ダンジョンに白い死神がいるのは間違っているだろうか   作:あるほーす

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開く譚と

 東京喰種という漫画をご存知だろうか。喰種という、人を喰らうことでしか生きられない生物になってしまった人間、金木研が活躍する超大人気漫画。週間ヤングジャンプに連載していて、単行本は無印が14巻、続編のreが8巻まで大好評発売中だ。

 この漫画には魅力的なキャラが多数登場するのだが、その中でも個人的にぶっちぎりで好きなのは有馬貴将さんだ。

 曰く、人類最強。曰く、白い死神。兎も角強い。めちゃんこ強い。だけど、部下が煎餅食べてむせてる場面を川柳にしたり、二刀流で飛ぶハエ相手に容赦なしだったり、傘で喰種を駆逐したりと、かなり天然な性格だ。そのギャップがまた魅力的なんだけどね。

 自分で言うのもアレだが、有馬信者に全身どっぷりと浸かっている。とにかく好きだ。有馬さんが大好きなのだ。面接のとき、尊敬する人物と聞かれて有馬さんと答えたのは良い思い出だ。所詮アニメのキャラクターとバカにした人事課のおっさんをぶん殴ってやった。

 そんなんだからか、歩道橋の階段から足を踏み外して、真っ逆さまに落ちたら—— 有馬さんに転生した。

 といっても、舞台は東京喰種の世界ではない。なんか中世っぽい、剣と魔法のファンタジーな世界だ。しかも神までいるし。有馬さんによく似た人物に転生した、というのが妥当な表現か。

 前世の俺は死んだのかとか、東京喰種:reの続きが見れないとか死んでも死にきれないとか、色々と言いたいことがあるけれど。

 とりあえず、有馬さんになりきってこの世界を生きてみようかと思う。有馬ロールプレイングだ。やるからにはとことんだ。完全になりきってやる。となると、最後はやっぱり—— スタイリッシュ自害だよね!

 

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

 

 戦いの火蓋が切られたというには、あまりに静かだった。

 一人の男がミノタウロスの群れへと悠然と歩いて行く。その顔には恐怖や昂りなどの感情は一切ない。それこそ、ただ普通に歩くだけという感じだ。

 観衆たちはその男の一挙一動を目に焼き付けながら、ごくりと固唾を呑んだ。

 ダンジョン内に響く咆哮。その男を排除しようとミノタウロスたちが殺到する。

 あと一歩で拳が届く。その距離に足を踏み入れたミノタウロスたちは、例外なく地面に崩れ落ちた。額、目、心臓、喉。それぞれに急所と呼べる場所から血が噴き出る。そのまま黒い霧となり、魔石を残してこの世から消え去った。

 男の手に持っている槍のような武器には、赤い血が静かに滴っている。そこから導き出せるのはつまり、あの一瞬で何匹ものミノタウロスたちの急所を、寸分違わぬ精度で貫いたということだ。

 尚も男は歩みを止めない。

 殺さなければ。一刻も早く、この男を殺さなければ。ミノタウロスたちはまるで篝火に集う虫のように襲いかかっていく。最後に待つのは業火に焼かれる運命と知ってか、知らずか。飛び散る血と共に、その肉体も黒く霧散していく。その光景はまるで、男が行く道をミノタウロスが譲っているようだった。

 3分の2ほどが討伐されたのを境に、ピタリとミノタウロスたちの動きが止まる。次の瞬間、後ろへ振り返り、全力で走り出した。

 逃走。モンスターの本能には、冒険者に襲いかかるというルールが刻み込まれている。それを思いっきり無視した、本来ならありえない行為。観衆たちは驚きの声を上げる。しかし、男は狼狽えることなく、感情の色を窺わせない目で、ミノタウロスたちが逃げた先をじっと見つめた。

 直後、地面を蹴る音。

 男は手近にいたミノタウロスの背中へと一気に肉薄し、後頭部を串刺しにする。それが終われば、また次の個体へ。また次へ。また次へ。最短のルートを瞬時に弾き出し、何度もそれを繰り返す。その姿はまるで、巣に掛かった哀れな虫を捕食して周る蜘蛛のようだ。

 大方の個体は男の視界から逃れることすら許されずに、その場で消え去った。

 そう、大方は。運良く死神から逃れることができた、幸運な1匹がいた。寿命を僅か数分だけ伸ばすことができた、幸運な1匹。

 再び、男は駆け出した。死神の手からは逃げられないと、そう言わんばかりに。

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

「うわああぁぁぁぁ!!??」

 

