復讐者慟哭。幕上がるは復讐歌劇   作:鎌鼬

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風邪が治った+見直しが終わったので投稿開始。

まだ日常だゴラァ!!!


復讐者の鍛錬

 

「フッーーー」

 

「呵々ッ!!緩い緩い!!」

 

 

ギリシャにある人の居ない、神が秘匿している土地で白音とアスラが組手をしていた。白音の放つ拳を星光を一切纏わずに捌くアスラ。白音の動きはボクシングが元になっているらしく、一撃の速度はまぁ遅くは無い部類に入るだろう。だがそれだけだ。それだけでは俺たちの中で体術に特化したアスラを捉える事は出来ない。

 

 

「ストップストォォォォップ……嬢ちゃんの一撃は軽すぎる。手数の意識し過ぎて一撃の重みが無いな。もっとこう、しっかり打たねぇと効かねえぞ?」

 

「そう言われても私はそんなに力の強い方じゃ無いですし……」

 

「違う違う、力を込めてって意味じゃねぇよ。意識すりゃあ良いんだよ。一撃一撃で必ず殺すと思いながらやりゃあ良い」

 

 

そう言って手本のつもりなのかアスラがその場でジャブを始める。アスラがジャブをする度に空気を裂く様な音が聞こえるがそのうち段々と空気を千切る様な重たい音へと変わっていく。

 

 

「こう、ですか?」

 

 

それを真似て白音もジャブを始める。アスラ程の威力は感じられないがそれでも徐々に音に重みが感じられる。

 

 

「……アスラが人に物を教えてるなんて」

 

「確かに何時もの言動は無頼漢だけど面倒見は良い方だぞ?英雄派が運営している孤児院だとダイナミック高い高いして子供たちからは人気者だし」

 

「なんでダイナミックを付けると逝く意味の方での他界他界に聞こえるんだろうね?」

 

「言葉の不思議だな」

 

 

白音とアスラの鍛錬を見ていた俺の隣にやって来たのはイザイヤ。自分の身体に殲滅光(ガンマレイ)を撃ち込むという自殺行為をしてアスクレピオスにドクターストップを喰らったのに一日で回復した辺りこいつは人間辞めてるんじゃないかと思う。

 

 

「そういえば黒歌さんは?彼女が鍛錬してたら張り付くと思うんだけど」

 

「ほら、黒歌って仙術が得意だけど体術自体はそんなにじゃん?だからアスラの方に教えて欲しいって白音が言ったら嫌われたぁって泣き出してね」

 

「……うん、なんかその光景が思い浮かんで来た。そして不思議と違和感が感じられない」

 

「それで言葉で慰めようとしたら身体で慰めろと薬片手に迫られた。流石に日の昇っている内はどうだとやり過ごしたんだがだったら日が沈んでからなら良いなと言われてな……多分、日没した瞬間に襲われるんじゃ無いかな?」

 

「……ねぇ、なんでレージさんって毎度毎度逆レされてるの?」

 

「誘う体質なんじゃないかな?アテナとヤった時もジャンヌオルタとヤった時も薬盛られてから襲われたし」

 

 

アテナには精通した頃だから10歳頃に襲われて、黒歌は15の頃に、ジャンヌオルタには14の頃に……俺ってば襲われ過ぎだろ。まぁ、ヤられっぱなしは癪だからってその後は全力でこっちから相手したけど。

 

 

「オルタさんとクリスさんは?」

 

「ジャンヌオルタは夏休み入る前に積みゲーを処理するとか言ってて引きこもり中、多分後二、三日は出てこない。クリスはこの間拾った赤龍帝のコアを渡して改造頼んでる」

 

 

ジャンヌオルタの趣味は乙女ゲーだ。そのことをとやかく言うつもりは無いが頼むから現実で乙女ゲーの設定を持ち出すのは辞めて欲しい。イザイヤは爽やかだが心に傷を負った学園の王子様、クリスは気難しいが気を許すとデレるツンデレおじ様、アスラは大雑把だが実は繊細ななんちゃって不良だっけか?この流れで俺はって聞いたら顔を

真っ赤にしてデュ・ヘインかまされた。近くに通りかかってた下半身(ゼウス)を楯にしてなかったら危なかったな。

 

 

クリスに頼んでいるのは赤龍帝のコアの改造。宿主の力を倍加する赤龍帝の力が込められているコアだ。例え1つだとしても倍加の能力は使えるだろう。仮にたった一度しか倍加が出来なかったとしても、それはそれで使い物になる。

 

 

「んでイザイヤは何しに……って、ここに来た時点でもう言ってる様なもんか」

 

「ええ、治ったんで鈍ってないかを確かめに。相手してもらえますか?」

 

「いいぞ、こっちも新しい星辰光(アステリズム)作ったんでその試しがしたかったところだ」

 

 

イザイヤの手に握られるのは二本の魔剣。対して俺が握るのは一本の刀だ。

 

 

「あれ?何時ものはどうしたんですか?」

 

