結界を突破し、サーゼクス・ルシファーの姿を認識した。こちらを見て唖然としているあいつの顔は愉快だが、それは
「ーーー侵入者認識、危険度B相当と判定」
俺の事を知覚した悪魔共が機械的な判断と共に星辰の輝きを放ちながら斬りかかってくる。アジュカ・ベルゼブブがどんな悪魔かを聞いた時から、
なので、
「オォォォォォォォォォォォォーーー!!!」
咆哮と共に憎悪と殺意と怒りをぶちまけながらサーゼクスとその他がいる後者の一室に目掛けて全力で突貫する。鍛え、育ち、圧縮された筋肉の爆発力はもはや常識外の加速を可能にしてたった一瞬で音速に到る。
途中で斬りかかってくる悪魔共をそのままぶつかりながらサーゼクスのいる部屋まであと数mという辺りで、見えない壁にぶち当たる。恐らくは防壁、ニルレムの魔術師たちが放っていた魔術から身を守る為に張っていた物と推測出来る。
「こんなもので防げると思うなよ……!!!」
「そんな、馬鹿な……!!!」
だが、
「ーーー退いてくれ、グレイフィア」
防壁をこじ開けた俺の眼前に飛び込んできたのは驚愕するサーゼクスの顔では無く、紅い魔力。バアルから受け継いだ滅びの魔力だろう。回避は出来ず、直撃はまずいと判断して咄嗟に
この
それを隙だと判断したのか、校庭に群がっていた悪魔共が我先にと
「ーーーウゼェ」
それに対してただ一言呟き、星の輝きを強めればその悉くがボロボロと崩れ落ちて果てる。纏わりつく塵が悪魔共だったと思うと煩わしくて穢らわしいので即座に手で払う。
「その力……カミシロレイジュウロウだね?」
「あぁそうだぞサーゼクス・ルシファー。お前にすべてを奪われたガキが復讐の為に戻ってきたぞ」
そう言いながら剣を構える。うざったい悪魔共は考えなしに突っ込んで来たのでさっきので全滅出来た。あとはサーゼクスとその他だけだと身構えーーー部屋から飛び出してきた白い影に気づいて気を緩めた。
イザイヤとクリスから聞いていた。
名前を変えられていた事には怒りを覚えたが生きていてくれた事は嬉しかった。悪魔共の事だからホルマリン漬けにされてもおかしくないと覚悟していたのだから。
真輝が自分から飛び出してきた。サーゼクスとの掛け合いから向こうも俺の事に気付いているだろうと期待して無警戒に立ちーーー首筋に迷い無く振るわれた一閃を剣で防いだ。
「ーーー真輝ッ!?」
「カミシロ、レイジュウロウ……ッ!!
真輝から放たれるのは憎悪と怒りと殺意。合っている眼からもそれは伝わってくる。どういう事だと精神は混乱しながらも、脳みそが勝手にその答えを思考した。
真輝は悪魔に攫われていた。もしその間に親を殺したのは俺だと伝えられていたのだとしたら?2人の研究を奪ったのが俺だと教えられていたのだとしたら?
その答えはーーー部屋から、愉しそうに笑いながらこちらを見ているサーゼクスだった。
「ーーーサーゼクスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
「殺す……ッ!!殺してやる!!カミシロレイジュウロウ!!」
サーゼクスに跳ね上がった殺意を向けながら、真輝の放つナイフの斬撃をやり過ごす。裂傷は刻まれるが致命傷にはならない。俺が本気になれば、今の真輝程度一撃で黙らせる事ができるだろうが……それをするという選択肢は今の俺の中には存在しないし、あったとしてもしたくないのだのだ。
「創生せよ、天に描いた星辰をーーー我らは煌めく流れ星」
やらない、やりたくないとごねていると真輝の星が煌めく。それまはまるで奈落の底で唸る痩せさらばえた獣のようでーーー
「輝く御身の尊さを、己はついぞ知り得ない。尊き者の破滅を祈る傲岸不遜な畜生王
人肉を喰らえ。我欲に穢れろ。 どうしようもなく切に切に、神の零落を願うのだ
絢爛たる輝きなど、一切滅びてしまえばいいと 」
歌い上げられるは呪詛を孕んだ
真輝の速度が加速する。振るわれるナイフの一撃一撃が、妙な痺れを残し始めた。
「これは……振動か!?」
「苦しみ嘆けと顎門が吐くは万の呪詛、喰らい尽くすは億の希望。
死に絶えろ、死に絶えろ、すべて残らず塵と化せ 」
狂うように震えて死ねと真輝の星は叫んでいる。自壊寸前まで高められた振動を帯びたナイフの切れ味は先程までとは比べ物にはならない。
「我が身は既に邪悪な狼、牙が乾いて今も疼く 。
怨みの叫びよ、天に轟け。虚しく闇へ吼えるのだ」
その振動が、真輝の身体に打ち込まれる。振動の作用によって心臓の鼓動を加速させた事による運動能力の上昇。寿命を削る行いで、限界速度を更新してさらに加速する。
「サーゼクスゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
「
サーゼクスへの怨嗟の咆哮を上げながら、真輝のナイフが首に振るわれたーーー
ーーー地面から生えてきた槍と剣によって防がれた。
「っ!?」
予想外の事態に真輝は距離を取る。
「ーーーまったく、何をしているのかしら?」
「ーーーそうそう、気持ちは分かりますけど先走りすぎですよ」
悠々と現れたのはジャンヌオルタとイザイヤ。今の槍と剣は
「ーーーシャオラッ!!」
「ーーーハァッ!!」
ジャンヌオルタとイザイヤの登場に警戒していた真輝の前から黒歌が、後ろからアスラが襲い掛かる。俺に気を取られ、気配を完全に遮断していた為に正面からだろうが背後からだろうがその一撃は知覚外。黒歌とアスラの前後から同時に放たれた掌底を腹と腰にまともに食らう。
「アァッ!?」
普通ならばダメージを受けるのは掌底を受けた腹と腰だろうが、そのダメージはすべて関係の無いはずの足に集中、骨の砕ける音が聞こえた。
「ーーーしばらく大人しくしてもらおうか」
そして動けなくなった真輝をクリスの星が捕らえ、明後日の方向に飛ばした。地面を二、三度バウンドしながらも呻き声が聞こえているので生きているのだろう。クリスを睨むのだが鼻を鳴らされてそれで終いだ。
「ーーーアスラァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
「おう、今行くぜぇーーー親父殿ぉぉぉぉ!!!」
部屋から飛び出してきたのは堕天使総督のアザゼル。それに呼応するようにアスラもアザゼルに向かって突貫していった。アスラの天衣無縫っぷりはこれまでの付き合いでよく分かっている。それに親子の語らいだ、仲間とは言えど邪魔していい道理は無い。
「あら、堕天使が居るわよ。殺さなくて良いのかしら?」
「これでも親だった身だ。子を求める親の気持ちは理解出来ている……殺すのは最後にしてやろう」
「君たちは……」
サーゼクスが部屋から出て校庭に降り立つ。それにいつの間にかニルレムの連中の策である時間停止が止められたのか、騒ぎに気付いた悪魔と天使の雑兵がわらわらと集まってくる。
真輝のことで混乱したが、みんなが来たことで幾らか頭に登っていた血が抜けていく。
「
その言葉を皮切りに俺たちの星は輝きを増しーーー
「「「「「天昇せよ、我が守護星ーーー鋼の
五つの魔星が、ここに顕現する。
レージと
おら、喜べ。兄妹の再会だぞ。