復讐者慟哭。幕上がるは復讐歌劇   作:鎌鼬

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エクスカリバーと復讐者・3

 

 

イザイヤとクリスティアンが乱入にしてきて、リアスたちは動く事が出来なかった。

 

 

理由は二つ、一つは結界に囚われていたから。黒歌が結界の支配権を簒奪した事により、結界は黒歌の思うがままになった。それで黒歌はリアスたちを隔離したのだ。イザイヤとクリスティアンの復讐の邪魔をさせたくなかったからと、彼女の妹を守る為だ。

 

 

そして二つ目の理由がーーー純粋に、見惚れていたからだ。イザイヤとクリスティアンの強さに。

 

 

イザイヤの戦い方は質実剛健、フリードやマキナのような奇襲強襲アクロバティックな動きは一切せずに地に両足を着けて両手に剣を一本ずつ握った二刀流で4本の聖剣を統合させた聖剣を持つフリードと戦っていた。統合される前の聖剣が持っていたそれぞれの能力に惑わされずに淡々と自分の戦い方を進めていく姿には単純であるがゆえに華がない。だが単純であるからこそ突き崩せない堅牢さと、奇襲強襲アクロバティック(そんなもの)に頼らずとも勝てるという自信が伝わってくる。

 

 

クリスティアンの戦い方はイザイヤと違って派手な物だった。何故なら、何百もの魔法陣を同時に展開し、それを完全にコントロールしての飽和攻撃をしているから。この中で魔法の扱いに秀でているのは朱乃だが、どうしてクリスティアンはあんな戦い方が出来るのかと驚愕していた。朱乃自身でも完全にコントロールして魔法を展開しようと思えば二つ、暴走を覚悟でやれば四つは同時で行けるだろう。なのに彼は何百もの魔法陣を同時に展開させ、そのすべてを完全にコントロールしている。時には同時に、時には時間差で、時には直前でキャンセルして別の魔法陣に切り替えるという芸当まですべてを同時進行でやってのけている。それにコカビエルは高笑いをしながら光の槍をクリスティアンと同じ様に何百も空中で待機させながら戦っていた。最盛期から衰えているとはいえ、これが聖書に名を残す堕天使の実力か。

 

 

イザイヤ、クリスティアン、コカビエルの実力を見せ付けられてリアスたちは歯軋りする。自分たちの弱さを教えられ、悔しさと共に強くなってやると誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーなんで、なんでだよぉ!!」

 

 

イザイヤと戦うフリード。彼は焦っている様に見えた。それはそうだろう、悪魔でも天使でも堕天使でも無い()()()()()が4本のエクスカリバーを統合した聖剣を持つ自分と平然と打ち合い、押しているから。

 

 

イザイヤが今持つ剣は突然現れた物で、それを見たバルパーは魔剣創造(ソード・バース)神器(セイグリッド・ギア)だと見抜いた。例え神器(セイグリッド・ギア)であっても魔剣は魔剣、なら魔に対して有効な聖剣で簡単に斬り裂けるはず。だというのに、少しも刃毀れしていない。それどころか聖剣の方が悲鳴を挙げつつあった。

 

 

「聖剣だぞ、エクスカリバーだぞ……4本も統合したっていうのになんで魔剣なんぞに負けてんだよ……ありえねぇだろうが!!」

 

「ーーー当然だよ」

 

 

魔剣に弾かれたフリードが距離を取りながら呼吸を回復させようとすると、イザイヤが唐突に語り始めた。

 

 

「この魔剣は僕の想いを詰め込んでいる……聖剣や教会、それに聖剣計画への憎悪と怒りが。だから、この魔剣は折れない。エクスカリバーなんぞへし折ってやると昂ぶってるくらいだ」

 

「……聖剣計画だと?」

 

「そうか……お前は聖剣計画の生き残りだったか」

 

 

イザイヤの言葉に訝しげに呟くフリード、そして聖剣計画という言葉でバルパーはイザイヤの正体を知った。

 

 

「今でも思い出せる……聖剣を扱う因子が少なくて、お前たちは用済みだと毒ガスを噴出された日を、毒ガスに侵されて血反吐を吐きながら死にたく無いと言って死ぬ彼らの姿を……!!!」

 

 

その日のことを思い出したのかイザイヤから憎悪と殺意が溢れ、それに応じる様に魔剣が鳴いた。

 

 

「全員始末したつもりだったが……これも運命か。一つ、いや二つ良いことを教えてやろう。恐らく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。教会から派遣された2人の退魔師(エクソシスト)と、エクスカリバーを持っていたことがその証拠だ。」

 

 

