復讐者慟哭。幕上がるは復讐歌劇   作:鎌鼬

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ふと思いついた、カリバーンの砕けるシーン。

「カリバーン!!」

股間に放たれる一条の光!!

「ノォォォォォォォォォ!!」

《あーこれ騎士道に反してますわー》

「きゃぁ!?マ、マーリン!!剣が砕けてしまいました!!」

「そりゃあそうだよ」


復讐歌劇の幕開け・2

 

 

「ーーーあ」

 

 

一誠の時間が動く。止まる間際にギャスパーの神器(セイグリッド・ギア)停止世界の(フォービトウン・)邪眼(パロール・ビュー)に止められた時の様な錯覚だったと思いながら会議室の様子を見渡す。

 

 

サーゼクス、セラフォルー、ミカエルは会談の時と同じ様に席に着いたまま、アザゼルとガブリエルは窓の外を見ている。

 

 

三大勢力のトップは動けていたが、子猫とアーシア、朱乃に匙を除いたソーナ眷属は止まっていた。それは純粋な力不足。それを言えば一誠もそうなのだが神器(セイグリッド・ギア)の制御の為に何度もギャスパーに時間を止められていたからなのか、僅かに耐性が出来ていたので動けるのだ。

 

 

「会長、大丈夫っすか?」

 

「えぇ、ありがとう匙」

 

 

ソーナが礼を言って、匙の腕に装着された可愛らしいデフォルトされたトカゲの顔から伸びて自分の肩に繋がれているラインを撫でる。これは匙の神器(セイグリッド・ギア)黒い龍脈(アブソーブション・ライン)。これを用いることで匙はソーナに降りかかっている停止の力を吸収して放出していたのだ。

 

 

「一体何があったんだ!?」

 

「テロだよ。ほら、外を見てみろや」

 

 

アザゼルに促されて窓から外を見れば、そこには校庭からこちらに向かって魔法を放っている黒いローブ姿の集団が見えた。放たれる魔術の数は多いのだが、校舎から数m離れたところで見えない壁に当たったのか消滅している。

 

 

アザゼルの説明によるとグレイフィアとガブリエルが防壁結界を張っているから校舎には被害は出ていない、放たれる魔術の威力から察するに一人一人が中級悪魔クラスの魔力を持っているとのこと。時間の停止に関してはギャスパーが捕らえられて神器(セイグリッド・ギア)か魔術によって強制的に禁手(バランス・ブレイカー)状態にしたのでは無いかという見解だ。しかも敷地内だけでは無く、見張りの者たちまで停められているとの事。

 

 

前者は兎も角、後者をアザゼルは危惧していた。このままギャスパーの神器(セイグリッド・ギア)を強められたら、陣営トップも停められる恐れがあるとの事だった。

 

 

それを聞いたリアスは直ぐにギャスパーの救出を決意する。幸いなことにギャスパーがいると思われる旧校舎には未使用の戦車(ルーク)の駒がある。これを使ってキャスリングを行えば敵の予想の裏をかくことが出来る。キャスリングの関係上2人しか移動が出来ないのでリアスが一誠を連れて移動する為の準備をグレイフィアが結界を維持する片手間に行っている。だが、三陣営のトップは誰も動こうとしなかった。

 

 

理由は二つ、学校全体に張られた結界によって外に転移することが出来ない。解けば周囲に住む人間に被害が出る為に解けないのだ……もっとも、それを気にしたのはアザゼルとガブリエル、セラフォルーだけだったのだが。もう一つは、ここで籠城することで今回のテロの黒幕を誘き寄せる……つまり、自分たちを囮にしているのだ。

 

 

「ヴァーリ、お前は校庭に行って暴れてこい。白龍皇が暴れてるとなりゃあ敵の目が引けるだろうからな」

 

「それは命令か?」

 

「いんや、ただ()()()()だけだ」

 

「そうか、なら頼まれよう」

 

「待ちなさい」

 

 

アザゼルがヴァーリに頼み、ヴァーリはそれに了承して校庭に飛び出そうとしたところをサーゼクスに停められる。やれやれという、もったいぶった様子で魔術師たちがひしめき合っている校庭に指を向ける。

 

 

「もしもの為に用意しておいて正解だったな……これが私とアジュカ、そして魔術師と錬金術師の協力の元で作り出した、新たな力だ」

 

