復讐者慟哭。幕上がるは復讐歌劇   作:鎌鼬

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さぁお待ちかねの悪魔編ダゾ☆


復讐者の爪痕・2

 

 

「ーーーまったくもう……」

 

「疲れましたね……」

 

 

駒王学園の生徒会室で疲労から伏しているのはリアスとソーナの2人。2人は先日の襲撃で出た被害の後始末に奔走してようやく終えたのだった。

 

 

外の住民に被害が出ているかどうかが心配だったが結界のお陰かそういうことは無く、学園の敷地内だけに被害が出ていたのは幸いだったと言えよう。

 

 

「グレイフィア様の事は残念でしたね……」

 

 

悪魔陣営最大の被害は魔王サーゼクスの妻で女王(クイーン)のグレイフィアが殺された事だろう。両手両足に乳房と下腹が切り落とされ、その上胴体には散々拷問を加えた痕があり、トドメなのか頭が潰されていた。

 

 

遺体を確認した2人はその凄惨な光景に思わず嘔吐してしまい、グレイフィアでは無いと思いたかったが悔しそうに歯を食い縛っているサーゼクスに肯定されて認めるしか無くなったのだ。

 

 

「そうね……いや、本当にそうかしら……?」

 

 

後半の疑問はソーナに聞こえないように呟く。

 

 

確かに夫であったサーゼクスの姿は妻を亡くした者に相応しかった。胴体だけになったグレイフィアの亡骸を抱え上げて涙を流しながら嗚咽する姿は誰がどう見ても妻の死を悲しむ夫だろう……だが、それに違和感を覚える。

 

 

そもそも、襲撃をしてきた禍の団(カオス・ブリゲード)の復讐派を名乗るレージという人物と眷属であるマキナとの因縁も何処かおかしい。

 

 

なぜ、当時はまだ10にも満たないレージが両親の研究を奪おうなどと考えたのか?

 

なぜ、15年経った今になって復讐と言って襲撃をして来たのか?

 

なぜ、サーゼクスに対して異常と言えるような憎悪を向けていたのか?

 

そしてーーーなぜ、助けたはずのマキナ……上代真輝という名前の人間を、マキナ・クルールと名前を変えて悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を受け取ってすぐに()()()()()()()()()()()

 

 

考えれば考えるほどに疑問が湧き上がり、そしてサーゼクスに対する不信感が高まってくる……が、そこでサーゼクスについて考えるのを止めた。いくら考えても答えが出ない以上は無駄な事でしか無いから。

 

 

「そういえば、セラフォルー様はどうなさってるのかしら?聞いた話によると天使と堕天使から使者が送られたらしいけど……」

 

「その通りです。どちらの使者も相互不可侵を結ぶために送られたものでした。恐らくは禍の団(カオス・ブリゲード)に対する備えと後ろから襲われる事を恐れてなのでしょうが……」

 

「その様子だと、噂は本当みたいね」

 

「えぇ……セラフォルー様は相互不可侵では無く停戦、もしくは和平を結ぶべきだと訴えて使者の申し出を断っているのです。両陣営からは根気強く使者を送って貰ってますがすべて断って……風の噂によれば天使と堕天使間では相互不可侵は結ばれたと聞きますし……我が姉ながら、なぜ外交担当なんて役職に就いているのでしょうか?」

 

 

セラフォルーの気持ちは理解出来ないでもない。先の大戦で大きく数を減らした三大勢力だが、過去の蟠りを捨てて手を取り合って共存の道を歩むべきと求めているのはわかる……だが、()()()()()()()()()()

 

 

禍の団(カオス・ブリゲード)という共通の敵が現れたのだが三大勢力間の仲はこれまでに無い程に悪い。いくら共通の敵が出現したとしても殺し合いをしていた者たちと手を組んだら後ろから殺されかねないと考えてもおかしく無い。

 

 

停戦も、和平もどちらとも不可能。なら相互不可侵だけでも結ぶのが最善だと言うのに外交担当のセラフォルーが私欲(わへい)を求めているのでそれは叶いそうにない。

 

 