 ベル・クラネルはダンジョンの中を必死に駆けていた。

 背後から迫る魔物の名はミノタウロス。本来なら15層に現れる魔物であり、新米冒険者がどうこうするなど不可能な強さだ。

 何故、そんな魔物がここにいるのか。至極当然の疑問をすぐに掻き消す。そんなことを考えても仕方がない。逃げるのに集中しなければ、死ぬ。

 道が二手に分かれている。一つは右へ、もう一つは左へと続いている。ベルは直感に任せ、右に曲がった。

 しばらく走り続けると、そこにあったのは—— 壁。運の悪いことに行き止まりだった。

 

「そ、そんな!? 嘘だろ!!?」

 

 がむしゃらに壁を叩くも、当然壊せるはずもなく。逃げ場はないという残酷な事実をこれでもかと叩きつけられる。

 一歩、また一歩とミノタウロスが近づいてくる。それと比例して、心臓の鼓動も大きくなる。ベルは思わず地面にへたり込んだ。

 幾ばくもない距離まで詰められ、ミノタウロスは丸太のような腕を降り上げる。

 

「っ!!」

 

 もうダメだ。次の瞬間に訪れるであろう痛みの恐怖に耐えかね、ベルはぐっと目を瞑ってしまった。

 つぷり。まるで何かが突き刺さった音。

 恐る恐る目を開ける。

 ミノタウロスの左目から切っ尖が飛び出していた。一度だけ大きく痙攣した後、ミノタウロスは力なく地面に倒れた。

 倒れたミノタウルスの向こう側には、まるで踏み潰した虫を見るような目でミノタウロスを見下ろす1人の男がいた。ダンジョンだというのに、その男は防具らしき防具を装備せず、この場では一際異彩を放つ白いロングコートを着ている。

 ベルと同じ雪のように白い髪をなびかせながら、その男はミノタウロスの頭部に突き刺さった槍のような武器を引き抜いた。

 ミノタウロスは黒い霧となり、消えていく。

 

(この人、間違いない……)

 

 黒で塗り潰された瞳と、血のような赤い瞳が交差する。

 

「白い死神、キショウ・アリマ……!」

(カネキ君枠見っけ)

 

 この出会いが、後に2人の運命を大きく歪ませることになる。

 

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

 逃げ出したミノタウロスを狩りに、上層の階に来てみたらビックリした。いやもう、それはそれはビックリした。ミノタウロスに襲われていたこの少年の容貌にだ。

 白い髪に、赤い瞳——これが左目だけなら完璧だったんだが——なんてもう、白カネキ様とそっくりじゃないか!

 うん、もうピッタリだ。君に決めた! 君にはカネキ君になってもらいましょう!

 となると、先ずはあれだな。少なくとも俺をブチ殺せるくらいには強くなってもらわないと。この少年とサシで戦って、敗北まで追い詰められる。そんで、最後はフクロウで自分の首を掻っ切るか、そのままぶっ殺される—— 完璧だな!!

 

「「……」」

 

 少年はジッと俺を見てる。うん、沈黙が痛い。ここはとりあえず、怪我をしていないか聞いてみるか。ミノタウロスがこの階層に逃げ出したのは俺の落ち度なんだし。

 ああ、俺も未熟だなぁ。本物の有馬さんならキッチリ駆逐できたに違いないのに。

 

「怪我はないか?」

「え、あ…… はいっ」

「そうか」

 

 それは良かった。そんな気持ちを込め、一言だけ短く呟く。伝わるかは知らん。

 IXA——といっても、それに限りなく近づけてもらっただけの紛い物だが——を振り払い、刀身にこびり付いていた血を払う。

 紛い物とはいえ、完成度はかなり高い。防壁展開も、遠隔操作も再現できてるし。自分で使っておいてなんだけど、どういう仕組みなんだろう。

 そうだ。ついでに名前も聞いてみよう。教えてくれると良いな。

 

「名前は?」

「えっ?」

「君の名前」

「……べ、ベル・クラネル。ベル・クラネルです」

「ベル・クラネルか。覚えておこう」

「……えっ、えええぇぇ!?」

 

 ベル君は目をパチクリさせたと思うと、次の瞬間は大きく見開いた。

 まあ、それもそうか。

 Lv7に昇格した俺は、オッタルというオラリオ最強の男と肩を並べているらしい。そんな人から名前を聞かれて、しかも覚えておこうなんて言われたら、そりゃ驚くわな。

 それにしても、気に入らねえなぁ。有馬さんはカネキ君を除いて、ぶっちぎりで人類最強であるべきお人だ。それなのに、肩を並べる人がいるってどうよ? ダメだろそれじゃあ。そんな状況を許すなんざ、有馬信者の片隅にも置けない。

