初めてのLost戦。
結果は圧殺による勝利だったが、目的である情報収集は失敗してしまった。
そしてチームOは雪の溶けていく蛍ノ島で一週間の訓練を始めた。
洞窟前・・・
俺たち三人はまた山を登って洞窟に向かった。
洞窟の前には、玲華が立っていた。
「久しぶりに太陽見たわ~。・・・お、やっとお迎えが来てくれたか」
「玲華。」
「なんだ?」
「これからここを下りるにあたって、一つ言っておきたいことがある」
私たちと共に戦うことはできるか?
四津野のいつもとは違う冷静な声色が、玲華の軽々しい口調を攻撃する。玲華はそれを聞き、その口を閉ざしてしまった。
「な、なんだよ。共に戦う?・・・じゃあ、一つ聞いてもいいか?」
アタシを『武器』ではなく『仲間』として見てくれるか?
四津野の声色に対して、玲華も声色を変えてくる。
さっきまでの強気な玲華が一歩だけ後ろに下がった。
まだ、強気な口調が抜けきれない玲華の頼みに四津野は
「私たちなら、お前をそんな見方で見たりはしない。むしろ、仲間や友達として接する」
と優しい声で言った。
「・・・なら、着いていくよ。それに・・・こんなところに一人ぼっちも嫌だからな」
こうして蛍ノ島での一件は終わり、俺たちチームOは緑色の大地が戻ったこの島で予定通り、特訓を始めることになった。
玲華はまだ、この空間に溶け込めそうにはない。四津野は玲華を無理矢理でもその空間に入れようとしていた。
そして、とうとう俺は・・・
「お、やっと完成か」
タマの妖術の一つ、狐火を使えるようになった。
★
メビウスプログラム 成功。
「どうだい?アリス。この部屋も前よりは快適だろ?」
ウサ耳フードの女に話しかける狐の面を付けた男。
そして薬品臭いこの研究室では、ある実験が行われていた。
「まぁ、前の居心地の悪い空間よりはね。それに私の実験も成功したしね」
アリスと呼ばれた女は男に『研究成果』を見せた。
「おぉ、もう片方だね?」
研究成果。そう書かれた大きめの瓶の中には一つの心臓が入っていた。
「これであなたたちもいつかは、そんな物騒な物を捨てて、能力を使えるようになるね。まぁ、あと一年はそれを使ってもらうかな」
「・・・てことは、俺は無理か」
「卒業したらやってあげますよ。・・・まぁ、学生じゃないから、それなりに値段しますけど」
「辛いこと言うねぇー」
アリスは瓶の持つと頬擦りをした。
「ん?何をしてるんだい?」
「まぁ、愛ですね・・・。」
「・・・。それじゃ、頼むよ」
男はそう言って部屋から出ていく。
アリスは瓶をそっと机の上に置くと、パソコンの近くに飾られた写真立ての写真を見た。
「あの子は今何してるのかな・・・」
赤井 ルナさん・・・。
★
一週間後、ようやく俺たちはあの島から帰ってきた。
久しぶりの自分の部屋はとても安心する。
俺は帰ってくると吸い込まれるようにベッドへと倒れた。
(この一週間で、私の妖術のほとんどはお前に伝授した。だが、ほとんどはだ。あと少し、この少しを使えるようになるかは私にはわからない)
「ゲームだとな、そういうのは終盤に覚えるもんだ。まだ俺はちゃんとした戦場で戦ってすらいない。だから、俺が本当にヤバイと思ったら頼む」
(それで間に合うのかい?・・・天国で後悔しても遅いよ)
「まぁ、 そのときにでも考えるさ」
携帯の通知音がなって画面が明るくなる。
「ん?どうした?」
俺は携帯を取り、画面を見た。
From:ルナ
助けて。
俺はすぐに部屋から飛び出した。
★
「アリス副隊長、チームO1年の赤井ルナを捕まえました。」
「連れてきて」
鉄のドアが開いて、ルナが二人の男と部屋に入る。
両腕を二人の男に捕まれ、手首を後ろで手錠によって固定されている。
「今度はなんですか・・・」
「どこか痛いところとかない?例えば・・・心臓とか?」
「特にないと、・・・どうしてそんなことを?」
「そうか、ならいいんだけどさ」
アリスはフードの中でにっこりと笑うと、ルナのみぞおちを触る。どちらかというと、それよりも上の方を。
(それ以上は、俺が許さんぞ)
「おやおや、本人登場ですか」
ルナの身体を突き破るかのように現れたクロードはその透明の手でアリスを殴ろうとする。だが、透明の手はアリスの身体を貫いて、空を切った。