そもそも、現魔王の大半が組織のトップに向かない。セラフォルーは上記の通りに私欲に動き、サーゼクスは何とかトップとしての素質は持ち合わせているものの家族関係には私情で動く事が多々あり、ファルビウム・アスモデウスは最低限しか働かず、アジュカに関しては研究者だと言い張って名前だけの魔王になりつつある。

 

 

これも、実力社会の弊害と言えよう。力のある者を上に立てると言うのは悪くは無い。しかし力のある者が必ずしもリーダーの素質を秘めているとは限らないのだ。

 

 

「止めましょう、ハイ止め……そういえば、サーゼクス様から新しい悪魔の駒(イーヴィル・ピース)が送られたそうですね?」

 

「……それと同時に、小猫がはぐれ悪魔に認定されたと伝えられたわ」

 

 

禍の団(カオス・ブリゲード)の復讐派に所属していた塔城小猫ーーー白音の姉の黒歌によって連れて行かれた彼女は、サーゼクスの口からはぐれ悪魔に認定されたと伝えられた。新しい悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を渡されながら、

 

 

『さぁ、これで新しい眷属を探しなさい。いつまでも眷属が揃ってないで穴が空いているのはみっともないからね』

 

 

などと言われて。

 

 

リアスは眷属の事を血の繋がりは無いが家族だと思っているし、そう教えられてきた。だからこれまで慎重に眷属を増やしてきたのだが……サーゼクスの口からそんな言葉を聞かされてしまい、それは揺らぎつつあった。

 

 

転生悪魔の事を奴隷だと公言している悪魔は数多く存在する。むしろリアスの考えが異質だと言われんばかりに。眷属とは家族だと教えてくれたサーゼクスが、その事を肯定するような事を言い出し、先の不信感と合わせてリアスの中でサーゼクスに対する猜疑心がドンドン大きくなる。

 

 

「そもそも、小猫の姉はどうしてはぐれになったのかしら?」

 

「黒歌でしたよね……確か、力に溺れて主を殺したからと聞いてますが……襲撃の時の彼女の様子は力に溺れている様には見えませんでした」

 

「えぇ、黒歌ほどの悪魔なら私たちの事を倒してから小猫を連れ去る事も出来た、でもしなかった。それどころか私とイッセーに対して警告をしてきたのよ……何か裏があるんじゃないかしら?」

 

「裏ですか?……はぐれになった経緯は事実だとして……主を殺し た理由?力に溺れたからでは無くて、塔城さんを守ろうとしてなら……」

 

「……調べてみる必要があるわね」

 

 

黒歌のはぐれ悪魔になった経緯を詳しく調べると決めたところで、生徒会室の扉が叩かれる。ソーナが許可をして中に入ってきたのはリアスの眷属のアーシアだった。

 

 

彼女がここに来たという事は、診させている彼に何かあったのだろうか?

 

 

「イッセーに何かあったの?」

 

「いいえ、落ち着いてきたので報告をしようかと思いまして……クルール先輩と変わってもらいました」

 

「落ち着いているのね……良かった」

 

 

アーシアからの報告を聞いてリアスは安堵のため息を吐いた。

 

 

襲撃後、一誠は倒れた。血反吐を吐き、もがき苦しむ一誠にリアスは直ぐ様駆け寄り、アーシアを呼んだ。そして彼女の神器(セイグリッド・ギア)で治療を始めたのだが……効果が薄かったのだ。

 

 

『さっき彼が星辰光(アステリズム)を使っていたことと何か関わりがあるかもしれないな……冥界に連れて行ってアジュカに診てもらおう。マキナを付き添いに借りてもいいかな?』

 

 

その苦しむ一誠を見てサーゼクスはそう申し出たのだが、その時からサーゼクスに対する猜疑心が強くなっていたリアスはその申し出を拒否し、旧校舎の一室でローテーションを組んで診る事にした。一誠の両親には部活の合宿でしばらく家に帰らないと交渉して、一誠が苦しむ姿を見せない様にした。

 

 

そうして何とか落ち着いてきたのだ。長い間合宿と言って誤魔化すのは無理があるので、できるだけ早くに復帰してもらいたいのがリアスの本音だ。

 

 

