復讐者慟哭。幕上がるは復讐歌劇   作:鎌鼬

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アウトブレイク

 

 

銀狼の連中とアスラたちが飲み比べを始め、黒歌とジャンヌオルタとシュライバー3人による女子トークが始まってから1時間ほどだった頃、外が騒がしくなっていることに気づいた。

 

 

「なんか騒がしくないか?」

 

「もう深夜だぞ?普通なら寝入ってる頃だと思うが……」

 

 

なんだか嫌な予感がする。腰から剣を引き抜くと曹操も同じ事を思ったのか聖槍を取り出していた。そして店の扉を開いて外の様子を伺うとーーーそこには地獄絵図が広がっていた。

 

 

逃げ惑う人々に全身から蔦と葉を生やして人々を襲う人間。蔦と葉を生やした人間が人々を襲えばその襲われた人々からも蔦と葉が生えて人々を襲い出す。中には反撃されたのか頭がカチ割られて脳味噌や内臓が飛び出したり、身体の一部が欠損している者もいたがそれでも平然と動き回っている。

 

 

「うわぁお……」

 

「あれは……魔寄草か?」

 

 

魔寄草というなら冥界原産の植物で冥界特有の大気成分である瘴気があれば普通の草と変わらない。だが、瘴気が存在しない場所だと生物に寄生する事で栄養を取ろうとし、さらに別の生物を襲って数を増やすとかいうイカれた植物だ。

 

 

人間界には魔寄草は存在しない。仮に持ち込まれそうになったとしても最優先で排除される特急の危険植物だ。なのでこの場に魔寄草がある理由はただ1つだけ、()()()()()()()しかあり得ない。

 

 

「魔寄草による、アウトブレイクを確認」

 

 

曹操が淡々と簡潔に状況を説明すると全員の意識が変わる。酔っ払っていて眠りこけていたはずのクラスでさえ目を覚ましている。

 

 

魔寄草によるアウトブレイクが確認された瞬間から、その場にいる生物に対する一切の権限は剥奪される。何故なら、その場にいるというだけで魔寄草に寄生されている可能性があるからだ。寄生されたネズミ1匹、虫1匹を見逃してしまえばまた別の場所で魔寄草のアウトブレイクが起こる。それを防ぐ為に魔寄草によるアウトブレイクが起きた場所を中心とした一帯を焼き払う必要があるのだ。

 

 

つまり、アウトブレイクが起きた一帯を殺す事で他の地域を守る。残酷だとか平和ボケした連中は騒ぐかもしれないがそうでもしないと人間界が魔寄草で滅びる事になる。

 

 

「魔寄草って事はボクらも戦死扱いか……ドイツ(ここ)にはまだ赤鷹と黄犬と青猿がいるから心配無いけどお先真っ暗だなぁ……あ、レージに着いて行っても良い?」

 

「良いぞ?他の奴らも着いてくる?」

 

「「「「「「お世話になりまぁす!!」」」」」」

 

 

魔寄草のせいで職を無くすことになった銀狼の隊員たちが俺の誘いに即答してくれた。人数はシュライバー込みで30人程か……ま、これからの事を考えるといくら人手があっても足りないし丁度良いと言えば丁度良いな。

 

 

「クリス、外への連絡は?」

 

「……駄目だな、魔術による通信と転移は結界でも張られたのか不可能だ」

 

「おう、機械なら大丈夫みたいだぞ。ドイツ軍の無線を傍受出来た。あと30分でここにミサイル落とすそうだ」

 

 

ヘラクレスが仲良くなった銀狼の隊員と無線機を構っていながら教えてくれた。30分か……脱出までの時間には十分だな。

 

 

「良し、ならこれからの方針を伝える。あと30分でミサイルが落とされるからそれまでに街を脱出して転移可能な場所まで逃げる。ここにいる全員は寄生されてないだろうが、仮に寄生されたら誰だろうが見捨てろ。そして寄生された奴はそのまま死ね」