 

そう言った瞬間に、数カ所が爆発した。爆発した箇所にいるのは悪魔らしき者たち。周囲に隠れていたのか5人一組で、人数としては40人程度の少数。感じ取れる魔力も中級悪魔クラスの者で、時間停止をものともしない強者には見えなかった。

 

 

「「「「「創生せよ、天に描いた星辰をーーー我らは煌めく流れ星」」」」」

 

 

異口同音に紡がれたのは自己改変の詠唱(ランゲージ)。そして星の力が具現化する。見えない何かが飛び交って魔術師に突き刺さり、火の手が無いのに上がった炎が魔術師を燃やし、見えない何かに引き寄せられた魔術師を剣で切り裂く。

 

 

それを見たアザゼルは目を見開く。何故なら、彼らが使っている力には魔力も光力も、それどころか神器(セイグリッド・ギア)さえ使われていないのだから。

 

 

「おいおい、なんだよありゃあ……」

 

「能力のことを星辰光(アステリズム)、それを使える者のことを星辰奏者(エスペラント)と呼んでいる。別次元に存在する不可視の粒子の星辰体(アストラル)に干渉することで能力を発現させているんだよ」

 

「こんな力を生み出すとは……サーゼクス、貴方の目的は戦争の再開ですか?」

 

 

ミカエルの危惧も当然のものだった。星辰光(アステリズム)といくこれまでとは全く異なる力を生み出しているなど、戦争に備えているとしか思えない。それをサーゼクスは肩を竦めて反論した。

 

 

「まさか、自衛の為だよ。悪魔は魔力を使うと割れてるから対策を取られる事が多い。だけど光力を使うわけにはいかない。だから新しい力を求めたんだ」

 

 

確かにサーゼクスの言葉には筋が通っている。悪魔は魔力を使うと広く知れ渡っていて、悪魔を専門に狩る者など魔力を封じ、身体能力を人間並みに落としてくる結界を使う者もいるのだ。ならば光力となるが、これもまた堕天使を専門に狩る者が対策を講じている。神器(セイグリッド・ギア)に関しては強力な物もあるが数に限りがある。

 

 

そのため、サーゼクスは誰もが使える力を求めた。人間の武器である銃のような、誰にでも使えて一定以上の効果が期待できる力を。

 

 

「もっとも夫婦の研究資料は力を奪った子に破棄されていて、マキナの持ってた星辰光(アステリズム)を解析して再構築するのに時間が掛かったんだけどね……ところでアザゼル、さっきのは本気かい?」

 

 

サーゼクスが蒸し返したのはテロが始まる直前のアザゼルの発言。神の子を見張る者(グリゴリ)の総督の座を辞任するなど冗談にしか聞こえないものだったが、アザゼルは首を縦に振って肯定した。

 

 

「本気だよ、俺は総督を辞める。すでにシェムハザに伝えてあるし、引き継ぎもほとんど終わらせている。あいつ、いつか俺が辞めると思って前もって準備してやがったらしくてな、考えてたよりもスムーズに終わりそうだ。まぁ、ここ数年はお飾りの総督だったわけだし、これが俺の最後の仕事になるわけだ」

 

「……何が目的なんだ?」

 

「息子を、アスラを探すために」

 

 

アザゼルの目的は行方不明になった息子のアスラを探す事だった。先日の事でアスラが生きている事を確信したアザゼルはすぐにでもアスラを探そうとした。そこに邪魔になったのが総督の座だった。組織のトップに立てば権力は得られるが行動が制限される。アスラを探すためにそれが邪魔になったアザゼルはすぐにシェムハザに辞任する旨を伝えた。

 

 

それに対するシェムハザの答えは是だった。ここ数年はアザゼルが堕落していて仕事をしていなかった為にシェムハザを始めとした幹部数人で神の子を見張る者(グリゴリ)を運営していた。アザゼルが総督を辞めたとしても問題は無い。寧ろ、アザゼルがやりたい事をやらせる為にシェムハザは勧める程だった。それでも最後の仕事として会談に出席するように言われたが、これさけ終わればアザゼルはフリーになるはずだった。

 

 

「アスラ……アザゼルが話していた俺の兄に当たる奴の事か?」

 

