Creatures.E   作:駿駕

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あらすじ
アリスの部屋に連れてこられたルナは、自分自身の体がどうなっているのかを知り、アリスを攻撃する。
ルナの攻撃は火を起こし、建物に火をつけた。
そして炎のなかにいるルナを助けにきた柊の前に現れたのは、クロードだった。


ルナの記憶

能力者の能力値は、その人間の裏、つまり闇が深いほど高くなると言われているが、それが本当なのかは未だにわからない。

特に、殿堂入りした能力者の全員が『悪』とは限らない。伝説にもなっている勅使河原 八野地はチームOの司令塔、リーダーでLost討伐部隊の指揮部隊隊長だった。そして能力値は、他の能力者を遥かに上回っていた。

こんな能力者が果たして悪なのか・・・

 

老けた老人は窓の外、燃える校舎を見ながら、そう呟いた。

 

 

「クロード・・・さん?」

「・・・頼む。ルナを・・・俺の身体を助けてくれ」

クロードはそう言いながら、俺にルナがいつも装備している剣を渡した。

「クロード!」

俺はおもわず、呼び捨てになってしまう。

目の前で屈強な体つきの男が倒れたのだ。

俺もそろそろ、煙のせいで意識が朦朧としてきそうだ。

「今、俺の身体はルナのものではない。なぜかわからないがこうなった。・・・俺が死ねばルナも死ぬ。わかるか?この意味が」

俺はクロードを運ぼうとするが、予想通りの体重に持ち上がりそうにもない。タマの能力による力の上昇も、分身している限りは発動できない。

ここまでか・・・。

俺も意識が遠退いて、立てなくなったその時、

 

「まったく、何も考えずに進むからこんなことになるんですよ。わかりましたか?」

 

周りの炎は薄い板のようになって宙に浮き始めた。

「こちらチームO監督のリア。鎮火と柊海都、赤井 ルナの救助に成功」

そこには監督の姿があった。

「よかった~。無事みたいで。あとで反省文を・・・ってその方は?」

「・・・クロード。ルナに憑いてる霊魂だ」

「霊魂がそんなはっきりと?」

リアはクロードの胸部に手を当てる。するとクロードの周りの色々なデータが表れた。

「・・・これは本物の身体ね。ルナさんの能力でも、このクロードの能力でもない。チームZの実験施設に数ヵ月間いたらしい・・・。死ぬ前に何とかルナさんの身体に取り憑くことに成功した」

リアがデータの塊を消すと、クロードの肌はボロボロと腐り落ちていき、そこからはルナの身体が現れた。

「これは!?」

「ルナ!」

俺はルナを抱き締めた。クロードの中から現れたルナは血の臭いがしたが、そのなかにルナの使っているシャンプーの良い臭いが感じられた。

「海都・・・これは・・・?」

ルナは俺の顔を見る。そして周りを見て、何があったかに気付いた。

「ご、ごめんなさい!私が、私がこれを・・・」

「そんなことはいい!ルナが生きているなら、それでいい」

「仕方ないことだ。チームZの捕まって、実験台になって抵抗した。・・・もしも抵抗できなかったら、さらに大惨事になっていただろう」

リアはそんなことを言いながらも俺たちの行動に内心、怒っていただろう。言葉と声がどこか合っていなかった。

 

リアのデータは10分で消え、炎はまた燃え始める。

校舎が一つ燃えたが、リアやオルガは冷静だった。まるでこの前もあったかのように、日常茶飯事のような立ち振舞いで、メンバーの人数を数えて報告していた。

今回の火災による被害者はほとんどいなかった。

特にルナとクロードが「倒した」と口を揃えて言っていたアリスは無傷だと、情報が出た。

さらに、そのときアリスはその建物とは違う建物にいたという。瞬間移動をしている間もなく、ルナはアリスが血を流すのを見た。・・・なら、どうしてアリスは無傷なのか。

「ルナ、少しいいか?」

「どうしました?」

「アリスの件だが、少し情報を分けてくれないか?何の話をしたのか、そしてアリスが何を言っていたか」

「わかりました・・・」

ルナはオルガに連れていかれる。

チームZは情報が少なく、謎の多いチーム。なので少しでも情報が必要だ。それにどうやら、次週に行われる戦闘訓練、戦闘祭でチームZも参加するらしい。

俺が今、チームZについて言える情報はただ一つ、

チームZはチーム内の九分九厘が能力者ではないということだ。

 

