復讐者慟哭。幕上がるは復讐歌劇   作:鎌鼬

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復讐歌劇の幕開け・7

 

 

「ーーーオラオラオラオラッ!!!」

 

「ーーーグゥッ……!!!」

 

 

レージがサーゼクスと、ジャンヌオルタとイザイヤがミカエルと戦っている時に別の場所では現れたアスラを一目見て息子だと気付いたアザゼルが()()()()()()()

 

 

アザゼルは堕天使としての特徴である翼も、光力も使わずに地面に足を付けてアスラと殴り合っている。これは使えないのでは無く、使わないから。

 

 

「元気そうで何よりだよクソッタレ!!」

 

「呵々ッ、そう言う親父殿は格好良くなったじゃないか!!あの頃と同じようによぉ!!」

 

 

 

アスラの拳がアザゼルの顔面を捉える。幸いに手は抜かれているのか打撃による痛みはあれど骨に異常は見られない。反対にアザゼルの拳はアスラには届かない。接近戦が得手では無いということもあるのだが、アスラが居なくなってから堕落したアザゼルの実力はすっかり衰えてしまったのだ。目では追える、思考も追いつく、されど身体が間に合わないという何とも歯痒い状況。アザゼルは絶対に鍛え直す事を誓った。

 

 

「どうして堕天使の力を使わない!!舐めてんのかよぉ!!」

 

「うっせぇ!!()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

「呵々ッ、よく言ったぁ!!!」

 

 

放たれるアスラの裏拳を受け止めながらアザゼルは叫んだ。そう、これは親子の喧嘩なのだ。突然行方不明になったと思えばテロリストと連んでいた不良息子(アスラ)父親(アザゼル)が叱るという一般家庭なら何処にでもあり得る光景。アスラもそう思っており、だからこそ与えられた星辰を振るわない。純粋な積み重ねだけで、衰えたアザゼルを圧倒する。

 

 

それをアザゼルは食らいながらも歯を食いしばって耐え忍び、アスラの一挙一動を観察する。そして食らった打撃の数が100を超えたところでアザゼルが動いた。

 

 

「ーーーお?」

 

 

アザゼルの顔面に放たれた拳が、捌かれた。一切の淀みなく綺麗に。マグレかと思い狙いを顎に変えて下から突き上げるように放てば、それすら捌かれた。

 

 

アザゼルの身体は衰えている。だからこそアザゼルはこの衰えた身体でもアスラに追いつけるようにアスラの一挙一動を観察し、それを元にアスラの挙動を予想した。何処から何処に放たれるのかさえ分かれば衰えたアザゼルの身体でも捌くことは容易い。アザゼルの並外れた観察眼と頭脳があったからこそ出来る擬似的な未来予知だった。

 

 

それにアスラは歓喜する。だったらこれはどうだと、捌かれたのならこっちはどうだと乱撃裏拳貫手に崩脚を矢継ぎ早に放ちーーーその全てがアザゼルに躱され、捌かれ、受け止められる。

 

 

「呵々ッ!!!あぁ凄え凄えよやっぱり親父殿は最高だぁ!!!」

 

 

星辰を使っていないにしてもアザゼルに適応されながら、アスラは気落ちするどころか更にヒートアップした。あぁ良い良いぞ、それでこそ俺の父親だと、歓喜し絶賛し笑みを浮かべる。父親の凄さを再認識して、アスラは無邪気な子供の様にアザゼルを誇った。

 

 

「ーーーそこぉ!!!」

 

 

そして防勢だったアザゼルがここに来て攻勢に回った。アザゼルを誇りに思ったことで出来た一瞬の気の緩み、それを卓越した観察眼にて感じ取って逃さずに穿った。

 

 

「ガハッ!?」

 

 

アザゼルの拳がアスラの顔面を撃ち抜く。殴られたアスラは校庭をバウンドし、何事も無かったかの様に跳ね起きる。顔にはくっきりと殴られた痕が残っているがダメージは無さそうだ。

 

 

「お前の目的は……バラキエルへの復讐か?」

 

 

アザゼルが尋ねるのはアスラが禍の団(カオス・ブリゲード)に所属している目的。バラキエルという個人の名前を出せたのは、それはアスラが神の子を見張る者(グリゴリ)に保護された時に叫んでいた名前だから。

 

 

