復讐者慟哭。幕上がるは復讐歌劇   作:鎌鼬

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復讐歌劇の幕開け・10

 

 

一誠の意思が、闇へと堕ちていく。死と眠りが同一視されるというのなら、これは正しく死であろう。夢と言うフィルターを通さないで見る闇は全てを塗り潰す漆黒。知覚できる物が自分以外存在しない虚無。これこそが死なのだと嫌でも分からされる。

 

 

起きなければと、一誠は考える。だが起きたところで何になる?対価を支払って至った禁手(バランス・ブレイク)も、サーゼクスが共同で開発したという星辰光(アステリズム)を使わずに純粋な身体能力のみで蹂躙された。

 

 

起きてたところで、たかが一誠が目覚めたところで何も変わりはしない。ただ目覚めて、立ち向かって、さっきと同じ様に叩き潰されるのがオチだ。

 

 

「だったら、どうしたらいい……」

 

 

闇の中に一誠の呟きは消えていく。分からない、分からない、自分が何をして良いのか分からない。起きなければ、起きたところでどうなる?なら眠るか?それこそ論外、目覚めなければレージ(あいつ)はリアスの兄であるサーゼクスを殺す。

 

 

ーーー教えて。あなたは一体何を選ぶのかしら?

 

 

そして一誠の呟きに応える様に、闇の底から幼い少女の声が響き渡った。誰なのかを問いたいのだが、声の主の無言の圧力によって問うことを許されない。

 

 

自分の問いかけに答えろと、一誠に選択肢を投げかけた。

 

 

ーーー完全なる勝利を求める?

 

「ーーー無理だ」

 

 

あれ程強力な敵を相手に、勝てる筈がない。

 

 

ーーーなら、脇目もふらぬ逃走を?

 

「ーーー出来ない」

 

 

みんなを見捨てて、逃げられる筈がない。

 

 

ーーーだったら、敗北(まけ)を受け入れる?

 

「ーーーやりたくない」

 

 

受け入れられる筈がない、だからこうやって苦しんでいる。

 

 

ゆえに、どれもが不適合。一誠の身に相応しい選択肢は何もない。主役の様に輝ける様な存在では無いと分かっているから栄光を求められず、なのに目を背けることを嫌がるから、雄々しく散ることを心底恐るその性根はまさしく凡夫そのもの。身勝手でありふれた、何処にでもいる十把一絡げの衆愚に過ぎず。

 

 

ならばこそーーー願うのは栄光の崩落。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ーーー逆襲を」

 

 

輝ける者と並ぶ為に己を高めるのでは無く、輝ける者を落とすことで自分と並べる。一誠が選んだのは、そんな愚かな選択だった。

 

 

ーーーあぁ。

 

 

一誠の選択を、法悦に濡れた少女の声が肯定する。そうーーーそれが、〝逆襲〟と呼ばれるものの本質であるから。

 

 

弱者が強者を滅ぼすからこそ成立する概念。それ故、逆説的に勝利の栄光を手にしてしまえば二度とそれらを起こせない。

 

 

自分は脆弱な転生悪魔、最弱の赤龍帝。常に敗北の淵にて勝利を求めて哭き叫けぶ憐れで惨めな弱者なり。そんな一誠に栄光なんて掴めない。光に向かって駆ける勝利を、最初から持ち合わせていないのだ。

 

 

憐れで醜い、愚かな男ーーーだからこそ自分の比翼に相応しいのだと、闇の底から少女は謳う。

 

 

ーーー私があなたに与えられるのは、たった一つの導だけ。だからどうか、あの人をーーー私の◾︎◾︎を止めて。

 

 

「ちょーーー」

 

 

説明を求める声は届くこと無く、少女の歌が響き渡る。より深い、闇へと続く深遠に向けて冥府の扉が開かれる。

 

 

ーーーあなたが迎えに来ない日に私は醜く穢れてしまったああ、悲しい蒼褪(あおざ)めて血の通わぬ死人の躯よあなたに抱きしめられたとしても二度と熱は灯らぬでしょう

 

 

それはまさしく死女の愛ーーー儚く、切ない、骸に堕ちた愛の詩。胸に秘めた切なる想いがたった1人の生者(おとこ)に向けて綴られるたび、伝えるたびに、地獄の星が大震する。

 

 

ーーーだから朽ち果てぬ思い出にせめて真実をくべるのです

 