「こないだので壊れたんで今ヘファイストスに新しく打ち直してもらってる。これは代わりだな。コカビエルの件で日本神話の鍛治の神様の……イッポンダタラ?だっけか、から貰った。なんでもアニメに触発されて作った連結刃だってさ」

 

 

刀を鞘から抜き出せば黒い刀身にいくつもの節があるのが見える。一応戦闘で問題なく使える程度までには慣れたのだが、逆に言えばその程度しか使いこなせていないと言える。

 

 

一点特化の星辰持ちのイザイヤ相手に問題なく戦える様になればこれからの戦闘でも使い物になるだろう。

 

 

「アスラ!!白音連れてちょっと退いて!!今からイザイヤと手合わせするから!!」

 

「あいよ!!」

 

 

アスラに叫べばすぐに白音と一緒に問題ないところまで退いてくれた。基本的に手合わせすると被害がデカくなるからな……まぁ抑えるつもりは無いけど。

 

 

「んじゃ、やろうか」

 

「ハイ」

 

 

イザイヤの魔剣と連結刃を当てて、俺たちは大きくその場から飛び退いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……解説お願いします」

 

「呵々ッ!!あぁ良いぞ、任せとけ」

 

 

手合わせを始めると言うレージとイザイヤを離れた場所から観ながら白音はアスラに解説を求め、アスラはそれを快諾する。白音は自分が弱いことを受け入れている。だからこそ少しでも強くなろうとアスラに師事をしているのだ。

 

 

「「天昇せよ我が守護星ーーー鋼の恒星(ほむら)を掲げるがため」」

 

 

レージとイザイヤの口から出るのは全く同じ聖句(ランゲージ)。そしてイザイヤの刀身に殲滅光(ガンマレイ)の輝きが宿る。

 

 

いつもならここでレージが使うのは殺塵鬼(カーネイジ)の能力だが、この日は違った。レージが纏う星光の輝きは暗赤色では無く鮮やかな翠。

 

 

ああ懐かしき黄金(こがね)の時代よ天地を満たした繁栄よ

幸福だったあの日々は二度と戻らぬ残照なのか

 

 

紡がれる聖句(ランゲージ)に呼応するかのように周囲の大気がざわめくように荒れていく。

 

 

「」時は流れて銀、銅、鉄ーーー荒廃していく人の姿悪へ傾く天秤に私の胸は切なく激しく痛むのだ

人の子よなぜ同胞で憎み合うなぜ同胞で殺し合う

正義の女神は涙を流して剣を獲る

 

 

鳴動する大気。渦巻く暴風。強烈な気圧変化に伴って空間さえも撓み、軋む。3mは優に超える岩が吹き飛び、遠く離れた森の中に落下する。もはや自然現象などとは比較にならない風力が

、レージを中心に螺旋を描いて集い始める。

 

 

ならばその咎この手で裁こう愛しているゆえ逃さない

 

 

そしてその中心でレージは笑みを浮かべた。それは復讐者としての愉悦極まる物ではなく、さりとて仲間であるイザイヤに向けるものでも無い。

 

 

吹き荒べ、天罰の息吹疾風雷鳴轟かせ鋼の誅を汝へ下さん ーーー悪を討て

 

 

そう、その微笑みはこの星ーーー天秤を担う女神の笑み。

 

 

超新星(Metalnova)ーーー無窮たる星女神 神(L i b r a o f)掲げよ正義の天秤を(t h e A s t r e a)

 

 

そしてここへ、光り輝く新たな恒星(ほむら)が産声をあげた。

 

 

吹き荒れる暴風は立っていることすら困難になるほどの風力。レージはその中心に立っているので無害だが、真っ正面から晒されているイザイヤは前傾姿勢で立つことがやっとに見える。

 

 

そして不可視の一撃が放たれる。連結刃を振るうことなく放たれたのは鎌鼬。風ーーーつまり空気という不可視の一撃をイザイヤは魔剣を振るうことで斬り払う。そして勿論その一撃だけでは終わらない。前後左右から代わる代わる、試すように鎌鼬は放たれて、その悉くがイザイヤに斬り払われる。

 

 

「何が起きてるんですか……ッ!?」

 

「あの星は……風か?見た所鎌鼬でも飛ばしてイザイヤがそれを斬ってるってところだが……」

 

「なんで見えない風が斬れるんですか?」

 

「経験則からくる予想だな。見えんでも殺気とかで大体わかるし、鎌鼬なんていう風に頼ってるもんだから空気の流れで分かるしな」

 

「この暴風の中で!?」

 

「それでも分かんだよ……それよりも、やっぱり風だけじゃなかったな」

 

 

アスラが見る先はイザイヤの頭上、そこには雲ーーー()()()が発生していた。積乱雲から音が鳴り、イザイヤに向かって雷が落ちる。それをイザイヤは()()()()()()()()

 

 

「今度は雷斬りましたよ!?」

 

「経験則経験則……やっぱ風じゃなかったわ。ありゃあ多分気流操作だな」

 

 

そして鎌鼬と雷の2つを見ただけでアスラはレージの新しい星辰光(アステリズム)の能力を看破する。

 

 