「どう?新しい身体の居心地は」
(何を言う?この身体はルナの物だ。俺のものではない)
「そう考えてるならそれでいいんだけどさ。」
アリスはルナの腰に付けた刀を撫でる。
「クロードの魂はここにはない。あなたの身体の中に存在する。付喪神とは存在が違うしね」
(何が言いたい)
「つまりだ。君たち二人でその身体の魂ってこと。ルナの魂の半分と、クロードの魂の半分が合わさって存在するということ。」
アリスはそう言い、二人の心臓を左右片方ずつを合体させたものが入った瓶を出した。その二つは同じ動きをしている。
ルナはそれを見て気持ち悪くなったのか、おもわず嘔吐しそうになる。
目の前で自分の心臓が動いている。そう考えると、そうなっても仕方ないことだ。
「クロード。君の内蔵のほとんどは機能停止していた。だが、心臓だけは辛うじて動いていた。逆にルナは心臓以外はほとんど傷ついていなかったが、心臓だけは完全に止まっていた。・・・私に感謝した方がいいと思うよ」
アリスは瓶をそっとしまい、膝をついて絶望するルナに近寄る。
「・・・ろす」
「ん?」
「殺す・・・殺す(殺せ)殺す(殺せ)」
二人の魂は混ざりつつある。そして二人の魂に溢れ出た殺意はクロードの魂を動かした。
「剣よ!」
クロードの剣はアリスの顔の横を通過し、奥にあったパソコンの画面を破壊した。剣は付着した血によって操られていた。
「クロードの能力を完全に使えるようになったか」
剣はパソコンの画面から抜かれると、アリスの首を狙うように横に回転しながら飛んでいく。アリスはそれをポケットに入れていた短刀で跳ね返す。
跳ね返すときの威力でどちらも反動を受ける。
「剣よ!私(俺)の血を使い、あの敵(ヤツ)を倒せ(殺せ)!」
剣はルナのところに戻り、ルナの手首にはめられた手錠と共に、手首を少しだけ切る。
手首から流れ出た血は剣のなかに吸い込まれていき、少しずつ赤く染まっていく。
「これが私の運命!」
★
チームZのある部屋から火が上がった。
オルガはそれを聞いて「よくあること」と言っていた。
チームZは能力を持たない者で形成され、超能力、異能力が好きな人間や、未成年の罪人が集まる。
彼らは自分達のみで実験を行い、対能力者専用の武器を作って戦闘を行っている。
相手の能力値で威力、殺傷力が上がる銃弾や、重さが気にならない太剣などは特に最高傑作と言われ、国に送られているものもある。
実験をしているなかで、失敗して火が上がったのだろう。
「柊、ちょっといいか?」
俺が炎を見ていると、オルガが話しかけてきた。
「どうしたんスか?」
「赤井を見なかったか?火災時はメンバーが全員いるか確認しなければならない」
俺はそれを聞き、脳裏に何かが過った。
「おい!どこにいくんだ!」
そのときにはもう俺の足は動いていた。
ルナからの『助けて』というメールと目の前の火災。あの炎のなかにルナはいる。
「ルナーーーッ!」
俺はガラスを割って校舎のなかに入った。
少しずつ部屋のなかは煙に満たされていく。
「タマ、この前覚えた分身、使えるよな」
(もうそれは君が習得した"能力"だ。君が念じればできる)
俺はタマの言うとおり、分身したたくさんの俺を念じる。すると、目の前に俺と同じ格好をした分身が四人現れた。
(今じゃこの人数が精一杯。でも、これだけあれば充分でしょ?くれぐれも自身が燃えないように)
「了解。」
分身に一階と二階を任せ、俺は一番ルナのいる確率が高い三階を調べることにした。
三階は一階以上の炎と煙に包まれている。
そんななか、俺は炎に向かって走り出した。
「ルナ!いるんだろ!返事をしてくれ!」
カツンと、何かが俺の足に当たる。
そこには画面の割れたルナの携帯が落ちていた。
そして、その携帯から血のようなものが、すぐ手前の部屋に向かって走っていた。
「ルナ!」
俺は扉を当てる。
そこにはなぜか、クロードが立っていた。
能力者解説
アリス(本名?)
能力: ?
チームZの副隊長をしている。メビウスプログラムの研究をしており、四年になってやっと完成した。
今のところ判明しているのはこのくらい(だと思う)。
後々、彼女については明かしていくつもりだ。