聖剣は誰もが扱える物では無い。因子と呼ばれる物が一定値を超えていなければ使うことが出来ないのだ。因子を持つ者は多くいても、その一定値に届く者は少ない。それをどうにかする為に、バルパーはその因子を抜き取るという方法を取ったのだ。だが因子は神器(セイグリッド・ギア)同様に魂に深く関わるもので、抜けば死んでしまう。だからバルパーはイザイヤを始めとした子供達を殺してから因子を抜き取っていた。暴れらる手間を考えたら、初めから殺して大人しくさせておいた方が楽だから。

 

 

バルパーが教会が今でも聖剣計画を行っていると言った理由がそれでもある。聖剣を扱える一定値以上の因子を持つ者は少なく、希少だ。なら、教会が未熟とはいえその希少な聖剣の担い手をたった2人でコカビエルの元に向かわせるはずが無いのだ。なら、同時でそんな事をしたのか?想像がつく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それこそがバルパーが考案した聖剣計画。

 

 

「ミカエルめ、私の事を断罪しておいて計画を続行しているとは……大方、異教徒は人間に非ずと異教徒から因子を抜いているのだろうな。そして二つ目……これが、抜き出して結晶化させた因子だ」

 

 

バルパーが懐から一つの球体を取り出す。それから感じられるのは聖なる気配。バルパーに言われなくても分かる、あれは聖剣を扱う因子だと。

 

 

「最後の一つだが、これは貴様にくれてやろう。すでに研究は環境さえ整えば因子を量産出来る段階にまで進んだ。もう私には必要無い」

 

 

バルパーが球体をイザイヤに向かって投げる。地面に落ちて数回バウンドし、最終的には転がってイザイヤの足元に着いた。

 

 

そしてーーー因子が光輝く。光は広がっていき、そこから青白く淡く光る少年少女らが姿を現した。最上級の堕天使であるコカビエル、赤龍帝である一誠などの力が干渉し、因子から魂を解放したのだ。その少年少女らの姿にイザイヤは見覚えがあった。何故なら、彼らはイザイヤの目の前で死んでいった者たちだから。

 

 

「みんなーーー」

 

『僕らは、一人ではダメだったーーー』

 

『私たちは聖剣を扱える因子が足りなかった。けどーーー』

 

『皆が集まれば、きっとだいじょうぶーーー』

 

『聖剣を受け入れるんだーーー』

 

『怖くなんてないーーー』

 

『たとえ、神がいなくてもーーー』

 

『神が見ていなくてもーーー』

 

『僕たちの心はいつだってーーー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー黙れぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」

 

 

彼らが現れた時は呆然としていたイザイヤだったが、彼らの声を聞いた瞬間に激昂し、()()()()()()()()()()()。両断される少年少女らにイザイヤの憎悪と殺意が魔剣から伝わり、耐えられずに弾け飛んで消滅する。

 

 

「誰だよ貴様ら、僕はお前たちなんて知らない!!僕の同志たちは、あの日、死にたく無いと言って死んでいった!!希望を持たずに、ただただ絶望の最中で死んでいった!!聖剣や教会への罵詈雑言と共に死んでいった!!神だと?聖剣を受け入れろだと?……みんながそんな事を言うはずが無いッ!!」

 

 

イザイヤに取って同志たちとはあの日死んでいった者たち。毒ガスに侵されて血反吐を吐きながら聖剣や教会への呪詛をブチまけながら死にたく無いと死んでいった者たちに他ならない。

 

 

そんなイザイヤからしてみれば、さっきの少年少女らは同志たちの姿をしただけの何かでしか無いのだ。

 

 

「……フリード!!」

 

「完全回復だぜぇ!!元同僚ちゃんよぉ!!」

 

 

目の前の光景はバルパーからすれば驚きの連続だったが目的を果たせたことには変わりは無い。バルパーの目的はフリードが回復するまでの時間稼ぎ。呼吸を整え、乱れた心を落ち着かせたフリードは無警戒を装いながらイザイヤに斬りかかっていく。

 

 

「どうよどうよ、お友達を斬った気分は?最低だったか?最高だったか?絶頂()っちまいそうになったか?」

 

 

真正面からの戦いではイザイヤを殺せないと判断したフリードは本来の戦い方を選ぶ事にした。それは相手の隙を突いて殺す暗殺者の戦い方。言葉や態度、挙動で相手の油断を誘いそこを突いて殺す。フリードの狂人じみた言動はこの為に身に付けた物だった。

 

 

夢幻の(エクスカリバー・)聖剣(ナイトメア)の幻を創り出す能力により、さっき現れた少年少女らをイザイヤの目の前に立たせる。フリードの聖剣の軌道は少年少女らごとイザイヤを斬り殺す物だった。

 

 

「ーーー無駄だよ」

 

 

