好奇心旺盛な目でこちらを見ている
足に力を入れて爆発させる。砕ける地面に流れる景色、力技のみで停止状態から最高速度に加速して突貫。
「
力技で破壊されて砕け散る拘束魔術、だがリゼヴィムの目的はレージを止める事ではなく少しでも動きを鈍らせる事。その先にユーグリットが短距離でしか移動が出来ない代わりにほぼノータイムで転移できる
リゼヴィムとユーグリットが転移した先はレージの頭上、すべての生物にとって死角となる場所。だがその上には曹操が待ち構えていた。
曹操にはレージの様な不死性や人外の様な生命力の強さは無い。英雄の血を引いているという事と
だからこそ、曹操はその差を埋めるために思考を止めない。常に自分の最善手を考え続け、敵の行動を予測し、一撃でも食らえば死ぬ様な相手と戦って生き残ってきた。
今回のもその産物だ。前々から共闘しているレージの動きは手に取るようにわかり、リゼヴィムとユーグリットの動きも曹操の予測の範囲内であった。2人の頭上から悪魔にとっての弱点である聖性を纏った
そして、ここでリゼヴィムが曹操の予想を上回る。リゼヴィムが頭上にいる曹操に意識を向けた瞬間に
「ーーー関係無い」
だが、それは曹操にとって予想外であったが些事でしか無い。聖性を失った状態の
そしてリゼヴィムの
「おいおい、大丈夫か?なんか聖槍がただの槍になってるぞ?」
「どうも
「それなら良いけど……それはそれとして、こいつらーーー」
「「ーーー弱いな」」
レージと曹操の口から出た言葉は同じだった。悪魔という種族の中では上位の実力者であろうリゼヴィムとユーグリットだが、2人からしてみればそれほど強い相手では無かった。
レージはギリシャ神話の神々や英雄と訓練して、曹操も各神話勢力の神々に稽古をつけて貰っている。そんな2人からすれば
「アヒャッヒャッヒャッヒャッ!!はっきり言われちったね〜まぁだけど本当の事だし?僕チン謀とかが専門で戦闘力たったの5のゴミだし?直接切った張ったは得意じゃないんだよねー」
「クソッ……!!」
リゼヴィムの方は追い詰められながらも態度を崩さないがユーグリットの方は露骨に悔しそうな顔をしていた。それはこうしてレージの強さを実感しているからだろう。いくら姉の仇であるとは言ってもここまで強かったら仇が討て無いのだから。
「改めて自己紹介と行っとこうか?僕チンはリゼヴィム・ルシファー、こっちはユーグリット・ルキフグス。ただのチンケな一般悪魔。プルギ〜僕チン悪い悪魔じゃないよ〜!!」
「ルシファーってだけでアウトだ」
「リゼヴィム・ルシファー……確か前ルシファーとリリスの息子だな……うん、情状酌量の余地無くアウトだ」
「世間の風が冷たいな……寒くなって来たからか〜えろっと」
「逃すと思うか?」
言動から逃げようとしているリゼヴィムを警戒して、レージが四肢に力を込める。長距離転移をしようとした瞬間、その首を切り落とすつもりだ。それを見てリゼヴィムは手を振り首を横に振りながら大げさな態度で否定する。
「まっさか〜!!流石にこのままじゃ逃げれるなんて思ってないってば!!……だから、先生!!よろしくお願いします!!」
「ーーーッチ、気に食わんが契約は契約だ」
真上から、超高速で何かが落ちて来た。曹操は直前でそれを回避、飛んでくる破片を聖槍で弾いて無傷。だがレージは避ける事なくその何かに押し潰された。
落ちて来たものの正体は龍をそのまま人間大のサイズに変えたような龍。リゼヴィムの言葉から察するにおそらく協力関係にあるのだろう。そしてその龍から放たれる気配はリゼヴィムよりも強大だった。
「んじゃバイビ〜!!」
「レージ……姉上の仇……!!必ず殺してやる……!!」
リゼヴィムは陽気に、ユーグリットは憎悪に満ちた言葉を吐きながら長距離転移で姿を消した。曹操ならその隙を突いて首を跳ねるくらいは出来たのだが目の前の龍がそれを邪魔していて出来なかった。
「成る程……才気はある、素質も中々、それに覚悟も兼ね備えていると見える……時代が時代ならば英雄として祭り上げられていただろうな」
「そちらの闘気も中々、さぞ名のある龍とお見受けするけど……
