「ーーーはぁ……」
駒王町の駒王学園、そこの旧校舎の一室でリアス・グレモリーは眉間に皺を寄せながらため息を吐いた。
彼女は魔王であるサーゼクス・ルシファーの妹で、同じく魔王であるセラフォルー・レヴィアタンの妹のソーナ・シトリーと共に駒王町の管理を任されている。自分たちには力不足だと言ったのだが、人手不足と将来の為の練習だと言われて押し切られてしまった。だが、2人はここは人間の土地で、悪魔が勝手に領地だと言い張っていることを知っていた。ほとんどの悪魔はそうは思っていないが2人を始めとする若手悪魔たちはそう思っていて、その事に不満を抱いていた。
基本的に人外は人間を見下す傾向にある。基本的なスペックが低く、寿命も短いとなれば見下すのも分からないでもないが、決して侮って良い存在では無い。
人間は魔力や光力、妖力霊力などの力を持つものは少ないのだが、その代わりに技術力を磨いてきた。前者は鍛錬によって伸ばす事が出来るがほとんどは本人の素質に依存するもの、つまりは
「ゼノヴィアが眷属入りを希望してくれるのは嬉しいのだけど……天界から文句言われそうだし……」
先日のコカビエルの騒動で乱入してきたイザイヤとクリスティアン。彼らが去り際に言った信仰する神は居ないという言葉、ゼノヴィアはイリナと共にたった1本残ったエクスカリバーを教会に返却し、そしてイリナのいない場で彼らの言った言葉の真偽を問うた。その結果、神の不在を知ったと異端者の烙印と共にゼノヴィアは教会から破門を言い渡された。
幼い頃から教会で
素直にゼノヴィアの眷属入りはリアスとしては嬉しい。
「……考えてみれば私の眷属たちって複雑な事情持ちだらけよね」
隠密に特化した堕天使に侵入されて殺され、咄嗟に転生させる事で命を救った
堕天使の父親と人間の母親のハーフで、そのいざこざによって母親をころされた姫島朱乃。
主であった悪魔を殺してはぐれ悪魔となった姉を持ち、サーゼクスに保護されてリアスの眷属となった元妖怪の塔城小猫。
そして……魔法使いと錬金術師の両親を
彼らでそれぞれ1冊ずつ本が書けそうな程の複雑な事情持ちだらけだった。
一誠とアーシアに関しては完全にこちら側の不手際だ。事情をすべて話し、眷属に入らなくてもいいと言ったが一誠はハーレムが作れるからと、アーシアは一誠と一緒に入れるからと眷属入りを求めてきた。
アーシアに関しては何も言わなかったが一誠に関しては叱っておいた。別にハーレムを作るのが悪いわけではない、ただ眷属=何でもしていいと思っていたのが不愉快だったのだ。眷属は奴隷では無く、一個人としての権利はある。一部の悪魔しか持たない考えだがリアスはそれを持っていたので一誠を叱った。それもかなりキツ目に。日頃の一誠の行いを引き合いに出してまで。その結果、一誠のエロさは控え目になった。性欲の強さこそは変わらないが学校にエロ本やAVを持ってきて見せびらかしたり、覗きをするような事はしなくなった。
「そういえば……小猫とマキナはサーゼクス様が連れて来たのよね……」
サーゼクスとは兄妹であるが相手は魔王、こちらはただの上級悪魔でしかないのでプライベートな時間以外は様呼びをする兄の事を思い出す。
小猫は姉が主を殺した事で暴動が起きかけ、それをサーゼクスが保護する形で何とか収めた。そしてまだ
まだ幼かった頃で、その上眷属も欲していたのでリアスはその提案に喜んで2人を眷属にしたのだが、今考えてみると
「優先すべきは会談の事とアザゼルの事ね……それにマキナの事も」
リアスが言った会談とは三大勢力による会談の事。三竦みの関係であった悪魔と堕天使と天使がこの学校を会場にして行うのだ。
それを考えると頭が痛い。冥界などの人間がいない土地ですれば良いのに何故わざわざ町で三竦みの会談を行うのか。サーゼクスは色んな力が入り混じっているからとか言っていたが勘弁して欲しかった。
それに堕天使アザゼルの事。彼は配られていたチラシを使って一誠を呼び出してゲームをしたらしい。その時に一誠はアザゼルは酒を飲みまくっていてただのオッサンにしか見えなかったと言っていたが、何を企んでいるのか分からない。会談に備えて現地入りしているのだろうが……一応の為に監視を申し出ると快諾されたが、様子を見る限りは酒に溺れている中年にしか見えない。
さらに眷属であるマキナの事。彼女はコカビエルの騒動の時にイザイヤとクリスティアンに斬りかかって行った。それも、彼女が両親から与えられた
「あぁ……頭痛が……」
一旦現実逃避の為に旧校舎から校庭を見ればそこには立って何かを話している一誠とソーナの眷属である匙元士郎、金髪の少年を追いかけているゼノヴィアと小猫の姿があった。
金髪の少年の名はギャスパー・ヴラディ。リアスの
今しているのはギャスパーの
すると、校庭に浴衣を着た前髪が金髪の黒髪で無精髭を生やした男性ーーーアザゼルが現れた。どうもアザゼルは一誠ーーーというよりも一誠の姿に誰かを重ねて見ているらしく、一誠の事をとても気に入っている様子だった。今日も一誠を見に学校に行っても良いかと使い魔越しに尋ねられて、ギャスパーの