「あぁそうだよ。今は大体20歳くらいか……俺に似てカッコ良くなってるんだろうよ」

 

 

アスラの現在を思い描いてか、アザゼルの目に涙が浮かぶ。生き別れになった我が子の事を思えば当然だろう。ヴァーリもアスラに興味を持っていたが、それはどんな人物なのかでは無くて強いかどうかだったりする。

 

 

「っといけねぇ、肝心な事を伝えるの忘れてた……今回、テロを仕掛けてきた集団についてだ」

 

 

アザゼルの言葉に視線が集まる。アザゼルが懐に手を入れて取り出したのは一冊の資料。

 

 

「シェムハザが不審な行為をする集団がいるって調べてたんだとよ。組織と背景が判明したのはつい最近らしいがな」

 

「その組織の名前と目的は?」

 

「ーーー禍の団(カオス・ブリゲード)、そう名乗っています」

 

 

ミカエルの質問に答えたのはこの場にいる誰でも無い女性の声。そして先代レヴィアタンの魔法陣が浮かび上がる。それを見たグレイフィアが急いでリアスと一誠を魔法陣で転移させた。

 

 

現れたのは1人の女性、禍の団(カオス・ブリゲード)に所属する先代レヴィアタンの血族のカテレア・レヴィアタンだった。

 

 

「御機嫌よう、現魔王のサーゼクス殿、セラフォルー殿、大天使ミカエルにガブリエル、そして堕天使総督のアザゼル。私はカテレア・レヴィアタン、先代レヴィアタンの血族です」

 

 

知っていると思いますがなどと可笑しそうに微笑みながらカテレアは微笑んだ。血筋としては正当であるのだが悪魔社会が実力社会に移行した為に王の座を追われた先代魔王の一族の1人。

 

 

「目的を尋ねられましたわねミカエル。目的と言われても、禍の団(カオス・ブリゲード)はオーフィスを頭に集まった一枚岩では無い組織、それぞれの派閥が別々の目的を持っている為に一言では説明出来ませんね」

 

「オーフィスだと!?それは無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)のことか!?まさかあいつがテロだと……いや違う、あいつの目的は確か……」

 

「……成る程、堕落していると聞きましたが頭の回転までは衰えていない様ですねアザゼル」

 

 

オーフィスが組織のトップだと聞いて思考に耽るアザゼルの姿を見てカテレアは感心する。アザゼルは実力もさる事ながら、その頭脳も恐れられていたのだ。堕落したと聞いて強敵が減ったと喜ぶ反面、落ちぶれた事を残念に思っていたが今のアザゼルはその恐れられていた頃に近い。

 

 

「私が所属するのは魔王派、私以外にもアスモデウスとベルゼブブが所属しています。目的は……現魔王の排除です」

 

「カテレアちゃん!!どうしてこんな!?」

 

「どうして?貴方たちの行いを見て決めたのですよ」

 

 

セラフォルーの悲痛な叫びをカテレアは一蹴する。その目にあるのは憎しみ。嫉妬の類から生まれるのもでは無く、蔑みを含んだ目でセラフォルーとサーゼクスを睨んでいた。

 

 

悪魔の駒(イーヴィル・ピース)で他種族を悪魔に転生させて種を存続させる?馬鹿らしい、それは別の種族の血を受け容れる事と同じなのですよ。悪魔の血を汚してまで生きながらえたいのですか?私たちは御免です。誇り高き悪魔の血を汚すくらいならば、誇り高きままに滅びます。ましてや太古から共存相手であった人間を食い物にしてまで存続させるなど、絶対に認められません」

 

 

それはカテレアが先代レヴィアタンから引き継いだ矜持だった。悪魔として生きることこそが我らの生き様よと笑いながら抱き締められた日の事を今の様に思い出せる。だからカテレアは転生悪魔などという悪魔の生き様を汚す存在を認められなかった。

 

 

先代レヴィアタンは人間を共存相手として認めていた。悪魔は望みを叶え、人間が対価を払う。その契約には一切の噓偽りがあってはならないと、それこそが悪魔の美学とカテレアは教えられていた。だからカテレアは現在の契約の裏をかくような過度の対価を求める現在の悪魔を唾棄していた。

 

 

