物陰から飛びかかってきた寄生者を一斬にて斬り払う。
曹操の方も寄生者が襲ってくるが心配無い。こちらはシンプルに聖槍で穿つだけ。それだけで魔寄草ごと、寄生者の肉体は消し飛ぶ。
「全く、多いな」
「アウトブレイクの発生がいつかは分からないがおおよそ半分は寄生されてるだろう。街の規模を考えればまだまだいるだろうし、これから増えるはずだ」
「ユートピアはこのまま直進です……だけどあちらこちらで煙が上がってますね。恐らくは車で避難しようとして、襲われたのでしょう」
黒兎の連中がいるユートピアへの案内を買って出てくれた銀狼の隊員の1人が上がっている黒煙を見ながら説明してくれる。俺たちが移動に使っているのは裏通りだ。表通りだともっと早く着くらしいが混乱している人混みと接触してしまう。寄生を避ける為に表通りを避けて、遠回りで向かうしかなかった。
「にしても誰が魔寄草なんて持ち込んだんだか……」
「冥界にしか生えないから悪魔か堕天使だな。冥界に侵入した人間が持ち帰ったなんて可能性もあるがデメリットしかない」
「まぁどちらかで確定だな。するとこの街にばら撒いた理由だが……」
「……シュライバーたちか、俺たちかだな。この街にはそれぐらいしか目ぼしい者は居なさそうだし」
「つまり、ボクらの巻き添えだって事?」
「あぁ」
シュライバーの疑問に返事をしながら上から降ってくる寄生者を触れる事なく星辰で塵にする。そうした、作業じみた殺戮をしながら俺の中にあるのは怒りだった。
俺たちが目的であるなら、俺たちだけを狙えば良い。周りの人間を巻き込む理由がどこにある?あぁ許せない。ただそこに居たからという理由で無力な人間に危害を加える人外どもが許せない。
曹操も俺と同じ思いらしく、聖槍を握る手からは血が流れていた。
「キャァァァァ!!」
その時、悲鳴が聞こえた。壁に身体を隠しながら様子を伺えばそこにいたのは男女の寄生者に襲われそうになっている1人の少女。それを見た曹操が迷わずに飛び出し、寄生者を消し飛ばした。
「ふぅ、大丈夫かい?」
「ーーーひ、人殺し!!」
曹操に助けられて、初めに出たのは人殺しという罵倒だった。
「なんで、なんでお父さんとお母さんを殺したのよ!?」
涙を流しながら、少女はさっきの寄生者が父と母であったと言う。裏側であればその危険性が知られている魔寄草だが、何も知らない表側の人間からすれば病気の類い、つまり治るかもしれない物と捉えられてしまう。
だから人殺し。治るかもしれない父と母を殺した曹操を人殺しだと、少女は罵倒したのだ。
そして少女は泣きながら表通りに通じる道を駆けていきーーー物陰に居た寄生者に襲われた。噛まれて、引っ掻かれたのでもう手遅れだ。なので寄生者ごと星辰で分解する。どうか苦しむ事がないようにと、加減無しで。
「……人殺し、か」
「曹操、大丈夫ですか?」
「ありがとうジャンヌ……何度言われても来るものがあるね……」
「良いじゃない。貴方が目指しているのは英雄なのでしょう?だったら人間のままであるべきだわ。今の罵倒で何も感じないようだったらロボットと何も変わらないじゃない」
「ジャンヌオルタ、少し言い過ぎ」
「いや、ありがとう……存分に怨んでくれ。それだけのことをしたという自覚はある。君の嘆きを、誰かの明日にするから、どうか眠ってくれ……」
そう言って塵となった少女に向かい頭を下げる曹操を見て、俺はやはり曹操は英雄の器なんだと再認識した。
英雄がいないと悟り、ならば己が英雄になってやろうとするその気概、その情熱。自分がしている事が愚かな事であると自覚して恥ながらも進むことを辞めないその覚悟。俺が出会った人間の中で、曹操ほど英雄の素質を持った者を他に知らない。時代が時代であれば曹操は本物の英雄であっただろう。
だから、俺は曹操に
こいつなら、きっと本物の英雄になってくれるだろうと。
「……残り20分を切ったな、そろそろ行こう」
「……あぁ」
自分を罵倒した少女に向かって涙を流す曹操を連れて、俺たちはこの場から立ち去った。
そうして5分ほど歩いて辿り着いたのは裏通りにある雑居ビル。入口が崩れてしまって入らないが、無線の通りならここの地下に黒兎の連中は閉じ込められているのだろう。
無線で教えられた通りに、雑居ビルはギリギリ形を保っている状態だった。元々古かったところに手榴弾の自爆が堪えたのか、壁にヒビが入っている。入口の瓦礫が支えにもなってるらしく、普通にどけたら崩れるのが目に見えてわかる。
「クリス、よろしく」
「任せろ」
まぁそれは普通にどけたらの話だ。クリスの星辰を使えば問題無い。磁力がコンクリートに埋め込まれている鉄筋に反応して、ビルを支えながら瓦礫を退かす。1分も経たずに地下への入口が姿を現した。
他の者たちに周囲の警戒を頼み、俺とシュライバーで地下に向かう。変形した扉を無理やりこじ開けるとそこにはシュライバーと同じ軍服を着た人間が十数人居た。
「む、本当に来てくれたのか」
「心外だな、俺は自分からした約束は守るタイプだぞ……相手からされた約束は気分によって破るがな」
「ヤッホーボーデヴィッヒ、元気にしてた?」
代表として前に出て来たのはシュライバーよりも背の低い銀髪の少女。シュライバーと同じように眼帯で片目を隠している彼女が黒兎の隊長のラウラ・ボーデヴィッヒだろう。
「改めまして、
「ドイツ軍対人外部隊黒兎隊長のラウラ・ボーデヴィッヒだ。まぁ、今では元が頭に付くがな」
「シュライバーと同じ事言ってる……」
「天丼は寒いよボーデヴィッヒ……」
「え?何?私が悪いのか?」
「まぁそれはさて置き、あと時間が10分ほどでミサイルがここに落ちる。街には魔術的な結界が張られているので魔術による通信と転移ができない状況だ。なのでこれから街を出て転移が出来る場所まで移動したいのだが怪我人はいるか?」
「寄生者、怪我人共にゼロだ。ただ装備が心許ない」
「それに関しては大丈夫。
「感謝する……あ、あとレージ。その、少し屈んで貰えるか……?」
「ん?何々?」
ボーデヴィッヒに言われた通りに目線が同じになるくらいまで屈む。するとーーー
「んーーー」
「ーーー」
「oh……」
ボーデヴィッヒが、頬に、キスをしてきた。
「こ、これで約束は果たしたからな!!」
顔が真っ赤になるボーデヴィッヒと、それを見て囃し立てる黒兎の連中。
「あとでちょっと話があるから、逃げないでね?」
「御心のままに」
どういう理屈か恐怖を感じる笑みを浮かべるシュライバーと言う、残り10分でミサイルが落ちる状況だと言うのになんかカオスな雰囲気になってた。
「ーーーレェジィ……」
「ーーー覚悟しといてにゃん?」
ジャンヌオルタと黒歌も同じ笑みを浮かべてましたよ……
速報、曹操にも