イザイヤはその幻を斬り払い、フリードの聖剣を打ち負かす。イザイヤの専心は復讐のみに向けられている。さっきの少年少女らがイザイヤの記憶の中にある通りの存在だったのなら躊躇っていただろうが、イザイヤからしてみればさっきのは同志たちの偽物に過ぎない。なので斬ることに躊躇いを持たない。

 

 

だが、それは読んでいたのか聖剣が形を変え、魔剣を絡め取る。擬態の(エクスカリバー・)聖剣(ミミック)の能力で、魔剣の一本を使えなくした。その隙にイザイヤに金的を放つ。だがイザイヤはそれを股を閉めて防ぎ、踏み込んで頭突きを喰らわせた。

 

 

鼻がへし折れ、タタラを踏みながらフリードは下がり、今度は天閃の(エクスカリバー・)聖剣(ラピッドリィ)の加速でイザイヤの周囲を高速で動き回る。そこに透明の(エクスカリバー・)聖剣(トランスペアレンシー)の透明化の能力で姿を消しーーーイザイヤの周囲を埋め尽くすフリードが現れた。夢幻の(エクスカリバー・)聖剣(ナイトメア)の幻だ。

 

 

フリードが狙っているのは予想外の出来事が起こった際に現れる一瞬の硬直。その隙に天閃の(エクスカリバー・)聖剣(ラピッドリィ)の加速で斬り殺す。

 

 

それをにイザイヤは驚く事もせず、当たり前のように幻の先頭にいるフリードに斬りかかった。

 

 

「なんで分かった!?」

 

「気配」

 

 

短く応えてフリードを弾き飛ばす。必殺のつもりの一撃を防がれたせいでフリードの内心はボロボロ、外見も砂埃と切り傷のせいでひどく汚れていた。対するイザイヤはかすり傷一つなく無傷、汗どころか息すら上がっていない。実力の差は歴然だった。

 

 

「チクショォ……負けられるかよぉ!!!」

 

 

聖剣を支えにしながら、フリードは立ち上がった。息絶え絶えで足は小鹿の様に震えているのにその目に宿す闘争心は陰りを見せていない。

 

 

「どうして立ち上がる?もう君の負けは決まっているのに」

 

「負けられないんだよ!!俺が負けたら、あいつらの死が無意味になっちまう!!それだけは、やっちゃいけねぇんだ!!」

 

 

それはフリードの本音、相手の動揺や油断を誘う狂言回し(トリックスター)ではなかった。そして、それを聞いたイザイヤは一つの仮説を立てる。

 

 

「……もしかして君も」

 

「あぁそうさ、聖剣計画の被験者だ!!あんたと違って成功したけどな!!」

 

 

聖剣計画の成功者、つまり他人から与えられた因子に適合して聖剣の担い手になった者。

 

 

フリードは幼い時に聖剣計画に参加させられ、素体の良さから因子を抜き出すのでは無く因子を入れられる実験台として扱われていた。仲の良かった友達が目の前で殺され、吸い出された因子を入れられるというのは幼かったフリードの心に歪んだ決意を持たせた。

 

 

あいつらは役立たずなんかじゃない。だから、俺がそれを証明してやる。勝って勝って勝ちまくってあいつらが役に立つことを証明してやる。

 

 

そこからフリードは勝ちに貪欲になった。狂人じみた言動で油断を誘い殺し、罠にかけて殺し、時には寝込みを襲う事もやった。それもこれも、因子を抜かれて死んだ友人らの死に意味を持たせるため。だが、その結果フリードはやり過ぎだと教会から追放されてしまったのだが。

 

 

イザイヤとフリードは良く似ている。始まりは共に聖剣計画、イザイヤは殺された同志たちの復讐を誓い、フリードは殺された友人たちの為に勝つと誓った。

 

 

それにイザイヤは妙なシンパシーを感じ、ここでは使うつもりの無い力を使う事にした。

 

 

「そうか……君の気持ちは良くわかる。だが僕の復讐は止まらない。だから、君の死を背負っていこう。君たちの存在が無意味では無かったと、僕が背負って生きていく。だからーーー死ね」

 

 

 





イザイヤVSフリード戦。

復讐の為だけに磨き続けたイザイヤはかなり強くなっています。なのでフリードなんて相手じゃない。7本統合のエクスカリバー持っててもそれがどうしたと切り捨てられます。

原作では感動物の因子のシーン。イザイヤ君、まさかの切り捨て。復讐者になったイザイヤにとって、同志とは聖剣計画で犠牲になった者たち、目の前で呪詛を吐きながら死にたくないと死んでいった者たちなんです。だからキラキラして綺麗事を抜かしている因子なんて同志じゃないと切り捨てました。もしこれがイザイヤの記憶の中にある同志なら受け入れてましたけど。


感想でいろんな予想が飛び交ってて楽しいです!!どんどん悩んでください!!

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