Creatures.E   作:駿駕

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あらすじ
チームAのエリート、鯰とフェローサの二人がちょっとしたことでチームOに戦闘を仕掛けてくる。

二人の攻撃はクロサクの成長したエネルギー弾と、雷帝の雷により、フェローサの戦闘不能で終わった。


殿堂杯前日

ある個室にただ一人だけ、閉じ籠ってキーボードを叩く人が一人。壁は全面本棚で、全て空きスペースなく埋まっている。

「柊 海都。能力は狐による妖術デスか・・・。あの御方と同じ能力、と」

男はエンターを強く押すと、パソコンをスリープモードに切り替え、その部屋から退出する。

右手には分厚いファイル。左手には懐中時計を持って。

「彼に会いたいデスね、フフフ・・・」

 

 

「ううう・・・風邪か?」

大きなくしゃみをする。誰かが噂をしているのだろうか。

(夏風邪じゃないかい?)

「確かにこの前、エアコンをつけっぱなしで寝てしまった。その日の朝はすごい寒かったし、それかもしれないな」

俺は両手に持ったゴミ袋をゴミ捨て場に捨てると、その近くにある水道で手を洗う。

夏、服も全員が夏服になり、扇子や手うちわで何とかしのいでいる。教室に帰れば涼しいが、外仕事になると暑くてたまらない。

「まさか、殿堂杯前に教室の大掃除なんて・・・」

(そして、アンタはこんな暑いなかゴミを捨てるためににゴミ捨て場へ・・・)

「運悪いな。」

(まぁ、仕方ないよ。アンタがジャンケンで負けたのが悪い)

「それはそうだけど・・・」

(あの雪女でもつれてくれば良かったじゃない)

「監督が、女の子にこんな暑いなか外に出させるのは悪いってよ。」

確かに玲華がいれば涼しいだろう。

 

「アノー、すみません」

「な、なんだ!?」

帰る途中、玄関前で声をかけられた。そこには雷帝と同じくらいの身長の男が立っていた。

頭にはクリーム色の小さなアフロが乗っており、右手には分厚いファイルを持っている。こんな暑いなか、服は数百年前の有名作曲家が着てそうな豪華な装飾の衣服を着ていた。

「私はチームAのゴウトと言いマス。あなたが柊さんデスか?」

「そうですけど・・・」

(チームAか。最近よく会うね・・・)

「私と戦いませんか?」

ゴウトは勢いよく頭を下げる。下げた勢いで頭のアフロが揺れた。

(どうする?相手はこれでもチームAだぞ)

それでも戦ってみたいというのはある。

「いいですよ。ただ、ここじゃちょっと」

「ありがとーございマス!場所を変えまショー!」

 

戦場F。

ここはとある城の中のような空間が広がり、壁にはこの学校の印が描かれた旗が掲げられていた。床には玉座に向かって一直線にカーペットが敷かれている。

「ルールはどちらかがギブアップしたらでどーでショーか?」

「それでいいですよ」

(私もそれでいいよ。とりあえず最初はこの人の能力を見ることから始めよう)

「それでは、開始デース!」

ゴウトはファイルを近くのテーブルの上に置く。

そして手のひらを合わせた。

「いきマスよー!はぁッ!」

「この雷!まさか!」

見たことのある雷が俺とゴウトとの間に突き刺さる。

それは雷帝のものより弱かったが、雷そのものは雷帝のものと同じだった。

「私の能力はストック。見たもの、感じたものを三つまで使えるという能力デス。これはあなたのチームの雷帝さんの能力デスね!ふんぬッ!」

今度は、半透明な刃を作り出して攻撃する。

これは鯰の能力か!?

(あの能力やっかいだね・・・でも、もう二つは見た。残り一つだ)

「はァァァッ!せいッ!」

空を切る空気の刃を避けると、俺は幻術を放った。

刃によって上半身と下半身を切られた自分を。

「痛いデスか!痛いデスよね!やりましたよ!エースさん!」

「やっぱりか」

俺はゴウトの目の前に来たところで、ゴウトにかけた幻術を解く。

「・・・はぁ?」

俺の拳はゴウトのみぞおちを的確に刺す。

そして、ゴウトはそのまま後ろに倒れた。

「な、なぜ、ここに・・・?」

「お前の見ていたものは全て幻だ。二度と、俺を狙ってくるんじゃねぇぞ」

「ひ、ひぃぃぃぃッ!オタスケーッ!」

ゴウトは分厚いファイルを置いて、戦場である城から尻尾を巻いて逃げてしまう。

(かっこよかったよ、柊)

「は、恥ずかしいこと言うな・・・でも、少しは強くなってるよな」

 