「ーーー
龍の足元から一撃必殺の十連撃が放たれた。完全に曹操に目が行ってしまい、押し潰していたレージに注意を向けていなかった龍はその十連撃をまともに受けて上空に吹き飛ばされた。
「いってぇな……よくも押し潰してくれたな蜥蜴が!!丸焼きにすっぞ!!」
「あれでいてえで済むのがおかしいんだけどな」
「
胴体に大きな切り傷を作りながらも龍は平然として、先の技の解析をしていた。今の技はギリシャ神話勢力最強の戦力とされているヘラクレスがヒュドラを殺した時の弓技を剣技に昇華した物。ヘラクレスの物と比較すれば劣るものの、技としての完成度は非常に高かったと内心で評価する。
「チッ、踏み潰されるし悪魔には逃げられるし散々だわ……つう訳で殺す」
「文の前後が合ってないけどなぁ……だけどリゼヴィム・ルシファーの脱出に手を貸したってことは協力関係にあるって事だ。殺す理由にはなる」
「英雄候補にヘラクレスの師事を受けた人間……興味が惹かれるが、今日はここまでのようだな」
龍がそう行って見た先には戦闘機が飛んでいた。それはドイツ軍が飛ばしたもので、魔寄草のアウトブレイクが起きた街とその周囲を焼き払う為にやって来たのだ。
その周囲には、この場も含まれている。
「我が名は邪龍クロウ・クルワッハ。再び合間見える時を楽しみにしているぞ」
そう言ってクロウ・クルワッハを名乗った龍は翼を広げて飛び去っていった。それを見てしばらくしてからレージと曹操は警戒を解き、安堵のため息を吐く。
「ッハ〜!!マジかよ……あんなバケモン連れてるとか……」
「
2人の顔には冷や汗が滝のように流れている。対峙していた時には罵倒するような口ぶりだったが、その内心はクロウ・クルワッハの威圧に押し潰されぬように必死だった。虚勢を張っていたとも言える。
クロウ・クルワッハとはケルト神話に登場する神として人間界には知らされている。アルスター南部では戦いと死の神として崇拝されており、ケルト神話に登場するフォモール族のバロール神が呼び出した暗黒竜と同一視されている。どうやらその同一視は正しかったらしく、クロウ・クルワッハは龍の姿をしていた。
神話の存在でキリスト教の介入などで生死が不明だったが生きていたらしい。それもリゼヴィムと協力関係にあるとなれば十分に脅威的な存在だった。
「
「
「本当に百害あって一利なしだよな悪魔って……っと、もう時間か」
そして始まるドイツ軍による空爆。魔寄草のアウトブレイクが起きた街に次々と爆弾が落とされる。あそこには生きている人間も居るだろう。もしかしたら助けが来ると思って必死になって生き延びていたかもしれない。
だが、それを救うわけにはいかない。救おうとしてさらなる被害を出す事になるから。多数の為に少数を切り捨てる。それが今行われている事だった。
「辛いか?」
「辛いさ……救えていたかもしれない人を見殺しにするのは」
レージが横目で曹操を顔は無表情、目からは涙を流し、硬く握られた手からは血が流れていた。救えたかもしれない人を見殺しにするのは曹操にとって辛い事だろう。
それでも曹操は泣いていた。この惨状を嘆いていた。それは救うだけの救済装置になっていない事の証明だった。
「俺はこの光景を忘れない。忘れないで、この光景を無くすことを誓う」
「あぁ、そうしてくれ。俺だってこんな光景は見たくない」
見たくないと口にしながらもレージも目の前で行われている空爆から目を逸らさない。無力な人々が犠牲になっている。曹操がそれに嘆き悲しむなら、レージはそれに怒りを燃え上がらせる。
「見捨てて済まない。だから、貴方達の無念は俺が背負おう。貴方達の復讐は、俺が果たそう」
レージが誓うのは復讐。こんな惨状を引き起こしたリゼヴィム・ルシファーとユーグリット・ルキフグスを必ず殺すと、犠牲になった者達の無念を晴らすと誓う。
そして2人は空爆の範囲に巻き込まれるまで、その光景を見続けていた。
トトカルチョの結果、《クロウ・クルワッハが来てリゼヴィムとユーグリットは逃げられる》でした。残念、クロウ・クルワッハが来なかったら2人とも殺れていたのに……
そして良かったね、レージに曹操。