 

これは冥府の死者からの猛毒、闇の賛美歌。神聖なる星辰体(アストラル)の輝きが、魔性の支配へと置かれていく。

 

 

ーーー私たちは、私たちに言い残した未練があるから

 

 

星光が集う。一誠の目に、星辰体(アストラル)の輝きが映る。それは、本来ならあり得ないこと。不可視であるはずの星辰体(アストラル)を、一誠は同調からなのか捉えていた。

 

 

星辰体(アストラル)の輝きによって、漆黒の世界が彩り始めた。幽魂の様に、人魂の様に、鬼火の様に、ゆらゆらと。

 

 

そう、()()()()()()()()()()()()()()。備えた特製だけを頼り、星の力を掌握して、無尽蔵に干渉しながら輝くのだ。煌めくたびに吹き荒ぶる死者の燐光、生の悲鳴ーーー見惚れた命を地へ誘う。

 

 

ーーー振り向いて振り向いて冥府を抜け出すその前に

物言わぬ私の(むくろ)を連れ出してーーー眩い星の輝きへと

他ならぬ愛しいあなたの慟哭で嘆きの琴に触れていたい。

 

 

すなわち、これこそ魔星の証明。この声の少女もまたいと呪わしき魔星の一つ。英雄の光を滅する奈落の使徒、死した伴侶(エウリゥディケ)

 

 

されど今は、あぁ今はーーーたった1人、あなたへ向けて。

 

 

ーーー超新星(Metalnova)

 

 

「ーーー冥界へ(Silverio)響けよ我らの死想恋歌(Vendetta)

 

 

ーーーさぁ、逆襲(ヴェンデッタ)を始めましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女の謳に送られて、一誠の意識が現実にへと帰還する。腕に嵌められたコアのカウントダウンを見れば1しか減っていない。

 

 

与えられた制限時間は僅か十秒で、残り時間はたったの5秒。しかしそれは全身に鎧を展開しているから。なら、()()()()()()()()()()

 

 

頭、胴体、肩、腰、脚……()()()()()()()()()()()()()()、それによって得たキャパシティをすべて腕に注ぎ込む。禁手(バランス・ブレイク)の部分展開という離れ業を、慣れ親しんでいるかのようにたった一瞬で終わらせてカウントを20増やす。

 

 

「チッ、頑丈だな」

 

 

サーゼクスの方へ向うとしていたレージが舌打ち一つして右腕に星光を集める。サーゼクスのと殺し合いでレージの星光は底をついている。ゆえにこれは絞りカスのような物。それでも、1人を分解(ころ)すには十分過ぎる。

 

 

一歩、軽やかなステップと共にレージが一誠の前に現れて右腕を突き出す。触れた物を分解する暗赤色の瘴気は薄まっているが一誠からしてみれば必至でしかない。

 

 

「おぉ、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「ーーーはっ?」

 

 

その時、不思議な現象が起こる。レージの右腕に纏う分解の星光、それに一誠が殴り掛かり、()()()()()()()()()()()()。天龍の鎧だろうと問答無用で分解する星光を殴って、レージの星光は消えて、一誠は無傷のままーーーだが、その身体には()()()()()()()()

 

 

言い表せば()()()()()()()()()()()と言うべきか。存在しないはずの実体を捉えたかの様に物理法則を完全に無視して粉砕する。それはもはや不条理に他ならない。その光景を目の当たりにしていたアスラとクリスティアンも驚いて目を見開いている。

 

 

「これは、何だーーー」

 

 

一誠の視界に映るのは未知の奔流。レージ、アスラ、クリスティアン、そして側で倒れているマキナから立ち昇る小さな星々の煌めきに戦慄が止まらない。分からない。分からないが、しかしーーー

 

 

「ーーーシャオラッ!!!」

 

 

死角から放たれるアスラの崩拳。星の煌めきからその挙動は完全に捉えられていて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。よってアスラの一撃はただの痛烈な一撃にしかならず、赤龍の(うろこ)を貫けずに受け止められる。

 

 

『BoostBoostBoost!!!』

 

 

三度の倍加と共に空いた腕でアスラを殴れば、骨の軋む感覚を伝えながらアスラは吹き飛んでいく。大きな力など必要無く、ただ触れるだけ、それだけでどんな力も泡の様に消滅していく。合わせるタイミングさえ間違わなければ、後はただそれだけで何もかも滅ぼせる。

