復讐者慟哭。幕上がるは復讐歌劇   作:鎌鼬

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会談後の三大勢力の視点、天使と堕天使編です。




復讐者の爪痕・1

 

 

「グギィィィィィィ……ッ!!!」

 

 

絞り出すような唸り声。大凡知性のある者では無く、獣の様な声を上げながら苦しんでいるのは天使長のミカエル。彼は治療の為と称して天界の一室にて隔離されていた。

 

 

先日の禍の団(カオス・ブリゲード)の襲撃で、イザイヤとジャンヌオルタに受けた傷に苦しんでいるのだ。とは言っても外見上の傷はすでに治療されていて無傷。ミカエルを苦しめているのは内面からだった。

 

 

光が泡の様に弾けて身体を構成している細胞を破壊して激痛を与える。イザイヤの残した殲滅光(ガンマレイ)が戦いを終えて時間が経った今でも不滅の進軍を続けてミカエルに絶え間無い苦痛を与えていた。

 

 

そして魂。ジャンヌオルタの残した呪いに犯された魂は少しずつ少しずつ、()()()()()()。末端から少しずつ時間をかけて行われる腐敗は今すぐに身体に影響を及ぼすことはないが、その様を感じらせているのがミカエルの精神を削る。

 

 

殲滅光(ガンマレイ)の激痛で、呪いの腐敗で気が狂ってしまえば楽になれたのだろうがミカエルは天使、人間よりも頑丈に作られた身体と精神は発狂することを許しはしない。

 

 

細胞単位で行われる破壊を治療する方法は無く、またジャンヌオルタの呪いは大天使クラスであっても解呪することが出来ない程に強かった。結果として、ミカエルは無傷のままに苦痛に苛まれている。

 

 

「ミカエル様……ッ!!!」

 

「アァァァァァァァァァァァァ……!!!」

 

 

ミカエルを介抱しようと駆け寄った下級の天使が、ミカエルに頭を握りつぶされる。何かをすれば気が紛れるのではないかと淡い期待を込めて殺したのだが変わりは無い。激痛は衰えず、腐敗は遅々として進んでいく。

 

 

「……」

 

 

そのミカエルの苦しむ様を扉越しに聞いていたのはガブリエル。ミカエルの叫びが鼓膜に届き、心を削る。

 

 

復讐派を名乗った彼らの目的は恐らくそのままの意味……復讐なのだろう。確かにミカエルは恨まれることをしていた。アザゼルから渡された資料を読めば、自分たち天使が多方面に種族問わずに恨みを買っていたのが分かる。きっとミカエルに手を出した者たちもその中の一部なのだろう。

 

 

だが、そうだとしてもーーー

 

 

「酷すぎる……」

 

 

ここまでする必要があるのかと考えてしまう。心優しいガブリエルだからこそそういう考えを持った。その考えは被害者からすれば憐憫、加害者からすれば侮辱になることは分かっているが、そう思わずにはいられなかった。

 

 

「ーーーそうか?これまでのことを考えれば当然だと思うがな」

 

「ラファエル……?」

 

 

ガブリエルの前に現れたのは赤髪の天使ラファエル。くわえ煙草と資料片手に現れたラファエルは意外な事にミカエルの現状を当然の事だと思っている様だ。

 

 

「これをやった奴は相当天使に恨みを持っている。八つ裂きにしても物足りない、一度殺したくらいでは気が済まない、だからこうやって無駄に苦しめることを選んだんだよ」

 

「……復讐」

 

「そう、これがあいつらの復讐だ。最終的には天使の殲滅をとか考えているかもしれないがミカエルを殺すのは最後と決めてるんだろう……でなければ、あそこで殺されていたに違いない」

 

「……」

 

 

聖剣計画、過去に異端と切り捨ててきた者、異教徒の烙印を押し付けて殺した者。ガブリエルには秘密にされて、ミカエルが行ってきた事の中の犠牲者。確かに彼らなら天使に対する恨みは尋常では無いだろう。

 

 

「私は……どうすれば……」

 

 

ガブリエルは自分がどうすれば良いのか分からなかった。復讐すると誓っている彼等の気持ちは理解出来る。やってきた事は酷かったが、聖書の神を崇めるミカエルの気持ちも理解出来る。両方の気持ちを理解してしまったが故に、ガブリエルはどうしたら良いのか分からなくなってしまっていた。

 

 

「悩め悩め、慌てて解決するような事でも無い。じっくり考えて、自分の納得できる答えを出せよ。しばらく仕事を減らしてやるから」

 

「ラファエルは、どうするのですか?」

 

「ミカエルの代役をして天界を纏める。悪魔や堕天使と喧嘩してる場合じゃないしな、後で使者を出して相互不可侵でも結ばないと」

 

「相互不可侵?完全な停戦では無くて?」

 

