なんで新入女子社員に親衛隊なんてものがついてるんだ?

 

7月21日

どうやらマイロが新テーマのデザインに参画するらしい。

名前は【十二獣】とか何とか。マイロの日本語で日本語テーマに参画?不安しかねぇ。

案の定、読みは「じゅうに()()」にするんだとか。

そこは適当に英語でルビつけとけよ。

 

前回俺は【ABC】の企画を練ったし、今回も【インフェルノイド】新規の草案を出したので、今回はお役御免である。

来月から新規禁止制限の選別も始まるし、ゆっくりできるうちにゆっくりしておこう。

 

 

7月30日

さすがにやり過ぎだ! 誰だ【煉獄の狂宴】のテキストを考えたやつ!

出てこいこの野郎! 100回音読させてやる!

 

デザイン部に殴りこみかけたら、デザイン部の奴ら全員に無言で指差された。

……俺ぇ?

待て待て。俺なわけ無いだろ? ……そうだ、Ms.フジワラだ! フジワラを連れて来い!

 

大声で叫んでたら、ガードマンが出てきて無言でつまみ出された。

俺、一応課長なのに。

 

 

8月2日

確認がとれた。本当に俺の名前で企画書通ってた。

フジワラのやつ、自分の名前じゃ企画が通らないんで俺の名前で……!

あんの【インフェルノイド】狂いめ! 【推理ゲート】だけで満足してやがれってんだ!

 

※I2社社則:社員は自分の使用するテーマの新規を考案してはいけない。

 

既に【煉獄の狂宴】の件が噂になっているらしく、社内を歩いていると「また()()()を刷るらしいよ……」「課長は自重しないからな……」などと後ろ指を刺された。

フジワラのやつマジで覚悟してろ。

 

 

8月4日

フジワラからの企画書が届いてた。

【名推理】無制限、【ゲート】無制限を嘆願した企画書だった。

 

笑ってシュレッダーにかけてやった。

いい気味だ。

 

8月5日

馬鹿共から企画書が提出されていた。

やれ、「【苦渋の選択】を無制限にしてください、絶対に悪さはしませんから」だの「【八咫烏】も同名ターン1つければ安全ですよね、多分!」だの、よくネタが尽きないもんだ。

とりあえず、全部シュレッダーにかけた。

 

「【マキュラ】緩和で」と一言だけ書いてた奴は人事部に報告しといた。

 

8月6日

部長の名前で、フジワラが出したものと全く同じ内容の企画書が届いてた。

あいつ、これで本当に誤魔化せると思っているのか?

 

企画書はシュレッダーにかけた。

 

 

8月8日

マイロから相談を受けた。何でも、テキストの書き方がわからないんだとか。

「同名ターン1を付けたいんだけど、効果そのものはエクシーズモンスタに付与する扱いで、素材になったモンスターの名前で同名ターン1をつけても意味が無いから、今までの裁定を振り返ってもだな……」

ストップストップ。それ本当に日本語?

マイロはちゃんと喋った時のほうが意味が通じない。何だコイツ。

相手をするのも面倒だったので、「じゃあ、同名ターン1つけなきゃいいじゃん」とだけ言ってマイロを追い返した。

 

 

8月10日

部長の企画書本物だった。死ぬかと思った。

フジワラのやつ、部長を懐柔していただと!?

部長の企画書にどれだけ無理があったかを説明し、「僕はユーザーのことを考えてですね!」と()演を披露し、最後の方は泣き落としまでしてみせた。

最終的に【ゲート】を緩和することを確約したことでで何とか難を免れる。クビになるかと思った。

 

廊下ですれ違ったフジワラが勝ち誇った顔をしていた。

このアマ、胸を揉みしだいてやろうか!

 

言葉には出していないはずなのに親衛隊の拘束を受けた。

 

 

8月14日

大体、次の改定あたりで【DD】のストラクバリアー切れるんだよな……どうしよう?

マイロは、「【スライム】も【ラミア】も【テムジン】も【地獄門】も全部制限にぶち込んでおけばいいんじゃないかな?」とかほざいてやがった。

コイツも大概である。

自分が使わないテーマはいくらでも殺しとけ☆ が、この課の人間の共通意見なのでどうとも言い難いのだが。

でも俺は30$使ったからな―……もったいないんだよなぁ……。

 

しかし、現実は残酷である。会議は決着し、ほぼマイロの言うとおりに【DD】は死のうとしていた。

マジョリティってやつだ。気に入らねぇ。

フジワラにならい、俺も権力に頼ることにする。

 

 

8月15日

Mr.赤馬を召喚した。

「この改訂案(プラン)を考えたのは……君か?」と、マイロに圧力をかけてた。

【ラミア】【スワラル】が準制限ということでなんとか帰ってもらった。

やったぜ。

 

 

8月18日

だから誰ぇ!? こんな危ないテキストを考えた奴は誰ぇ!?

作ってる途中で気づけよ!【十二獣モルモラット】これ、最速禁止行きだろ!

出てこいこの野郎! テキスト100回音読させてやる!

 

デザイン部に殴りこみかけたら、デザイン部の奴ら全員に無言で指差された。

……まぁたこのパターンか。

WAIT WAIT. 餅つけ餅つけ。 ……そうだ、Ms.フジワラだ。 フジワラに聞けば全部誤解だって……。

 

フジワラが出てきて、「(今回は) 私じゃないです」とだけ言われた。

……あっるぇ?

 

ガードマンが出てきて無言でつまみ出された。

俺課長のはずなんだけどなぁ……。




※アメリカが舞台なのに何故日本のカードプールの話になっているのかに関してはツッコミを受け付けておりません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。