 

 

残酷かもしれない方針に全員が無言で頷いてくれた。魔寄草による寄生は寄生者に噛まれる、もしくは爪で引っ掻かれた時点でアウトだ。そして寄生された魔寄草を取り出す手段は存在しない。なので寄生されたら見捨てる以外に無いのだ。

 

 

「あ、待って。確か黒兎の部隊もこの街にいるはずだよ。連れて帰ったら役に立つんじゃないかな?」

 

「黒兎って言ったら銀狼と同じ対人外部隊だっけ?」

 

 

一般人ならもう寄生されているかもしれないから助けられないが対人外を想定して訓練された部隊なら寄生されていないかもしれない。助けた時のメリットとデメリットを天秤にかけてーーー助けることにした。

 

 

「場所はわかるか?」

 

「待ってろ……良し!!黒兎の副隊長をデートに誘えたぞ!!」

 

「はい誰がそこのバカを去勢しろ!!」

 

「辞めろ……辞めろ……ハサミと消毒液を持って俺に近づくなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

無線で黒兎の副隊長とやらをナンパしていたヘラクレスに処分を下して、ヘッドホンとマイクを代わりに受け取る。

 

 

「うちのバカぎ失礼した。俺は禍の団(カオス・ブリゲード)復讐派の代表のレージだ」

 

『いや何、良い塩梅で緊張を解させて貰ったさ。こちらは対人外部隊黒兎隊長のラウラ・ボーデヴィッヒだ……まぁ、今では元が付くがな』

 

 

そう言って無線越しで苦笑するのはシュライバーと同じ年頃の少女の声。ドイツは人外に対抗する手段として遺伝子強化試験体(アドヴァンスド)という方法を取っている。一言で言えばデザインベイビー。遺伝子を弄り回して強化された人間を使って人外に対抗している。その手段が確立されてからまだ然程年月が経っていない為に遺伝子強化試験体(アドヴァンスド)はまだ成人していない人間しかいない。それでも兵器のように使い回される事はなく、戸籍も人権も普通の人間と同じように与えられていると聞いているが。

 

 

「寄生された者は?」

 

『今現在寄生された者はいない……寄生された瞬間に手榴弾をありったけ抱いて外に飛び出したからな……』

 

「……済まない。今からそちらに救出に向かう。現在地は?」

 

『ユートピアという地下にあるバーだ。手榴弾のお陰で入口が瓦礫で塞がって侵入はされないが出られもしない……いや、出られるが瓦礫を退けたら崩れそうだな……』

 

「ユートピアだな?分かった、待ってろ……そうだな、助けられたら頬に熱いキスでもしてもらおうか」

 

『なッ!?にゃ、にゃにおーーー』

 

 

現在地が分かったのでそこで無線を切る。これ以上話し続けたら向こうの思考がマイナス方面に寄り添うだったから。こういう場面では余裕も持ちつつポジティブである方が良いんだよ。少なくともさっきの終わり際のジョークでボーデヴィッヒのマイナス方面は無くなっただろうしな。

 

 

「んじゃ、準備は良いな?」

 

 

確認を取ればしっかりと自分の武器を構えている全員の姿がある。秘匿なんて考える暇もない、とにかく迅速に動かなければこのままミサイルで粉微塵になるからな。

 

 

……でも終わり際のジョークのせいでジャンヌオルタたちの俺を見る目が怖いです。自業自得だと分かってるけど辛いなぁ……

 

 





要するに寄生植物版のbiohazard。寄生された者と触れた時点でアウト、寄生されてるかもしれないので一般人は全員見殺し、残り時間30分で街を脱出しなくてはいけません。

ミサイルはアウトブレイクの拡大を防ぐ為に国が決めました。転移、通信妨害は主犯がやりました。だけど裏側のことしか考えてないので人間の技術に関する対策、つまり機械による通信は出来ました。

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