「あぁそうさ!!バラキエルをこの手で殺す、それが俺の復讐だ!!でないと殺されたお袋が、何より生きている親父殿が憐れで憐れでしょうがねぇ!!」

 

「……」

 

 

神の子を見張る者(グリゴリ)の堕天使達はアスラの証言を混乱しているからと否定していた、バラキエルがそんな事をするはずが無いという思いもあったのだろう。アザゼルは真偽を確かめるために部下に命じてバラキエルの調査をしたのだが結果は白だった……今思えば、その調査をした部下が手を抜いた可能性も否定出来ない。

 

 

戦友であるバラキエルがそんな事をするとは考えたく無い、だが涙を流さないで泣いている様に叫ぶアスラの姿を見るともしかしたらと思ってしまう。

 

 

「だから殺す!!あのバラキエルを人間の力で殺す!!それが俺の誓った俺の復讐だ!!例え親父殿でも邪魔はさせねぇ!!」

 

 

そう叫びながらアスラは足元に弧を描きながら構え直す。親子の語らいはここまでだと、星辰は使っていないものの行動で示していた。

 

 

「そうか……」

 

 

アスラの決意の固さを知ってしまったアザゼルは残念そうに溜息を吐き、アスラに向かって構え直した。

 

 

「だったら殴って無理矢理にでも連れ帰ってやる!!!」

 

「ハッ!!上等ぉぉぉぉ!!!」

 

 

突貫は同時、校庭に深い足跡を残して2人は走り出す。片方は復讐を果たす為に、片方は息子の愚行を止める為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーぐぉぉッ!?」

 

「ーーーはっ?」

 

 

そしてそれは横槍によって台無しになった。横合いから突然放たれたのは高密度の魔力が込められた魔弾。アスラにのみ集中をしていた為にアザゼルはそれに気付かずに直撃、蹴られたボールの様に校庭を弾んで動かなくなった。

 

 

「親父、殿?」

 

 

さっきまで自分と殴り合っていたアザゼルが動かなくなってアスラは呆然とする。アザゼルはさっきの魔弾のせいで右腕が皮一枚繋がった状態。出血も酷く、ドクドクと鮮血が流れ出している。

 

 

「ーーー復讐派の、アスラ=ストレイドだな?」

 

 

そして魔弾を放った下手人が悠然と現れる。それは銀髪の青年、アザゼルの護衛として連れてこられたはずのヴァーリだった。

 

 

「ヴァーリ……テメェ……ゲホッ!!」

 

「ッ!?動くな親父殿!!」

 

 

起き上がろうとしたアザゼルを止めて着ている服を破り、腕を縛って止血を試みる。その一連の行動の意味が分からず、ヴァーリは首を傾げた。

 

 

「何をしているんだ?」

 

「そりゃあこっちのセリフだ!!知ってるぞ、テメェは親父殿に拾われて育てられたんだろうが!!親に何してやがる!!」

 

 

何とか止血に成功したアスラはヴァーリに噛み付く。それは当然だろう。アスラはアザゼルに負の感情を一切抱いていない。だからきっと、アザゼルに育てられたヴァーリも自分と同じようにアザゼルを父親として誇りに思っているのだと思っていた。

 

 

それを聞いてあぁ、と納得した様に頷き、

 

 

()()()?」

 

 

納得した上で、一蹴した。

 

 

「俺は強い奴と戦いたいんだ。禍の団(カオス・ブリゲード)に協力している理由だって魔王を始めとした三大勢力のトップと戦えるからだ……だが、今のアザゼルは駄目だ」

 

 

そう言ってヴァーリは地面に倒れたアザゼルを見下す。それはとてもでは無いが親を見る子の目では無く、()()()()()()()()()()()()を見る様な目だった。

 

 

「堕落して弱くなったアザゼルに何の価値がある?シェムハザの方が魅力的に感じられる……だからこうしたんだ。さぁ、戦おうじゃないか!!アスラ=ストレイド!!」

 

『Vanishing Dragon Balance Breaker!!!』

 

 

そう言いながらヴァーリは白龍皇と呼ばれる所以である白い龍(バニシング・ドラゴン)が封じられた神器(セイグリッド・ギア)白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)禁手(バランス・ブレイカー)白龍皇(ディバイン・ディバイディング・)の鎧(スケイルメイル)を展開する。

 

 