それらはすべて現魔王になってから生まれたもの。なら、現魔王を打ち倒してかつての悪魔に戻ろうとカテレアとグルゼレイは大戦で死した先代魔王の墓の前で誓った。

 

 

「おい、外の連中も旧魔王の一派なのか?」

 

「旧魔王……間違っては無いけど不愉快ですね……いいえ、彼らはニルレム。魔術師の組織で目的はセラフォルー・レヴィアタンの抹殺です」

 

「わた、し……?」

 

「ええ、彼らの声に耳を傾けなさい」

 

 

ショックを受けていたセラフォルーはカテレアの言葉に素直に従ってしまう。星辰奏者(エスペラント)に襲われながらも防壁結界に魔術に放ってぶつかる音に混じるのはーーー怨嗟の声だった。

 

 

「セラフォルーレヴィアタァァァァァァァァァァァァァァン!!!」

 

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……!!!」

 

「殺してやる!!絶対に殺してやる!!」

 

 

血反吐を吐きながら、血走った目で睨んでくる魔術師の姿にセラフォルーは自分よりも弱いと分かりながらも一歩引いてしまう。

 

 

「どんだけ嫌われてんだよセラフォルーの奴……」

 

「さて、私が来たのは宣戦布告とニルレムの抑えなのでしたが……どうやら全滅してしまったようですね」

 

 

そう言いながらカテレアが校庭を見れば、最後の魔術師が星辰奏者(エスペラント)の手によって殺される瞬間だった。魔術師は背中から斬られながらも、セラフォルーへの憎悪を向けたままに絶命する。

 

 

「まぁ半数は止められたので良しとしましょう……それでは、私はこれで失礼しましょう」

 

「逃すと思ってるのかね?」

 

 

帰ろうとしているカテレアをサーゼクスが圧で止める。流石は実力社会となった悪魔社会でトップに上り詰めた男か、それだけでカテレアの身体は恐怖で固まってしまう。それでも顔には出さずに、淡々とカテレアは口を開いた。

 

 

「実はもう一つの派閥がここに来ていましてね……1つだけ注意させてもらいましょう。彼らは私たち三大陣営の被害者です。芽を育てたのはトップである彼ですが、種を撒いたのは私たちだという事を忘れないようにーーー」

 

 

その言葉と同時に、結界をぶち抜いて1人の男が堂々と侵入してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー機は熟した、運命は交わった。さぁさぁ皆様方、因縁を清算する用意は宜しいか?」

 

 

駒王学園上空で、顔の右半分を包帯で隠した青年レージは尋ねる。それに頷くのはレージが見つけ出してきた五つの魔星たち。それぞれが尋常ならぬ憎悪を三大陣営に向けて、それは報復しなければ消え去ることは無い。

 

 

「さぁ、冥府の釜の蓋を開こうやーーー!!!」

 

 

人の身で墜落する。自然落下にプラスして、自ら空中を蹴る事で加速。空気が破裂して音が置き去りになる。眼前に広がるのはニルレムが展開した結界。ぶつかれば大惨事は免れないであろうそれを、全身に暗赤色のオーラを纏う事で解決。対魔王を想定した術式を、オーラでグズグズにして通過、そして術式も用いずに身体能力に物を言わせて無傷のままに着地する。

 

 

「ーーー復讐しに来たぞ、サーゼクス・ルシファァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

 

ーーー復讐者轟咆。ここに復讐劇の幕は上がる。

 

 





星辰奏者(エスペラント)投入。一応学園の敷地内に警備の為に配置されてました。神器(セイグリッド・ギア)の停止は星辰光(アステリズム)で抵抗しました。真輝(マキナ)というオリジナルが居るのに再現するのに15年もかかった……これを凄いととるか、遅いととるかは個人の自由。

パパゼル、息子を探すために総督を辞任する。なおシェムハザは歓迎していたらしい。でも辞めることに喜んだんじゃなくて立ち直ったアザゼルに喜んでるんだよな……そしてシェムハザ超有能、パパゼル超無職。

魔術師へのヘイトが凄いセラフォルー。凄いんだけどその恨みの原因は……うん。


そして始まる復讐歌劇。幕は上がったぞ、舞台は整った、役者はすでに出揃った。ならーーー終わるまで、幕は閉じられる事はない。


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