登場
X.I.Gに加入したユウキとヒカリ。二人はダイゴの指令によりヒマワキシティの近くに来ていた。理由はこの辺りで多発する謎の怪現象の調査で、被害者の全員が地面に巨大な眼を見ているのだ。
本当はヒカリとミツルで行く予定だったがミツルとヒカリはオカルト系がダメで、ミツルは行くことを拒否してしまうくらいの怖がり屋だった。ヒカリは一人では行きたくないと文句を言って行こうとしない。なので、仕方無くユウキも付き添うことになったのだ。X.I.Gを結成して間もないが、早くも将来に不安を感じずにはいられないユウキとダイゴだった。
現場近くを空から確認する二人。
「この辺りでいいんだよな……?………ヒカリ。そんなにくっつかれるとちょっと困る……なんて」
本当は恥ずかしいから離れてくれと言いたかったユウキ。でも離れてしまうとそれはそれで残念な気持ちになるのは男の性か。
「ダ、ダメ!離れたら私死ぬから!」
幽霊が出るわけでもないというのに、手を離そうとしないヒカリ。ユウキは怪獣が平気なクセにと心の中で静かに思う。
「巨大な眼なんて何処にも見当たらないぞ。やっぱ噂に過ぎないってことなのかな?」
「噂だったら被害者なんかでないわよ!」
ユウキが特に考えもせずに言った言葉に対して猛烈に反論するヒカリ。首をブンブン振っているとヒカリが異変に気付く。
「ねえ…ユウキ。緑でイッパイのこの場所でアソコだけ何もない所があるよ」
「本当だ……。しかも形が……」
周りが緑で生い茂っているのに、その部分だけ眼のような形で地面が剥き出しになっていた。
「成る程、巨大な眼に見間違えても仕方無いかもしれないねこれじゃ」
「ほ、本当に幽霊じゃないのね……?」
少なくとも巨大な眼が原因ではないと二人が結論付けようとしたその時だった。
剥き出しになっていた地面が巨大な眼に変貌する。その眼は笑っているように見える。ユウキは急いでミツルに通信を繋ぐ。
「ミツル君!奴のデータを!」
「そ、それが……正体がわからないんです」
「ゆ、幽霊なのねやっぱり!?」
「ゴーストタイプのポケモンとも違う。こんな生物がどうやって存在しているんだ!?」
ミツルは珍しく声を荒げて頭を抱える。構成している物質も、そもそも生物かどうかもわからないなどミツルには初めての出来事だった。
「落ちついてミツル君。君が頼りなんだ」
ユウキはどうにかミツルを落ち着かせようとする。ユウキの声に冷静さを取り戻したミツルは巨大な眼について自分の見解を述べる。
「あの眼には生物が持っている熱反応を一切確認出来ない。ゴーストタイプのポケモンでも持っているものがあの眼にはありません。あそこには何も無いのと一緒なんです」
「でも、あそこには確かに……」
「構成している物質に僅かに金属反応が確認出来ます。概念的には生きているように見える。しかし、生物としての条件を充たしていない」
謎の巨大な眼は黒目の部分がニッコリと笑っているように見える。まるで彼らを嘲笑うかのように。すると上空にいる二人に岩を飛ばしてきた。
「どうやら、奴は僕達を敵だと思ってるみたいだ」
「攻撃した方がいい?」
二人は攻撃許可を取ろうとする。ミツルが決めあぐねているとダイゴが二人に指示を出す。
「攻撃許可は出来ない。正体がわからない以上、手を出すのは危険だ。生態反応が確認出来ない一方で金属反応があるのも気になる。しばらく周辺の安全な所で避難してくれ」
ダイゴの指示に従う二人。すると、前方から戦闘機が現れた。アルケミー・スターズが∞エネルギーを使って開発した戦闘機で、コッヴの時の物とは比べられない程性能が上がっているのはその速さを見れば一目瞭然だ。
戦闘機はそのまま攻撃を開始する。以前よりパワーアップしたエネルギー弾とそれを補助する形でミサイルを撃ち込む。
しかし、それら全部が吸収されてしまった。
「気持ち悪い……」