「キラ!久しぶりだな!」

火災による集合が終え、訓練に戻るとき、キラのところに一人の男がやってきた。キラの知り合いだろう。

「おー!大和じゃないか!久しぶりだな」

「最近キラと戦えねぇからよ、ちょっと体が鈍ってんだ。ちょっと時間空いてんなら戦ってくれねぇか?」

「別に俺は大丈夫だが、そっちはどうなんだ?」

「大ケガしねぇ程度にやるならいいってよ」

「なら、やってやろうじゃねぇか。・・・柊も空いてるよな?情報収集と勉強でちょっと来たらどうだ?」

俺はこのあとの時間は自習で空いていた。やることはほとんどないし、キラがちゃんと戦っているところを見てみたいというのはある。だが・・・ルナが気になって仕方がない。

「おいおい、何考えてんだ?先輩命令だ!拒否権はねぇぜ」

キラは俺の腕を細くなるくらいにガッシリと掴む。

どうやら逃げることはできないようだ。

「大和。あそこはどうだ?ほら、あの貸しきりができる戦場」

「あー、そこならいくら暴れても大丈夫だな」

俺はキラに引っ張られて、とある場所へ向かった。

 

戦場A。

とある町を舞台にした戦場で、ところどころ建物が崩壊している。全てが作り物で、壊れても数分後には元通りという、なんとも非現実的な物でできている。

そしてここは次の訓練で使う場所になっている。

「しっかしよぉ、よく俺たち三人だけのために貸しきりなんてできたな!さすが、チームAの火力戦車と言われてるだけはあるぜ!」

「良いこと言うじゃねぇか!そっちはあれか?二人で来るんか?」

「お、いいのか?」

「もちのろんだぜ!さぁさぁ、かかってこいや!」

何でこうなったのか、俺は自分自身に聞いてみる。

答えが出るわけがない。強いて言えば、俺が断れなかったのが悪いのか・・・。

(あの男、どんな能力を使うのか楽しみね)

楽しみ・・・か。

「じゃあ、俺から行かせてもらうぜ!」

キラは大和に向かっていく。

大和はその場で指を鳴らし、

「装備ッ!」

と言う。その言葉に共鳴するように、大和の周りに戦車の主砲や装甲など色々な装備が現れた。

大和はそれを装備し、キラに立ち向かう。

キラの拳は大和の装備に当たると金属音を響かせて装甲の前で止まった。

大和の両肩に着いた大和の身長と同じ大きさの盾はキラの攻撃を完全に防いで薙ぎ払う。

「そんなに近づいていいのかぁ!俺の主砲が火を吹くぜ!」

「やってみやがれッ!」

大和の主砲はキラの方を向く。そして機関銃と共に砲弾を撃った。

キラはそれを全て避けながら、大和に近づく。

機関銃の銃弾の雨と砲弾。あれを全て避けるのか。

(あの男、すごい反射神経と動体視力ね。たぶん彼にはあの銃弾が全て見えてる)

「嘘だろ?」

(嘘じゃなかったら、あの機関銃は避けられない)

タマの話によると、キラは人間離れした身体能力であの銃弾の雨を避けているという。また、キラの体にもしも、あの銃弾が当たったとしても、キラにはほとんど効かないだろう。

「オラッ!」

キラの拳はついに大和の主砲に届いた。

大和はその重装備によってほとんど動くことができない。そのため、近づきさえすれば、キラに勝機はある。

「お前のその装備、訓練が始まる前に壊れるみたいだな!」

キラの攻撃が完全に届く範囲まで来たとき、

 

「キラ、止まれ!」

 

何かによって止められた。

その声はオルガだった。

「なんだよ、オルガ。たまにはいいだろ?」

オルガは観客席から戦場へ降りる。

「別にここなら戦ってもいい。だが、俺が来た理由はそんなことじゃない」

「じゃあ、何だってんだよ。あと少しで」

「柊にも言っておく。・・・赤井が狙われている。チームZにな」

「チーム・・・」

「Zだとォ?これまたどうしてだ?」

「わからないのか?・・・たぶん赤井はあのアリスの能力について何か鍵を握ったのかも知れない」

キラと大和はそれを聞いて唖然とする。

「マジか!アリスの能力か!」

そしてキラはテンションが上がって、わけのわからない笑いを見せた。大和は装備を消す。

「お前のチームの赤井ってやつは何をしたんだ?」

「この前の火事で赤井はあの炎のなか、アリスと二人で話していた。そして赤井はアリスを殺したと言っている。とりあえず、二人は赤井のところに行ってくれ。別に行かなくてもいいが」

オルガはまた観客席に戻り、出口から外へと消えていった。

俺もキラと大和に「お疲れさまでした」と言うと、入ってきた場所から出ていった。

とにかくルナが心配だった。俺がいたところで、何かが変わるというわけではないが、ルナの支えにはなるだろう。

 

このあとルナの記憶を、ルナの得た情報を巡って命懸けの攻防戦が始まることを俺たちはまだ知らない。

 

 

 

 




能力者解説

赤井 ルナ
能力:クロード(血の魔法)
一年生
能力はクロードの能力を引き継いだもの。物に付着した血や、血自体を操り、敵に攻撃するもの。自由度が高い。
本当は柊と共に学園生活を楽しむはずだったが、柊を追ってこの世界に辿り着く。
柊ほどの耐性はないが今回の事件で耐性が付いた。
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