ヴァーリは戦闘狂である。強者と戦いたい、それがヴァーリの望みである。だから、ヴァーリにとってこの世界は生き辛くて仕方がなかった。この時代に生まれてきた事を残念だと思うほどに。強い奴がいないつまらない世界になど興味は無く、そうなれば死ぬと公言する程に。

 

 

ヴァーリが禍の団(カオス・ブリゲード)の誘いに乗ったのにはそう言ったヴァーリの事情もある。三大勢力の敵となれば、それぞれの勢力の強者と戦うことが出来ると。戦いを求めてヴァーリはアザゼルを裏切った。

 

 

今のヴァーリの興味はアザゼルでは無く、目の前に立つアスラに向けられている。サーゼクスがアジュカと人間と共同で開発したと言われる星辰光(アステリズム)を平然と使い熟している復讐派の面々。その内の1人と戦う為に興味が無かったアザゼルを狙って傷つけた。ヴァーリは言ってしまえばリードの着けられた狂犬と同じだ。例え飼い主だろうと自分の欲求を満たす為に嚙み殺すのも躊躇わない。

 

 

「……あぁ、あぁあぁあぁあぁそうかよ」

 

 

事前にアスラは曹操からヴァーリがどんな人物なのかを伝えられていたがここまでだとは思わなかった。禍の団(カオス・ブリゲード)の目的を果たしてから噛み付くものだと思っていたが、自分を抑え切れずに噛み付いてきた。

 

 

なら、躾は必要だろう。殺すつもりだが手足の1、2本で済ませてやると誓いーーー

 

 

天昇せよ我が守護星ーーー鋼の恒星(ほむら)を掲げるがためッ!!!」

 

 

怒りに燃える眼差しと共に、聖句(ランゲージ)を紡ぐ。誰彼構わずに強者であるなら噛み付く狂犬(ヴァーリ)を躾ける為に、色即絶空(ストレイド)の星が駆動する。

 

 

森羅万象天地を握る老いさらばえた支配者め古びた玉座がそれほどまでに恋しいか何故そうまでしがみ付く

憤怒に歪み血走る眼球(まなこ)皺を刻んだ悪鬼の相貌見るに耐えない怖気が走るなんと貴様は醜悪なのだ

 

 

天に唾するかのような内容の詠唱(ランゲージ)はアスラだけでは無くアザゼルをも表している。アザゼルは主の教えを破り、人を愛した。そして堕天した。寄る辺を自ら切り捨てた罰当たり。アスラは父親の庇護を拒み、母親の復讐を果たす為に残った寄る辺を捨てた。

 

 

そう、だからこその無頼漢(ストレイド)。天の支配なんぞ知ったものかと暴れる悪童は、自分の親の片割れであるアザゼルを嘲笑うように祝福していく。

 

 

その大口で我が子を喰らい飲み下すのが幸福ならばいずれ破滅は訪れよう 汝を討つは汝の継嗣血の連鎖には抗えない

鎌を振るい暴威をかざした代償が積もり積もって現れるかつて御身がそうした如く他ならぬ血縁に王位は簒奪されるのだ

産着に包んだ石塊を腹へ収めたその時に逃れられない運命は約束された未来へ変わる

 

 

アスラの心は飢えている。それは母親の愛を失ったから。与えられていた愛を奪われた悪童は母親の母性溢れる愛を恋しがり、それを奪った者へ、そして生きている父親を傷付ける者への殺意を滾らせる。

 

 

刮目せよ、これぞ予言の成就なり

 

 

さぁ味わえよーーーこれが狂犬(ヴァーリ)の望んだ物だぞ。

 

 

超新星(Metalnova)ーーー色即絶空空即絶色(D e a d e n d)撃滅するは血縁鎖(S t r a y e d)ッ!!!」

 

 

 




アスラVSパパゼル。最初はボコボコ、中盤耐えて、終盤で反撃。観察したデータをもとにアスラの行動を予測してパパゼルはアスラの攻撃をすべて捌いてました。どっかの漫画でこんなのがあった様な……

ヴァーリの離反。原作とは違いアースガルズとの戦闘では無くて、三大勢力と戦ってみないかと誘われたので離反しました……こいつ本当に狂犬。強者と戦いたいからって育ての親を裏切るとか……


その結果、左右の違いは原作と同じ様に隻腕になりました。そしてアスラがブチ切れました。

どうしてか?それはアスラがマザコンでファザコンだからです。

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