アスラが看破した通り、レージの新しい星辰光(アステリズム)は気流操作。大気という普遍の事象を操る。遠距離の星かと思えば風を背にして踏み込んで斬りかかり、僅かに離れて連結刃を伸ばして中距離戦までこなしてみせる。

 

 

なるほど、これはイザイヤとは対極の星だとアスラは感じた。イザイヤの星辰は一点特化。魔剣に殲滅光(ガンマレイ)を付属して斬る、必要に応じて放出もするが基本的にはそれだけしかない最強の星。対してこの星辰は万能型。風を操り雷撃を放ち、武器を持てば接近戦もこなせるどんな状況下でも性能を損なわない万能の星だ。

 

 

だからこそ、アスラはレージがこの星を使っていることに違和感を感じた。この星辰はレージの戦い方に合っていないのだ。殺塵鬼(カーネイジ)の能力から分かるようにレージの戦い方は徹底した接近戦(インファイト)。攻めて攻めて、相手に何もさせずに殺すというスタイル。

 

 

つまり、新しい星辰はレージに合わせてつくったのものでは無い。

 

 

「ーーーさて、大体良いな」

 

「試しは終わりましたか?」

 

「おう、中々に悪くないわこれ……じゃ、()()()()

 

 

準備運動は終わりだと言わんばかりにレージはそう告げて、伸ばしていた連結刃を戻してイザイヤの懐に潜り込んだ。

 

 

そして、()()()()()()()()

 

 

レージとイザイヤの斬撃が超近距離で放たれて、()()()()()()()()。一撃必殺の破壊力を持つイザイヤの魔剣が、振るう毎に大気を引き千切るレージの連結刃が、一歩踏み出せば身体がぶつかり合いそうな距離なのに当たらない。

 

 

イザイヤはレージの一撃を受けるわけにはいかない。彼はレージのような不死性を持つわけではなく、黒歌やアスラのような人外の血を持つわけでもないただの人間なのだ。人外の一撃どころかレージの一斬を受けるだけで死にかねない。だから受けるわけにはいかない。

 

 

レージはイザイヤの一撃を受けるわけにはいかない。如何に不死性を持つレージとは言えどイザイヤの殲滅光(ガンマレイ)は致命的。その上武器の耐久度が不安だ。連結刃というギミックを組み込まれた武器であるから必然的に耐久度は通常の武器よりも大きく下がる。殲滅光(ガンマレイ)を纏った魔剣を受け止めれば壊れてしまうかもしれない。だから受けるわけにはいかない。

 

 

互いの思惑が合致したからこそ成り立つ死の舞踏。互いの剣は交わる事なく空を斬り、互いの一斬を回避し続ける。

 

 

「……凄い」

 

 

それを見た白音の感想は感嘆の一言に尽きる。それ以外の言葉が見つからない。白音も戦う為にと鍛錬はしていたが彼らと比べるのが烏滸がましくなる。手合わせだけでも死にかねないものを白音はした覚えが無い。

 

 

「ーーー」

 

「ーーー」

 

 

レージとイザイヤの視線が交差する。狙うのはただ一撃、初撃にして終撃。互いの隙を探りながら互いに必殺の乱撃を放つ。

 

 

いつまでもこの状態が続くのだと白音は思っていたがそれは唐突に終わりを告げる。

 

 

「ーーーあひん」

 

「ーーーふひゃ」

 

 

レージとイザイヤが唐突に間抜けな声を出して倒れたのだ。何事かと思いよく見ればーーー彼らの首元の辺りに機械蜂が飛んでいた。

 

 

「ーーーふ、ふふっ、ふふふふふふ……レェジ……日が暮れたわよぉ……」

 

 

ゆらりと陽炎かと見間違うように現れたのは……黒歌だった。頬を僅かに紅く染めて、蕩けた顔で倒れているレージのことを愛おしそうに見ている。

 

 

レージとイザイヤの手合わせに見惚れていて気づかなかったが、確かに日が暮れている……つまり、黒歌の待っていた時間である。

 

 

「アスラ、イザイヤのことよろしくね♪私はレージとイチャイチャしてくるから……あと白音に手ェ出したら殺す」

 

 

そう言い残して黒歌は機械蜂の毒にやられて白目を剥いているレージと共に転移して消えた。残されたのは白目を剥いているイザイヤだけだ。

 

 

「え、え、えぇぇぇ……」

 

「終わりとはいつも呆気ないのもだなぁ……」

 

 

白音は予想だにしない終わり方に納得が出来ず、アスラは黒歌に搾り取られるであろうレージのことを思って目頭が熱くなった。

 

 




白音、アスラ師匠と特訓。復讐派の中で体術最強のアスラに師事するのは当たり前のこと。平行して黒歌からは仙術を習っている。

イザイヤ・ガンマレイVSレージ・アストレア。新しい星辰光(アステリズム)を作ったからと言って手合わせと言う名の殺し合いをする奴がいるらしい。

最後はこんなオチ。

レージ・イザイヤ「俺/僕は毒に屈したりしない!!」

レージ・イザイヤ「やっぱり毒には勝てなかったよ……」

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