「ユウキ、頑張ってくれ…」
この声は…
「とう……さん…?」
「あなた!ユウキが…!」
「かあ……さん?」
頭に霧がかかったかのように意識が朦朧とする。どうやら僕はルネのポケモンセンターにいるらしい。
「本当に…良かった…」
母さんが泣いてる…。どうやらかなり心配させちゃったみたいだ。僕はベッドから起き上がり腰を下ろした。
「動いて大丈夫か?」
「うん…平気みたい」
父さんが言うには僕は一週間意識を失っていたらしい。というのも、グラードンが祠から僕をポケモンセンターまで運んできてくれたらしく、その時光輝くべにいろのたまを持っていたというのだ。しかし、グラードンが人里に現れたため一時パニックになったのは言うまでもない。
「伝説のポケモンを手懐けてしまうとはさすがだな」
「伝説のポケモンも普通のポケモンも変わらないよ…。みんな、トレーナーのために頑張ってくれる」
「そう……かもな」
そんな話をしていると、ポケモンセンターに見覚えのある顔が入ってきた。
「ユウキさん!」
「……ミツルくん!?」
トウカシティのミツル君がそこにはいた。やっぱり六年も会ってないと別人みたいだ。……もしかして身長追い付かれた?
「良かった…ユウキさんが帰ってきたと思ったら意識不明でポケモンセンターにいるって聞いたときは血の気が引くような思いだったよ。本当はもっと早く行きたかったのに忙しくて…」
「心配かけちゃってごめん…」
僕はどうやらこの一週間で色んな人に迷惑をかけたようだ。ダイゴさんやジムリーダーの皆さん、オダマキ博士にソライシ博士、それにマグマ団の人達もお見舞いに来てれてたそうだ。
それに世界大会で知り合ったヒカリもわざわざホウエンに来てくれたらしい。
「さっき忙しくて来れなかったって言ってたけど…」
「あれ?ユウキさんに言ってなかったっけ?僕、『アルケミー・スターズ』の一人なんだ」
おっと、中々の衝撃だ。まさかミツル君が『アルケミー・スターズ』の一員だったなんて…しかも僕がホウエンを離れた後にチャンピオンにもなってたらしい。ポケモントレーナーとして成長出来たミツル君は他の形でポケモンの事をもっと知りたいと思ったらしく、勉強漬けの日々を送って晴れて一員になったとか。
「と言うことはハルカちゃんの後輩?」
「そういうことになるね」
「そう言えばハルカちゃんは…?」
ミツル君の今までの明るかった顔を一気に暗くしながら
「実は一ヶ月前に置き手紙を残して行方を眩ましたんだ」
「何だって!」
僕の見舞いにハルカちゃんがいなかったのもまさか……
「父さん、どうしてハルカちゃんの事を教えてくれなかったんだ?一ヶ月も前にいなくなってるなんて…」
「オダマキ博士に言われたんだ。娘の事を言ったらお前は必ず帰ってきてしまう。世界大会決勝を目前だったとしてもだ」
……嫌な予感がよぎる。破滅の脅威の予言…もしハルカちゃんが一人だったら危ない。
「置き手紙の内容は一つだけ。根源的破滅招来体の侵略を止めに行く、と」
「それって破滅の脅威の予言のこと?」
「それを何処で知ったんだい!?ユウキさん!」
どうやら『アルケミー・スターズ』は破滅の脅威を世間には知らせてないみたいだ。素直にグラードンの事を話すか、一応誤魔化しておくか…。そんなことを考えていると、ミツル君が深刻な顔をして僕らにこう言った。
「………皆さんに話していいか迷っていましたが、あなた方を信頼して僕達の秘密を教えます。他言無用でお願いしますよ?」
他言無用とはかなり重要な話題なのだろう。父さんが頷くとミツル君は重い口を開くように
「『アルケミー・スターズ』は根源的破滅招来体への対策として∞エネルギーの使用を強行することを決定しました」
僕は開いた口が塞がらなかった。∞エネルギーはポケモンのエネルギーを使うことで強大なエネルギーを発揮できる。しかし、それはポケモンを犠牲にすることと同義なのだ。
「僕やハルカさんを含めた少数派はこれに反対しましたが……圧倒的な多数派意見によって決定されたことです。」
「君達がそこまでするということは…この予言の信憑性の高さに嫌でも気づいてしまうな」
父さんも母さんもショックが大きかったようだ。その後の話によれば『アルケミー・スターズ』は∞エネルギーをポケモンだけでなく様々な方法を使って確保していく方針らしい。ミツル君も反対派の発言力が無くなった今、彼らを説得出来るようなエネルギー源を探しているという。ハルカちゃんもきっと同じ理由でポケモン以外からエネルギーを得るために……。
大地の化身ガイア…グラードンから授かったこの力はきっとこういう時に使うものではないはずだ。僕はミツル君に光の巨人の力の事は黙っておくことにした。
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結局ミツル君には黙ったままだったが、そもそもガイアの力はどうやって使うのだろう?僕自身がガイアになるのか?それともポケモンみたくガイアをたたかわせるのか?いや、そもそもミツル君は何故『アルケミー・スターズ』の秘密を教えてくれたのだろう?
そもそもなんでグラードンは僕を選んだのか?海の化身アグルの力は誰に与えられるのか?もし地球の意思で生まれたポケモンがグラードンだとしたら、カイオーガも同じような存在なのか?
そういえば、ヒカリがホウエン地方に来てるって言ってたな。彼女も今、ホウエンでこんなことになってるだなんて思ってもみなかったはずだ。
僕は様々な事を考えながら帰路を辿って行く。でも、一番頭に浮かんでいたのはハルカちゃんのことだった。ハルカちゃんはどんなエネルギー源を探しているのだろうか?出来れば協力してあげたいなんて思っていると我が家が見えてきた。
ミシロタウンに戻った僕達は久しぶりに家族で食卓をかこう。僕に気を使ってかハルカちゃんの話題は出なかったものの
「昔はパパママって呼んでくれてたのに…寂しいわ」
「よ、よしてくれよ!もう17歳なんだから」
「ママはユウキに甘えられたいんだよ」
ウチの家族は相変わらずだなぁ…。
「あっ!ジュカインやサーナイトもわらってる!」
「きっと外にいるボーマンダも笑ってるだろうな」
何だかんだ家族の楽しい時間があっという間に過ぎて行くころ
ゴゴウウゥゥゥゥウウン……
大きな地響きがあったかとおもうとテレビの速報で
「緊急ニュースです。エントツやま付近に謎の巨大生物が現れました近隣の住民はすぐに避難するよう……」
僕は反射的に家を飛び出そうとしたその時、母さんに腕を掴まれていた。
「また、行っちゃうの?」
「うん、僕にしか出来ないことなんだ。だから…」
母さんは目を閉じしばらくした後に
「必ず生きて帰ってくるのよ」
と一言だけ言って僕の手を放してくれた。
父さんは何も言わず力強い目で僕を見つめながらゆっくりと頷いてくれた。
「行ってきます!」
僕はジュカイン・サーナイト・ボーマンダをボールに入れ、ラティオスを呼んでエントツやまに向かった。
次回、ガイア登場です。