 かといって、オッタルに喧嘩を売りに行くのは違うんだよな。有馬さん、なんの意味もなく戦うようなバトルジャンキーじゃないし。降りかかる火の粉を払うか、誰かに命令されたときくらいしか戦わなさそうなイメージだ。そのイメージに準拠して、自分から喧嘩を売ることはほとんどしていない。

 仮にオッタルを倒したとしても、まず確実にファミリア間の問題になる。現時点では、ロキファミリアに迷惑をかけるつもりはない。

 

「アリマ、やっと追い付いた……」

 

 脇道に逸れた俺の思考を引き戻すかのように、ロキファミリアの一員のアイズがやって来た。剣姫だか戦姫とかいう二つ名を与えられた冒険者の少女で、かなりの美貌の持ち主でもある。冒険者としての実力も高く、期待のホープでもある。グールで言う宇井きゅん的な。まあ、俺からすれば、事あるごとに特訓をせがんでくる困ったちゃんだけどね。

 ちなみに、俺の二つ名は白い死神である。白いコートを着ながら、目につくモンスターをプチプチ殲滅したからだろう。思わぬ原作再現に、密かにテンションアゲアゲになったのは良い思い出である。

 それにしても、アイズがどうしてここに…… ああいや、ミノタウロス捜しを手伝うとか言ってたような。遅いから先に行っちゃったけど。

 

「その子は……?」

 

 アイズはへたり込んでいるベル君に目を向け、そう言った。

 

「ミノタウロスに襲われていた子だ」

「そう……」

 

 アイズはベル君に近づき、そって手を差し伸べた。おお、珍しい事もあるものだ。結構人見知りな娘なのに。

 

「立てる?」

「は、はいっ!」

 

 ベル君はアイズの手を掴み起き上がる。

 よくよく見てみると、ベル君の顔が真っ赤になっていた。どう見てもほの字である。これ、もしかしてアイズたんがリゼさん枠?

 ということは、もしかしたらアイズたんがベル君を強くする鍵かもしれない。臓器でも移植すれば、もしかしたら…… なんて思ってみたり。

 

「えっと、キショウさんにアイズさんですよね? 危ない所を助けていただき、本当にありがとうございます!」

「お礼ならアリマに言ってあげて。私は結局、間に合わなかったみたいだから」

「い、いえ! こうして駆けつけてくれただけでも、嬉しいというか……」

 

 青春してるなぁ、ベル君。だけど、カネキ君に似てるって時点で色々と不安になる。

 さて、ここでカネキ君の恋の行方について思い返してみよう。どうにかして、気になるあの子とデートをするまで漕ぎ着ける。初デートの別れ際、気になるあの子がなんか思わせぶりなことを言うから、もしかしたら告白されるかと思いきや、食べられ(物理)そうになる……。こんなん、一生もんのトラウマやん。

 カネキ君みたいな最悪な恋の結末にならないことを祈ろう。アイズたんは絶対にそんな事しないだろうけどさ。

 ああ、そうだ。最後に一言だけ言っておかないと。

 

「ベル」

「は、はい! 何ですかキショウさん!?」

 

 ベル君は大袈裟なくらい姿勢を正した。そんな大したことじゃないから、そう身構えなくてもいいのに。

 

「俺のことを呼ぶときは、アリマでいい」

「え? は、はぁ……」

 

 それだけ伝えれば、後はいい。多くを語らないのが有馬さんだ。

 

「アリマは名前で呼ばれるのが嫌なの。私たちにも呼ばせないくらいだから。言う通りにしてあげて」

「そうなんですか……」

 

 何も言わない俺の代わりに、アイズが補足する。説明ご苦労様です。

 嫌いっつーか、キショウって呼ばれるのに違和感があるだけなんだよね。やっぱり、作中でも一番多く呼ばれているのが有馬さんだし。この世界でもアリマって呼ばれるのが一番しっくりくる。

 まあ、その辺は俺個人のどうでもいいこだわりだ。

 その後は特に何も起きず、普通にベル君とお別れした。ベル君は何度もお礼を言って、姿が見えなくなるまでずっと礼をしていた。

 むしろ、お礼を言いたいのは俺の方だ。

 なにも俺は、カネキ君と似てるというだけでベル君を選んだ訳ではない。ベル君はきっと強くなる。いつか、俺を殺すことができるくらいまで。根拠はないけれど、そう感じた。

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

 アイズのアリマに対する印象は、よく分からないといったものだ。

 例えば、アマゾネスのティオネは冷静そうに見えて、実は結構凶暴である。狼人のベートは、口は悪いが根はそう悪くない。共に生活する中で、だんだんと知っていった一面だ。

 しかし、アリマについては。同じファミリアで、もう何年も共に暮らしてきたというのに、どんな人物なのか未だにサッパリ分からない。それはアイズだけでなく、他の団員たちもそうだった。