「ーーーリアス、会談の件についてですが……」
と、そこにソーナが資料を持って現れた。現実逃避はここまで。リアスは溜息を吐きながらソーナと会談に向けての準備を進めて行った。
「ーーーうぃっく……うぇ〜……」
夜の駒王町を千鳥足で歩くのは浴衣を着た前髪が金髪の黒髪の男性、
彼がこうなったのは今から数年前、彼の妻が堕天使に殺された事から始まる。妻を亡くし、悲しみながらもその時はまだ息子がいた。息子を育てなければと精神的に立ち直る事は出来たのだが……その息子が、行方不明になってしまったのだ。アザゼルは
そこからのアザゼルは見るに耐えなかった。
7年前に白龍皇の少年ヴァーリを拾い育てたのだが、それも言ってしまえば息子の姿を重ねて見たから。今のアザゼルは、妻と息子を失った過去から一歩も動いていない。今回の会談もシェムハザにケツを叩かれたから出るだけであって、アザゼルからしてみればどうでも良い事だった。
泥酔してフラフラになりながらも駒王町で借りた家に戻ろうとするのだが限界が来たらしく、アザゼルは電柱に寄りすがってそのまま眠ってしまった。
ーーーおい、おい。
「んん……」
眠っていると誰かに肩を揺さぶられる。道端で眠っているアザゼルを心配してなのだろうが、心地良く眠ってるアザゼルからすれば邪魔でしかなかった。
ーーーはぁ……酒飲むのも良いが飲まれんなよな。身体にも悪いし、もちっと考えて飲め。俺は格好悪いところを見たくないし、お袋だって見たくないはずだぜ……なぁ、
「ーーーッ!?」
親父殿……つまり父と呼ぶ声にアザゼルの意識は一気に覚醒する。辺りはまだ暗いままでアザゼルが寝入ってから然程時間が経っていないらしい。そして自分を父と呼んだ者を探すのだが、辺りにそれらしい人影は見当たらない。
「夢……か?」
泥酔してあたから見た夢かと思った。が、揺さぶられる感触はまだ残っているし、さっきの声もしっかり覚えている。自分を父と呼ぶ可能性があるのは育てたヴァーリだが、声が違った。だったら……
「ハハッ……生きてたんだな……」
そう考えたときにアザゼルは泣いていた。どうしているか分からず、部下の堕天使が噂をしていた通りに死んでしまってるんじゃないかと思ってしまった。だが、さっきのがそれを否定してくれた。
こうしては居られないとアザゼルは家に戻り、水を浴びる。生やしっぱなしだった無精髭を剃って、身支度を整える。
アザゼルの中には確信があった。息子が生きていると、この駒王にいると。
「待ってろよ
なら、再会の時に格好悪い姿を見せられない。堕天使総督として各方面から最重要人物として見られていたアザゼルの復活の時だった。
「ーーーよっと」
「ん?もう戻って来たのか?まだ時間にゃ余裕があるぞ」
「良いさ、どうせすぐに顔合わせる事になるからよ」
アザゼルの姿を見て、声をかけたアスラは集合場所へと赴き、そこで待っていたレージと合流した。
「ところで、そりゃあどうしたんだ?」
「あぁ、これね」
アスラに聞かれてレージは地面に転がっていたそれを蹴り上げる。蹴り上げられたそれは声にならない悲鳴をあげてもがき苦しんだ。
「駒王学園の女子を襲おうとしていたから捕まえた。なんでも魔王に警備を命じられたんだがムラっとして襲おうとしたんだとよ。悪魔って本当にしぶとい。両手両足切り取って声帯抜いて皮剥いで内臓出してるのにまだ生きてやがる」
それの正体は学校から帰る途中だった駒王学園の女子を襲おうとしていた悪魔。レージが言った通りに全身の皮を剥ぎ取られて腹から五臓六腑を外に溢して達磨の状態なのにまだ生きている。
「んじゃ帰るか。悪魔の臭え匂いがプンプンしてるところに長居はしたく無い……吐き気がする」
そう言ってレージは悪魔の頭を踏み砕く事でトドメを刺し、死体を暗赤色のオーラで消してアスラと共に暗がりの中に姿を消した。
存外苦労人リアスさん。ただし苦労人度合いは伊達総理大臣がダントツの模様。
現時点ではまだゼノヴィアは眷属に入ってません。あくまで眷属候補の扱いで保留しています。理由は天界との軋轢と悪魔に軽々しく転生させたく無いから。一誠とアーシアの時は死んでいたので転生させて命を救い、すべてを説明してから眷属になるかどうかを尋ねました。断られた場合は諦めるつもりでした。
あとゼノヴィアがわざわざ駒王まで戻って来た理由も捏造。だって異端者認定されたんだもの、異端を嫌う教会に狙われないわけが無い。神の不在を知るゼノヴィアを生かしておく理由も無い。だからゼノヴィアと懇意にしていた神父が入れ知恵したという形にしました。ちなみにイリアは知らないです。
酔いどれパパゼル。だって奥さん亡くして息子のアスラが消えたんだもの、そりゃあ酒に逃げますわ。だけどアスラの声かけで復活の兆しが見えてきた。
この小説のパパゼルは