ヒカリが思わず口にする。黒目の部分がまたも笑う。ミツルは画面越しにその眼を見る。
「う、うう……」
「どうしたミツル君?」
ミツルを心配するダイゴ。一瞬目が虚ろになったミツルは汗がふきだし焦点の定まらないまま指示を出す。
「あの眼を攻撃……してください」
「! ………いいのかい?」
「あそこにいる以上、生物として断定しても問題ないでしょう。それに吸収にも限度があるはずです。攻撃を加えればエネルギーが膨張して倒せるはずです!」
「わかった。ユウキ君!あの眼に攻撃許可を出す。ただし、様子見としてヒカリちゃんは安全地帯を離れないでくれ。ユウキ君の攻撃が有効だと確認出来ればヒカリちゃんも攻撃に加わるんだ」
「「了解!」」
ヒカリはムクホークを出し、ユウキから離れる。ユウキはラティオスに攻撃を指示する。
「ラティオス!りゅうせいぐんだ!」
凄まじい威力の攻撃が眼に向けられる。しかし、それも眼の中に吸収されてしまう。
ユウキが次の攻撃を指示しようとした次の瞬間だった。眼から戦闘機の撃ったミサイルとりゅうせいぐんが一斉にユウキを襲い、そのまま墜落して行ってしまう。
「ユウキッ!」
ヒカリはユウキが墜落した所に一直線に向かう。アルケミー・スターズの派遣した戦闘機も本部に帰還する。
眼は嘲笑いながら何処かへと消えた。
「……………………ぼ、僕のせいだ」
ミツルは掠れた声でそう言うと倒れてしまった。ダイゴはミツルをすぐに介抱しユウキとヒカリの無事を願う。
ヒカリはユウキを見つけたが、ユウキは体の至る所から血を流し生きているのが不思議なくらいだった。ヒカリは急いでかいふくのくすりをユウキに使うが効果があるように見えない。
「おねがい!死なないでぇ……!」
ヒカリが涙を流しながら叫ぶとユウキのボールからチリーンが出てきた。
「チリリーン!」
チリーンはいやしの波動と体の傷を癒し、いやしの鈴でユウキを元気づけようとするが、それでもユウキは目覚めない。
すると、光輝くボールが眩しい光を放ってユウキ達を包んでいく。
「なにこれ!あ、あったかい……」
光に包まれるとヒカリも気を失ってしまい、ユウキの上に重なる。
そしてその光景を見つめる少女。
「ガイアのヒカリ……こんな能力もあるのね」
ハルカは二人をラティアスに乗せて近くのポケモンセンターを目指した。
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「お前、体が弱いくせに生意気なんだよ!」
「弱虫ミツル!悔しかったらポケモンの一つでも捕まえてみやがれ!」
弱虫!弱虫!弱虫!弱虫!弱虫!弱虫!弱虫!
お前なんかいなくなっちまえ!
「うわあぁぁぁ!」
ミツルは目を覚ます。どうやら自分は医務室にいたみたいだ。
「あなた、ずっとうなされてたのよ」
たまたま居合わせたツツジがミツルの看病をしていた。どうやら丸一日中気を失っていたらしい。
「ユウキさんやヒカリさんは!?無事だったのですか!?」
「ええ。二人ともヒマワキのポケモンセンターに運ばれて無事が確認されましたわ。ユウキさんは絶対安静らしいですが」
「僕のせいだ……。僕のミスで……」
ミツルは自分の軽率な行動でユウキ達を危険に晒したことに責任を感じていた。
あの巨大な眼は心の中の何処かで見たことがあると思っていたが、体が弱くいじめられていた頃に他人から見られていた眼と全く同じだったのだ。
人をいじめて嘲笑うときの眼。自分には決して理解出来ない感情。
「そんなに気にすることではありません。私達は根源的破滅招来体と戦うことを決めてからこうなる覚悟は全員出来ています。でも、覚悟がないまま戦うのならここにいる資格はありませんわ」
ツツジはそう忠告をすると部屋から出ていく。ミツルはツツジが自分を叱ってくれた事を感謝したが、巨大な眼の正体がわからないため今のミツルにはどうすることも出来なかった。