()()()()()()()()()()()()()()。それに停戦を結べば教会の退魔師(エクソシスト)たちの存在意義が無くなってしまう。復讐派の対処に専念したいから、最低でもそうしないとな」

 

「……ラファエルは戦う事にしたのですね」

 

「あぁ、だって()()()()()()()()()。あいつらの恨む理由は分かる、それに共感も出来るし理解もした。だけど否定する。大人しく殺されてたまるかよ」

 

 

そう言ってラファエルは足早に去って行った。ミカエルの苦悶に満ちた声が響く中、残されたのは未だに答えの出せていないガブリエルだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……全く、厄介な時代になってしまったな」

 

 

冥界の堕天使領に存在する神の子を見張る者(グリゴリ)の一室で憂鬱そうに溜息を吐きながらそう零したのは()()のシェムハザ。アザゼルが総督を辞めてしまったので実質的なナンバー2であるシェムハザが総督の席に着いたのだ。

 

 

アザゼルが無極になって仕事を放棄していたので組織運営をしていたのはシェムハザだった。なのでアザゼルに辞められても組織運営には問題は無い。アザゼルが生きる気力を見つけた事に喜びながら、総督としての最後の仕事をーーー三大勢力の会談を任せたのだ。

 

 

その結果が禍の団(カオス・ブリゲード)の襲撃、それに加えてアザゼルは護衛として連れて行ったヴァーリに裏切られて右腕を失う大怪我を負った。どうやら治療はされていたらしく容態は安定していたが堕天使のトップが大怪我を負ったのだ。下は騒ぎ、血の気の多い者など勝手に敵討ちに向かおうとしているが、アルマロスが物理的に抑えているので心配は要らないだろう。

 

 

ちなみにアザゼルはすでに意識を取り戻し、失った右腕の代わりとなる義手の作成に取り掛かっている。その制作速度は早く、あと二、三日もすれば完成するとのことらしい。息子のアスラが禍の団(カオス・ブリゲード)にいると分かったので、倒してでも連れて帰ると気合が入っていた。

 

 

「アザゼルが生きる気力を取り戻したのは嬉しいのだが禍の団(カオス・ブリゲード)、それも復讐派か……心当たりが多すぎる」

 

 

堕天使が恨みを買う理由、それは間違いなく神器(セイグリッド・ギア)に関連した事だろう。神器(セイグリッド・ギア)の研究の為と人間を攫って実験台にし、神器(セイグリッド・ギア)を収集するために人間を殺し、神器(セイグリッド・ギア)が危険だからという理由で人間を殺してきた。

 

 

前二つはアスラが居なくなってアザゼルが無気力になりだした頃から下級の堕天使たちの手によって増加している。神器(セイグリッド・ギア)に強い関心を持っていたアザゼルを喜ばせようとしての事だろうが余計な事をしてくれてたと幹部たちは頭を抱える事になる。アザゼルが無気力になったのはアザゼルの妻が殺された事とアスラが居なくなった事が原因なのだから、神器(セイグリッド・ギア)なんか持ってきたところで戻るはずが無い。もし戻っていたら神の子を見張る者(グリゴリ)を辞めるつもりだった。

 

 

ともあれ、復讐派に所属している者で堕天使に復讐がしたいと思っている者は間違いなく神器(セイグリッド・ギア)関連からだろう。アスラはとある堕天使だけを復讐の対象としているとアザゼルから教えられたがそれは例外。堕天使という種族を脅かす存在がいる事だけは確実だった。

 

 

「天界と悪魔に使者を出して、相互不可侵でも結ぶか……」

 

 

復讐派の相手だけに集中する為に、悪魔と天使からの干渉を何とかして断ちたい。もしも復讐派の相手をしている間に後ろから悪魔と天使に襲われたらたまったものではない。

 

 

防衛や人間界にいる堕天使への呼びかけなど、やらなければならない事は山程ある。これからの苦労を思い、シェムハザは深くため息を吐いた。

 

 

 





ミカエル悶絶、だけど種族としての身体と精神の強さから発狂出来ない模様。ざまぁ!!

悩めるガブリエル。どちらも理解できてしまったから悩んでいる……優しいのは美徳だが、それが過ぎればただの害でしかないのだよ……

天使長代行としてラファエル起用。口調とかもう完全にオリジナル。でもこれで行く。復讐派とは徹底抗戦の構え。

超有能堕天使総督シェムハザ誕生。超穀潰し隻腕パパゼル誕生。

シェムハザも完全にオリジナル。これで行きます。総督になったけど組織運営はほとんどやっていたので問題は無い。あるとしたら復讐派とかいう面倒ごとの存在。しっかりと脅威認定してます。復讐派とは徹底抗戦の構え。

天使、堕天使共に停戦では無くて相互不可侵を結ぶ考え。だって殺し合いするような仲なのに停戦してこれからは協力しましょうとか普通なら有り得ない。

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