 

 

「ーーーッ!!これも破るか!?」

 

 

上空から迫り来る星の壁を見様見真似のアッパーのような動作で粉砕する。クリスティアンの苦悶の声は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

星辰奏者(エスペラント)でもないのに星光を、それも星光を滅ぼす星光を操る一誠に警戒してレージが飛び退く。いつものレージならばそんなものは知ったことがと殺しに行くのだが、流石に正体不明過ぎる。星辰光(アステリズム)を滅ぼせる相手の出現など想定していなかった。

 

 

「待てぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

退くレージを一誠が追う。今の倍加はたったの8倍だというのに、すぐにレージに追いつけた。そこでようやく気がつくーーー素の身体能力が、上昇している。しかもその上昇は現在進行形で続けられている。湧き上がる出力が更に更に、更に更に更に更に更に更に更にと際限無い上昇を続けていた。それはもはや堕落に等しい速度の身体強化。本来なら入らない器へ向けて、今も無遠慮に流れ込む力の波濤が、止まらない。

 

 

望んでいないというのに、一誠は()()()()()()()()()()へ秒刻みで変わっていく。

 

 

あらゆる星々を駆逐する、ただそれだけの存在へと。

 

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

右のパンチ、それも武の心得など無い、力任せに放たれたそれがレージの顔を穿つ。驚愕により精神が乱れていたレージはそれをまともに喰らい、タタラを踏む。

 

 

「チッーーー」

 

「ーーー捉えたよ」

 

 

舌打ちをして、一誠を殺そうとしたレージの目の前に手のひらが突き出される。それはさっきまで腕を切り落とされて悶えていたはずのサーゼクス。傷口からダバダバと血を流しながら、残された腕に滅びの魔力を集束しーーー全力で放った。

 

 

分解の星光を纏っていない今、その一撃の本来の効果がレージを襲う。万象を滅ぼす理不尽の一撃が、レージを吹き飛ばした。後に残るのは滅びの魔力の影響を受けて大きく抉れた校庭だけ。レージの姿は見えなくなった。

 

 

「終わった、のか……?」

 

 

カウントダウンがゼロになり、一誠の禁手(バランス・ブレイク)は強制解除される。だが対価に支払った腕は龍の物となる。人の身体に龍の両腕という歪な姿を晒していた。

 

 

気が抜けて倒れそうになる。だがサーゼクスは険しい顔のまま、前をーーー正確には前にある砂埃を見ていた。

 

 

「ーーー〝まだだ〟」

 

 

砂埃が内側から払われて晴れる。そこに居たのは()()()()()()。刻まれている刺青を曝け出して、上半身裸になりながらも威風堂々とその場に立っていた。

 

 

「化物め……ッ!!」

 

 

そう毒吐く一誠のを誰も責められないだろう。魔王であるサーゼクスの実力を一誠は知らないが、相当に強いという事は教えられている。それはさっきの一撃からして疑いようの無い事実。だというのに、レージは無傷なのだ。

 

 

「化物?あぁ、化物ね……そっかそっか……ハハハハッ!!!」

 

 

一誠の呟きを聞いたレージは何かを閃いた様に顔に手を添え、身体を折りながら可笑しくて仕方ないと言う風に笑う。嗤う。咲う。

 

 

「ハハハハーーーそうだ、()()()()()()()()()()

 

 

レージはキレていた。サーゼクスを殺せる機会を一誠によって邪魔されて、父と母が残した星辰光(アステリズム)を何度も何度も滅ぼされて。

 

 

どちらからならまだ我慢が出来ていたかもしれないが、二つ同時となるとそうはいかなかった。耐えられない耐えられない……なら、()()()()()()()()()()()()()()とそう考えて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーアクセス我が(シン)

 

 

瀑布の様に荒れ狂う赫怒を形にすることを決めた。

 

 

 






この小説の一誠の役割がようやく出せた……これからは、一誠にも心身ともに苦しんで貰おうか(愉悦)

一誠式星殺しは少し簡略化されています。一誠の星光に合わせるだけで無効化が可能。だって、一誠は振動持ってないし。それでいて赤龍帝の能力も使用可能……チートやチート!!

そしてブチギレレージ、初めの方だけ出て空気になっていたパラロス要素が出る……!?

明日からエクステラで忙しくなるかも……でも原作4巻が終わるまでは頑張る。

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