女神アテナ。8歳になったばかりの俺だがその前は父さんが持っていた本で知っていた。詳しくは知らないが確かギリシャ神話の主神のゼウスが予言を恐れて我が子を妊娠していた女神を飲み込んで、頭痛が酷くなったと鍛冶の神様に頭をかち割らせたら生まれたのがアテナだった筈だ。
そのアテナがーーー空想の存在だと思っていた神様が目の前にいる。それに共感してもらえれば俺が白目剥いた理由が分かるだろう。
「アテナって……マジのアテナ?あのギリシャ神話の?」
「確かに妾はギリシャ神話のオリュンポスの神のアテナだ」
「マジかよ……」
だが、言われてみれば確かにアテナから感じる気配?は普通じゃない。綺麗なんだけど荒々しくて、それでいて物静かな感じがする。
「どうしてアテナ様が俺なんかを?」
「呼び捨てで構わないぞ。我らの領土で何かが暴れている気配を感じ取ってな、それを排除しようかと出向いたらそこにいたのは暴れているあなただった訳だ。そして気絶したあなたを妾は連れて帰った」
「はぁ……」
ダメだ、アテナが何考えてるのかまったく理解出来ない。そもそも神様自体が何かしらぶっ飛んだ連中だからな……父さんが色んな神話の事を話してて、聞いてた感想がそれだ。
ていうかアテナの俺を見る目がなんか危ない。好奇心が含まれているのは分かるんだが……その奥で妖しい光があるように思えてならない。
「ふむ、何時までもあなたではつまらんな……名前は何という?」
「
「レイジュウロウ?」
「長いだろ?言いにくかったらレイとかレージとかで良いよ」
「でも何かしらの意味合いを含めて名付けられたのだろう?それを縮めても良いのか?」
「父さんが零の字を使いたくて、母さんは郎って字を使いたかったらしいんだ。でも組み合わせても零郎なんて変な名前になる。だから適当に十を足して零十郎にしたんだとさ」
母さんが笑いながら言っていたから間違いないと思う。その話を聞いていた父さんが恥ずかしいのか顔を隠して転げ回ってたしな……
「ならレージと呼ばせてもらおうか……で、何故レージはあんなところで暴れていたのだ?」
その言葉を皮切りに、アテナの雰囲気がガラリと変わる。さっきまで目にあった好奇心と妖しい光は消え失せて、剣呑な眼差しで嘘は許さないと語っていた。
「……家に帰ったら紅い髪の男に父さんと母さんが殺されてた、妹が攫われそうになっていた。それにキレて飛びかかって喉に噛み付いてやって、変な文様が足元に浮かんで、気がついたら森の中にいた」
「……嘘をついている様子は無い様だな」
俺の言葉が本当だと分かったのかアテナの剣呑な眼差しは消えた……代わりに好奇心と妖しい光が戻ってきたけどなぁ!!
「その紅い髪の男、見覚えはあるか?」
「無い、初めて見る奴だった……あぁ、でも確かサーゼクスって呼ばれてたな」
「……紅い髪のサーゼクス……いや、まさか……」
「知ってるのか?」
アテナが困惑した様な顔になる。その表情から彼女の知人か、知っている人物に心当たりがある様だが……信じられない有り得ないという顔になってるな。
『ちなみに俺は知らないぜ』
「あぁハイハイそうですか……で、アテナ。知ってるなら教えろ」
アテナに心当たりがある、俺の家族を奪った奴の正体が分かるかもしれないと思うとまた怒りが込み上げてくる。
「……妾が知っているサーゼクスという紅い髪の男は一人しか居らん。悪魔の四人いる魔王の一人、サーゼクス・ルシファーという男しかな」
「ルシファー……サーゼクス・ルシファー……」
悪魔とか、魔王とか新しいワードが出た気がするがそんなことは気にならなかった。サーゼクス・ルシファーと、あの男の正体を知ったことだけに集中していたから。
「ーーーサーゼクス・ルシファー、絶対に殺してやるよ」
勘違いかもしれない、もしかしたらただの人間違えかもしれないが、それでも復讐相手が明確になったことで再び殺すと誓いを立てる。
俺の内側で燃え滾る
レージの両親を殺し、妹を連れ去ったという人物が悪魔の四人いる魔王の一人のサーゼクス・ルシファーでは無いかと伝えた瞬間、レージの赫怒に変化が起きた事をアテナは悟った。
ただ闇雲に撒き散らされるだけだった赫怒が、鳴りを潜めたのだ。だがそれは赫怒が無くなったという訳ではなく復讐相手が明確になったことで赫怒を向ける相手を知ったからだろう。
そのレージの姿を見て、アテナは下腹部が微かに疼いた。
「(あぁ、良いぞレージ……あなたは素晴らしい!!)」
アテナがレージを連れて帰り、目覚めるまで時間にして半日は経っている。その時間の中でアテナは自分がどうしてレージの姿に惹かれたのかを考えていた。
初対面の子供で、ただ八つ当たりの様に暴れ回る姿しか見ていないというのにアテナはレージに惹かれてしまった。闘神、闇の女神、そして知恵の神の側面を持つアテナは考えた。考えて、考えて、考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて……ようやくその答えを得た。
それは……自分がレージに恋をしたというものだった。
その答えに辿り着いた瞬間に馬鹿らしいと一蹴に伏したのだが、そう思った瞬間に胸が少し痛くなった。ならと思い、眠っているレージの顔を見れば……その痛みはすぐに消えて、代わりに暖かいものが胸の中にあった。
神がまだ闊歩していた時代から生きていて、結婚する事なく処女神として知られている自分が人間の子供に恋をするなど笑い話にしかならないと考えたが……胸の中にある暖かい何かを感じて、それも悪く無いと思っていた。
他のオリュンポスの神々が自分が恋をした事を知ったらどうなるだろうかと考えながらアテナはレージが目覚めるのを待っていた。
「ーーーなぁレージ、あなたはこれからどうする?」
「ーーー決まってる、復讐だ。俺は、俺の家族を奪ったサーゼクス・ルシファーを殺す。あいつが大切にしている者をすべて奪ってメチャクチャにした上で殺してやる」
レージの目に宿るのは赫怒の炎。それを見てアテナは顔には出さぬが
「(ふふ……妾の目に間違いは無かったか)」
復讐を誓うレージ。きっと彼は復讐に手を出す事を許しはしないだろう。なら、復讐の手助けをしよう。その対価としてレージを自分の夫とする。知恵の神の筈なのにガバガバな計画を完璧だと自画自賛する
ここでようやく主人公の名前が出せた……
彼の事をレージと呼ぶ時は神野明影のセージ予備の様に呼んでやってください。
速報。アテナ様、8歳児に恋をする。なおガッツリと貞操を狙ってる模様……ま、まぁ神様だから仕方無いネ!!(白目)
その内