「遅いじゃないか、何してたんだ?」

教室に帰ると、リアが待っていた。その後ろに呆れるオルガが見える。

「えっと・・・そのですね・・・チームAのゴウトってヤツに喧嘩売られまして・・・」

「ゴウト?・・・誰だ?そいつは」

「え?昔の音楽家風のクルクルした髪の雷帝くらいの大きさの・・・」

俺は手でゴウトの髪型を表現する。

「そんなやついないだろ。」

「まぁ、いたとしてもあの人数だ。知らなくても普通だ」

そこにいたオルガもキラもリアも、全員がゴウトを知らないという。

「三つだけ他人の能力を記憶して使えるという能力の」

「柊。それは反則、というよりいてはならない能力だ。もし、それがバレたらすぐにここから退学してしまう」

「本当にいたんですって!それにこのファイル!」

俺はリアにゴウトが忘れていったファイルを渡す。

そこにはチームOメンバー全員の情報が書かれていた。

「これは!・・・どうしてそいつはこんなものを」

 

 

「失敗したよ。久しぶりにさ」

「君が失敗するとは・・・二年ぶりだね」

「フェローサの雷の粉と君の後方での支援。そして僕の演技。全て成功したと思ったんだがね」

一人の男がカツラを投げ捨て、ポケットからタバコを取り出して指先に灯した炎で火を付ける。潰れた前髪を手でかきあげ、頭を左右にブルブルと振って元の髪型に直す。

「後藤。君、あのファイルはどうしたんだい?」

「あれには、フェローサの作った爆発粉と僕の爆発魔法陣を入れてプレゼントしたよ、柊君のページを捲った瞬間、ドカンさ」

「それは面白そうなことしてくれるじゃないか」

「満足してくれればいいんだがねぇ」

後藤と呼ばれた男は燃え尽きたタバコを踏み潰すと、笑い始めた。

「・・・笑うのもいいが、大切な資料はどうするんだ?」

「それなら大丈夫。ちゃんとコピーしてあるからね」

「さすが、チームAを裏で指揮する者・・・。アキネがあの座から降りたら、次は後藤の番だろうね」

「フフフ、これも全て、僕の計画通りだ」

 

 

俺たちは何が起こったのかわからなかった。

ファイルは粉々になり、教室は火の海へと姿を変えた。

「だ、大丈夫か。みんな・・・」

「こっちは大丈夫だ」

窓の方にいた雷帝や四津野は無傷。ファイルを間近で見ていた俺とリアはその爆発の衝撃を直に体験した。

俺はファイルが光ったと同時に、後ろに下がったため、少し火傷しただけで済んだ。だが、

「監督!しっかりしてください!監督ーッ!」

「おい、リア!しっかりしろ!リア!」

オルガと雷帝の声にリアは反応しなかった。

「・・・すぐにリリーを呼んでこい!」

俺のせいだ・・・。俺があのファイルを持ってきたから・・・。

俺の脳裏にゴウトの顔と声が過る。

「ルナといい、リアといい・・・どこまで、俺たちを攻撃すれば気が済むんだ」

「・・・ここまでされると、私も怒らずにはいられないな」

「この殿堂杯・・・確かチームAの隊長が出るよな。どうするよ?オルガ」

好戦的はキラ、四津野、雷帝。そして冷静沈着なオルガはついに眉間にシワを寄せた。

 

「チームOの作戦変更。チームAのリーダー、エースを全員で倒しにいく」

 

 

鯰に待っていてと言われたが、私は鯰のことが気になって後を追い、屋上の出入口の扉に隠れるように立っていた。

「あれは後藤だったかしら・・・でも、なんで後藤と鯰が?」

鯰のすぐ近くに後藤が立っているのがわかる。服装はオシャレを気取っているのか、どこぞの音楽家のような服を着ている。

とりあえず、おかしいの一言に尽きる。

「・・・・・・ドカンさ」

遠くて二人の会話はほとんど聞こえないが、その一言だけは聞こえた。ドカン?確か、アイツの能力は炎とか、爆発だったはず・・・。次の殿堂杯の作戦会議かしら?

私がそんなことを考えていると、けたたましい爆発音が校内をこだました。

「爆発!?・・・いったいどこで!」

「ヒューッ!爆発したねぇ!やっと起爆してくれたか!」

「順調に進んでるね・・・次はルナの病室ですか」

私は二人がやってはならないことをしていることがすぐにわかった。それに気づいたときには、アキネのところに向かおうと足が動いていた。

「待っていてと言ったじゃないか、フェローサ。」

さっきまで200メートルくらい先にいたはずの鯰が私の手を空気で掴む。

「あ、アンタが遅いから、き、来たのよ!」

「・・・たまには僕の言うことを聞いてくれよ。・・・聞いてくれないから、こうなるんだよ」

手を掴んでいた空気は私の体を包み込んだ。

「鯰・・・」

「眠っていて・・・少しの間だけさ」

 

「そんなことしちゃって大丈夫か?明日の殿堂杯、君とフェローサで」

「いや、これも僕の計画通りさ。君が出るんだよ、後藤」

 

殿堂杯まであと15時間後・・・

 

 




能力者解説

後藤 豪 チームA 四年生
能力:炎、爆発
普段はスパイ活動を中心にやっており、全てのチームの主要メンバーの情報ならほとんど知っており、ファイルに閉じて保管している。
スパイ活動のせいで、戦闘に出ることはないが、チームAの上から6、7番目くらいの実力はある。柊戦ではその能力を見せないために、変装して能力を使わなかった。
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