 それどころか、泣いたところも、怒ったところも、笑ったところも…… 感情の色が見え隠れしたことは、ほとんどない。

 どこで生まれたのか。どうして冒険者になったのか。どんな経緯でロキファミリアに入ろうと思い立ったのか。最古参のメンバーでも首をかしげる。

 ただ一つ分かるのは、強いということ。今や、オラリオ最強と呼ばれていたオッタルと肩を並べるほどだ。しかし、アリマはそれを誇るでもなく、喜ぶでもなく、ただ淡々に事実として受け止めるだけだった。Lv7になったと告げられ、そうかと呟いただけで流したのはロキファミリアでは有名な話だ。

 ……強いという他に、天然というのも加えるべきだろうか。

 しかし、嫌われているとか、恐れられているとか、そんなことは一切ない。寧ろ、アリマの周りには自然と人が集まる。単純にその強さに憧れた者。戦いの教えを乞う者。越えるべき壁として戦いを挑む者。集まる理由は様々だ。アイズも、アリマに戦いの教えを乞うた1人である。

 しかし、今思い返してみても、アリマの教えはかなりぶっ飛んだものだった。右手と左手を別々に動かしたら良いとか、相手の雰囲気で大まかに次の動きを予想するとか、理論立てて戦い方を教えてもらったことはただの一つもない。そのくせ、体捌きについてはコンマ1秒レベルで指摘してくる。

 ただ、強くなっているという実感はあった。

 本当に不思議な人。ふと、アイズはアリマの顔へと視線を移した。

 

「!!??」

 

 笑っている。あのアリマが笑っている。口元が僅かに上がっているだけだが、間違いなく笑っている!

 

「どうした?」

 

 アリマがアイズの視線に気づいたときには、その表情はいつもの無表情に戻っていた。

 

「アリマの笑顔、初めて見た……」

「笑顔? ……そうか、笑っていたのか」

 

 納得するように独りごちるアリマ。どうやら笑っていた自覚がないらしい。

 それっきり、アリマはまた口を閉ざしてしまった。相変わらず多くを語らない—— というより、語らなすぎる男だ。少しくらい、笑っていた理由を話してくれてもいいのに。

 しかし、どことなく単刀直入に聞き出せない雰囲気がある。アリマの横を歩きながら、アイズは思考を巡らせる。どうしてアリマが笑ったのか、その理由を。

 考えられるとすれば—— あの少年。名前は聞きそびれてしまったが、よく覚えている。アリマのような白い髪の毛。赤く煌めく瞳。ウサギのように可愛らしい少年だった。

 

「あの子の名前、アリマは分かる?」

 

 試しに、少年について探りを入れてみる。

 

「ああ、ベル・クラネルだ」

「ベル・クラネル……」

 

 答えた。間違いない。アリマの無表情を崩したのは、あの少年—— ベル・クラネルだ。

 アリマはベルから何かを感じ、そして笑ったのだ。ファミリアにいる誰だって、アリマをあんな顔にできる人はいなかったのに。

 その日を境に、アイズはベル・クラネルに興味を抱いた。

 

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

 

「アリマさんについて教えてほしい?」

 

 ダンジョンから帰還したベルは、真っ先にギルドに向かい、懇意にしてもらっているギルド受付嬢エイナ・チュールにアリマの情報を教えてもらうよう頼み込んだ。

 冒険者からの評判も良い彼女なら、誰かからアリマさんの話を聞いているかもしれない。そう目論んでいたのだが——

 

「公の情報しか教えられないわよ。ロキファミリアに所属している冒険者で、オラリオにいる数少ないLv7到達者の1人。擦り傷一つ負わずに、一晩で大型モンスターを何百匹も殲滅したことから付けられた渾名は、白い死神。あと傘でダンジョンに潜ったり、大型モンスターと戦ってる真っ最中に仮眠してたって噂も」

「あの、それ知ってます」

 

 オラリオに少し滞在した人なら、誰でも知っているであろう情報だ。もっとこう、詳しい情報がほしい。

 

「仕方ないじゃない。アリマさんの素性の尽くが謎に包まれているんだから。知れるものならこっちが知りたいわよ」

「なんかこう、他にないんですか? 例えば、初陣ではどうだったとか」

 

 初陣という言葉に反応したのか、エイナは口に手を当て、何やら考え込んでいた。

 少しして、エイナの口が開く。

 