それにその所為で新たな疑問が浮かんでしまう。それは、どうして一誠が星辰光(アステリズム)を使えていたのかという事。マキナが使えているのは彼女の両親が残した研究成果の一部を引き継いでいるからで、星辰奏者(エスペラント)たちが使えるのはマキナから解析して使える様に施術をしたからだろう。

 

 

だが、一誠は何も関わっていない。強いて言うならマキナと眷属仲間という繋がりがある位だ。それだけで使えるとは考えにくい。もしそうであるのなら、リアスたちも使える様にならなければおかしいから。

 

 

いくら考えても答えの出ない問題。答えが知りたいが答えが見つからないので考える事は保留し、一誠の見舞いに行く事にした。ソーナも誘ったのだが彼女は何かあった時のために生徒会室に残るらしい。

 

 

旧校舎の一室にある部屋、そこの前に立っているのはマキナだった。

 

 

「リアス様、彼はうなされる様な事はありますが今は比較的に落ち着いています。もうしばらくすれば目も覚めるかと」

 

 

マキナはリアスに気づくと一礼し、一誠の状態を簡潔に教えてくれた。そのマキナの態度も今までは気にならなかったが、サーゼクスに対する猜疑心の高まりと共に疑問に思ってしまう。まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ありがとう、入っても大丈夫かしら?」

 

「問題無いかと」

 

 

それを聞き、リアスは扉を開ける。そこは旧校舎にあった資料室を改造した仮眠室で、小さなベッドと窓がある位の部屋だった。そのベッドの上には一誠が眠っている。顔色は良くないが、苦しんでいる様には見えない。

 

 

だが、そこに()()()()()

 

 

眠る一誠の顔を眺める恥部を隠すだけの衣服を纏った白亜の少女が1人、窓辺に座っている。見知らぬ少女、マキナが通したかと考えるが彼女の驚く顔を見るとそうでは無いと分かる。つまりこの少女はマキナに気づかれる事なくーーーリアスの眷属の中で最も隠密に長けたマキナに気づかれる事なく、この部屋に入ってきた事になる。

 

 

「ーーー何者だ」

 

 

マキナがナイフを抜き、リアスの前に立つ。そしてそこでリアスは、2()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ーーー〝ヴェンデッタ〟、もしくは〝マキ〟と呼びなさい。真実を知らずに生きる罪人さん?」

 

 

酷く透き通った声で、少女は自分の名前を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーいやはや、まさか片腕を切られるとはね。あれはもう人間のレベルを超越してるね」

 

「ーーー星辰光(アステリズム)を生み出せて、15年も憎悪を抱えて生きていたんだ。この程度はしてくれなければ困る」

 

 

冥界の一室、そこでは()()()()()()()()()()()()サーゼクスとバインダーに挟まれた紙に何かを書き込んでいるアジュカがいた。

 

 

「腕の具合はどうだ?」

 

「悪く無いね。だって自分のだし」

 

 

サーゼクスの新しい右腕は寸分違わずに失った右腕と同じ物だった。それはどうしてか?答えは台の上に横になっている()()()()()()()()()()()()。サーゼクスの細胞から作ったクローンの右腕をサーゼクスに移植したのだ。不調などあるはずが無い。

 

 

「でも同じ顔がいるのって気持ち悪いな」

 

 

そう言ってサーゼクスは台の上にいる自分のクローンを滅びの魔力で跡形も無く消し飛ばす。

 

 

「ここで滅びの魔力を使うなと言っただろうが……まぁ良い。それよりも、さっき言った事は確かなんだろうな?」

 

「あぁ、リアスの眷属の赤龍帝……イッセー君が【星殺しの星辰光(アステリズム)】を使った」

 

「連れて帰ってくれれば解析出来たのだが……」

 

「リアスに断られてね、どうも不信感を抱かれてるらしい。まぁ今度の上級悪魔の会合で新人たちを呼ぶからその時に接触すれば良いんじゃ無いかな?」

 

「なら今は観察に留めておくか……禍の団(カオス・ブリゲード)とかいう組織への備えもしなければならないしな」

 

 

そう言って振りむくアジュカの視界には1000を超える悪魔ーーー星辰奏者(エスペラント)の施術を受けている検体の姿があった。

 

 






リアスとソーナの精神をガリゴリ削りながら色々と伏線を張っておくスタイル。

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