「……これ、聞いた話なんだけどね。アリマさん、初めてダンジョンに潜ったその日に、リザードマンと遭遇したんだって」

「!」

 

 リザードマン。ダンジョンの19層に生息しているモンスターだ。階層だけで考えれば、その力はミノタウロス以上である。

 

「しかも、パーティはアリマさんの同期だった冒険者数人。当然、リザードマンをどうこうできるレベルの人は誰もいない」

「それで、どうなったんですか!?」

「アリマさんは1人でリザードマンの殿を引き受けて、仲間を逃したそうなの」

「たった1人で、仲間を逃す為に……」

 

 仲間を守る為に、自分より遥か格上の敵に立ち向かう。まるで英雄譚の主人公のようだ。

 もし自分だったら、そんなことができるだろうか。ミノタウロスに襲われ、逃げることしか頭になかった自分に。

 

「ロキファミリアの主力が助けに来た時、見た光景がね。傷だらけのリザードマンの首を切り落とすアリマさんだったの」

「勝ったん、ですね……」

「自分の武器だけじゃリザードマンを殺しきれないって分かっていたんでしょうね。リザードマンから逃げた冒険者たちの武器を使い潰して、助けが来るまでずっと1人で戦っていたそうよ。それも、顔色一つ変えずに……」

 

 あまりに浮世離れした偉業。しかし、それを成したのがあのアリマとなると、とたんに現実味を帯びる。

 どんな言葉を紡げばいいか分からず、奇妙な沈黙が2人の間で続く。

 

「僕も、アリマさんみたいになれますかね」

「えっ?」

 

 ポツリと呟いたベルの言葉に、エイナは戸惑った声で聞き返す。

 

「僕、実は5層でミノタウロスに襲われたんですよ」

「ええっ?」

「偶然アリマさんに助けてもらったから、何とか無事で済んだんですけど……」

「ええっ!?」

「その時、アリマさんに名前を聞かれて、覚えておこうって言われたんですよね。こんな、生き残る為の足掻きもできなかった自分なのに」

「えええぇぇぇええ!!??」

 

 怒涛の勢いで流れ込む衝撃的な情報に、エイナはギルド受付嬢あるまじき絶叫を上げた。周りの人たちが驚きの目を向けるが、そんなのを気にしている場合ではない。

 

「ど、どういうことなのベル君!? もうちょっと詳しく、もうちょっと詳しく聞かせて!!」

「いや、アリマさん、何も言ってくれなくて! 本当に名前を聞かれて、覚えておこうと言われたくらいなんです!」

「ベル君、あなた何したの!? まさか彼を怒らせた!?」

「いやいやいや、そんなまさか!」

 

 そんなやり取りを何回か繰り返す。声を出し疲れたのか、2人とも息を切らしながら、カウンターに突っ伏した。

 

「……ベル君。アリマさんの教えを受けた人はみんな大物になるのよ。アイズ・ヴァレンシュタイン氏もその例ね。そんな人から名前を覚えられるってことは、ベル君もきっと強くなれるわ」

「本当ですか!?」

 

 先ほどの疲れはどこへやら、ベルは爛々と輝く目をエイナに向ける。

 混じりっ気のない、どこまでも純粋な強くなりたいという願望。そして、英雄への憧れ。

 この子は将来、どんな大人になるのか。子供を見守る母親のように、エイナはくすりと笑う。

 

「あ、そうだ。アイズ・ヴァレンシュタインさんについても教えてほしいんですけど」

「もう帰れ!」

 




有馬さん!有馬さん!有馬さん!有馬さんぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!有馬さん有馬さん有馬さんぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!有馬貴将の枯れかけた白色の髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
8巻の有馬さんかっこよかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
東京喰種JACKが発売されて良かったね有馬さん!あぁあああああ!かっこいい!有馬さん!かっこいい!あっああぁああ!
JACKのOVAも発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!コミックなんて現実じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら…
有 馬 さ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!CCGぃぃぃいいいぁああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵の有馬さんが僕を見てる?
表紙絵の有馬さんが僕を見てるぞ!有馬さんが僕を見てるぞ!ゲームの有馬さんが僕を見てるぞ!!
アニメの有馬さんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕には有馬さんがいる!!やったよカネキ君!!ひとりでできるもん!!!
あ、アニメの有馬さああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあチャン雛ぁあ!!ヒ、ヒデェ!!エトしゃぁああああああ!!!トーカちゃぁあああ!!
ううっうぅうう!!俺の想いよ東京へ届け!!CCGの有馬さんへ届け!

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